ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険   作:シズりん

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第4話

暖かな風が顔を撫でる。

木々の隙間からくる暖かな木漏れ日のなか、白いテーブルを囲んで紅茶を楽しむ俺と雫。

そんな二人を楽しそうに眺めているエルフの女王ヒメア様。

 

エルフの隠れ里

 

 

俺達は今そこにいる。

「ではあなた達はアリアハンからいらっしゃったのですね。随分と遠いところからいらっしゃったのですね。」

女王ヒメアは、物腰のやわらかい微笑みをくれる。

ルイーダさんの時もそうだったけど、最近俺は歳上好きなのだろうか。

隣から絶対零度な空気がチクチク俺を刺しているが、きっと気のせいだろう。

 

 

「話を戻しますが、本当にノアニールに人がいたのですね?」

「はい。老人と孫のロザリーさんが二人で暮らしていました。」

なぁシズクとばかりに彼女に目線をうつすと、彼女は頷く。

「そうですか・・・詳しいお話しを聞かせて頂けますか?」

 

―――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

 

「あら?貴女は・・・」

 

犬や猫といった動物はもちろんのこと、草木さえもまるで時間から切り放されたように眠る村ノアニール。

 

その昔、村の男とエルフの娘が恋におちた。種族の違いからエルフの女王は猛反対する。

周囲に反対されながらも二人は愛を貫き・・・

終には手を取り合い駆け落ちをした。

 

娘を失ったエルフの女王ヒメアは激怒し、男がいた村ノアニールに呪いをかけ、全てが眠りについたという

 

 

 

そんな村で俺達は一人の少女と出会った。

腰まで伸びたキラキラと輝く赤い髪は、白い肌をいっそう際立たせる。深緑の瞳は強い意思を伺わせ・・・

シズクとはまた違った魅力のある赤い少女だった。

 

「あ、貴女は……。」

 

その少女は俺達を・・・正確にはシズクを見るなり、あたかも知り合いのような台詞を口にする。

 

 

そんな二人の少女は暫く無言で見つめあっている。

まるで何かを探りあうかのようだ・・・

いつまで続くのかと思った矢先、少女は何かを納得したかのように強い意思を秘めた瞳の色を緩ませ

 

「はじめまして」

と、ポンと手を叩く。

 

 

「はじめましてかよ!!」

散々引っ張っておいてこれかい。思わず初対面の女の子に突っ込みを入れてしまう。

 

 

 

 

「改めまして、私はアンと申します。」

少女は自分の家へと俺達を案内すると、改めて色々話してくれた。

現在ノアニールに住んでいるのはアンと祖父で村長のプサロだけだという。

二人は呪いをかけられた当時ロマリアへ行っていたらしく、運よく呪いからのがれたのだそうだ。

 

俺はその話を聞いたとき、何とも言えない違和感を感じたのだが、

「それにしても、エルフの女王様もイケずよね。種族の違いが何だって言うのよ!愛し合う二人を引き離すなんて許せないですよ!!」

普段怒っていても天使のような笑顔だけは絶やさないシズクが、珍しく興奮気味に怒りを顕にしているのを見て、しだいにそれは記憶の彼方に消え去った。

 

.

 

.

「え?勇者様、それ本当ですか?」

「あぁ。俺は勇者だ。困っている女の子のお願いを断るわけがない!」

 

アンの話しによれば、西の洞窟の奥深くに地底湖があるらしい。そこにある『夢見るルビー』をエルフの女王ヒメアに返せば、村人の呪いがとけるんだとか・・・

 

ってか、なんでこの二人はそんな事まで知っているんだ?俺は少女と話しているうちに疑問に思ったが、笑顔が可愛いアンを見ていたらどうでもよくなった。

 

「必ず村人達を救ってみせ・・・」

 

俺が言い切るより先に、アンは俺に抱き付いてきた。そうこれだよ。勇者と言えばこの恋愛フラグを色んなところでたてるもんだ。

 

――俺は勇者。魔王バラモスを倒す宿命。だけど、魔王倒したら・・・必ず――

 

 

などと妄想にふけっていると、シズクが俺の肩を凄まじい力で掴んだ。

「マコトさん。あなたも学習しませんねぇ・・・あなたが建てたフラグは、恋愛なんかじゃありませんよ。それは死亡フラグですから・・・」

め、めちゃくちゃ怖っ。

 

しかし甘いな。俺にはお前に対する対策がある。

いつまでも負けっぱなしの俺じゃねーぜ。

 

【スカラ!!】

最近覚えた最高の対シズクの防御呪文だ。

 

「!!」

シズクは少しだけ驚いた表情をみせた。

へへっ。それだよ。その表情が見たかったんだよ。幼馴染みの困った表情が・・・

俺は将来亭主関白を狙っているんだ。そろそろ主導権は譲ってもらうぜ?

 

彼女は深いため息をつくと、ルビス様の像の如き微笑みを浮かべ両手を広げ手の平を俺の方にむけた。

 

なんだ?もしかして、抱き締めてほしいのか?案外可愛いところもあるんだな。

 

俺は同じように両手を広げ、シズクを抱きしめようと近寄る―――――が、いつまでたっても、その愛しい彼女を抱き締める事ができない。

 

彼女から空気の圧力がおしよせる。

 

ズバババババァァァァァァ!!

 

突如襲いくる凄まじい圧力が俺のスカラを剥ぎ取った。

 

 

 

 

い、いてつく波動だとぉ!!!

 

 

 

 

シズクは防御呪文の無くなった俺の胸ぐらをつかみ、痛恨の一撃クラスの往復ビンタを放つのだった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

「え?すると勇者様。あなたは人間なのですか?わたくしはてっきりスライムベスが、人の真似をしているのだと思いましたよ。」

 

エルフの女王ヒメア様は、ひんやりした指先を真っ赤に腫れ上がったスライムベスのような俺の頬にそえる。

そう言うことですか・・・

どうりで人間嫌いで有名なエルフが、ことも無げに隠れ里に入れたわけだ。

 

 

こほん!!

シズクが咳払いをすると、ヒメア様はパッと手を放し、ホホホと上品に笑う。

 

「とにかくその二人は怪しいですね。」

「そうですね。あの二人が夢見るルビーを持ち出し、駆け落ちした二人なら・・・十分にあり得ますね。」

ヒメア様とシズクは二人で納得しあっている。

 

「ちょっと良いか?何が怪しいんだ?」

俺が当然の疑問をなげかけると、ギロリとヒメア様が睨み付ける。え?さっきまでの優しいヒメア様はどこに?

「人間よ!少しは頭を使うがよい。主はアホか?」

人間だと知った途端に態度が急変したヒメアがいうには、娘のロザリーが恋をしたのは、そもそも人間ではなくて、妖魔だという。

かつて愛したエルフの青年コハクとの間に生まれた大切な娘が、人間ならまだ目を瞑れたが、魔物との愛となると話は別。ヒメアは娘を妖魔と引き離そうとしたらしい。

 

しかし頑固な娘は、あろうことかエルフの里中を荒らした挙げ句に、エルフの秘宝『夢見るルビー』で婚約指輪を作ると言い出し、盗みだしたらしい。

 

ヒメアが言うには夢見るルビーの力が溢れたために、ノアニールは眠りについたのではないかという。呪いなどかけてはいないのだとか。

 

「ん?要するにどういう事だ?」

俺が頭を捻るとヒメアはシズクと目を合わせ、二人揃ってため息をつく。

「これだから人間は嫌いなのだ。良いか?お主にノアニールの昔話しを教えたのは誰ですか?アンと申す娘と、祖父のプサロですよね?そんな昔話しの時に祖父が若かったとして、どうして孫娘までそんな昔話を見てきたかのようにはなせるのだ?」

 

?全く話が見えず首を傾げると、ヒメアに変わってシズクが応える。

 

「要は単純にその昔に二人はいたということですよマコトさん。」

「おいおい、冗談はやめてくれよ。何十年も昔に二人がいたって?アンはどう見ても可愛い少女じゃねーか。」

「可愛いは余計なのはさておいてもマコトさん、アンさんがエルフだとしたらどうですか?あの二人だけルビーの魔力から逃れられたのも理由になりませんか?」

 

シズクがそこまで言うと、ヒメアはシズクにこれだから人間はと同意を求めて息をはく。

ヒメアよ、そこにいるシズクもルビス様にそっくりな外見だが人間だからな・・・たぶん。

 

 

 

 

 

「げっママ!!」

ノアニールに女王様と三人で赴くと、アンは開口一番で小さな悲鳴をあげた。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「本当に娘がお騒がせをいたしました。」

 

女王が娘のロザリーの頭を無理矢理下げさせる。

なんと・・・アンと名乗る少女はヒメアの娘ロザリーだった。

 

「これからどうするんだ?こいつら。」

俺がヒメアに二人の事を聞くが返事はない。

 

「反省もしているようですし、何よりピサロと名乗る妖魔の彼も悪意のない魔族のようです。暫く様子を見ると言うのはいかがですか?」

「そうですね。聞けば秘宝を持ち出したり、駆け落ちを最後まで反対し、母であるわたくしに説得を続けようと言ったピサロさんには私も好感がもてます。暫くは二人をエルフの村の中で様子を見ようと思います。」

 

俺を完全にスルーしたヒメアはシズクの意見に賛同する。

ちくしょー!そろそろ俺も泣くぞ。

しかし、ピサロも正体はまさか若いとは。

プサロは正体がバレるのを恐れ、変化の杖を使って祖父のフリをして、名前も変えていたらしいが、プサロとピサロって……本気で変装する気あるのか?お前。

 

 

 

 

 

エルフの村を出るとき、ヒメアから夢見るルビーから創った剣、まどろみの剣と、魔法の鎧をくれた。

シズクはどうやらエルフのドレスと、変化の杖を貰ったようだった。

里を出るさいにロザリーは

「勇者様も大変な恋をしてらっしゃいますね。いろいろ大変でしょうけど、頑張って下さいね」

と、優しい言葉と素敵な笑顔をくれた。

 

そんな二人のやり取りをみていたのか、シズクは俺の腕に自分の腕を絡ませ

「ロザリーさんとピサロさん。素敵な恋をしていましたね。今日はもう少しだけこうさせていてください。」

と言って寄り添っていた。

 

 

俺の幼馴染みがこんなに可愛いわけがない。

どこかで聞いたようなセリフが頭に浮かびながら俺達はバハラタへむかって旅立つのだった。

 

 

ーー続くーー

 

マコト Lv20 装備 まどろみの剣 魔法の鎧

シズク Lv50 装備 変化の杖 エルフのドレス




次回は週明けの予定です。 雫
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