ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険   作:シズりん

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第8話

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ダダダダダ・・・

 

「あ!マコトさん帰ってきた。」

 

砂ぼこりを巻き上げながら、俺はまっすぐシズクの待つ方へ向かって走ってくる。

 

彼女は両手を広げ、俺が彼女の胸の内に抱き締めてくれるのを待つ・・・のだがちょっと勢いがありすぎる。このままではシズクに怪我をさせてしまう。何て事を考えてていると

 

ヒラリ

軽快な音でも聞こえそうなステップで、シズクは俺を避けるように道をあけると、俺は神殿の柱にそのまま突っ込んだ。

 

 

「マコトさん。凄いじゃないですかぁ!新記録ですよ。なんと15分も一人で行けましたよ。」

「なぁシズク・・・お前、怒ってるだろ?」

「・・・」

彼女は何とか不機嫌な表情を出さないように、笑顔で接しているようだが、長年共にいる俺にはシズクが苛ついていることは直ぐにわかる。

 

 

俺達は今、ランシールにいる。

ランシールは南の海上に浮かぶ独立国家。

と言えば聞こえは良いのだが、要は何もない田舎。辿り着くには海を越えなければならない。しかし、それに見合うような物は何ひとつない。どの国も所有権を主張しないため、独立国家となっている。

 

「本当にこんな辺境にオーブがあるんですか?」

そう言ったシズクはキョウイチを見ると、何故かキョウイチはガタガタと震えている。

 

「ほ、本当ですよ姫。昔、大魔王さまの命令で俺がこのガイアのへそに隠したのだから、間違いありませんよ。」

「ちっ!余計な事は良いんですよ。あるのか無いのかだけ聞いてるんです!」

「す、すみません」

 

シズクは、今度は不機嫌を隠さない表情でキョウイチを軽く睨むと、彼は泣きながら、見たことも無いような早さで走って、俺達の船へと逃げ帰っていった。

 

「それにしても、ガイアのへそといったか?魔法が使えないってのは厄介だよなぁ。しかも、何のしきたりか知らないけど、一人で行かなければならないとか・・・あの神父も大変な苦行を強いるよな。」

「いや、あれはきっと意地になっているだけだと思うぜマコト。あれは姫が一人で行かなければダメって話を聞いたときに、キエサリソウとか言って神父に記憶が消えそうな程のパンチを顔面に喰らわせたからなぁ・・・」

 

そう言って、最近シズクを姫と呼ぶロレンスさんは、俺と共にシズクの方に目線を配らせる。

 

「どうやら二人にもキエサリソウが必要なようですねぇ・・」

「いやいや、俺たちは大丈夫だから。キエサリソウはいらないから」

 

必死で俺たちが拒否すると、

「仕方ありません。私が行きますよ。」

シズクはことも無げにそう言った。

「バカな!俺の話を姫は聞いていなかったのか?魔法が使えないんだぞ?僧侶の君が行っても!」

ロレンスが言うと、

「そうだ!シズクに無茶はさせられない。お前に何かあったら、俺は・・・」

俺が言うとシズクは真っ赤な顔になった。

 

何だか久しぶりに良い雰囲気だ。ポルトガ以降知らない内にパーティに混ざり込む輩が増えた。本当はもう少しシズクと2人きりでの旅をしたかったのに・・・これでロレンスがいなければなぁ・・・

そう考えると、シズクは装備していた、りりょくの杖を握りしめ、

 

ラリホー!!

 

そう言って、ロレンスの頭をぶっ叩いた。

 

 

 

 

「あのマコトさん・・・ロレンスさんも寝ていますし、今は二人きりですよ?」

シズクは潤んだ瞳でが俺を見上げるように見詰めている。俺はそっと彼女を抱き寄せ、顔を近付ける。

 

 

 

そんな甘いひと時に

 

「そうだ言い忘れてたんだけどよ。ガイアのへそには強力な武具もあるから、忘れるな・・・よ・・・」

 

キョウイチが、船から戻ってきた。このタイミングってのがキョウイチらしすぎる。

 

「ふ、ふふふ・・・初めてですよ。私をここまで怒らせたおバカさんは。」

キョウイチは真っ青な顔で逃げようとしている。でも、2人の久しぶりの甘い一時を邪魔したからには、只では済ませませんと言った明確な怒りを露わにしたシズクは、逃げ出したキョウイチさんを回り込んだ。

 

 

イオナズ・・・

 

「待ってくれシズク!」

俺は慌ててシズクを後ろから抱き締めて止めに入った。彼女を抱きしめたときの彼女の温かさが心地好い。

自分のすぐ近くから、好きな人の香りが俺を包み込んでいる。

俺は今、幸せだ。

 

しかし

「遅かったか。」

「え?」

俺は我に返りキョウイチをみると、真っ黒焦げになって、口から煙りを出していた。

 

 

 

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「はい、オーブです。」

「は、早すぎだろ!!お前が入って5分しか経ってないぞ!?」

 

 

彼女は傷一つなく帰ってきた。

本当、こいつだけは昔から良く分からない。どんなに大変な事も、事も無げにこなすくせに、オバケが嫌いだとか。

モンスターや悪魔は平気な癖に、ゾンビを見たら迷わずにニフラムをかます。

 

本当に人間なのか?

俺がシズクを見ると、瞳の虹彩の無い彼女が俺を見ていた。

 

「今、何か失礼なこと考えていませんでしたか?」

「お前はエスパーか!?それよりどうすんだよ。これから次のオーブを探しに行くのに、船をこぐ担当のキョウイチが死んじまったじゃねーか!!」

 

まぁ途中で止めたお陰で、消し飛ばずに何とか普通に死んでいるキョウイチは運が良いのかも知れない。

それに、ベホマがあれならザオリクはいったい・・・

何度もザオリクを使っているのだろうけど、その都度俺が死んでいるので、お目にかかったことが無い。

 

「ちっ・・・キョウイチさんを生き返らせれば良いのですよね?」

この女舌打ちしやがった。

シズクは何故か懐からナイフを取り出した。

いったい何をするのかと黙って彼女を見ていると、彼女はキョウイチの顔の傍に自らの顔を近付けた。

 

まさか!!俺以外にキスとかをするのか?

俺だって何年もの付き合いなのに、滅多にしてもらえないのに。

彼女はキョウイチの顔をそっと手繰り寄せ、そっと囁く。

 

「・・・キョウイチさん・・・早く起きないと、本当に殺しますよ?滅殺です!」

「ひい!!」

ナイフを頬に当てながら、声のトーンを下げたシズクが小さな声で囁くと、死んでいたキョウイチは飛び上がるように生き返った。

 

「ほら生き返りました。」

そう言ってシズクはルビス様の如き女神のような笑顔で微笑んでいた。

 

 

 

「ところでキョウイチ。オーブは全部で何個あるんだ?」

俺達はランシールを後にし、再び大海原に出ている。

潮風が少しベタつくけれど、近くを飛ぶカモメの鳴き声が、俺達の冒険に花を添える。

「ん~何個だったかなぁ。確かに魔王の命令で隠したのは俺だけど覚えてねぇな。確かランシールと、ジパングと・・・」

は?今ジパングって言ったか?

 

「ち、ちょっと待て!今ジパングって言ったか?」

「ああ言ったぜ。」

キョウイチは詰まらなそうにお尻をかきながら答えた。

 

「ジパングでオーブ獲ったか?」

「あ!」

 

俺達は甲板の上にパラソルを開き、お昼寝をしている彼女を見た。

確か・・・ジパングって、シズクのギガデインで島ごと消し飛んだよなぁ?

 

「なぁキョウイチ・・・お前全員を乗せて飛べたりしないか?」

「むりむりむり!!」

両手をブンブン振って慌てて否定するキョウイチ。

 

 

はぁ・・・俺達の冒険はここまでなのか?

 

 

 

 

 

 

そして伝説へ

 

 

 

勇者マコトは、愛するシズクと静かに幸せな家庭を築きました。

 

 

 

 

めでたしめでたし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なわけあるかー!!」

勝手なナレーションを入れているシズクに俺は全力で突っ込んだ。

「いつから起きていたんだよシズク。」

「ところで~の辺りからですよ?」

 

って、それはつまり最初からですよねぇ・・・。

 

「まぁ、無いものは仕方ありませんね。」

完全に他人事なシズクを差し置いて、マトモな提案は意外にも、不死身の商人ロレンスだった。

 

「ランシールの街の商人に聞いたんだが、何でもダーマでずっと不在だった賢者が最近誕生したらしい。賢者と言うくらいだから、きっと何か良い策を授けてくれるかも知れないな。」

「なるほど~賢者か。確かに賢者ならオーブが無くても何とかする手段を知っているかも知れない。言ってみよう!!ダーマ神殿へ。」

 

そうして俺達はダーマ神殿へ向けて船を進めた。

 

 

 

 

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「いらっしゃいませ~。」

ダーマの神殿の中は、やたらと長い椅子が並んでいた。

「転職をご希望でしたら、二階へどうぞ~。お泊まりの方は地下一階です。」

「あのぉ~俺達は魔王討伐のため、賢者を探しているのですが・・・」

「あぁ!アトラクション関係のお仕事ですね?ではお二階へどうぞ~。」

受付嬢の素敵な笑顔に流されるように二階へ昇ると、そこには異様な空気の漂う空間だった。

 

そこにいる男達は一様に下を俯いている。首から変な紐(ネクタイ)をぶら下げ、自分の番が来るのをひたすら待っているようだった。

 

「次の方どうぞ?」

待つこと3時間、ようやく俺達の順番が回ってきた。

「不死鳥ラーミアを復活させるために、旅の助言を求めて俺達は賢者を探しているのですが・・・。」

 

俺達は案内係に促されるままに席につくと、一冊の分厚い本を渡された。

タイトルは"悟りの書"と記されていた。

中は全く読めなかったけど・・・

 

「これは・・・中々面白い内容ですね。」

なんとシズクは"悟りの書"を読んでいた。

 

すらすらと読んで見せるシズク。

賢者のブースを担当していた人は、身を乗り出しシズクをマジマジと眺める。

「それは悟りの書と言って、賢者になる資質のある者にしか読めない書物なんですよ!いやぁ~まさか本当に読める人に出会えるだなんて!!」

 

男は興奮ぎみにシズクに握手を求めていた。

「いやぁ~凄いですよ。今月で二人も賢者を排出できるなんて!」

「え?私、賢者になりませんよ?」

「そうでしょそうでしょ~・・・は?」

「だから私は賢者にはならないと。」

「なんでですか!!レア中のレアな職業ですよ?100年に一人と言われている憧れての職業じゃないですか!理由を聞かせて下さいよ!」

「可愛いくないからです。」

「・・・は?」

 

そうだ。シズクは昔、僧侶は癒し系で可愛いから僧侶になる!なんて言っていたっけなぁ。

こいつにとっては賢者さえも、可愛いくないって理由で断るんだな。

 

「そうだ!もう一人賢者が出たんですよね?俺達はその賢者を探しているんですよ。何処に行けば会えるか知りませんか?」

「ははぁ~貴方もあの笑顔にやられたんですね?彼女は可愛いですからね」

 

そう言って賢者担当の男は笑っていた。背後から身の毛もよだつような、寒気がするのはきっと気のせいだろう。

何にしても、俺達はその100年ぶりに出た賢者に会わなければならない。

 

 

 

 

「あれ?その後ろ姿は真か?」

俺達がブースの男と話していると、聞きなれた声が俺を呼び止める。

振り向くと、全身が筋肉の鎧で覆われた・・・筋肉ダルマのツカサがいた。

 

「お!ツカサお前生きてたんだな。」

「おおよ!しかもレベルもかなり上がったんだぜ?みろよこの棒を!これは如意棒と言ってな?戦闘中に使うと自由自在に伸びるようになるんだぜ?まだ、レベルが足りないらしくて、伸ばせないんだが。10万Gもしたけど、最強の俺には相応しい武器だと思わねーか?」

 

自慢気に笑うツカサ。

相変わらずアホだろこいつ。伸びないのはただの棒(ヒノキの棒)だからだよ。

騙された事に気が付いていないんだろうなぁ。

 

「なぁツカサ・・・お前ここに居たなら賢者様をしらねーか?」

「賢者?知ってるぜ。なんだマコト達は賢者を探していたのか。ほら、すぐ後ろにいるぜ?」

 

そう言って指差した先をみると、

見た目100点満点の魔法使い改め、賢者の見た目になったサキがいた。

 

「いや!見た目の話しじゃなくて、本物の賢者を探してるんだよ。」

「ちょっと・・・失礼ねぇ。ちゃんと悟りの書読みましたー!」

ジト目でサキが俺をみている。

 

「はぁ・・・せっかくの手掛かりを求めて賢者を探していたのに・・・サキじゃあなぁ。

唯一の希望の光が、メラもMPが足りない賢者とは。

いよいよもって先が見えなくなり気が遠くなってきた。

これからどうしよう。

親父の敵や世界を救うのなんか止めて、何処かで静かにシズクと二人で暮らすかなぁ・・・」

 

 

「・・・あのぉシズクさん?俺の声色を真似して、あたかも俺のセリフみたく言うの止めてくれません?」

「え?あはは・・」

 

あはははは

そんな俺達をみてサキは、二人とも変わらないねぇと笑っていた。でも、サキの笑顔は以前と違い、少し大人の女性を感じさせるもので、何とも言い難い魅力があった。

 

「俺達な、あのあと結婚したんだよ。」

左手を見せながらのツカサの言葉で、二人が大人に見えた錯覚を俺は確信に変わった。

 

 

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「良いなぁ結婚。やっぱり結婚するのと、する前って、同じ一緒にいるのでも違うのでしょうね?」

「フフフ。私も結婚する前はそう思っていたけど、やっぱりちゃんと受け止めて貰えるって良いものよぉ。シズクちゃん達も早く結婚しちゃえば良いのに。」

「私達ですかぁ?う~ん・・・マコトさんは世界を救う勇者ですからねぇ、私なんかとてもとても・・・。」

「あら!大丈夫よぉ。結婚なんかしちゃえばこっちのもんよ?切っ掛けなんか適当に仕組んじゃえば良いのよ。何なら私の賢者の知識を授けましょうかぁ?」

「えー?本当ですかぁ?きゃー!!」

 

 

 

 

 

 

「あいつらうるせーな。」

ツカサが海図を手に、甲板の上できゃーきゃーやってるシズクとサキを見てぼやく。

「まぁ・・・聞こえないフリをしてやってくれ。」

「なんだ?マコトはシズクちゃんと将来とか考えてないのか?」

「俺にだって考えはあるよ。でもなぁ・・・振り向かずにあいつらを探ってみろ。きゃーきゃー言ってたのが嘘のように静かだろ?俺達の会話を盗み聞きしてるんだよ。」

「お、おお!?」

「お前迂闊な事を言ったら後で言質にとられるぞ?」

「女の子って・・・怖ぇ~。」

 

 

「「チッ」」

そんな俺達の小声の会話さえ聞いていたのか、女の子二人は口を揃えて舌打ちした。

 

 

 

「まぁ。サキの言う通り、改めて俺も武道家になり、サキも賢者になったんだから、先ずはレイアムランドのラーミアを見に行こうぜ?オーブが足りないのは、そのあとに考えよう!」

「はぁ!?お前、今何て言った?」

「ん?いやだから、先ずはラーミアの状態を直接見てから対策を考えようって・・・」

「そこじゃねーよ!!お前改めて職業に就いたみたいな事言わなかったか?」

「あぁ。そうだぜ?ダーマでちゃんと武道家になったんだよ。やっぱ定職に就かないと結婚できねーしなぁ。ガハハハハ」

 

なんだ・・・と・・・

するとこいつらって

 

「お前等今まで普通の村人だったんかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

見渡す限りの大海原に、俺の叫び声が響きわたり、近くの漁村では魔王の雄叫びと伝説になったことを知ったのは、ずっと後のことだった。

 

 

 

「なぁロレンス?何か船の上が騒がしいなぁ。」

「あぁ、ほらキョウイチ。ちゃんと船を漕がないと姫に怒られるぞ?」

 

船底では頭に大きなタンコブをこさえたロレンスと、首にナイフの傷痕が残ったキョウイチが、一心不乱に船を漕ぐ。

 

レイアムランドとは、全く逆な方向へと

 

 

 

 

―――続く―――

 

マコト Lv40 職業 勇者

シズク Lv1900 職業 僧侶

ロレンス Lv38 職業 行商人

キョウイチ Lv 50 職業 船漕ぎ

ツカサ Lv 5 職業 武道家(新米)

サキ Lv 10 職業 賢者




ダーマって職安ですよね?たぶん…
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