「お前が弱虫ラディッツだな?」
「そうだ、俺がラディッツだ。」
ナッパに超能力が効かない事がわかった頃…
別の戦域に対峙する2人のサイヤ人。
片方は元保険屋営業係のラディッツ。
片方は元宇宙盗賊のターレスだ。
(光栄だなぁ、あのターレスと戦えるなんて…)
見た目も声も孫悟空ソックリ、だが性格はサイヤ人とあって悪人同様。
今でこそ悟空そのもので酷い性格ながらネタにされてはいるが実力者の1人だ。
目を輝かせて眺めるラディッツだがふとあることに気づく。
「そうだ、ターレスお前クラッシュ軍団やってなかったっけ?」
「クラッシュ軍団?
なんの話をしてるんだ?」
「ほら、あの…カカオだとかアーモンドとか…なんか…色々いたじゃないか?
「…知らねぇな。」
嘘を言っているようには思えない。
どうやらそのチームを組む前にベジータに勧誘されていたようだ。
ちなみに正式名はクラッシャー軍団である。
「もう一度聞くが、俺達の仲間には本当にならないんだな?」
「それだけどさターレス、お前がこっちの仲間になればいいじゃないか」
悟空みたいな奴がいれば面白くなる…そんな考えで聞いてみたラディッツだが、ターレスの返事は…
「冗談か?
宇宙を気ままにさすらって、好きな星をぶっこわし、旨いモノを食い、旨い酒に酔う…
こんな楽しい生活はない。
まさにこれこそがサイヤ人にふさわしい生き方だと思っている。
そうでなければ…お前にも生えているその立派なシッポはただの飾りだ!」
ラディッツから伸びるサイヤ人特有の尻尾。
鍛えてあるので握られて力が入らないというのはないし、ピッコロが月を破壊したと聞いたのでそのままにした。
手足のように動かせるので便利であり、攻撃パターンも増える。
だが本来の用途は月を見て大猿化する為の尻尾だ。
ターレスの言う通り…彼にとっては最早飾り程度なのかもしれない…
「それぞれ生き方はたくさんあるから否定はしないけど…サイヤ人だろうがなんだろうが秩序を守らなければただの野蛮な猿だ。
俺はその一線を超えたくない。」
「そうか…ならば、死ね!」
顔面を殴られるラディッツ。
いきなりの出来事に目は追いついたものの、体が動かずに盛大に吹っ飛んだ。
「痛…なにしぼふっ!」
躊躇いもなく腹を踏み付ける。
動きが止められ、顔面に手を当てられるラディッツ。
「は 離せ!」
一度ニヤリと笑うとゼロ距離でエネルギー弾を連続で放つ
地面に出来る大きな穴。
ラディッツはまだ耐えていた。
その後も続く必要以上の圧倒的な攻撃…
ボロボロのラディッツは最終的には首を掴み上げられてしまう。
「ひ…が…」
「…所詮、弱虫か…
お前には戦う意思がまるで感じられない。
まさか話し合いでどうとなるとでも思っていたのか?
いくら身体を鍛えようとも、いくら戦術を練ろうとも、口先だけの貴様に何が出来る?」
(腑抜け…口先だけ…
なんで…なんで暴力を振るうんだ?)
口ではサイヤ人を倒す! 俺だってやってやる! と言っていたラディッツだが、敵を目の前にして何も出来ない。
まず彼はこの世界をまるでわかっていない…
界王様の元で真面目に修行をしたのは世界観を楽しむ為…
主人公である孫悟空やクリリン、ヤムチャに会えて有頂天にもなっていた。
その反面、ナッパから攻撃を受けそうになったり、激怒するのを見て腰を抜かす。
ターレスの攻撃なんか何一つ避けちゃいない。
ラディッツと言うキャラクターがそうさせたのではない…
河野自身がこの世界に本当に臨んでいない。
自覚がない。
自覚していない。
ただの現実逃避だ。
「秩序だと?
お前はただ逃げているだけだろう、戦う事から…戦闘民族サイヤ人の血から!
だからてめぇは弱虫なんだよ!!」
空いた右手で腹を殴る。
顔も…
胸も…
何度も…
何度も
(俺は…俺は…帰りたい。
元の…地球に…
生きて帰りたい…)
目の前のターレスが悟空にも見える。
ターレス?悟空?
どちらが攻撃してくるのかわからない…
(やめてくれ…怖い…やめて…)
(来るんじゃなかった…助けて…)
悟空が殴る。
悟空が…悟空が殴る。
まるで自分を殺しにかかるかのように…
(………
…調子にのってたんだ…ドラゴンボールって世界に来て舞い上がってたんだ…
…この世界に来る資格なんて…元々無かったんだ…)
(誰にでもいい顔をして八方美人…でも口先だけで結局何も出来ない奴…
ははっ…クズみたいなクソ野郎だな…だけどそれが河野豊だ……)
(だけど…帰らなきゃ…こんなクズでも待っている人が…一緒にいてくれる人や友達がいるんだ…!
勝たなきゃ…いや、
絶対に勝つ!!
どんな手を使っても、なんとしてでも!
絶対に帰るんだ!!)
再び向かってくる拳を蹴りあげ、残る左脚でターレスを蹴ったくる。
掴まれていた手から離れ、自由になる。
「そうだよ、俺は弱虫だよ!
口先だけで何も出来ない、ただのクズだ!
だけど…こんなとこで死にたくない。
絶対に、絶対に生きて帰る!
やってやる!」
「ほざけ!」
またしてもターレスは向かってくる。
彼にもやっと戦う意識が芽生えた。
今度はラディッツも界王拳を使って応戦する。
本来界王拳は赤いオーラが出るのだが、技に慣れ気のコントロールに長ければ表面に現れることは無い。
今のラディッツはそんな状態だ。
ただし二倍…三倍と増えると共に気の流れも加速し、コントロールが難しくなる。
赤いオーラも体から漏れてしまう。
リスクは付き物である。
「そんなもんか?」
「ぐぅっ!」
界王拳ですらターレスの体にかすりもしない。
カウンターをもらうばかりで疲弊していく。
戦況は以前としてターレスが圧倒的に有利である。
「ならば、二倍に引き上げる!」
ラディッツの体がほんのり紅くなる。
スカウターを外してしまったターレスには体がちょっと赤くなった程度しかわからない。
その時ラディッツは感じ取った…
誰かの気が消えた…
「誰か死んだのか?
餃子か!」
遅れて爆発音が聞こえる。
餃子が自爆した音だ…
「よそ見してていいのか?」
耳元で囁かれる。
咄嗟に腹部をガードすると、防いだ腕に衝撃が走った!
痛む腕を使い、そのまま足を掴んで地面へと投げ飛ばした。
砂塵と岩を砕くような音が響きわたる。
(くそ…餃子が死んだなら…
次は天津飯か!?)
砂塵が晴れると余裕の表情を見せるターレスがたっていた。
(やっぱり…簡単には…)
「さてと、準備運動はこれぐらいでいいだろ?」
「嘘だろ…界王拳 三倍!」
危険を感じて界王拳を引き上げる。
次の瞬間左側頭部に蹴りが入っていた。
これも左腕でガードする。
「ほぅ?
偶然にしては助かったな。」
「勘で悪かったな!」
お返しにとこちらも左側頭部を蹴るも掴まれる。
そのまま背面に投げ飛ばす。
だがラディッツは反動を利用してラリアット。
再び両者は距離を置く。
「ちっ、しぶとい…一つ食うか。」
腰の巾着から、茶色いモヤっとボ〇ルを1つ取り出し、シャリっと一かじり。
ノーリスクノーリターンの魔法の実…
ターレスを語る上で欠かせないアイテム…神精樹の実だ!
ターレスの傷はすべてとは言えないが治癒する。
気もそこそこの上昇をする。
そのくせ何かを犠牲にしたり不利になる事など無い…
言わばチートみたいなもんだ。
(チッ…あのクズ星のやつか!
星の中心まで腐ってやがったか、味もパワーも良くねぇ。)
アーリア星の力は神精樹の実に反映されていた。
星が豊かであればある程旨みがあり、パワーも格段に上昇する…
だが味も良くなくパワーも上がらないと言うことは痩せた土からなる星だったと言う事だ。
(だがこれでも余裕がある…
万が一の為にまだとっておいてあるからな)。
巾着の中にはチャオ星と惑星コーシーの養分を吸った神精樹の実が入っている。
もちろんアーリア星の養分とは比にならない程良質な星の為更なる戦闘力の上昇が約束されている。
だがそれはターレスだけが知るものではない…
(あれが神精樹の実か!
あれを奪えれば…絶対に勝てる!
巾着の中には間違いなく1つは入ってる…
なんとしてでも奪ってやる!)
今度はラディッツから仕掛ける。
ターレスは少しだけ上空に下がるがラディッツの攻撃を受ける。
思い切り殴る。
…だがこれはガードされる。
今度はこっちの番と言わんばかりのラッシュ。
神精樹の実のパワーアップを果たし、スピードも威力も遥かに上がっている。
三倍界王拳ではついていけない…それを承知での三倍だ。
「こんなもんかよ?
そこら辺の下級戦士ってのはよ?」
まるで人間サンドバッグ、殴られ屋並にボコボコにされている。
「死にやがれ!」
「5倍!」
瞬間的に界王拳を自らの限界値の五倍に引き上げる!
反撃の為ではない…全てはこのがら空きの胴に手を伸ばすスピードに掛ける。
またしてもゼロ距離でエネルギー弾を受け、黒煙を吹き出しながら地面へ吹っ飛ぶ。
「…っ。」
「しぶといな…!?」
ラディッツが嫌味な笑みを浮かべる。
その手には神精樹の実が入った巾着が…
「形勢逆転ってな!」
最後の1つを丸かじりする。
りんごの食感…味はカフェオレのように、甘く香ばしい味だ。
これまで受けてきた傷があっという間に完治するを
「すげぇ!?
力が出てくる!」
傷も癒え、スタミナも元通り以上。
やはり神の果物と言われるだけある。
「これなら…勝て「そいつはどうかな?」
感激して身体中を見回していたラディッツはターレスを見る。
そこには神精樹の実を、かじるターレスがいた。
ラディッツの勘違いにより、巾着から一つこぼれ落ちたのを見逃した…それを回収したのである。
「もう一個あったのか!」
「残念だったな。
貴様もその実を食ったのなら…もう容赦はしないぜ?」