「「はあああぁぁぁぁ!!」」
両者手を組み合い、力比べとなる。
空中で押し合う二つのパワー、二人とも体力全快、限界以上の戦闘力を手に入れている。
地力と神精樹の実を二つ食べているターレスが有利なはずだが、界王拳で地力以上の力を出しているラディッツも負けてはいない。
不意にターレスが力を抜き、股間に蹴りを入れる。
それを防ぐように膝を折りガードするラディッツ。
そのまま前のめりに一回転しながら投げ飛ばす。
「おらぁ!」
目を離した隙に殴るも寸前でかわし、逆関節で肘を折る。
半ば飛ぶように回避し、そのまま地面に振り落とす。
「なんだてめぇ…どこにそんなパワーを隠していやがった!」
「最初から全力で行ったらやられるわ!」
受身をとってダメージを最小限に抑える。
追撃するラディッツは三倍界王拳を維持している。
ぎりぎりオーラは出ていない…まだ余裕は残っている!
「ふんぬ!」
「ぬおっ!」
初めてまともな攻撃を食らわせる。
(今しか!)
地面を蹴りあげ、大胆に懐に飛び込む。
接近戦へ持ち込んだ。
こうなればエネルギー波系統は使えない上に、ラッシュを仕掛ければ、なかなか反撃するのは厳しくなる。
「おらああぁ!!」
「チィッ!」
全力で拳と蹴りを繰り出すも、相手もそれなりに戦闘経験を積んだ猛者である。
防御が堅い。
(くそ!)
ここで無意識に界王拳を四倍まで引き上げた。
身体中にとどまっていた紅蓮のオーラが吹き出す。
「な!? (なんだ、このオーラは!?
それに急に攻撃が鋭くなった!)」
持ち堪えていた防御が崩れかけた。
最早本気にならざるを得ない。
必死に耐え反撃を機会を待つターレスの目の前…ラディッツの後ろに一瞬光るものを見た。
「はぁっ!」
判断をする前に爆発波で強制的に間合いを作り出す。
一度押されたラディッツだったが、爆発波の反動で作られたターレスの大きな隙を見逃すわけが無い。
今度こそ当てるつもりで…
ゥーン…
「うわっ!」
背後から襲いかかるエネルギー。
咄嗟に避けるが右の二の腕をかする。
気円斬が…クリリンの放った気円斬を間一髪かわした。
「死ね!」
眼前を向くと同時に顔面を蹴り飛ばされる。
苦し紛れに連続で気弾を放つも全く当たらない。
二発…三発と受け地面にうつ伏せに叩きつけられた
「痛ってぶふ!」
「終わりだラディッツ。」
ほぼゼロ距離にして連続でエネルギー弾が放たれた。
大きな爆発が連続して起こり、辺りが黒煙と砂塵で見えなくなる。
容赦などまるでない…罪悪感の欠片もない戦い方だ。
「…死んだな。」
パラパラと小石が降る。
漂う砂塵。
大きなクレーターが見え始めた。
「……ク クリリンの野郎…後でぶん殴ってやる…」
「なんてしぶとさだ…!」
自慢の技メテオバーストを受けてなおもなんとか地面に立つ男に些か焦る。
「(…覚悟は出来てんだ…四倍界王拳で、互角のパワー五倍に引き上げて早く終わらせてやる!)五倍界王拳!」
ボロボロの体から吹き出すオーラの量が倍増する。
その分スタミナの消費量もパワーもスピードも増す…
ハイリスクハイリターンだ。
「こぉんのぉー!」
地面をえぐり気味に飛び上がり、瞬く間に間合いは無くなる。
だが反撃するしか頭になかったか、隙が見えている。
目の前まで来たラディッツの顔面にエネルギー弾をぶち込んだ。
「な!
また消え「後ろ だ!」
衝撃と痛みは同時に襲いかかる。
ラディッツは追撃に入る。
ターレスは体勢を立て直し、次はカウンターを仕掛ける。
「がはっ!」
だがまたしても背後からの攻撃。
何が起こっているのか見当がつかない。
気が読めずにスカウターに頼っていたからだ。
それでは残像拳は初見で見破れない。
界王拳を五倍まで引き上げての攻撃だ、ターレスは吐血する。
だが経験の差か…始めこそ全ての攻撃を受けていたが、数回に一度程度までに抑えてきた。
界王拳も五倍だが、出力的には四倍と少し程度…
反動とダメージと疲労による、出力低下を抑えきれない。
(くそ…もう身体が…
…けどなんとか避けきってるし、攻撃も当たってる!)
それでもターレスにとってはラディッツの攻撃が速く重い。
じわじわと体力と気力を削られていく…
(ちっ…こいつは使いたく無かったがな…
大猿になるより、こっちをとるぜ。)
不意のサマーソルトキックに続けて連続エネルギー弾。
ギリギリのところで体を仰け反り、全てを避け切る。
次に見た光景はターレスの勝ち誇ったかのような顔だ。
「褒めてやるよ。
貴様ごときがここまで戦ったことをな!」
手には神精樹の実。
巾着とは別に緊急用として1つだけとっといてあったのだ。
とっておきとはよく言ったもんだ。
「そんなのどこに隠してやがった!?
卑怯だぞ!」
「勝負に卑怯も糞もあるかよ!
最後にとっておいて良かったぜ。」
「このクソドーピング野郎…!」
苦しまぎれに憎まれ口を叩くが、優勢のターレスには負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
そんな最高なBGMを聞きながら最後の実を丸々頬張る。
ドウンと風が吹く…
体力、気力共に溢れかえる。
「くくく…いい気分だ!」
(…追い詰められた……)
詳しい戦闘力なんてこれっぽっちも覚えていない彼だが、間違いなく、今の自分を超えている。
迂闊に手を出せば…簡単に仕留められる。
「来ないのか?
なら…」
ターレスが動く
「こっちから行くぜ?」
「!?」
声は耳元から。
姿を確認する前に地面に叩きつけられていた。
起き上がり解けてしまっていた界王拳を再び限界五倍まで引き上げる。
「うおぉー!」
懸命に攻撃をするも涼しい顔で全て見切られている。
かすりもしない。
「形成逆転だな?」
「がはっ!」
腹を蹴たぐられ激しく尻餅をつく。
「く…そぉ」
さっきまでの優勢はどこへ行ったか…
いよいよ死が現実味を帯びてきた。
(実を食ってから体力は全快。
俺はもう相当なダメージを受けてる。
ぶんだくる実もおそらくあれで最後。
応援は…ってかピッコロまで死んでる始末。
…敗色濃厚だ…ターレスのせいで、ドラゴンボールが終わっちまう。)
「お前が大好きなこの地球に墓を立ててやる。
同じサイヤ人に生まれた俺からのせめてもの贈り物だ。」
目の前から見下す。
不意打ちも…
「は!」
「おっと、まだ元気があるのか?」
気弾は簡単に弾かれる。
(クソ…やるしかないのか…悟空のように、限界以上を引き出せるのか…?
このあとのベジータ戦は…?
ちょっと…無理かもしんないけど…やらなきゃ、殺られる!)
目の前まで迫るターレス。
咄嗟に地面に気弾を打ち、砂塵に紛れて消える。
「まだ抵抗するのか?」
「うるせぇ!
ドーピング野郎に負けてたまるか!」
最早ターレスは見えなくとも慌てない。
視野が回復すると意外にも目の前にいた。
息も上がり、身体もボロボロ…
事実、ダメージだけでなく界王拳の反動がラディッツを襲っていた。
身体が軋むように痛む。
「身体は持たないだろうけど…これが最後!
五倍界王拳!」
再び燃え上がる身体、いや、赤いオーラ。
限界以上と身体は訴えるが気力で抑え込む。
「まだそんなに動「オラぁぁぁ!」
時間が無い。
なりふり構わず殴りかかった。
五倍での界王拳継続時間は、もうとっくの昔に過ぎている。
まさに、限界以上の力を今引き出している。
「いい加減にくたばれ!」
エネルギー弾も交えて反撃する。
それに追従するよう、ラディッツも気弾を交える。
二人を中心に、火花が散るように気弾が弾ける。
「ふんぬ!」
(こいつ、攻撃を!?)
ラディッツは攻撃を避けていない。
文字通り全てを攻撃に割いている。
攻撃は最大の防御、手数でターレスを圧倒する。
徐々に後手にまわされる。
むしろ、押している!
「けっ!」
爆発波で間合いを強制的に取ろうとするも…
「うぼぉろぉお!」
「何!?」
全身で受けながら突進してくる。
なりふり構わずどころの騒ぎではない。
この光景には恐怖を感じる程だ…!
(グッ…ここまで手こずるとは…神精樹の実が、はずれだったのか!?)
神精樹の実を疑えど、あれはキチンと効果があった。
最後にとっておいて正解なほど効いている。
「ラディッツ!」
「あいつ…あんなにボロボロに…」
ナッパを倒し、応援に駆けつけてきた二人。
だが、応援といえども、ナッパの何倍にも強くなっているターレスにはあまり期待出来ない。
(まさかナッパ…クソ、なんてこった!
あんな雑魚共にやられるなんて!)
敵が増えたが、勝算は消えちゃいない。
スカウターの数値では、そこまでの驚異ではなかった。
その上こちらは、神精樹の実で大幅なパワーアップをしている。
目の前のラディッツさえ倒せば問題ない。
そのラディッツには力比べに持っていけば手数も関係ない上に、スタミナはターレスに軍配が上がっている。
そこに促すための秘策は考えついた。
「くたばれぇ!」
大きめのエネルギー弾を2つ放つ。
牽制か?
なんなくラディッツはかわすが背後で爆発音がする。
「「うわぁっ!!」」
「天津飯!
ヤムチャ!
止めろ!」
「丁重にお断りする。」
ヤムチャ達が狙われていたのだ。
そして更に、大きいエネルギー弾が2つ放たれてしまった。
「クソ!」
ヤムチャ達に迫る気弾を追尾して手刀で叩き落とす。
「大丈夫!?」
「大丈夫だ。」
「へへ、悪いな」
「良かった…てめえ汚ぇぞ!」
後ろを振り向けどターレスはいない。
気を感じた、上だ!
「な…」
「あんなところに…」
「もうおしまいだ。
そこのゴミ共と…地獄に落ちな!」
これはターレスにとって、ちょっとした賭けでもあった。
両手で輪を作る。
キルドライバー…元は競走馬の名前だったがそれは今は、巨大な赤いエネルギーリングとなっている。
「避けてもいいぜ?
地球はただじゃすまねぇと思うがな。」
「クソ野郎ぉ…」
ラディッツも対抗せざるを得ない。
もっと早い段階で気づけば阻止もできたが…もうフルパワー寸前なのがわかる。
「だったらやってやろうじゃん…
曲がりなりにも、界王様んとこで修行したんだ!」
右手をこめかみまで引き上げ、中腰になる。
すべての気を右手に集め、白く輝く。
「主砲斉射…オラぁぁぁ!」
「勝った…もらったぜ!」
放たれるのを待っていたと言わんばかりに、ターレスも放つ。
膨大なエネルギーが向かっていく…
それは二人の中心でぶつかり合い、互いのエネルギーを食らいつくさんとしている。
エネルギーの勢いはそれぞれの自力を表すように、ジリジリと…ラディッツが押し込まれていく。
(賭けに乗ってきたな…
まさか、本当にあのゴミ共をかばうとはな。)
「クソッタレエエエエ!」
どんどん間近に迫ってくるエネルギーの塊。
受ければ死、避ければ地球がただでは済まないだろう。
「ヤムチャ!」
「お おう!」
ヤムチャ達もエネルギー波で応戦するが、弾かれたり飲み込まれたりでまるで役に立てていない。
「やっと終わりか、てめぇがまぬけで良かったぜ!」
「ぐ…ぐ…」
残り5m…
(生きて帰るんじゃねぇのか!?
ポンコツッ!)
身体が一段と軋む…
思考回路とは裏腹に身体が…
(身体がどうしたぁ!?
ここでやらなきゃ!)
「六倍ガイオウゲン!」
エネルギー波が津波のようにおしよせる!
キルドライバーが…留まり…押される…!
「何!?」
これでターレスは何度驚いただろう?
これでおしまいと思えば、それをことごとく裏切られる。
ラディッツより…ターレスの方がパワーは上なのに…
殺して壊して食いたいものを食って…サイヤ人のお手本のような生き様は、ラディッツの生き残りたい気持ちでは圧倒的に負けていたのだ。
勝負は決まった。
「ぐだばりやがれぇぇえ!」
キルドライバーが耐えきれずに弾け消える。
それを突き抜け、ターレスは光に包まれる…
「そんな!…俺が…!…クズ共…に……ーー」
主砲斉射は大空の彼方へ飛んでいく。
何一つ残さず…
無論、ターレスの気も消える。
「終わった…」
ラディッツは倒れ込む。
背中と後頭部にゴツンと痛みが走るが、先程までの猛攻に比べればマシだった。
そして…
「痛ててててて!」
界王拳を限界以上に引き上げ、酷使し続けた身体に代償が襲いかかる。
骨まで軋むような痛み、何をしてもしなくても、とめどなく身体中に響く。
ラディッツが覚えていたのはそこまでだった。
意識が消えた…