宇宙の果ての小さな希望
「やっと終わったー!」
ラディッツが、上がらない腕の代わりに思いきり叫ぶ。
ベジータ戦がこれで終わった。
原作通りかに見えたが、ターレスの参戦が1番の
ターレスの存在はまずは有り得ない。
彼の存在は数ある中のパラレルワールドの一つなのだから。
(ベジータ戦でこんなんじゃフリーザなんて…
しかも最後は魔人ブウ戦…
先が思いやられるな。
でもこれで腹は決まったぞ。
もうこの先手を抜くもんか。)
夕焼けに染まる空を見て決意を固める。
だが、急に視界が真っ暗になったわ。
「ぬわ!?」
腕が動かないから視界を防ぐ物も取り除けない。
よくよく見ると、山吹色の道着のようだ。
「とりあえず…それ履けよ。」
「は?
こんなサイズ履けるか。
ってか要ら…ありがとう…。」
察した。
気づいてないわけではなかったが、大猿化の時に道着は粉々になり衣服が…
「とりあえず…」
脚を使ってなんとか履こうと試みる。
うまくいかない。
そうこうしているうちに、上空に飛行機らしきものが見えてきた。
亀仙人や、ブルマ達だろう。
「ヤバヤバヤバッ!?」
こんなシーン、想定外。
ブルマやチチに見られたら…
---
『気をつけてください、履いてませんよ!』
『なんてもん見せるだッ!』
『このド変態!』
「ままま待っ」
ドゴォッ バキィッ グシャッ メキィッ ブチッ
---
(マズイ…マズ過ぎる!)
人間、非常事態になると案外体が動くものらしい。
限界で動かない体が、あっさりとキビキビと動き、あっという間に脚だけで道着の下を履いてしまう。
「悟飯ちゃ〜〜〜〜ん!!」
いの一番に飛び出して来たのはチチだ。
なんと、飛行機が着陸する前に飛び降りてしまう。
子を思う母の強さはどの世界でも変わらない。
重症の悟空をあっさりと飛び越えて、悟飯の元へ向かう。
「大丈夫だか!?
怪我してねえか!?
怖かったろ〜?」
クリリンの上の道着を羽織る悟飯を抱き抱える。
親ならわが子の事を1番に考えるのはわかるが、夫の悟空を素通りどころか、完全無視なのはいかがだろうか?
「なんとか倒したみたいね
…あれ、ヤムチャは?」
「「「……」」」
悟空も、クリリンも、ラディッツも黙り込む。
ラディッツに至っては、下を向いたまま顔すら上がらない。
「…申しわけない…ブルマさん…ヤムチャは…」
「何よ、死んじゃったの?
けど、ドラゴンボールがあるからいいじゃない!」
その一言に皆俯く。
ただ、ブルマだけは明るかった。
「何よみんな、ドラゴンボールの事忘れちゃったの!?
確かに死んじゃったのは悲しいけど、みんな生き返るのよ!?」
そう、ドラゴンボールの存在があるからだ。
これまで数多くの人物が、この不思議な球で生命を取り戻している。
そして今度も、この球で蘇らせてもらうつもりだ。
「ブルマさん…ドラゴンボールは1度生き返った者は生き返らせれないんだ。
だから餃子は生き返らない。
だけど…ピッコロが死んじまった。
ピッコロはドラゴンボールを作った神様と同じ体なんだ。
ピッコロは死ねば、神様も死ぬ。
ドラゴンボールも、消えてなくなるんだ。」
「ヤムチャはベジータに殺された訳じゃない。
殺したのは…俺だ。
…俺が殺しちまったんだ。」
ブルマの顔から笑顔が消える。
また会えると思っていた彼が…
喧嘩ばかりだったけど、何だかんだで辛い時にいてくれたヤムチャが…
いい思い出も、辛い思い出も頭を駆け巡る。
「嫌だ…嫌よそんなの!
なんとかして生き返らせられないの!?
ってか、なんであんたが殺してんのよ!!
あんたが…あんたが殺したってどうゆうことよ!!」
ブルマは泣きながらラディッツの顔面を殴る。
ラディッツにとってその1発は痛くは無いが、心に重く響く。
仲間から受ける強烈な敵意。
そして滞りなく産まれる罪悪感。
すべてに耐えきれずに、膝から崩れ落ちる。
「ごめんなさい…ごめんなさい…。」
「ブルマさん、ラディッツはベジータを倒そうとしてたんだ!
落ち着いて下さいよ!」
「ふざけんじゃないわよ!
離してよクリリン、コイツは許さないわよ!!」
その時、ずっと意識が無かった悟飯がやっと目を覚ます。
「…お母…さん?」
「悟飯ちゃ…悟飯ちゃん!」
わが子を更に強く抱きしめる母。
タイミングを見計らい、重くなっていた空気を一変させようと亀仙人が話題を切り出す。
「とりあえず、詳しい話は中で聞こう。
残っている体も回収はせねば。
皆、悟空を運ぶのを手伝ってくれんかの?」
………
「…そんな事があったのか。
…にしても、皆よく無事で戻ってきた。」
「そうですな。
天津飯、
一行はカメハウスへと向かう。
爆散してしまった餃子と、消し飛ばされたヤムチャは回収困難の為、天津飯のみボディバックに入れられ回収となった。
そして病院への移動の最中、戦いの全容を事細かくクリリンとラディッツは説明した。
3人のサイヤ人…ターレス、ナッパの撃破…悟飯、ラディッツ、ベジータの大猿化…地球の戦士達の最期…元気玉とベジータの敗走
最後まで話し終えた時には、日はすっかり落ちていた。
「…操縦変わるわ。
大丈夫、話を聞いてたら落ち着いたわよ。」
操縦を亀仙人からブルマに引き継ぐ。
最初こそ泣きじゃくり、ヤムチャを殺され憎く思っていた。
だがクリリンと悟空の説得や、これまでの話を聞いて落ち着きを取り戻した。
今となってこれが最善の手段とは言い切れないが、こうなってしまったからにはどうすることも出来ないのもまた事実…。
「えぇ!?
悟空さの兄さ!?」
「あぁ、最初は仲悪かったけど…自慢の兄ちゃんさ。」
「えぇ…ラディッツと申します。
腕が動かなくて失礼ですが…よろしくお願いします。」
「妻のチチです。
挨拶が遅れて申しないだ。
それと…このような場所での挨拶で重ね重ね申しわけないべ。」
いつの間にやら話が変わっていた。
流石、熱血教育ママと言わんばかりに丁寧にお辞儀をするチチ。
対するラディッツも腕が動かないが礼をする。
「あの…これから話す事を信じてください。
ドラゴンボールは、地球以外にもあります。」
「え?
どういう事じゃ?」
皆の意識がラディッツへと集まる。
彼自身も、この話は界王様にまかせようとしていたが…罪悪感から自分から話を切り出す。
「地球にいた神様は、ナメック星と言う星の人だったんです。
神様はナメック星にあったドラゴンボールを地球で創り出しました。
なので、地球と同じドラゴンボールがナメック星にもあるんです。」
「それは本当!?」
「…嘘じゃないと思いますよ?
ナッパって奴と戦ってた時に言ってました。
『…ふっ…ベジータが言っていたがな、ナメック星にも似たような願い球があるからな。
殺したところでどうってこともねぇよ!』と。
ラディッツの言う通りなら、ナメック星って星に行けばドラゴンボールがあるかもしれない。」
だが障害はまだ残っている。
・ナメック星まで行く乗り物の確保
・現地での生命の確保
・人員の選抜ともしもの時の自衛処置…
切り上げたらキリがない。
そもそもナメック星はどこにあるのかと言う話だ。
「それなら…あてがあるぞ。
界王様、聞いてんだろ?」
悟空が界王様を呼ぶ。
わからない人の頭上には?マークが浮かび上がるが、すぐに反応があった。
『うむ、全て聞いておったぞ?
まず言わせてくれ、皆よく頑張った!
無理かと思われたが…素晴らしかったぞ?』
みんなの心に直接語りかける界王様。
ここからは原作通り。
ナメック星の位置を聞いて、サイヤ人の乗ってきた宇宙ポッドの改造化と言う方針に決まる。
そして一同はカメハウスで天津飯を下ろした後、都の病院へと向かった……
---数日後---
とある病室…一つのベッドがギシギシとリズミカルに音を漏らしていた。
ベッドの周りはカーテンで隠されている…
滴り落ちる汗…漏れる吐息…熱くなり揺れ動くカラダ…
中で…何かが行われている…!
「3258 3259 3260 3261 3262…ハァ…」
世の中の期待したいた諸君。
残念ながら、ラディッツが腹筋をしていただけである。
彼がここに運ばれてから数日が経とうとしていた。
入院生活ではテレビはお金を消費するだけ…。
財布どころか、根本的にこの世界の通貨[ゼニー]を持っていないため、テレビなんて贅沢品だった。
病室は1人きり、飯は少ない、動かせてくれない、本を読み更ける性格でも無い。
そうなると、自ずとやれることは絞られてくる。
体がなまらないように、適度に動かす。
(クッソ~…なんで仙豆終わってんだよ。)
続きのお話の前に、またしても簡単に説明しよう-
現在ブルマを始め、多くの科学者・技術者がサイヤ人の宇宙ポッドを解析している。
それがわかるまで待機。
仙豆も生産まで少し時間がかかるようである。
-以上、作者による簡単な説明でした-
「3312…あっ。
これで、神様の宇宙船を改造するんだったっけ?
忘れてた忘れてた。」
ラディッツは、机に置いてあるパソコンに口先で入力してメモをする
フォルダの中にはたっぷりメモが残されていた。
1つ1つに各キャラクター達の性格や生い立ち…どのくらいの強さだったのか、台詞など…
とにかく、忘れているドラゴンボールの知識を残していた。
力がこの世界の生命線であれば、知識は未来の道標となる。
未来なんて一寸先は闇。
だがこのメモが…自分が持つ知識こそが、先を照らしてくれる希望の光である。
「ほぅ、
「あ、先生。
もももちろん安静にしてますよ?」
口ひげとメガネがトレードマークの担当の医師。
最初こそは筋トレが見つかって怒られたが、そこから少し仲良くなり、身体のことや健康の面について色々と教えてくれている模範的な医師であった。
「無茶をしちゃあいけないよ?
今は、しっかりと体を治すことが先だからね?」
「はい、頼りにしてますよ先生?」
「君からも、B棟の悟空さんに言っておいてくれないか?
注射をいい加減に克服してくれないかって。」
これには思わず苦笑する。
おそらく、ラディッツから言ったとしても無駄かもしれない。
それほど、悟空の注射嫌いは筋金入りなのだ。
「はは、僕の絶対安静が解けたら釘をさしときますよ。
それより、飯を増やしてくれると嬉しいです。」
「私にはそこまでの権限はないけど、お願いしとくよ。
それじゃ、また回診に来るからね。」
先生が退室したと同時に、別の男が入ってくる。
3日だけ入院し、今ではだいぶ動けるようになったクリリンだ。
「よう!
元気か?」
病状はある程度知っている為、やや皮肉った感じだ。
その証拠に、口元が嫌でもわかるようにニヤけている。
「あぁ、今すぐ逆立ちして歩けるぞ!?
…嘘。
本当に退屈だよー、変わってくれよー!」
ラディッツは愚痴りながらベッドから飛び降りる。
回診の時間は決まっている為、抜け出すのは容易い。
未だに痛む両腕を庇いながら、病室を後にする。
「悟空の部屋に行こうぜ。
今日は、武天老師様やチチさんも来るらしいぞ?」
「嬉しいねぇ、どーせあいつも筋トレしてるんだろうな。」
「まぁ、動くなって言っても無駄だろうな。」
孫悟空と書いてある個室に辿り着く。
病棟が違うにも訳がある。
ラディッツもそこそこ重症だったが、脚がぐちゃぐちゃになった悟空の方が酷かった為だ。
「2632 2633 2634…クリリンにラディッツじゃねぇか!」
「「やっぱりな。」」
脚を使わずに逆立ち腕立て伏せをしていた重症患者。
予想通り過ぎて2人は笑う。
「悟空さ!
治りが遅くなるでねぇか!」
「ラディッツよ、もう体はいいのか?」
面会を許された数々の仲間達が、すぐ後から入ってきた。
その中には、先日退院した悟飯もいた。
「だってよ、体がなまっちまうよ!」
「修行なら体が治ってでも出来るでねぇか!
義兄さを見習うだ!」
「チチさん、俺も体動かしてるから少しくらい良いんじゃないの?」
「義兄さまで!?
二人共安静にしなきゃダメだ!」
「みんな、サイヤ人の宇宙船のリモコンが解析終わったわよ!」
ブルマもやって来た。
ナメック星へ行く、唯一の船の解析が終わり意気揚々としていた。
この病室が、あっという間に人で埋まる。
テレビカードを差し込むと、ニュースでは墜落してきたサイヤ人の宇宙ポッドの特集を、丁度やっていたところであった。
(確か…ここで宇宙ポッド爆発するんだよな?)
「それじゃぁ、動かすわよ!?」
ブルマがリモコンのボタンを押す瞬間…。
「…ぶえっくしょい!」
バキィ!
「…あ。」
「あんたは何してんのよぉ!?」
「アッー!」
傷口に鋭い一撃が入り、病棟中に悲鳴が響いたのは言うまでもない。
………
「おい 誰かついてこい。
宇宙船 ある。」
「うわっ!?」
「あっ、ミスター・ポポ!」
窓枠の外に現れたのはミスター・ポポだ。
彼の仕事は、主に神様の付き人。
2つ先代の地球の神様に代わり、神殿の管理や地球全体に関する全てに関わる。
…言わば、実質的な神殿の管理者である。
その者が一体下界に何の用があって降りてきたのであろうか?
それは非常に簡単なこと。
ピッコロが死んだことにより、神様もこの世から姿を消してしまった。
ナメック星のドラゴンボールで、蘇らそうと計画している地球の戦士達に協力しようとしているのだ。
「あ、あのさぁ…その宇宙船ってどんなの?」
「それを見てほしい。
神様が 乗ってきた宇宙船。
だけどミスター・ポポ 機械 よくわからない。
だから分かる人 来てほしい。
ミスター・ポポ 案内する。」
「宇宙船って言ったら…ブルマさんしか…」
「えぇ!?
わたし!?」
だがよくまわりを見てほしい。
脳まで筋肉で出来てそうなサイヤ人2人。
頭はいいが子供。
割とまともだが平凡なハゲ。
エロ仙人。
熱血教育ママ。
元フライパン山魔王。
猫みたいな仙人。
デブ侍。
…誰一人として機械に詳しそうな者がいないのだ。
必然的に、ブルマが行くしかない。
「し しょうがないわね…行くわよ!
もうちょっと絨毯こっちに寄せなさいよ。
この高さからレディが落ちたらどうす」
ブルマが絨毯に乗ったと同時に、ミスター・ポポ達は消えた。
ミスター・ポポの絨毯には、瞬間移動機能が付いてることはおわかりだろう。
「宇宙船ね…そんなもん本当にあるのかよ?」
ヤジロベーが口をとがらせる。
そう、普通ならそんな都合よく宇宙船が落ちているわけがない。
しかも今回は、ブルマの父であり地球上でもっとも偉大な発明家のブリーフ博士の発明した宇宙船を凌駕するほどのスペックが必要だ。
「オンザヘッド高地…だったかな?
そこにあるらしいぞ?」
「オンザヘッド高地?
…もしかしてユンザビット高地の事かの?
もしそうなら、地球の果てにある辺境の地じゃが…まさかそんなところにあるのか!?」
カリン様の細い眼が、さらに細くなる。
猫仙であるカリン様でさえ詳しく知らない未開の地。
そこに宇宙船があるというのか?
………
「あったわよ宇宙船!
これなら少し手を加えるだけで、ナメック星までひとっ飛びだわ!!」
数分後には、目を輝かせながら概要を説明するブルマがいた。
どうやら宇宙船の機能は十分生きており、言語の再設定や、劣化した部品の交換、再開発を行えばすぐに出発出来るようだ。
事細かく説明しながら目が輝く所は、さすが発明王の血を引いているといえよう。
「後は…ナメック星に行く人なんだけど、2人か3人程乗れるわね。」
ブルマはミスター・ポポを見るも、神殿の管理で断られる。
それもそうだ、神がいない今神殿を留守にして何ヶ月も地球を離れるわけにはいかない。
不測の事態が起きた時は、神ではなくミスター・ポポが対処しなければならない。
そうなると消去法だと、まだまともなクリリンが第一候補。
次点で誰にしようかとした時に悟飯が名乗り出る。
自らの師、ピッコロを生き返らせる為に並々ならぬ決意を持っている。
「何言ってるだ!
オラ絶対許さねぇぞ!?」
それをチチが猛反論。
同学年と1年も勉強が遅れてる焦りもあり、絶対に譲らない。
チチの剣幕に皆黙り込んでしまう。
育て方はその家庭それぞれであり、チチの教育方針にまで口を出すことが出来ない。
…と言うか、口出ししたら猛反論されるに違いない事を皆知っている為に何も言わなかった。
「うるさーい!!」
悟飯は生まれて初めて母親に抵抗した。
思わずチチは絶句し我が子は不良になってしまったかと憂う。
悟空は息子の思わぬ成長に、ニッコリとした。
戦闘面からではなく、父 孫悟空として息子の成長を見てのことだ。
魂が抜けかかっているチチを全員で説得して、なんとかナメック星行きのメンバーに選ばれた。
これで原作通りにメンバーが決まったのだが、ゴソゴソと動き出す者がいた…。