「まぁ、この仙豆はもう要らんだろ。」
話がまとまりかけた時、ふとヤジロベーが言葉を漏らす。
その手にあるのは緑の豆、仙豆だ。
「何!?」
気づいた頃には指で弾かれ、宙を舞う仙豆。
万有引力の法則に基づいて落下を始め、大口を開けたヤジロベーの口に吸い込まれる。
「ちょっ待!」
大きなヤジロベーの体にタックル。
力の加減無く押した為、ヤジロベーはミスター・ポポの横をかすめて窓から飛び出した。
幸いにも、仙豆は食べられなかった為、床に落ちる。
ヤジロベーは窓の縁にしがみつき、地面に落ちずに済む。
「おみゃあは殺す気か!?」
「仙豆を食うんじゃねぇ!
なんで最初に言わなかったんだ!」
1粒の仙豆は、10日間飲まず食わずでも平気な程のエネルギーを持っている。
ひどい怪我をしている者に食べさせれば、外傷なら全て治してしまう程のエネルギー量だ。
メタボリックな腹の足しにさせるなんて、もったいないにも程がある。
年間7粒の生産が限界な為に、無駄遣いは許されない。
その1粒をカリン様は拾い上げる。
クリリンはヤジロベーを引き上げる。
「…やはりヤジロベーに持たせてはいかんの。」
「いえいえ、カリン様。
とにかくこれが無事なら、何よりですよ。」
「良かったの。
これで、悟空かラディッツが復活出来る。」
問題は、どちらが復活するかだ。
カリン様言わく、もう少しでまた仙豆が出来るそうだ。
早く食べれるか、遅く食べるかだけらしいが。
「悟空、俺に食わせてくれ!」
ラディッツが頭を下げる。
だが、早く復活したいのは悟空も同じ…
答える悟空も言葉を濁す。
「俺は…ヤムチャと天津飯を殺した。
例え理性を失って仕方が無いって言っても、殺したのは俺だ。
責任を取らないといけないし…。いち早く生き返らせたいんだ
頼む悟空、お願いします!」
「オラも早く行きてぇけど……
わかった、食ってくれ。」
カリン様は、ラディッツに仙豆を放り込んだ。
包帯やギブスだらけで、未だに痛みが取れなかった腕がやんわりと暖かくなり、気づく頃には元の感覚に戻っていた。
その他にも、至る所に出来ていた擦り傷、切り傷も全て完治。
10日間も腹が持つ程のエネルギーが、全て肉体へと注ぎこまれた。
やはり仙豆の力は偉大である。
「おぉ、治ったぞ!
ありがとう悟空、カリン様。」
「悟飯やクリリンの事、頼むぞ?」
「ちぇっ、壷の近くに落ちていたのを見つけたのは俺なのによ。」
ヤジロベーはまたしても口を尖らせる。
そんなこんなでナメック星行きのメンバーには、原作メンバー+ラディッツが混じる事となった。
余談ではあるが、お世話になった例の医師から精密検査がたくさん用意され、『こんな事ありえないんだが…不思議だ。』と驚愕していたが、翌日の午前中には退院できたそうだ。
---西の都---
「これがドラゴンボールの世界か…」
ラディッツは開いた口がふさがらない。
街中には、動物の顔をした人間が入り混じって歩いている。
上を見ればチューブの中を列車や車が走る。
スカイカーと呼ばれる車は自由に空を飛び、建物も元の地球にあるようなものから奇想天外なビルや建物まで…
どこか元の日本の都会のようでありながら、近未来な世界でもある。
「カプセルコーポレーション…見つかるのかな?」
話はラディッツがカプセルコーポレーションへ向かう前に遡る。
入院費の支払いの話の時に、一文無しのラディッツに手を差し伸べたのが他ならぬブルマだったからだ。
『私の恋人を殺した挙句に入院費まで出してあげるんだから、宇宙船の改造を手伝いなさいよ!
それと必ずヤムチャを生き返らせなさい!
もし約束を破ったら…』
これで逃げたら本当に殺されかねないと思い、ラディッツは退院後から直接カプセルコーポレーションへと向かっている。
(…そういえばどこにあるのかも、どうゆう建物か聞くのを忘れたな。
まぁ有名な会社だし、そこら辺の人に聞くしか「てめぇどこ見て歩いてんだ!」
「あぁ!?
当たって来たのはそっちだろーが!」
うしろを見ると、金髪の女性と帽子を被った金髪の女性が女性とは思えない口調で喧嘩し始めた。
(ヤンキーか…
面倒だしさっさと。)
チラ見して関わらないように、足早に歩き始める。
「んだとテメェ!
ぶっ殺されたくねぇなら地面にツラ擦りつけやがれ、貧乳クソババア!」
ドドド!!
「っ!?」
平穏な都会に響く銃声。
先程の女性が空に向かってGlock 18cを乱射する。
思わずラディッツは振り返る。
よくよく思い返せば聞いたことある声…ラディッツは大急ぎで道を引き返す。
「誰がクソババアか言ってみやがれこのアバズレェ!」
帽子の女性が動くと共に、銃を持つ女性が乱射。
帽子が蜂の巣になるが、銃を蹴り上げる。
空いた腕を掴んで道路に投げ飛ばす女性。
その目の前にはトラックが。
「痛ってぇな!
おい、てめぇ…」
トラックのフロント部分はぐしゃぐしゃになってしまった。
女性を守るように覆いかぶさったラディッツ。
「街中で発砲はダメですよランチさん!」
金髪の女性は、天津飯を追っかけて消えてしまったランチだった。
二重人格ゆえに、今は凶暴で情に熱い性格である。
「お おい!?
お兄さん…お兄さん!
き 救急車!」
「大丈夫ですよ!
トラックは二回目なんで。」
「…は?
兄ちゃんやっぱり病院行ったほうがいいぞ」
その時、パトカーのサイレンの音が聞こえる。
途端にランチの血相が変わった。
彼女はこれまで殺人、強盗、恐喝、窃盗、詐欺、暴行、密輸、誘拐、放火などなど多数の犯罪を行ってきた為、指名手配中なのだ。
警察にはかなり敏感になっている
空のマガジンを投げ捨て、ドラムマガジンを取り出す。
「誰か車かバイクうおぉっ!」
ラディッツがランチを抱えて飛び上がる。
帽子の女性も、周りの人も指をさして驚いていたが、あっという間にビルの陰で見えなくなった。
………
「…悪かったな…助けてくれて。
ホントに…体大丈夫かよ。」
「え?
いいよいいよ、僕は死にませんから。」
人通りのない裏路地へと降り立ち、再び歩き出す2人。
予備のマガジンを入れ、再び懐にしまい込んだ。
凶暴化したランチさんに下手な言動や行動は慎まなければならない。
ラディッツは本当に軽く冗談交じりで答えるが、下手したら体に弾薬の雨を受ける可能性だってある。
「…せっかくだからなんか奢ってやるよ。
何か食いたいものあるか?」
「いやいや、食事よりカプセルコーポレーションへ行きたいんだ。
ブルマさんとこの。
ランチさん知ってる!?」
「カプセルコーポレーション?
んなもんすぐ近くにあるぜ。
…ってかなんで俺の名前知ってんだ?」
「ブルマさんに聞いたんだよ。
結構可愛いって聞いたよ?」
「ば ばかやろう!!
だ 黙ってついて来い!」
偶然か…運の強さか…?
顔をほのかに紅潮させるランチに、カプセルコーポレーションまで案内をしてもらえることになった
数分で会社前のゲート付近まで着いたのだが、すでにサイヤ人の宇宙船の最新情報を求める報道陣で一杯だ。
だがお構いなしに、マイクロUZIを乱射してゲートまで道が開く。
「ブルマ!
俺だ、ゲート開けてくれ。」
インターホンを切るとすぐに、リムジン型スカイカーが到着し中へと入る事が出来た。
まさに、ランチ様様である。
(この人ある意味、地球最強じゃないか…?)
赤ワインのボトルを2本空にする女性と、病み上がりの男性はカプセルコーポレーション本社にたどり着いた。
ここで判明したのは、先程までラディッツがうろついていた所と本社の位置がほぼ一緒だった事である。
正確には、外周を歩いていたことになる。
「あっ、ブルマさんだ。」
玄関にはブルマが仁王立ちしている。
彼女は、特別怒って出てきたわけではない。
近隣で発砲事件が起きた為、身を案じて出てきたのである。
「久しぶりね、ランチさん
そこのバカをここまでありがとう。」
「…それは酷くないですか!?」
「そ そうだ!
そんなに…言う事じゃねぇ。」
またしても顔を紅潮させるランチ。
最近のアニメや漫画の男どもは全くもって超鈍感な奴しかいないが…ラディッツは感づいていた。
(まさか…ランチさん俺「あぁ!!
さっきのアバズレ!」
「んだと貧乳クソババア!」
本社の玄関からものすごい勢いでダッシュしてくる女性…さっきの帽子を被った金髪の女性ではないか!
これにランチも応戦するかのように走り出し、マイクロUZIとG18Cの機関拳銃2丁を両手に持つ。
戦争が…始まってしまう。
「ランチさん、ストップ!」
ラディッツはランチを捕まえる。
ジタバタするも、意外とすんなりおとなしくなる。
ブルマも、もう一人の女性の制止に入る。
「ちょっとやめてよ!
姉さんもいい歳でしょ!」
「「姉さん!?」」
………
「私の姉さん、タイツよ。」
(ちょっと待て!
ブルマに姉さんなんていないだろ!!)
テラスで仲直りティータイムとしゃれ込む彼女達とラディッツ。
ランチもタイツもブルマに促され、『さっきは悪かったわね(な)。』とやや不満げに謝る。
そんな中、あまり好きでない紅茶を一気飲みして自らのメモ帳と思考回路をフル稼働する男が一人。
(タイツタイツタイツタイツタイツ…そんなキャラなんかおらんぞ?
え?
下着シリーズでブルマのお姉さんで?
なんだそれ、わかんねぇ。
忘れてただけ?
ブリーフ博士でしょ、パンチーでしょ、ブルマでしょ、黒いネコちゃんでしょ…
えぇ…新キャラ?
俺が来たせいで、原作+劇場版どころか新キャラまで出て来てしまったのか…!?
とと 取り合えず知らなければ…)
「タイツさんって…何やってるんです?
ブルマさんみたいなメカとかいじる方ですか?」
「あたしは今SF小説書いてんのよ。
ま、ネタ切れで困ってたから実家に戻って来たんだけど…まさかブルマの知り合いだとはねー。」
手掛かりを掴もうとしたが、謎は深まるばかり。
あまりに考えすぎて頭が痛くなって来た。
この謎のタイツと言う女性、この先どう関わってくるのか。
敵ではないと思うが…わからないのは不安である。
「さてと、さぁ、あんたには奴隷のように働いてもらうわよ!」
その前に、自分の自らの心配をした方がいいかもしれないが…
その日からは、住み込みで働くことになったラディッツ。
何故かランチも顔を紅くして、『お 俺もほとぼりが冷めるまでかくまってくれよ!』と住み込むことになった。
宇宙船の製作にあたっては、河田自身が工業高校出身の為、切削から溶接までの要所は何とかこなせた。
更には持ち前の肉体を活かして重労働を難なくこなす。
10人がかり、もしくは機械を使わなければ運搬できない物も、彼に頼めば片手でスキップしながら運搬してくれている。
そのような作業もあるが、一番はブルマとブリーフ博士の補佐が主となっている。
天才発明家のブリーフ博士とその血を濃く受け継いでいるブルマの2トップの補佐だ。
「ほぅほぅ、凄い技術じゃ。
…ほぉ~こうするとこうなるのか~。」
「感心して見てないで、手動かしてよ!」
…2トップと言うか、実際にはブルマが全部仕切っている様なものだ。
物事を転換したり、結合したり、置き換えてみたり、代用してみたり…
その飽くなき探求心と好奇心が無ければ、才ある物など作れなかったであろう。
今回の、地球の神とサイヤ人の宇宙船は、地球の科学の発展に繋がるものとなるだろう。
ブリーフ博士の好奇心も一層くすぐられる代物だ。
さらにラディッツは、それを逆手にとってこんなものの提案をしてみることに。
「博士博士、いいアイデアが浮かんだんですけど。」
「アイデア?
なんじゃ?」
「重力が変化する部屋って作れませんか?
星って色々あるじゃないですか、軽い星だったり重い星だったり…
それがあれば、生体が超重力でどうなるかとか考えたんですけど。
それと船内でも地球と同じように過ごせますし…
それと長期睡眠装置。
それがあれば、寝てる間にあっという間に着けますよ。」
「重力コントロール装置と長期睡眠装置か、面白いのぅ!
早速作ってみるか!」
自分が面白そうと思った事は、昼夜を問わずにすぐさま取りかかってしまう。
そのおかげでブルマの仕事量は倍以上になり、その負荷がラディッツにも重くのしかかる事となるのは簡単に想像が出来るだろう…
こうして、二つの宇宙船の技術が詰まった船が新造された。
スペースシャトルを思わせる形で、居住スペースがかなり確保されている。
胴体後部には重力コントロール室も用意され、ブリーフ博士渾身のステレオセット内臓のオプションも付けられた。
早くも博士は2号目の製作に着手していた。
最終テストとカメハウスへの運搬の空いた時間を使い、ラディッツとブルマは宇宙飛行士の訓練を受けていた。
宇宙は雄大な空間であるが、そのほとんどがダークマタ―で、謎に包まれた空間である。
何が起きても自分達で対処しなければならない為、知識から技能を徹底的に叩きこまなければならない。
「クリリンもやっとけ!
宇宙で無知は危険すぎるぞ!(クソ、お勉強会にこいつも道連れにしてやる!)」
「えぇ!?
勉強、ダメだからパス!(俺を巻き込むなー!)」
「こうなったら仕方が無い…!」
講義の途中で、トイレから外へ抜け出し、強引にクリリンを連行したのはどうやら正解だったようだ。
日に日に悪化していくブルマの機嫌は、やや上方修正された。
---出発の日 カメハウス---
「これがスペースシャッターと言うやつか。
なかなか大きいのぅ。」
「亀じいさん、スペースシャトルよ。
壊さないでね!
壊したら100億ゼニ―だから。」
具体的な値段を言い放つ。
亀仙人は手をひっこめ、落書き用のマジックペンをポケットにしまいこんだ。
すでにシャトルには必要な物資と食糧、それと各自で用意したものが積み込まれている。
残るは…悟飯が来るのを待つだけだ。
数分後には、海面スレスレを走行して来るオープンカータイプのスカイカーが見えてきた。
後ろから牛魔王が降り、運転席からはチチが降り、助手席からは悟飯が降りる。
ここまで問題はなかったが、悟飯の服装に問題があった。
宇宙飛行士と言うものは、発射や着陸の際にもの凄い重力が体に襲いかかる。
それを少しでも軽減させる為に、対Gスーツを着る必要がある。
ブルマを筆頭に、クリリンやラディッツもそれを着ている。
だが悟飯はかしこまった服装をしている。
どうやらチチが、[宇宙人に会っても恥ずかしくない格好]をさせたようだ。
悟飯にとっちゃあ今が恥ずかしいのも知らずに…
「…とりあえず、行きますか。
言語プログラムにより搭乗口が開き、ラッタルが出現する。
シャトルは立てられているため、一人一人がラッタルを上がり、シャトル中腹辺りから搭乗する。
座席へ着くと、ハーネスを固定し、補助動力装置にて機体の電源を立ち上げる。
コックピットに埋め込まれた、多機能ディスプレイに表示された各種項目を確認していく。
「第一、第二、第三
「ターボポンプ正常稼働。
液体酸素、液体窒素、供給開始。
カプセルコーポレーション打ち明け施設へ秒読み引継。
オートシークエンス、スタート。」
「アイマム。
オートシークエンス、スタート。」
打ち上げカウントをカプセルコーポレーション本社にある打ち上げ施設へと引き継ぎ、最終チェックを受ける。
地上点検を行う最後の作業だ。
ここで機体や計器などに異常があれば打ち上げ中止となる。
幸い問題はなく、打ち上げカウントに入る。
『アウル01、シーター160でアプローチ中のスペースシャトルに注意。
オールグリーン…打ち上げを許可する。
カウントスタンバイ。
10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…0。』
カウントの終了と同時に三つのエンジンが咆哮と炎を上げる。
1.5G…2G…3.5G…凄まじい加速度にブルマは耐える。
他のみんなは…余裕の表情だ。
悟飯は耐Gスーツすら着ていないのに、平然としている。
発射から間もなく、6分が経とうとしていた。
「ふぅ…もうベルト外していいわよ。」
「へぇ…宇宙って案外静かなんですね。」
「言われてみればそうだな。
後は定期的に航路をチェックして行くだけだし、部屋着に着替えますか。」
船内はとても静かでありながら、地上とほぼ同じ行動が出来る。
宇宙空間は重力が存在しないのだが、重量コントロール装置のお陰で地上と同じくらいの重力を保っている。
「さて、後はナメック星までやること無いし…
ここんとこ、ほぼ徹夜だったから寝るわ。」
「イエス、マム!
おやすみなさい。」
ブルマは宇宙服のまま用意された個室に入る。
ちなみに、男3人には個室は用意されていない。
男女格差と叫んでも、宇宙空間に追い出されたくなかった為、男共は何も言わなかった。
理由はそれだけではない。
「それじゃぁ…俺達もやるぞ。」
もう一つ用意された部屋に入る3人。
いよいよ彼らは、舞台は更なるステージへと移っていく…