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「ふざけるな!
そんな簡単にみんな死ぬわけないだろ!」
ラディッツは激昴していた。
マンガの中では最強だった、Z戦士達がこうも簡単にやられるはずが無い。
だが生存者の気をどれだけ探そうも全く反応がない人ばかりである。
葛藤...そしてこれからの戦略について何も出てこない苛立ち...新たな人造人間に対しての懸念。
原作からの大きな逸脱による不安や動揺も入り交じる。
そして何よりも、大切な仲間達が殺された怒り。
「...俺も気絶させられたので...信じられません。
ですけど、現に父さんを始め「何で気絶してたんだ!
...くそォ...すまん...トランクス。」
どんなに悔やんでも、それをトランクスに当てることは出来ない。
彼自身も、このタイミングで心臓病が出てこなければ対処できた事。
体調が急変したのも大体原因はわかっていた。
だからこそ腑に落ちない点がまだあった。
(何でだ!?
何故あのタイミングで俺に心臓病が出た?
心臓病は悟空だけだったはずだ。
そんでもって人造人間14・15号?
また俺の知らねぇ奴らだ!)
よく良く考えれば、河野がラディッツになって原作を超えるハードモードの物語になっている。
サイヤ人来襲時はターレス。
ナメック星ではクウラ機甲戦隊とクウラ。
人造人間編ではコルドこそ倒したものの、新たな人造人間14・15号。
(...まさか...まさか時代が、歴史が元に戻ろうとしたが為の強敵か?
俺は本当はいちゃいけない人間だから?
...俺が消えてしまえば...こんな無茶苦茶な事は無くなるのか?)
「目が覚めたか?」
武天老師がノックもせずに入ってくる。
恐らく意識が戻ったのを気で感じ取ったのだろう。
いつもはコミカルなのだが、事態が事態だけにサングラスの奥に険しい表情を浮かべている。
「全滅だけは避けられたか。
人造人間とやら...恐ろしい奴らじゃ。」
「とにかくラディッツさん、悟空さんと悟飯さんの様子を見に行きましょう。
ラディッツさんが目を覚ましたのなら、悟空さんも意識が戻るかもしれません。」
迫り来る人造人間達から逃れるために、孫一家は天界に避難していた。
最初は自宅で療養していたが、人造人間の狙いは全員孫悟空抹殺という事なので天界の一室に療養させていた。
その一家がいるとされてる部屋に入る。
「義兄さ、もう身体はいいんだか?」
「はい、薬のおかげで何とか...。」
チチの目は完全に赤く腫れ上がっていた。
平静を装っているようだが、最愛の夫は病に倒れ意識不明。
息子は無事ではあるが、片腕を失った状態での帰還。
夫と息子がこのような状態にも関わらずいつもと同じ様に振る舞うチチの姿は、ほんのりと、そして静かに母親の強さを表していた。
「義兄さ...オラの悟飯ちゃんをこんな目に遭わせた奴はどこのなんて奴だべか?」
「人造人間14,15号だそうです。
俺も詳しいことがわか「許さねぇだ...オラの悟飯ちゃんを...よくも!」
鬼の形相で駆け出し、天界から飛び降りていく。
大慌てでラディッツも飛び出し、空中でキャッチして天界へ連れ戻す。
がっちりと掴まれる腕を何とかして解こうとするも、びくともしないのでポカポカと腕を叩き始めた。
「何するだ!
オラが悟飯ちゃんや悟空さの敵をとるだべ!
離すだ、悟空さや悟飯ちゃんがやられて悔しくないんだか!?」
「悔しいですよ!
今すぐにでもぶっ壊しに行きたいぐらい...ですが、今の人造人間は悟空より強い。
そいつが6人もいるんです。
ベジータ、ピッコロ、ヤムチャ、天津飯、餃子...みんな死んでしまった様なんです。
生き返らそうにも、ドラゴンボールも無くなってしまった。
今いる人達がクソ強くならなきゃどうにもならないから、今すぐにやっつけれないんです。」
「ドラゴンボールだったら、この前行ったナメック星にでも行けばいいでねぇか!」
ハッとした。
そう、まさに今気づいた。
ナメック星のドラゴンボールなら、死因が寿命以外なら何度でも生き返られるのだ!
チチを抱えて全力で天界に戻り、急いでブルマに呼び掛ける。
「どうしたのラディッツ、あんた顔が真っ青よ。」
「ブルマ、今すぐ宇宙船を作ってくれ!
ナメック星のドラゴンボールを使ってみんなを生き返らせる!」
『待て待て待て!
今お前さん達が行っても、そこにはもう何も無いぞ。』
「界王様!?」
突如心に響く界王様の声。
その界王様曰く、ナメック星は爆発により跡形もなく消え去ったが、母星と似たような環境の星へ移住し、そこを新ナメック星と名付けて復興を始めた。
だから前のデータを元に向かっても見当はずれだと言うのだ。
「なら界王様、協力してもらえますか?
他のみんなを生き返らせるために、ナメック星の人たちとコンタクトを取りたいんです。」
『わかった、そのままナメック星の最長老と繋ぐ。
少し待っとくれ。
よし、いいぞ?』
今度は新ナメック星の最長老と話し始める。
...と言っても、前のムーリ長老だから面識が無い訳では無い。
『久しぶりですな。
まずは以前世話になった礼を言わせてください。
私達がこの新たな地へ来る時、あなたはいませんでしたからな。
...何かよろしく無い事が?』
「はい。
新たな敵に仲間が何人も殺されました。
もう一度ナメック星のドラゴンボールを今すぐ使わせてはいただけませんか?」
『それが...出来ないのです。』
予想外の答えが返ってきて、ラディッツはしばらく固まる。
正直言うと、ナメック星人達を救った自分達の頼みなら少しは聞いてくれるかと思っていた。
こんなアッサリ突っぱねられるとは...いや、拒絶では無く出来ないと言った。
「出来ないんですか?
出来ることなら何でもしますからお願いします、どうしても!」
『私達がこの新ナメック星にたどり着いた時に、ドラゴンボールはまた飛び散ってしまったのです。
まだ探してはいませんが、探すとなると時間が掛かります。
前のナメック星よりも広大な星なので...どれほど掛かるかも...。』
頼みの綱が解けて消えていく。
やる事はもう決まった。
ドラゴンボールが使えない今何をすべきかはわかっていた。
最後に最長老と界王様に礼を言い、ブルマには宇宙船は無かったことにしてくれと力なく言い落とす。
ラディッツは天界のある人物の元へ向かう。
この地球の神...正確に言えば将来地球の神となる人物 デンデ。
そして付き人のミスターポポだ。
「どうしました?」
「ポポ 呼ばれた意味 よく分からない。」
「二人に今すぐやって欲しい事がある。
精神と時の部屋、あれを今すぐパワーアップしてくれ。
四人いっぺんに入れるように。」
「すぐ 出来ない。
神様が作った部屋 簡単に変え「頼むから今すぐやってくれ!
俺達にはもう手段がないんだ!」
切羽詰まった様子に、デンデとミスターポポはすぐさま行動に移す。
次に彼が向かったのは、悟空と悟飯の部屋だ。
ノックもせずに部屋へ入り、意識不明の悟空を強引に引っぱたいて起こそうとする。
当然の如く、チチの怒号が飛ぶがお構い無しに起こし続ける。
「ぅ...ーん...やめてくれよ。
ラディッツ...ラディッツか?」
「起きたか悟空、悟飯も起きろ。」
悟飯は声をかけると、割と早めに目を覚ます。
それを見届けると今度はクリリンとトランクスを呼び出す。
何事かとブルマやチチ、武天老師達まで付いてくる。
全員が揃ったところで、ようやくラディッツは口を開いた。
「今から状況をみんなに説明する。
大事な話だ、よく聞いてくれ。
今ここにいる5人が人造人間との戦いで生き残った奴だ。
他は...死んだ、当然ドラゴンボールも使えない。
ナメック星のドラゴンボールは使えるかと思ったが、まだ揃っていない。
ドラゴンレーダーを使いたいが、ナメック星まで行ってるうちに地球の人間が絶滅させられる懸念があるし、新たな敵が現れる可能性が高い。
...簡単に言う、今からクリリンを除く4人が精神と時の部屋に入り、一年修行する。」
絶句。
誰も何も言う事はなかった。
彼らが思っていた以上に自体は深刻だった。
しかも、クリリンは戦力外と告げられたようなものである。
「はは...やっぱり俺は、お前達にはついていけないよな。」
「それは違う。
クリリンだけにしか出来ない事がある。
人造人間17,18号を守って欲しい。
特に女の子の18号の方だ。
彼女の生存は今後鍵となる、俺はコイツらを鍛え上げないといけないし、悟飯はまだ未熟。
トランクスは未来で色々あったし、悟空だと全員束になられて殺されかねない。
これはクリリンにしか頼めん。
人造人間だろうが女の子...例えクリリンがそいつより弱くたって、女を守るのが男の使命だろう?」
未来の妻である18号との接触が無かったことは露知れず、クリリンへ人造人間の護衛を言い渡す。
...おそらく、その頼みは叶えられないと思いながらも。
男の使命と言われ、渋々ながらも引き受ける。
「たまに俺が精神と時の部屋から出てくるから、何かあったらその時に言ってくれ。
次は俺達だ。
俺達は人造人間達を遥かに凌駕する力を手に入れなければならない。
人造人間に対抗じゃない、圧倒的に優位に立てるほどの強さだ。」
もちろん、これは今後現れるだろうセルの為の布石である。
敢えて今は言わないで何故なら得体の知れない人造人間が出てきているからだ。
まずはその二人をぶっ壊す程の強さを得なければ話にならない。
「悟空、トランクス、俺は超サイヤ人になれる。
だから今回はその先...超サイヤ人を超えた超サイヤ人...超サイヤ人2の領域を目指す。
詳しくは中で話す。
悟飯、お前は片腕がなくてもまともに戦えるようになる事と超サイヤ人になる事を同時にこなしてもらう。
キツイがお前はそれをやらなきゃならん。」
「ちょっと待つだ!
今の話を聞いてれば、悟飯ちゃんもまた訳の分からん戦いに巻き込むつもりだべか!?
冗談じゃねぇだ!
これ以上悟飯ちゃんの身に何かあったらどうするだ!!」
ことごとく進む話に待ったがかかる。
教育ママのチチがラディッツに詰め寄る。
「まぁまぁいいじゃねぇか。」と悟空も懸命にフォローするが、今度はその悟空に矛先が向けられる始末。
二人揃って説教が始まるかと思ったが、彼の言葉で事態は収まる。
「お母さん、今のまま僕が逃げたらダメだと思う。
人造人間がいれば、トランクスさんの世界のように悲惨な未来になってしまうかもしれない。
そうなれば夢どころじゃないんだ。
勉強は頑張ってやればいつでも学者さんになれる。
だけど、人造人間は今倒さなきゃずっと怯えて生きていかなきゃいけない。」
「俺も悟飯さんの意見に同感です。
俺の世界では、人造人間と戦い続けたことによりずっと戦い漬けの日々でした。
未来では救えなかった...同じ様にはさせたくないんです。
俺からもお願いします!」
「だが!........そんなに言うなら仕方ねぇべ。
悟飯ちゃん、悟空さ、義兄さ、トランクス!
強くなるからには、人造人間なんか目じゃねえ程強くなるだぞ!?
それが終わったら、きちんと勉強するだ!
わかっただか!?」
「「「「は はい!」」」」
あまりの怒気に反論する言葉を飲み込む一同。
ミスターポポとデンデによれば、精神と時の部屋の改修は30分程で済むらしい。
デンデ曰く、「立て直すとなれば相当掛かったでしょうが、人数制限の拡大程度なら。」というとの事。
その時間を使って腹ごしらえをする事になった。
最後の晩餐...そう誰しもが頭をよぎる中、この男だけは違った。
「
「悟空、いただきます言ってから食え。」
全くもって能天気な主人公。
飯と戦いは別物とでも言い表すかのような食いっぷり。
その食いっぷりに一番呆気に取られていたのはトランクスだった。
「ラディッツさん...悟空さんっていつもあんな感じなんですか?」
「基本的にあんな感じ以外な時はないよ。
トランクスも食っておけよ、腹が減っては戦は出来ん。」
そう言い目の前の小籠包を三個まとめて口に入れ飯を掻っ込む。
悟飯も何も言わずに黙々と飯を食いまくっている。
あれだけ意気消沈しようも、食欲だけはまるで落ちていないようだ。
「あんたも一生懸命食べなさい!
食べないと力出ないわよ!」
「は はぁ。」
「もっとしっかり食べなきゃベジータが泣くわよ!
...いや、泣くんじゃなくて『俺の息子なら、孫君に食欲であろうとも負けるな!』ってキレるわね。
とにかく、あんたもサイヤ人の血を継いでるんだから強くなって帰ってきなさい。
もちろん強くなるなら、飛びっっっきり強くなるのよ!」
何食わぬ顔して料理を持ってくる過去の世界の母 ブルマ。
どんな状況になろうとも、やはり母はあっけらかんとしていた。
そのあっけらかんとした性格が、ピンチの時にはとても心強い心の柱となる。
今トランクスの心の支柱がまた増えた。
「母さん、俺...絶対強くなって帰ってきます!」
.......
.....
...
「ここが...精神と時の部屋...。」
「そうだ。」
「久しぶりだなー、オラ前は一ヶ月も経たねぇでギブアップしたんだけどな。」
「お父さんすら一ヶ月も...。」
ミスターポポとデンデのおかげで、すぐに精神と時の部屋に入ることが出来た。
見渡す限り何も無い、ただただ白い地上が広がる空間。
精神と時の部屋...まさに異空間と言えよう。
こんなにも不思議な空間は、悟空と漫画で少し見覚えのあるラディッツにしかわからなかった。
広大すぎて広所恐怖症にでもなりそうな感覚を少しばかり味わう。
「ここ 精神と時の部屋。
48時間 しっかり守れ。
でないとみんな 出られなくなる。」
「出られなくなる...ですか。」
「この入口が無くなるって事だ。」
ミスターポポは二、三度頷く。
そんな彼は扉の外で眺めていた。
元はと言えば、神の選抜兼修行場として創られた空間を用定員4名のルール、それを破ればどうなるか分からない。
皆の成長を祈ると伝え、彼は部屋を後にした。
扉を閉めた途端、この場の時空は歪んで進む...。
簡易的な寝床とシャワートイレ、そして凄まじい量の業務用小麦粉袋っぽいやつ。
デンデ曰く、水と練って食べるそうだ。
その簡易的生活施設から一歩外へ踏み出すと、環境が激変する。
まず酸素濃度が異様に薄い。
通常の人間では数時間で酸欠死してしまうかと思われるぐらいの薄さ...何もしていなくても息切れを起こす。
次に超重力。
常に10Gの重力がかかっている。
惑星べジータや界王星と同じ重力のため、生粋のサイヤ人や彼らのように凄まじい修行をしている人物には問題ないが、一般人なら到底動くこともままならない。
更に気温。
まるでサウナかと思うような高温多湿な空気。
一説によれば、最大50℃~最低マイナス40℃...大体の生命体が順応出来そうな環境では無い。
飯も環境も景観も無い中で一年修行に明け暮れる...1人なら確かに気がおかしくなるだろう。
「無理だと思えばすぐに出ていけ。
ただしトランクス、未来の景色とここ...どちらの方がましだ?」
「...ここも相当な所ですが、瓦礫となった街に笑顔が無くなった人々や悲鳴や泣き声の止まない未来よりよっぽどいい。
俺は絶対に出ません!」
「僕も...強くなる為なら何でもやります!」
「前のオラなら逃げ出してたが、今なら一年...やれる気がすっぞ!」
「わかった、じゃぁみんなこれに着替えてくれ。
これなら成長しても服が伸びるし、ある程度頑丈に作られてるからな。」
ホイポイカプセルから、ベジータ愛用の戦闘服が一式。
ブルマが「1年もいたら服がボロボロになるでしょ?」と気を利かせて準備してくれていたものだった。
皆それに着替え、苛酷な地上へと足を踏み入れる。
「さて...さっきも言ったように、俺と悟空とトランクスは超サイヤ人の常態化。
悟飯はまずは超サイヤ人になる事を目指して修行をしてもらう。
その前に俺からちょっと言いたい事があるから聞いて欲しい。」
何を言うのだろうか?
皆少しきょとんとするが、ラディッツは一呼吸置いて口を開いた。
「お前ら...なんで他のみんな死んでるのかわかってんのか!?
悟飯、トランクス!
お前達が何もしねぇからこうなったんじゃねえのか?」
「トランクス...お前悲惨な未来を知っておいて『人造人間が予想より強かった。』だとか思ってんじゃねぇだろうな!
強いなら強いなりにやりようがあっただろ!
お前がもっと強ければベジータは死ななくても済んだんだ!
一体何しに過去に来たんだ!?
馬鹿かお前は!? 甘過ぎる、考えが安易だからこうなったんじゃねえのか!?」
「悟飯、お前も甘いんだよ!
その腕はなんだ?
いくら子供とは言えクリリンや天津飯より強いお前がなんで庇ってもらってんだ!?
ピッコロはどうした!
守られてばかりじゃダメだからつよくなるんじゃねぇのか!?
あれは嘘か、お前が甘ちゃんだから腕が無くなったんじゃないのか!?
甘ちゃんだからまたピッコロが死んだんじゃねぇか!」
「お前の教育が甘いからこうなったとも言えるぞ!
大体心臓病とは言え19号にコテンパンされたから、他のみんなの負担が増えたんじゃないのか?
なんでこの場にも心臓病の薬を持ってこなかった?
認識が甘い!
だからこうなったとも言えるんだぞ!」
ひとしきり鬱憤を晴らすかのように怒鳴り散らして静かになる。
各々、今回の事態に責任を重く感じているようだ。
誰ひとりとて言い訳どころか、言葉すら発しない。
最初に口を動かしたのはラディッツだった。
「...すまん。
俺だって人の事を言える立場じゃないんだ。
ブルマの言う通りに先に研究所を破壊していれば...。
心臓病になる前に薬を飲み続けておけば...。
もっと強くなっていれば...。
読みが違ったから...全部言い訳だ。
悔やんでも悔やみきれん、俺は...クソ野郎だ...本当に申し訳ない。」
ラディッツが三人に向けて土下座をする。
土下座をした所で現状が変わるわけでもなく、謝って済む話でもない。
それでも謝らないと気が済まない罪悪感からの土下座。
続く言葉も出ない残された戦士達。
「...いえ、ラディッツさん。
自分自身をあまり攻めすぎないでください。
俺の責任もあるはずです。
俺がもっと強くさえいれば、過去に来て人造人間達を倒す事が出来たんだ。
...だけど、もう今は何を言ってもどうにもならない。
ならば、全員の十字架を背負って修行するしかありません。
俺達は、平和な未来を勝ち取る為に戦うんです。
あいつら人造人間の自己中心的な思考回路と根本的に戦う...意義が違う...生き残るのは、真意を遂げようとする俺達です!」
人間に失敗は付き物と言わんばかりに手を差し伸べるトランクス。
この何も無い空間...絶望的な状況で活路を見出すのはとても厳しい。
それでもトランクスが希望を持って手を差し伸べるのは、まだ彼らがいたからだ。
時代が違えど、自らの師である孫悟飯。
そしていかなる敵にも臆することなく勝ち続けていく孫悟空と言う2人の戦士がまだ生き残っているからだ。
彼らがまだ心の支えになっているならば、ラディッツ...河野は自責の念になる前に駆られている場合では無い。
再び自らを鍛え、立ち向かわなければならない。
「分かった、いつまでも凹んでる場合じゃないな。
とち狂ってでも人造人間を倒す!
一年...死ぬ気でやるぞ。」
.......
.....
...
この精神と時の部屋での修行は、文字通り死ぬ気で行う修行となった。
筋力トレーニングはもちろん、実際の戦いを想定したトレーニングまで限界まで追い込む。
気弾が打てなくなったら打撃、打撃も出来なくなったら立ち上がれなくなるまで...それをタイマン形式でひたすらに繰り返す。
地球人にそのトレーニングをやらせると、ただただ筋繊維を破壊していくだけで回復出来ないのだが...彼らは全員サイヤ人の血が流れている。
限界まで追い込めば追い込む程強くなる体質に、このトレーニングは間違いではなかった。
そしてトレーニング後は必ず過剰なほどのストレッチをさせていた。
柔らかい筋肉を作り出す為だ。
柔らかい筋肉は、力が発揮できて持久力もあり、そして疲れにくい。
これを
コラーゲンが入り込むことで筋線維の回復が阻害されるので、筋線維が収縮しにくくなる...そうなると力を入れても、力を入れなくても常に固い筋肉になる。
筋肉が固ければ、燃費も悪く力も発揮出来ず、疲れやすい肉体になってしまう。
簡単に言えば...身体を限界まで痛めつけ、効率良くパワーを発揮しやすい肉体を作り上げ、サイヤ人特有の超回復に戦闘力を上げる。
「今回は...俺の勝ちだ。
一体全体...お前らの成長ぶりは異常だろ!
界王拳も使わないと、あっという間に叩き込まれちまう。」
「...へ...へへ。」
指先まで動けなくなった悟空はほのかに笑う。
肩で息をするラディッツは、練られた粉の塊をひとつかみ千切り、悟空の口の中に入れる。
もちろん味は全くないが、多少なりとも回復には繋がるだろう。
隣へ目をやると、隻腕の悟飯とトランクスが戦いを続けていた。
もちろん2人とも超サイヤ人だ。
悟空に怒りをきっかけに覚醒する事をアドバイスされ、
仲間を殺された事をイメージした途端に、すぐ戻ったが一瞬だけ覚醒した。
更にラディッツが過去の自分自身の不甲斐なさや無力さを攻め続けながら戦うと、自分への怒りで完璧に覚醒したのだ。
さらに言えば、戦闘スタイルも大分変わった。
これまでの戦い方は、ピッコロのように様子を見極めてから仕掛けていくタイプ...いわゆる受け身を主体とした戦い方だった。
それが今は、最初から積極的に攻め続ける戦い方となっていた。
戦闘スタイルが変わったきっかけ、それは腕を失った影響が大きい。
これまでの自分を払拭するような戦闘スタイルにより、攻撃は最大の防御と言わんばかりのラッシュ攻撃を主として修行していた。
確かに防御はいつかは破られる、隻腕ならガード領域も常人の半分だ。
「魔閃「でやぁ!」
しかし課題もまだ少なくない。
攻撃は最大の防御とは、勝てる見込みが確信に変わった時にこそ発揮される事である。
何も考えずに闇雲に攻撃するのは無駄の極み。
スタミナが切れて自滅するか、カウンターを貰って大きな隙を生み出すしか無いのだ。
故に悟飯は、半年が経とうとしていても超サイヤ人への覚醒以外には何も掴みきれない感覚を引きずっていた。
「...クソ...。」
「俺の知ってる悟飯さんは遥かに強かったです。
もっと来てください悟飯さん!」
再び戦いを再開する二人。
この部屋ではそろそろ1ヶ月が経とうとしている。
凄まじい速さで成長する彼らだが、そろそろキリのいいところだ。
(1ヶ月か。
外はどれ位時間が経ってるのだろうか?
そろそろ様子を見てみるか。)
.......地球 孫家.......
「本当にここであってんのか?
孫悟空の家ってのは?」
「綺麗な洋服も無いし、誰もいないんじゃ意味無いんじゃないかい?」
「.....。」
人造人間達は当初の目的地である孫悟空宅へ到着した。
しかし、
慌てて逃げ出した様子ではないし、しばらく待とうが帰ってくる気配もない。
街を破壊したりして騒ぎを起こせば向こうから来るかもしれないが、その一線だけは超えなかった。
自分を勝手に改造したDr.ゲロを恨んでおり、本来の孫悟空の抹殺というゲロの意思に従いたくなかったのだ。
更に純粋な人間の時からあった、情も一つの要因と言えよう。
露払いはするが、自ら進んで悪事を働きたくなかったのだ。
痺れを切らして当ても無くふらつこうとした時、彼らは現れた。
「...?
なんだいあんた達?」
現れた2人組。
1人は大きな肩パッドを左肩にはめた白肌の巨人。
1人は黄緑色の大きな帽子を被った黒肌の小人。
共通点は、それぞれベルトのバックルと蝶ネクタイに
「なんだ、お前達も俺達と同じか。」
「...ソン・ゴクウ。」
「孫悟空はいないよ。
探しても無駄さ。」
15号はエネルギー弾を躊躇すること無く孫家へ放った。
木っ端微塵に吹き飛ぶ瓦礫の中に、孫悟空の肉片が無いのを確認すると表情は曇る。
「...ソン・ゴクウ。」
「なんだいコイツら?
気味悪いよ。」
「...コイツらは俺と同様、孫悟空を殺す為だけに作られた完全機械型のようだな。
大きい方は14号、小さい方は15号だ。」
((コイツ、長く喋った。))
無口な16号が、自分の存在理由と解説をし始めた為に二人共驚いた。
まだ彼からは、「もちろんだ。」としか聞いていなかったからだ。
「Dr.ゲロは他にも人造人間を作ってやがったのか。
何でこいつらがこんな所にいるんだ?」
「開閉はゲロ本人しか出来ないから、俺達が出てった後に起動させたんだろう。
とにかく、あの2人から目を離すな。」
15号はしばらく静止してデータ整理した後、最優先事項を決定付ける。
孫悟空を倒したか隠したか、または孫悟空の殺害の障害となるかもしれない対象物の排除。
即ち、目の前の人造人間の破壊。
「ソン...ゴクウ.....ソンゴクウ!」
先程まで大人しかった14,15号が、17,18号へ襲いかかる。
不意を突かれたのもあってか、瓦礫と化した孫家を巻き込んで吹き飛ばされる。
「...ケホッ...いきなりなんだいお前ら!」
「どうやら、同じ人造人間だが分かり合えない口のようだな。
相手をしてやるよ。
お前達もやるなら全力で来いよ?」
「...ソンゴクウ。」
15号が17号、14号が18号へ再び攻撃を仕掛けていく。
最初の一撃は油断してたせいでダメージを受けたと思っていたが、実力が完全機械型の方が勝っていると受け止めざるを得ない事態になっていた。
相手の攻撃の方が重く、そして素早い。
「気円斬!」
ラッシュ攻撃の最中に襲いかかる気の刃は、狙い通り間合いを切り開く。
押されていた攻撃が止み、17,18号は態勢をリセットすることが出来た。
空を見上げると、太陽を背にしてある男が降り立つ。