弱虫兄貴のリスタート   作:バタピー

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混乱の中の小さな平和

「...残念だったな。」

 

 

16号が静かに呟く。

恐らく17号の件と完全体セルの事だろう。

 

 

「...いいんだ。

そんなことより、あのセルって何者なんだ?

また妙なやつがあいつらを吸収したと思ったら桁外れに強くなっていった。」

 

「それは...説明しよう。」

 

 

ラディッツはこと細かく知っていることを話した。

ドクター・ゲロが造り出したコンピューターが戦闘の達人たちの細胞を集めて合成させた人造人間。

元々はトランクスが来た未来とは別の世界。

悟空が心臓病で死んだ後の未来世界で生まれ、人造人間17,18号を吸収すれば完全体になるのだが、その世界のトランクスにより倒された為過去に来た者だった。

 

 

「随分ややこしいな。

とにかく、今度はセルを倒せばいいのか。」

 

「その通りだ。

本来なら13号とかは出ずに完全体セルは誕生するはずだったんだ、しかもずっと先の話だし...。

セルはしばらく人間達の生態エキスを吸収しながら強くなる。

人類は神出鬼没のセルに怯え、その後テレビでセルゲームやりますって世界中に宣言するんだ。

だけど...今後そうなるかはわからんな。」

 

 

兎にも角にも、神殿目指して飛び続け、着く頃には日が傾き始めていた。

行きはあっという間だったが、帰りは16号を抱えてだったから遅くなっていた。

神殿に着くと、既に全員が外へ出ていた。

 

 

「...ふむ、無事に戻れたようじゃな。」

 

「はい、ですがセルは完全体になってしまいました。

作戦は失敗です。

あとは精神と時の部屋でどれだけ強くなるか次第です。」

 

「へっ、サイヤ人が4人もまだ残ってんだろ?

多分何とかなるんじゃないのか?」

 

 

ウーロンが重い空気を何とかしようとしていたが、全員静まり返っていた。

人造人間が減ったとはいえ事態が切迫しているのがわかる。

 

 

「ウーロン、今は...」

 

「けっ、なんだよ!

人がせっかく盛り上げようとしてんのによ。

大体よ、なんでこんな時にドラゴンボールが無ぇんだ!

ピッコロもあっさり死んじまいやがって!」

 

「人がって...あんたいつから豚から人になったのよ?」

 

「う うるせぇ!」

 

 

かつて無いほどの不安。

誰しもが表情や態度に出てしまっていた

これまでドラゴンボールに頼ってきたが今回はそういうわけには行かない。

 

 

「落ち着いてくれ。

とにかく、ブルマさんは16号を修理してください。

可能であればパワーアップとかしてくれた方がありがたいです。

俺はまた部屋の中に戻って時々出てきます。

何かあったらまた言ってください。」

 

 

そう言い残して部屋に向かうラディッツ。

残る皆は誰も止めようもしなかった。

かつてないほどの気の大きさ...この力に対抗出来るのはもう4人しかいない。

 

 

(...悪くない...むしろこれでいいんだ。)

 

 

一人部屋に向かうラディッツは自分自身に言い聞かす。

 

 

(人造人間13号...あいつがセルより弱くて助かった、正規の話と狂うからな。

あとはセルを倒すか、悟飯のレベルを底上げさせておいて何かのきっかけを作って超サイヤ人2にすればいい。

16号は確か優しい奴だから、悟空とあまり接触させなければ問題無いだろう。)

 

 

部屋のノブに手を掛ける。

自分がいなくなってからどれだけ差が詰められたか...あるいは広げられたか...色々想像しながら中へ入った。

 

 

--- 精神と時の部屋---

 

 

「お、やっと帰ってきたか!

俺もう待ちくたびれたぞ!」

 

 

口の周りを粉まみれにした悟空がいた。

あいも変わらず...という訳ではなく、超サイヤ人での気の質が少し穏やかになっていた。

自分の戦闘力を当たり前のように上げる超サイヤ人化...いかに当たり前のレベルを上げるか。

ラディッツが言い渡した修行の意味に、気づいたのかもしれない。

 

 

「待たせたな。

色々とあって遅くなった。

悟飯とトランクスは?」

 

 

悟空が答える前に、視界に二人が映る。

やはり隻腕での戦闘はかなりのハンデを要するが、着実にその戦闘スタイルをものにしようとする姿はあった。

そしてトランクスも、剣技も交えた戦い方が板に付いてきたようにも見える。

この1ヶ月...特に大きな出来事は無かったが、確実に3人の実力は底上げされていた。

 

 

「...やっぱり悟飯を引き入れておいたのは良かったかもしれねぇな。」

 

「もちろんだ。

ってか悟空からそんな言葉を聞くとは思わなかった。」

 

「俺もだ、だけどよ...修行してて何となく悟飯にはとてつもねぇ潜在能力があるかも知んねぇって思ったんだ。

俺が強くなるのも一つの手だけど、俺より伸び代がある悟飯に掛けようと思ってんだ。

例え俺がいなくなっても、誰にも負けねぇくらい強くなる気がするかんな!」

 

 

この時ラディッツ...河野は耳を疑っていた。

これまで孫悟空は、純粋に強さを求めるド変態というイメージしかなかった。

原作者からは父親失格とも言われる程の戦闘バカなのだ。

そんな彼が半ば強引に近かろうとも、修行を通して息子の成長を感じていたと言うだけでも、感動に近いものを感じていた。

 

 

「そうだな...父親からの愛情があれば、きっと良い息子になるさ。

...って、これじゃ死亡フラグみたいじゃねーか!

早く俺達も強くなるぞ!」

 

 

.......

 

.....

 

...

 

 

現実時間で残り20時間...部屋では約10ヶ月。

あれから特に代わり映えもせずに修行は行われていた。

代わり映えしないのは修行風景なのだが、当初に比べれば雲泥の差となっていた。

 

 

「ハァッ! ヌアッ! どりゃァ!」

 

「ハッ! でやぁ! ふんぬっ!」

 

 

二人の金色の戦士が限界寸前での戦いをしている。

片方が押しているが、対する方は致命弾を浴びずに防戦していた。

 

 

(なろぅ!...スコードロン界王拳はもうダメか!)

 

 

防戦する戦士は上半身と下半身が時たま黄金色から部分的に赤く染まる。

それでもなお形勢は変わらず不利一方であった。

この1年...互いの癖すら知り尽くしてしまった戦いでは、先を読む駆け引きも交えた戦いにまで発展する高度な修行になっていた。

故に下手な事をすればあっという間に叩き込まれてしまう。

 

 

(顔...からの...!)

 

 

顔面を狙った拳と同タイミングでの右ローキック。

意識は顔面に向けてくる拳に行くので、足元の攻撃は決まる。

...はずだったのだが、拳は去なされ右足は踏みつけられ攻撃は失敗。

それどころか踏みつけた左足を軸にして腹部への膝蹴りにし、更に腹部へフックがめり込む。

強烈な吐き気に襲われるが、後頭部へのとどめとなるダブルスレッジハンマーが決まる。

ラディッツは顔面から地面に突っ伏し、動かなくなった。

 

 

「へへっ、オラの勝ち~!」

 

 

これで何勝何敗か...そんな事を考えながらラディッツを引きずり、食料庫から練られた粉の大きな塊を、口がパンパンになるまで押し込んで水も入れる。

すぐさま塊と水は吐き出されて咳き込むが、意識は戻ったようだ。

 

 

「てめぇ殺す気か!」

 

 

ワリィワリィと半笑いで謝る悟空。

結局この戦いで、248勝104敗8引き分けで孫悟空の勝ち越しで終わった。

この部屋での悟空の成長は目を見張るものがあった。

ナメック星での死闘...そこからの戦闘力で言ったらもう何百倍と言う程に。

対するラディッツは界王拳を使っても、とんとんどころか若干追いつかなかった。

更に悟空には、数々の師から受けてきた指導による地力、戦略、磨かれた格闘センスにより敗北回数が後半になり増していった。

界王拳を上げれば対応も出来るかもしれなかったが、超サイヤ人状態での界王拳...超界王拳(スーパー界王拳)は負担が掛かり、二倍すら引き上げるのが困難である。

スコードロン界王拳でやっと多少保てるかどうか...なかなか勝機は得られなかった。

 

 

(これが主人公補正ってやつか?

ここまであっさりと抜かれるともう投げ出したくなるわ。

...と言っても、もっと凄いのはやはり悟飯だな。)

 

 

少し離れたところでトランクスと戦いを繰り広げる悟飯。

元々の潜在能力を何となく感じていたが、片腕を失うハンデを背負っているのだが...ラディッツもここまでとは思いもよらなかった。

隻腕からの手数不足を感じさせず、なおかつ戦闘力も悟空を僅かに下回るレベルまでに来ているのだ。

トランクスもパワー重視の超サイヤ人という寄り道をさせずにほぼ仕上げれたのだが、その上を行くのが悟飯だった。

 

 

最小限の動きで繰り出される浴びせ蹴。

トランクスはガードしてやり過ごすが、そこから蹴りの連撃に続く。

やや力を込めて防御を蹴り崩そうとするも、一瞬の溜めを見計られて背後に回られる。

刀を抜いて斬撃を数発飛ばすが、これも全て躱される。

だがここまではトランクスの想定の範囲内。

 

 

「バーニングアタック!!」

 

 

回避先に放たれるトランクス渾身の一撃。

どんなに超スピードで逃れようにもダメージは避けられないと思われたが、左腕を引き換えにダメージを抑える。

もっとも、被弾しているはずである左腕はもう失っているのでノーダメージだ。

 

 

「激烈魔閃!」

 

 

即座に集められた気は、真っ直ぐトランクスへと向かう。

躱すまではまさかと思ってはいたが、反撃までしてくるとは正直思わなかったトランクス。

だが対応出来ない訳ではない。

向かってくる激烈魔閃を抜刀し、斬撃で対処する。

2つに割れた気の塊から、鮮血を流しながらも目の前まで接近してきた悟飯がいた。

切りつけるには間に合わない。

刀身で叩きつける。

...が、刀身の回り込むような軌道と蹴りの一直線の軌道では僅かに蹴りが速かった。

派手に吹き飛ぶ最中に縦回転での踵落としを最後に受け、トランクスの意識は完全に吹き飛んだ。

 

 

「見違える程強くなったな、悟飯!」

 

「父さん!」

 

 

ラディッツが二人分の食料を取りに行く間、修行相手から親子へと戻る。

この1年...息子の成長ぶりを見てきた父 孫悟空。

いつしか自分の事をおとうさん(・・・・・)から父さん(・・・)と呼ぶようになり、一人称も僕からたまに俺と呼ぶようになってきた。

1度も経験したことの無い感情だった。

息子が徐々に自分から離れていくような...寂しいような、それが嬉しいような複雑な想いだった。

 

 

.......

 

.....

 

...

 

 

ラディッツ以外の3人は部屋を出た。

部屋を出てからの修行は各自に任せてあった。

悟空と悟飯はチチを連れて修行と休養を取ると言っていた。

トランクスも同じく、修行をしながらこの時代の母から色々な話を聞きたいそうだ。

止めはしなかった。

先の未来を知っている河野にとっては...特に悟空は止められなかった。

 

 

「...って誰も死なせてたまるか。

悟空も死なせず、トランクスも死なせず、全員ナメック星のドラゴンボールで生き返らせてやる。」

 

 

腹ごなしに粉の塊を貪り食いながら。

味はやはり何もしないが、腹が減っては修行も出来ぬ。

 

 

(問題なのは原作通り、悟飯の超サイヤ人2しか頼れないって所だな。

悟空のあの感じだとやはりまだ超サイヤ人2にはなれてないようだし。

先の領域を見たり感じたりすればわかりやすいけど...難し過ぎてもう1年使っちゃいそうだ。

残りの時間は魔人ブウ編や知らない強敵が出てきた時に取っておきたいし、悟飯の怒りの為とは言え悟空を殺してもらうってのはダメだし...確か16号が要だったよな。)

 

 

「...ま、最悪イージス張って俺がアイツと心中自爆だな。

地力上げとかなきゃ。」

 

 

超サイヤ人のまま気を最小限に抑えて、再び白い大地へと足を踏み入れる。

途端に膝から崩れ落ち、滝のように汗が流れ始めた。

悟空達のように超サイヤ人に慣れたとは言え、気を抑えれば必然的に負担は全て純粋に肉体にのしかかる。

敢えて数値化するなら戦闘力200程度。

 

 

「...く...ぐ...い 1ヶ月どころか...数分も持たねぇ。

悟空がもたなかったのなら...俺はやるしかなぃいいっ!」

 

 

.......

 

.....

 

...

 

 

「ようやく出てきおったの。」

 

「と言っても、そんな経ってないですけどね。」

 

「あぁ、みんなが無事で何よりだよ。

地力を引き上げるので精一杯でした...あとはやってみなけりゃわかりません。」

 

 

キッカリ残り一年を残してラディッツは出てきた。

戦闘力だけなら、何とか悟空と同程度の強さまでにはなったが、やはりこれではセルに無傷では勝てない。

むしろ命を棄てないと勝てないという方が正しいだろう。

超サイヤ人2にはなれなかった、やはり実際に見聞き感じなければすぐには無理だった。

 

 

「そうか...情けないけど、頼むぜラディッツ。」

 

「とにかく...頑張るさ!

ところで、セルに動きは?」

 

「南の都より少し離れた所で、何やら作っているようです。

...なにかのステージにも見えますが。」

 

「ステージ...セルゲーム会場か。

ちょっとセルに会ってくる。」

 

 

皆が大慌てで制止しようとするも、あっという間に地上へと降りていってしまった。

9日後に殺されるかもしれない相手に会いに行くなど自殺行為の何物でもない。

だがそんな事よりも気になる事があったのだ。

 

 

 

--- 南の都 郊外 セルゲーム会場(仮) ---

 

 

「ふむ...こんな感じかな?」

 

 

上質な石で作られたシンプルな武闘上。

景色は違えど、かの有名な天下一武道会会場をモチーフにしたのはすぐに分かる。

だがこの舞台以上に、今回のゲームに相応しい場所は存在しないだろう。

 

 

「もう少し装飾でも施そうか...。

どう思う、ラディッツよ?」

 

「そうだな、観客席に出店に活気があればいいんじゃないか?」

 

 

ラディッツはセルの隣に降り立つ。

完全に間合いに入っているにも関わらず、非常に涼し気な両者。

互いに今は戦う気がないのが分かっているからこその穏便な雰囲気なのだろう。

数日後には殺し合いをする相手とは思えない程、殺伐としていなかった。

 

 

「ふっふっふ、いた所で意味は無かろう。

それにしてもやけに早いではないか、超サイヤ人とやらのままでここに来るのは。

飛躍的に向上したのは言葉通りだったが、もう殺りたくなったのか?」

 

「俺はそんな死にたがりじゃないよ。

...ただ色々と疑問点が浮かんで来たから直接聞いてみようかと思ってね。

セルゲームのルールとかさ。」

 

「それについては多少考えがある。」

 

 

セルから色々と話を聞く。

 

・武器や道具(仙豆含む)の使用有り

・他選手への攻撃をしてもよい

・攻撃により、相手選手や他選手を殺しても反則扱いにならない

・武舞台から落ちたら場外負け

・他選手や観客の助けは反則扱いされない

・試合はトーナメントではなくチーム戦

 

「...仙豆をたくさん用意した方がいいぞ?

私だって体力は減る。

疲弊して勝ち目があるかもしれんからな。」

 

「もちろんそうするつもりだよ。

殺すの有りってのはしょうがないが、地球を破壊するような真似はしないでくれよ?」

 

「楽しみな事をいきなり終わらせる真似はしない。

しかし、拍子抜けするような試合ならば...つい(・・)やってまうかもな。」

 

 

悪びれる様子もなくサラリと言うあたり本当にやりかねない。

そして地球なんて2つや3つ程度、あっさりと消し去るなんて造作もないだろう。

この生命体...やはり危険なのだ。

 

 

「セル、お前を倒せそうな奴が全て死んだ場合はどうする?

ベジータやピッコロ達はもう死んでいる。

残る俺達5人が死ねば抗う程の奴はいなくなる。

そうした時は残る人たちをどうするつもりだ?」

 

「...さぁな、そんな事は何も考えてはいない。

単なる退屈しのぎだ。

だが『セルゲームにより参加戦士が全員負けたら地球人を皆殺しにする。』とでも言えば、もしかしたら未だ見ぬ強者に出会えるかもしれんだろう?」

 

 

ただ単に強い奴と戦いたい...そして自分の強さを確認したい。

ラディッツの待ての声を聞き入れ、ゲームを企てるセルの本音だった。

間違いなくサイヤ人達の細胞が純粋な強さを欲しているとでも言えようか。

 

 

「セルゲームの目的は私の強さの確認と、私自身の強さを更に引き出す為の練習だ。

私を作り上げたコンピューターは孫悟空を殺す目的で私を生み出したようだが...本音を言えば、ここまで強くなったのだから今となってはあまり興味はない。

あえて言うならば楽しむことかかな?」

 

 

そしてラディッツに新たな疑問が浮かび上がる。

 

 

(コイツ...本当に悪者か...?)

 

 

サイヤ人一味やフリーザ一族、地球人達の細胞を取込み禍々しい気を持ち合わせる生命体。

悪人の細胞を取り込んではいるが、善人の細胞を取り込んでいるのも事実だ。

原作通りならば地獄に落ちるような悪人なのだが...話している内にどうも分からなくなってきていた。

 

 

「お話はこれくらいにして...私はこれからテレビ局へ行く。

セルゲームの宣伝だ。

...ついてくるか?」

 

「...そうだなぁ、一般人を殺さないように見張るかな。」

 

 

.......

 

.....

 

...

 

 

「...という訳で諸君、9日後を楽しみにしているぞ?」

 

 

破壊されたテレビ局の壁。

スタッフ達は動けずにいた。

ラディッツが警備員達を止めたので、幸いにも死傷者は出なかった。

が、この一部始終は生中継や、BREAKING NEWSとして全世界へと徐々に知れ渡る事となる。

 

...誰かいないのか?

一瞬でテレビ局の壁を破壊し、遥か遠くの山までを丸々吹き飛ばす生命体を倒す戦士は?

 

匿名掲示板やSNS上でのデマを信じ込み、警察署や軍施設に押しかける人や、なるべく人気の無い山間部へと疎開していく人。

そして食料の奪い合いや、空き巣...更にはセルへ降伏しようと呼びかける謎の市民団体が現れ暴徒化し、世界中が大混乱に陥っていた。

 

 

「...酷ぇもんだ。」

 

 

カプセルコーポレーションの一室でテレビを見ながら懸垂していたラディッツは、惨状を見て嘆く。

人間ってのは絶望を感じるとここまで別の生き物になってしまうのかと。

この世界は普通の人間から猫人間や狼人間など、多種多様過ぎる程の様々な種族がいる。

以前の世界では、どんな混乱になっても犯罪や略奪行為が無かった国にいたせいか、目の前の惨状を見てとても近所で起きてる実感が無かった。

下手したらこれまで...これから現れる悪者よりももっと身近で現実的で恐ろしいとも思った。

 

 

「帰ったぞ!

...なんだ、お前も髪染めたのかよ?

それより見てくれラディッツ、これで当分はこれで暮らしていけるぜ!」

 

 

金髪の美人はカプセルから大量の食材を出す。

最も恐ろしいのはこの人なのかもしれない。

唯一の良い点は、彼女の略奪行為は物資を独り占めする輩からという所であり、それを分け与えて来た上でのこの量という点だ。

 

 

「(一体何処からかっぱらってきたんだか...。)

いつもありがとうランチさん。

確認するけど...これはパクってきた訳じゃないよね...?」

 

「ったりめーだよ!

付近で平然と略奪してたクソ野郎共を縛り上げたらくれるって言ったんだ。

その場のみんなと一緒にありがたく(・・・・・)貰ってきたんだ。」

 

 

サバイバルナイフやデリンジャーを懐から下ろし、愛銃であるGlock 18Cをすぐに分解(バラ)して整備を始める。

その手も至る所にマメが出来ていた。

見た目からすればまず扱う事の無い美貌だが、そのマメは様々な武器を扱って来た事実を伝えていた。

 

 

「な 何見てんだよ!」

 

「いや...手がね...色々(・・)合ったんだなって。

せっかく美人に生まれたのに、綺麗な手なのに、包丁以外の物を握ってるなんてな~って。」

 

 

ランチがここで一気に顔が赤くなる。

 

 

(...っておいおいおいおいおいおい!

これって、「貴方には包丁握って俺に料理を作って欲しい。」って事か!?

俺に...俺に主婦になれってか!?

って事は...プロポーズかああぁぁ!?)

 

 

組み立て最中の愛銃を落とし、真っ赤な顔を必死に隠すランチさん。

どこに恥ずかしがる要素があったのかわからないラディッツ。

何か勘違いしてるのであろうと思ってはいたが、常に超男勝りな人が顔を真っ赤にして照れる瞬間ほど見てて面白い時はない。

 

 

「お 俺よぉ...頑張って料理するからな...。

これから毎日頑張るから...。」

 

「え...うん、料理、期待してるよ。

...ってかもう1人のランチさんの方にも上手くなってほしいな。」

 

 

たまに作ってくれる金髪ランチさんの料理は、見た目はアレだが実に美味しい。

逆に青髪のランチさんは見た目は美味そうだが、たまに体調不良に陥る故に手をつけるのが怖い。

本当に毒味役のモルモットでも欲しいくらいに。

だが肝心なのはその事ではない、ラディッツの返答をプロポーズと思っていたランチさん。

 

 

「...あぁ...じゃ じゃぁすぐに何か作るぜ旦那様!」

 

「うん、よろしく頼みますわ.....え?」

 

 

凄まじく冷静になり、今の流れを再確認する。

 

「美人なのに...。」→ ランチ 照れる → 「これから毎日料理するから! 」→ 「期待してるよ。」 → 「旦那様 !」→ 旦那様? →期待してるよ=プロポーズ?

 

 

(いやいやいやいやいやいやいやいや、俺がそんな大それたことを!

どうする...今からすぐ訂正すれば間に合うかな...。

いや...でも一緒にいて楽しいし充実してるし...別の世界の人間だからと言う点でしか断る理由は今の所ないし。)

 

 

そろ~っとランチさんを除くと、鼻歌交じりでとてもご機嫌な彼女がいた。

 

 

(青髪のほうのランチさんは彼女に似とるからとても気まずいけど.........。

絶対に死なせてはいけないキャラがまた一人増えたな。

ありがとうランチさん。)

 

 

その日はいつになく、穏やかでかけがえのない夜になったそうな。

そうでもないような.....?

 

 

.......

 

.....

 

...

 

 

『ハッピバースデートゥーユー、誕生日おめでとう!! 』

 

 

今日は悟飯の誕生日...という訳では無いのだが、精神と時の部屋で1年が経ってしまった為に誕生日が一日ズレてしまったのだ。

説明するのにだいぶ手を焼いたが、たった一日で背が異常に伸びた息子を見れば信用せざるを得なかった。

孫一家だけで祝ってもよかったが、ラディッツ夫妻、クリリン、更にはブルマやトランクス、どこで嗅ぎつけたのか亀仙人やウーロンまで勢揃いした。

 

 

「世間は辛気臭ぇからな、こういう時こそはしゃごうぜ!」

 

「じゃぁさ、何か面白い事してよウーロン!」

 

 

一軒家がここまで人が来て騒がしくなるのは初めてだろう。

皆一時の平和を満喫していた。

チチの手料理もあれば、ブルマやランチの手料理も入っていたり...チチの付きっきりだった為見栄えも味も文句なしの出来だった。

 

 

「そうだ、ラディッツ。

人造人間16号の件だけど...確かにヤバイ代物が出てきたわ。

ドデカニトロヘキサプリズマン...あんた知ってる?」

 

「いや、兵器ならわかるが...プラスチック爆弾とかじゃないのか?」

 

「そんな生優しい物じゃないわ。

これまで架空のモノだと思われていたバケモノみたいな爆薬よ。

こんなものが爆発したら人造人間どころか大きな街10くらいは消えるんじゃない?」

 

 

 

「なんだ、街10個分なら太陽系破壊かめはめ波より優しいじゃん」と一瞬思ったラディッツは、自分の感覚が狂い始めてる事に笑いそうになった。

原作通りに16号の解析・修理をブルマに頼んでおいたのは間違いではなかった。

恐らく自爆してもセルは生き残るだろうし、死んでも瞬間移動覚えて戻ってくるだろうと思っていたからだ。

 

 

「ありがとうブルマさん、引き続き修理を頼むよ。

...それと出来れば16号のデータをバックアップって出来る?」

 

「バグ対策で最低限のバックアップはしてあるけど...今のデータ全部ってなると、セルゲームには間に合わないわね。

...けどなんとかしろって言うんでしょ?

父さんと協力して間に合わせてあげるわ。」

 

「ありがとうブルマさん。」

 

 

16号の戦力化。

セルには及ばないが、人造人間の中で個の強さではトップである戦力をみすみす手放すつもりは無かった。

使えるものなら直してでも、欠けらも無いなら作り直してでも使うつもりだった。

良いニュースが得られた事で気分が良かったが、まさか数分後にバースデーケーキが顔面に吹き飛んでくるとは思っていなかった。




青髪ランチさんに料理を作らせたら、どんな料理も正真正銘 飯テロダークマターになりそうでくぁw背drftgyふじこlp;@:「」
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