「.....はぁ。」
今日も朝から連日のような晴れ間だ。
湿度は低く太陽は若干汗ばむような陽気なのだが、乾いた風のおかげでとても過ごしやすい。
寝室の奥からは魚が焼ける芳ばしさと魚脂の混じったいい香りがする。
あれからあっという間に時間は進み、遂にセルゲーム当日の爽やかな朝を迎えていた。
その爽やかさとは裏腹に、朝のニュースではひっきりなしにセルゲームに関するニュースや特番を放送するか、スタッフすら逃げ出して放送すらしていない局もあった。
起床してからうがい、歯磨きを済ませ、食卓につくと新妻となったランチさんが席につく。
「お おはようございます。」
「おはよランチさん。
朝飯、上手くできた?」
「た...多分。
お口に合えばいいんですけど。」
ちなみに今は青髪のランチさんだ。
こちらの性格の方も、どういう訳かラディッツを夫として迎えた。
別の世界の人間だとしても関係ないと強く言い放ったからには断る理由は何も無かった。
料理は魚が見たことも無い深海魚チックで、塩の代わりに砂糖が使われていた事態以外には何も問題なく、全て残さず頂き、食後にお茶(口直し)を飲んでいた。
「いよいよ...ですね。」
「あぁ...嫌だなぁ。」
いくらセルが原作より若干良いキャラの可能性があるとは言え、奴には絶対に勝たなけれならない。
地球消滅を阻止しながら勝つには、セルゲームを上手いこと対人戦からこちらが大人数で戦えるようにし、なおかつ追い詰めない程度に清々しく勝てば自爆も防げるだろう。
だがセルも多くの細胞を取り入れてる為、頭も回るし凄まじく強敵である事は間違いない。
戦闘プランはいくつか練ったが、どれもこれも可能性は低く、結局の所悟飯が超サイヤ人2に覚醒した方が確実と言う他力本願な情けないプランが最有力...。
(...だと原作通りか。
でもこれまで原作よりハード続きだから、今回も妙な展開になるだろう。
俺の知らない敵とか、セルが超サイヤ人2でも太刀打ちできない程強いとか...最悪道連れの自爆でもいいが、確か核が無くならない限り復活するとかだったからな。
タチが悪いな。)
飲んでいたお茶(口直し)が終わる。
この9日間は世界情勢とは真逆にとても平和だった。
ランチさんとの婚約、出来なかった悟飯の誕生日会、ピクニックや釣り、孫一家との団欒...とても幸せな日々だった。
「ラディッツさん...わたし、待ってますから。
あなたが生きて帰ってくるのを。」
「...大丈夫、心配しないで。
ってかあんまり引きずると死亡フラグになるから辛気臭いのはやめよやめよ!
なんとかなるから、最悪ミスターサタンが何とかしてくれるさ!
ハッハッハ!」
テレビに映った男の名を口にする。
世界の命運を背負った最後の希望。
世界格闘チャンピオンのミスターサタンが、あのセルと戦う。
『 あぁーんなクレイジーなハッタリ野郎は、必ずこのサタンがぶっ潰してやるぜ!』
「あんなもじゃもじゃなわけも分からない人なんて信じられません!
ラディッツさんか悟空君じゃなきゃ!」
(...ミスターサタンもまだまだ有名人じゃないな、もじゃもじゃな人じゃぁな...。)
第24回天下一武道会...格闘技世界チャンピオン...数々のグッズを出しそのほとんどがバカ売れとなる程の人気である。
Z戦士の中でも、目をつけていたのはラディッツのみだろう。
特番のおかげで彼の過去がいくつか知ることが出来たが、そこまで重要な情報でも無い為に何となく眺めていた。
調子に乗っている様な表情ばかりであるが、紛れもなく将来この地球を間接的に救う事になる英雄だ。
「そろそろいい時間だ、行ってくるよ。」
「お、ちょうど良かったみたいだな。
おはようございますランチさん。」
カプセルコーポレーション敷地内に降り立つ地球最後の戦士。
ここからはトランクスとクリリンで行動を共にする。
彼もまた違う時代ではあるが、母親に見送られて来た。
「あんた達、絶対勝って来なさいよ!」
「はい!」
「はい!
(俺の出番はないと思うけど...。)」
「わかった。」
本来ならばベジータもいるはずだった。
だがいない。
こういう時無口でそっぽ向いている男の存在がいないだけでも不安になるが、代わりに無口な人造人間がカプセルコーポレーションから出てきた。
「ラディッツと、クリリン...だったな。
俺を助けて直してくれた礼を言いたい。」
「いやいや、礼を言うならブルマさんに言ってよ。
...それかその代わりに悟空と仲良くするか?」
「孫悟空は抹殺対象だ、今回は協力するが馴れ合いはしない。」
若干空気に耐え難くなるトランクス。
とにかくカプセルコーポレーションを後にし、セルゲーム会場へと向かう。
「昨日はよく眠れた?」
「えぇ...もちろんです。」
嘘、不安でグッスリな睡眠なんて出来なかった。
士気に関わると思うととても本音なんて言えなかった。
無論、ラディッツもクリリンも熟睡は出来ていない。
「絶対に負けません、何があっても。
セルを倒し、ドラゴンボールでみんなを生き返らせ、平和な未来を勝ち取るんです!」
「そうだな、ドラゴンボールで親父を生き返らせ無きゃな。
...あれ?」
不意に違和感を感じる。
(今はドラゴンボールが無い。
ただ原作では確かセルに殺された人達を生き返らせるって会話あったよな。
ピッコロは神と同化していた...デンデはナメック星から連れてこられた...地球の神様になる為...同化して神様が死んだ時ドラゴンボールが消えない為?
いや違う...ドラゴンボールはここら辺で願いが増えた...復活させた?
デンデはドラゴンボールを作れるのか!)
「おい、ラディッツ?」
今の今まで違和感に気が付かなかった。
精神と時の部屋で修行したベジータや、神と同化したピッコロでは無い為に無謀かもしれない。
だが戦力が1人でも増えるなら躊躇はしなかった。
「みんな先に行ってくれ、ちょっと天界行ってくる!」
ラディッツは三人の進路から大きく外れ、天界へ全速力で向かった。
(ドラゴンボールが復活すれば、あとは集めるだけ。
セルゲームまでには間に合わないけど、ブルマさんとかに頼んでやってもらうしか無いか?
最悪俺達を死んだらすぐ蘇らせてもらうか。)
気づけば天界が僅かに見え始め、あっという間に到着する。
気を察知してかデンデと、ミスターポポが待っていた。
「ラディッツ どうした?」
「丁度良かった、ドラゴンボールって神様が復活出来るんだよな?
お前が神様になればなんとかなるんじゃないか?」
「僕が神様に!?
まだ僕は未熟ですし...それにドラゴンボールを作るには今すぐには無理です。
最低でも100日程掛かります...。」
「100日!?」
100日...万が一今から作り直したとして約3ヶ月もセルが大人しく待っていてくれるとは思えなかった。
下手したら全生命皆殺し、あるいは地球を破壊するかもしれない。
ラディッツの記憶が間違っていたようだ。
「...ですが、今ある石になったドラゴンボールと何か龍の模型みたいなものがあれば今すぐにも出来るんですが。」
「龍の模型 ある。」
「ナイス、ミスターポポ!」
ミスターポポが思い出したように宮殿へ歩いて行き、龍の模型を携えて戻ってきた。
どうやら地球の神様に以前、非常時の予備として作成を依頼された物だが、本当に役に立つ時が来たようだ。
すぐさま模型に手を当て龍に魂を宿す。
「何か要望とかありますか?」
「そうだな...叶えられる願いを3つに。
あと一度に大勢生き返らせれるようにしてくれれば大丈夫だ。
...あ、一度に大勢復活させたら願いは2つとかになって構わないよ。
あまりパワーアップさせたらいかんでしょ?」
わがままを言えば、ナメック星のポルンガのように何度でも生き返るようにしたかったラディッツだが、"ドラゴンボールのマイナスエネルギー"の事が頭をよぎって極端なパワーアップは控えた。
下手したら邪悪龍を相手にする事になるかもしれなかったからだ。
「わかりました...終わりましたよ。
願いは3つ、大勢復活、大勢の時は願いは2つにしておきました。
...これで良かったんですか?」
「大丈夫だ、問題ない。
あとミスターポポにお願いがある。
セルゲームをやってる最中にドラゴンボールを集めておいてほしい。」
「わかった 急いで集める。
神様 ポポ しばらく出る。」
魔法の絨毯が現れ、乗った瞬間消えた。
前の神様を生き返らせたいのは本人が1番思いが強いのかもしれない。
「ラディッツさん。
悟空さんや悟飯さんによろしくお願いします。
また皆を救って下さい!」
「まかせとけ!
安心してここから見ておいてくれ。
出来れば皆を早く生き返らせてあげて。」
ニコッと一度笑うと、ラディッツは再び全速力でセルゲーム会場へと向かう。
何とかなる...すがるような気持ちだが、どこからか訳も分からない自信だけはあった。
(大丈夫だ...単行本は魔人ブウ編まで続いたんだ。
多分何とかなる!)
自信ではなく、やはり言い聞かせているだけだった。
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「遅れてすまんな。」
「いや、大丈夫だ。
アイツだってさっさと始める奴じゃねぇさ。」
セルゲーム会場へと到着した頃には、役者は揃っていた。
役者は六人...しかし事実上地球でセルと互角に渡り合えるのは孫悟空、ラディッツしかいないと思われていた。
この兄弟がやられれば刃向かえる者は皆無だ。
「...待っていたぞラディッツ。
これで役者は全員揃ったな、早速最初に.....?」
遠くから聞こえる。
その音は次第に近く、そして増えてきているようだ。
音の種類はひとつではない。
ローター音、エンジン音...タービン音も急速に近づいてきた。
地平線から砂煙を巻き上げながら迫る戦車や高機動車。
空からは対戦車、戦闘、輸送ヘリ。
音速で通過する戦闘機や攻撃機、それらに続いて爆撃機まで...。
「...おいおい...合同演習ってレベルじゃねーぞ!」
ラディッツの目が輝く。
富士総火演なら見たことはあるが、その何倍...いや何十倍どころでも計れない程の規模で展開される各軍に興奮を抑えられなかった。
動員数5000万人を軽く超えるだろうか...文字通り世界中の軍が総動員でやってきたと表現出来るだろう。
「...いいんですか!?
民間人が数人いるんですよ!?」
「構わん...世界中があの映像のようになれば、数人の犠牲所ではなくなる。
S,Sドラゴン、モンスターハント。」
遥か上空...人類の存亡を掛けた戦いの火蓋を切るAC-130に積まれた105mm榴弾砲が火を吹いた。
ただでさえ一発でも凄まじい破壊力を誇る榴弾砲が寸分狂わず狙った目標に向かっていく。
ふと
降参か?
それとも何かの攻撃動作か...確認する前に全ては爆炎に消された。
AC-130二機の榴弾砲に狙われたモンスターは文字通り跡形もなく消え去っただろう。
周囲にいた民間人も犠牲にして。
「状況報告。
...おい、状況報告。」
いつになっても何も言わない観測兵に痺れを切らし、その方を見る。
兵士の目は見開いていた...何か見間違えているかの表情も読み取れる。
「おい、報告しろ!
モンスターはどうなった!?」
『自衛権を行使しよう。』
その言葉と同時に空高くで爆散するもの。
2つの飛行物体はバラバラになって地上に向かって落ちていく。
それと同時に、2枚のカードを全地球軍は失った。
対するモンスターは無傷...しかも石のステージすらもだ。
すなわちそれは榴弾砲本体どころか、爆発の衝撃波すらも届かない位置で迎撃されているという事。
遷音速...いや超音速で迫る105mm榴弾に正確に迎撃する能力。
イージス艦なら大和の砲弾をも迎撃出来るというご意見もあるかと思うが、それを簡単に1生命体が出来るはずなんてありえない。
「スプーキーⅡ、スティンガーⅡ応答しろ!
クソ...全軍攻撃開始、彼らの仇を取れ!」
全方位からセルゲーム会場目掛けて放出される砲弾や爆弾やミサイル。
人間サイズに対しては、過剰という表現では余る程の火力ではあるが、それでも動きを見せない生命体。
「...折角の舞台に傷が入るのは、気分が悪い。」
突如としてセルを中心として展開される薄紫色の障壁。
その正体にいち早く気づいたのはラディッツだ。
イージス...要するに気のバリア。
砲弾やミサイルなんぞ通れるものではない。
セルゲーム会場周りはミサイルや榴弾砲の爆煙に包まれ、バリアの外には潰れた砲弾の山が形成される。
「外観から見られる損傷認めず。
...無傷です.....。」
「馬鹿な!
...悪魔の炎しか無いのか...大統領へ繋げ。」
『 諸君、健闘は讃えよう。
だが、ここまでだ。』
指先から放たれる眩い光。
それはかつてデンデとベジータを葬った技なのだが、Z戦士以外の者にはレーザー攻撃とでしか認識出来ないだろう。
一部の人間は認識出来る前に絶命したが。
「やめろセル、無闇に殺すな!」
「ラディッツ、貴様が1番わかっているだろう?
私を殺すつもりで圧倒的な数で襲いかかってきたのだ、反撃する権限はあるはずだ。」
「それはオラ達を倒してからにすればいいだろ。」
動けなかったラディッツの言葉を行動に移した悟空。
右手を押さえつける手には感情が強く反映されているかのように力が入っている。
怒気が言わずとも強く伝わってきていた。
「ククク、いいぞ、その目だ。
その感情を忘れずにセルゲームに活かしてくれる事を望むぞ?」
指先からはもう気を放出してはいなかったが、力も弱めてこれ以上の事はしないと言う意思を表す。
それを分かって悟空も手を離す。
だがそのほんの数秒で上空と地上の戦力の70%は行動不能、もしくは消失した。
統率の取れなくなった軍隊はてんでんばらばらになりながら自国もしくは最寄りの基地まで、完全敗北と言う事実を連れて逃げ帰る事となった。
そんな中、一機の輸送ヘリが向かってきていた。
たった一機で戦意もないようなのでセルも横目で見る程度だった。
そのヘリは武道場の真上まで来ると、着陸を待たずに数人程飛び降りてきた。
颯爽と現れた中の1人が親指を出し、首を切るような動作で相手を挑発する。
「...誰なんですか...アイツらは?」
「...さぁ、オラにもわからねぇ。」
「...僕も...。」
「俺も知らない...。」
「...。」
「誰も知らないか、あの背の高い男はミスターサタン。
世界格闘チャンピオン...あんな感じでも根はいい奴なんだ。
他の取り巻きは...知らん。」
彼らはミスターサタン軍団、ミスターサタンと門下生であるピロシキとカロニーだ。
彼らはヘリに同乗していた報道陣を近くまで来るよう促し、全世界に向けて"勝利宣言"をもう一度やり直す。
クリリンはとりあえず死なないように自生を促そうとしたが、ラディッツが止める。
ここから先は長くなるので要約させて頂く。
まずは二番弟子であるイケメンカロニーが挑むが遠くに飛ばされ、一番弟子のピロシキが立ち向かうも同じく遠くに飛ばされる。
チャンピオンベルトを外し、瓦割りをして「この瓦が5分後のお前の姿だ。」と言い放ち、数々の攻撃をするもビンタ一発で戦線離脱。
本人曰く"足が滑った"だそうだ。
「お...終わりなんでしょうか。
地球防衛軍も壊滅し、ミスターサタンまでもが場外負け。
この地球はセルによって蹂躙されてしまうのでしょうか!?」
絶望的な実況を続けるアナウンサーを他所に、セルは仕切り直す。
「さて、茶番劇はこれまでだ。
これより、セルゲームを開幕しよう。
まずは誰から相手をしてくれるのかね?」
「まずはオラからやらせてもらおう。」
「悟空さん!?
いくら何でも...。」
サタン軍団の件はさておき。
制止の言葉を口にするトランクスだが、歩みを止めずにセルに相見える。
セルもまさかこの男がいきなり出てくるとは思わなかった。
ドラゴンボールの無い今、死ぬ事も許されないであろうから先んじて戦闘力の低い者が死なない程度にスタミナを消費させダメージを蓄積させ、望みの孫悟空に繋ぐのが適当な戦術であろう。
「いきなり貴様からか。
一番の楽しみは最後に取っておきたかったのだがな...。」
悟空のその構えの無い体から爆発的に吹き上がる黄金のオーラ。
その猛々しく吹き上がる気のオーラは、心の高揚感をそのまま具現化したような勢いだ。
対するセルも絢爛たる黄金色のオーラで応える。
セルの細胞やフリーザ族の細胞も混同している為、黄金色の中に紫の禍々しい色が度々チラつかせる。
「来い。」
沈黙の口火を切ったのは悟空。
正々堂々。
武道家の精神か、戦闘バカか、どちらかの潜在意識が働き真正面から仕掛ける。
対するセルもサイヤ人特有の戦闘意識が色濃く反映したか、真正面からその拳を放つ。
互いの拳が互いに触れる間際に二人の姿がステージより消え去る。
あまりの速さに実況を始めていたアナウンサーとカメラマンらは右へ左へ視線をやるが、肉と肉が激しくぶつかり合う鈍い音を拾うだけで何も見えない。
「流石悟空さんだ。
無駄な動きなんてひとつも無い。」
他の五人はレーダーや気を追って二人の激闘を捉えていた。
互いの拳を空いた手で受け、もう片方の手は相手の顔面のすぐ手前で受けられる。
そんな拳の応酬が一瞬の内に数十回も行われたのだが、どちらにも全くダメージとしての一撃はまだなかった。
「そらっ!」
「っ!」
拳のみであった応酬だが、ここで悟空は変化を使う。
姿勢を崩し、相手の拳をかわしながらのニールキック。
セルは変化技をかわすまでには至らなかったが、次点に放つ拳を太腿に当てて相殺。
崩されていた態勢の中、間髪入れずに土手っ腹に膝蹴りをお見舞いし打ち上げ、先回りし両手でステージへと殴り落とし、追撃の為後を追う。
ステージに手をついて追撃をかわし、反撃とも言える浴びせ蹴り。
反撃を予想しカウンターパンチを仕掛けていたセルだが、リーチの長さにより蹴りを顔面に受けることとなり、地面を二度跳ね着地する。
対する悟空も、浴びせ蹴りから距離を取りながら大きく後方に飛び退いていた。
「フフフ。」
「へへっ。」
「...ミスターサタン、もしかして彼らは物凄く強いのでは?」
「.....ガーッハッハ!
よ 予想以上に動けるようだが、今の動きが精一杯だろうな!
今の蹴りを見てればすぐに分かる!」
最後の浴びせ蹴りだけかろうじて見えた一般人達は置いて置かなければならない。
何故ならばこれは二人にとって様子見程度...互いの力量を測るためのジャブにもならないからだ。
「準備運動はこれくらいでいいだろう。
(孫悟空...流石に戦い慣れている。
他の奴よりも一味も二味も違う...。)」
「そうだな、そろそろ本気出してっか。
(こいつは想像以上だ。
ちょっとでも力抜いたらあっという間にやられちまう。)」
構えを一度解くセル。
悟空も同じく両手を下ろす。
ただしそのリラックスした状態は5秒も無かった。
ここからの戦いは凄まじいものとなった。
悟空の本気は一撃ごとに空気を震わせるも、決定的な有効打は打てず。
対するセルも有効打を打てずにいた。
唯一の決定的な一撃は完全に虚をついた瞬間移動かめはめ波。
チート技とも揶揄されるこの技...大抵の相手には致命的でほぼ確実に当たる。
その言われようの通り、初見で真正面からいきなり放たれたかめはめ波に反応できる訳もなく、セルの上半身は消え去った。
通常の相手ならこれにてめでたしめでたしなのだが、セルの細胞には再生能力を持つピッコロの細胞も取り込まれていることを覚えているであろう。
下半身は軽く跳ね、上半身は復活し、
「私の頭には身体中に移動が出来る核がある。
こいつが無くならない限り、どれだけダメージを負っても再生可能なのだよ。」
というこちらもチートとも揶揄される事実を告げる。
想像以上の実力があり、戦闘狂の血が騒いだセルは"場外負け"というルールで終わらせたくないとステージを完全に破壊する。
再生後体力が削れたセルに猛攻を仕掛け、勝負が着くかもしれなかったが、孫悟空を徐々に追い詰めていく。
「どうやら、隠していた実力に大きな差があったようだな?
仙豆とやらを食うがいい、サイヤ人の特性で多少は戦力が埋まるかもしれんぞ?」
「いや、いい...めぇった!
降参だ!
オラはもうやめとく。」
「何っ!?」
いきなりの降参宣言によりラディッツを除く全ての者が驚嘆する。
唯一の希望である男の降参。
未だに本気を出ていないであろう父の降参。
殺害対象のらしからぬ潔い降参。
トリックでなければ自分では訳の分からない技を繰り出す謎の金髪男。
まだまだやれるであろうと思われた為に衝撃は大きい。
「降参宣言です!
謎の金髪男、善戦はしましたがやはり立ち向かえるのはミスターサタンしかいなかったようです!
いよいよ次はミスターサタンのリターンマッチとなります!」
ステージを破壊された時にカメラは使い物にならなくなったので、マイクのみサタンに向ける。
だがマイクが拾った音源は、「き...急に腹痛がぁぁぁ。」と体調不良を訴える世界チャンピオンの声だった。
「孫悟空...その言葉の意味、よく分かっているのか?」
「もちろんだ。
だけど勘違いすんな、まだ戦う奴はいる。
...悟飯、おめぇだ!」
この言葉にもラディッツ以外の者は驚愕する。
全く動揺を抑えられないセルを尻目に悟空はステージのあったところから悟飯の元へ。
「悟空、お疲れ様。」
「サンキュー。
さぁ、次はお前の番だ。
思いっきり行ってこい!」
「待ってください悟空さん。
俺は...悟空さんの考えがわかりません。
悟空さんがそのまま戦えば、きっと勝てたはずです!」
その言葉は悟飯の
比較的有利な状態であったのにも関わらず、みすみすチャンスを逃すのはいい判断とは言えない。
「悪いな、オラはもうめいっぱいやってたんだ。
この先はさっき程の勝負は出来ねぇ。
だが悟飯、お前ならやれる。
学者さんになりたいんだろ?」
「けど父さん、トランクスさんの言う通りそのままやっていれば勝てていたかもしれない。」
「悟飯、お前は父さんの試合を見ていてどう思った?
まだ実力を隠しながら戦ってたと思うか?
限界までパワーを出して戦ってたと思うか?」
悟飯は前者を選んだ。
冷静に見ていて、セルも父も全力と言いながら小手調べのような戦いを行っていたと思っていたからだ。
それ故に実力を出さないうちに交代するのに驚いていたのだ。
「あの戦いはもう限界ペースの戦いだったんだよ。
俺の目にもそう見えた...と言うか俺ですら界王拳使いながらじゃなきゃ追いつけない戦いだった。
悟飯は手を抜いていたと見えたがそれは違う、お前の実力が高いからそう見えたんだ。」
「怒れ。
奴はこの星をめちゃくちゃにしようとし、未来を奪おうとしてんだ。
お前が怒って戦えば敵無しだ!
平和な世の中をアイツから取り返してやれ!」
「...はい!」
悟飯出撃。
以前より遥かに頼もしくなった背中を悟空は見届ける。
ラディッツはおもむろに巾着から仙豆を出す。
悟空はそれを受け取り、セルに手渡そうとするもクリリンとラディッツに全力で止められ、自身の喉に強引に押し込められる。
「悟空、お前何考えてんだ!」
「お前息子を追い詰めたいのかバカチン!」
「
ただ悟空がどれだけセルのスタミナを減らせたかどうか...
未だに傷一つすら付いていない体を見れば期待はあまり持てない。
割程の力は残っていると思えよう。
(さてと、とりあえずこれで頭数は足りないが原作通りに持ってきた。
...あとはここからだ。
これまでサイヤ人編、ナメック星編と必ず余計な奴が出てくる。
既に13号が出てきたから問題無いとは思うが...絶対に油断するもんか。)
悟空を回復させ、残るは悟飯とセルジュニアさえ来ればなんとかなるはずだった。
最初に異変に気づいたのは悟空、その後1秒と経たずにラディッツが気づく。
セルよりも気は小さいが、比べ物にならない禍々しい気を放つ
トランクスやクリリン・16号、そして悟飯やセルも注視する。
そいつはついに堂々とセルゲーム舞台上へと図々しく降り立つ。
「ククク、待たせたな。」
その者は誰しもが想像してもいなかった。
悟空やラディッツ...セルですら言葉が出なかった。
「初めまして...いや、久しぶりだな。」