本でも読もうかしら...(今更感)
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セルが二人...信じ難い目の前の現実に目を背けたくなる。
だが何度見直そうが、目を擦ろうが、確かにセルが二人いる。
まずラディッツが疑ったのはセルジュニアだった。
だがセルジュニアがこんな流暢に平然と会話が出来るか?
そもそもセルジュニアならもっともっと全体的に小さくてはならないと思うとその考えはすぐに消えた。
次に考えついたのはセル兄弟説。
Dr.ゲロのコンピュータが密かに2体目を作っていた...セル本人にも知らせずに。
そしてタイムマシンでこの時代へ...。
だが未来から来たのであればタイムマシンが2台あるとは思えない。
未来ではタイムマシンを作るのに設備も資源も枯渇していたのだ。
エネルギーでさえ往復分作り出すのに時間が掛かっている。
この考えもイマイチだ。
...だとしたら何か?
「貴様...一体...Dr.ゲロは何をしたと言うのだ?」
「わからないか?
では...これならわかるか、バイオテクノロジー型人造人間。」
急に新しく来たセルの声色が変わる。
その声を聞いたのは四人...セル・16号・クリリン・ラディッツだった。
声の主は数日前に完全体となったセルに叩きのめされたはずだった。
「何故貴様の声がする、13号!」
「覚えていてもらって光栄だ。
だがもう13号では無い、私はこの時代のセルだ。」
思考が誰もついていけなかった。
理想のリアクションを得られなかったため、1から丁寧説明し始めた。
完全体セルに敗れた13号は停止寸前になりながらも研究所に帰還し、修理を開始する。
更なる強化を模索していた最中に最新の情報をコンピュータに入れ込む。
その新たなるデータを元に、完全体セルに匹敵...超越する力を得る為にコンピュータが叩き出した答え。
それは13号自らが現在作成中であるセルとの融合を行えば、この世に並ぶ者のない究極の存在になれると言う答え。
あの生命体を超えるためにこの時代のあの生命体に溶け込む...皮肉にもベースは現代のセルを元にしなければならないと。
大いに迷いはしたものの、13号のデータと骨格を取り込ませるようにして完成にこぎつけたようだ。
「貴様の細胞は、私がダメージをおった時に付着した細胞片を培養液で増幅させた。
セルゲームまでの期間が10日間もあったのも幸いだった。」
「なるほど、この時代の私がかなり早期に現れたのはその為か。
...だが貴様は焦ったな、あまりに早すぎて戦闘力は私と比べ物にならない。
いくらこの時代の人間共を吸収したところで私には追いつけまい。」
「そうだな...
だが、それを解決するアイテムがいくつかある。」
最初から握られていた左手から、1つのカプセルが出てきた。
この世界での携帯型収納カプセル...ホイポイカプセルだ。
ボタンを押し空中へ放ると、PON! と小気味よい音とともに何かが現れ、地面に落ちる。
その一つ一つを見ればただのゴミにしか見えない。
こんな訳の分からないがらくたが何かの役に立つとは思えないと悟飯は思うが、完全体セルにとっては見覚えのあるものだった。
「なんだ、何を出したんだ?
誰か見えたか?」
「全然見えねえよ。」
少し離れたラディッツ達にもその光景は容易く確認出来るが、カプセルから何が出たかまでは分からなかった。
ピッコロがいれば超聴力や高視力で判明するかもしれなかったが...その役割は今回は16号が担う。
「...エネルギー炉とデーターチップ!」
「え?
そんなものが一体?」
「なんだそりゃ?」
「エネルギー炉とデーターチップ...?」
この会場で咄嗟に意図に気づいたのはいないだろう。
それが分かるのは13号を取り込んでいたセル本人と、その13号を破壊した完全体セルにしかわからなかった。
「...そうか、人造人間14,15号のエネルギー炉とデーターチップか。」
「ご名答。
流石未来から来たとか言う私だけあるな。」
データーチップはセルの両こめかみから頭部に、エネルギー炉は両胸からじっくり味わうかのようにゆっくりと飲み込まれる。
この光景を過去のデータから予感した16号は咄嗟に叫ぶ。
「孫悟飯!
今すぐ離れろ!」
「え...えっ!?」
寡黙だった16号の渾身の叫び声に咄嗟に振り向く悟飯。
その背後でセルと瓜二つだった体がゴキゴキと音をたてて変型していく。
その異様な音をあげると共に肥大・巨大化する身体に比例するかの如く、気の大きさも一段...一段と上昇していく。
あまりの異様な光景に、16号の言う通りに距離をとる。
Z戦士達も少し離れていたが、更に距離をとる。
「再び待たせたなァ。
これが俺の真の姿だ。」
合体13号の質が大きく関わったのか。
第三形態のセルの身体は大きく筋肥大し、凄まじいパワーを感じ取れる。
あまりのパワーに顔の輪郭すら変わってしまっていた。
しかしそれは、原作のパワー重視の形態と非常に酷似していた。
この形態なら気の大きさも、パワーも圧倒的にセルを超えている。
...が、その事実を認識しているのは完全体セルのみと、ほんの少しだけ覚えているラディッツくらいだった。
「...それが貴様の?
...正直に言おう、落胆した。」
「落胆したか、このパワーなら貴様をぶちのめすのは容易ィ。」
セルの落胆ぶりは声色からも伝わってくる。
時代が違うとは言え、自分が目の前の敵のパワーを上回る事にしか頭になく無用な筋肥大化に頼った形態を遂げている。
戦いとは単なる力だけのものでは無い。
力、速さ、頭脳、駆け引き、戦法、運と様々あるが、どれかが突出してるだけで勝てる相手では無いのは明白だ。
相手に勝つために相手に勝る点があればとことん突き詰めてしまえば勝てると思うのは傲りである。
「私は
貴様が人造人間17,18号を取り込んでいたように、私も人造人間13,14,15号を取り込む究極の人造人間だ。
まさにこの身体こそ、生命と機械の融合...そして双方の利点を合わせ持った人造人間。
貴様が
「言いたいことは終わったか?
私のゲームに割り込み場を乱したのだ。
...それ相応の代償は払ってもらうぞ?」
突如として完全体セルが消える。
対する究極体セルは一歩として動くことは無かったが、太い腕を振りかぶり右側を大きく振り抜く。
そのパワーは砂塵や塵を簡単に数十メートル彼方へと吹き飛ばす。
そこまでのパワーではあるが、完全体セルを掠めるまでにも至らない。
「フフフ、究極体の私とやらよ。
そんな大振りでゆっくりした攻撃なら何億年掛かっても私には当たらんぞ?」
「ブハァッ!!」
挑発するかのように完全体セルは目線を合わせるように逆さになって真正面へと現れる。
スピードでは圧倒的どころか、まるで勝負にならないと言わんばかりのその言動を潰すように頭突きで応えようとしたが、またしても虚しく空を切る。
その風圧でセルゲームの支柱の瓦礫が粉々になって地平線まで吹き飛んでいったが、セルの眼中には入ってはいなかった。
「スピードだけは自信があってね。」
「これでも本気ではないのだよ。」
「そうだな...あえて何割かと言えば。」
「これで6割というところか。」
『 究極体セルとやらよ、どうする?』
多重残像拳...これは孫悟空の技である。
だがあまりの速さに残像に全くブレがない完成度だ。
そんな残像が10体ほど、究極体セルを取り囲むように腕を組んで立っていた。
「ククク...はーっはっはっは!
落胆したのは私の方だよォ?
その程度のスピードで6割か...ならばこちらも、パワーとスピードを6割程で攻撃してみようかァ。」
究極体セルの輪郭がゆらりと動き始める。
然も準備運動であり、本来の動きとは言えない始動だ。
完全体セルもそれは察知していた。
(小手調べといこうか。)
そう思った矢先だった。
いくつもあった残像のひとつに尻尾で叩く。
究極体セルの尻尾は完全体のように収納されず、第一・二形態のように伸びている。
その代わりに先端は普通の尾のようになっており、何かを吸収・放出が出来ないようだ。
そんな尻尾を用いた攻撃は予想に反して完全体セルの左肘をあっさりとへし折った。
「おやァ?
少し力加減を誤ってしまったかな?」
「...いい気になるのは早すぎないか?
本気を出していないのは貴様だけではないのだよ。」
不条理に曲がった関節を二の腕から千切り取り、ピッコロのように再生させる。
二人とも息も上がらずに不気味な静けさの中立つ。
千切った腕を投げ捨てる。
ポトリと音をたて落ち、その音こそ再戦の起点となった。
ニヤリと片側の口角を釣り上げて笑う究極体セルが、猛然と完全体セルに殴り掛かるが、巧みにその拳を捌く。
(む...硬い!
そして反応速度も!)
互いに拳の応酬となり、徐々にその速度が速くなっていく。
その速度に耐え切れず、1発の拳が数々の戦士達が混在化された隆々たる腹の鳩尾にめり込む。
「ぐほぉっ!」
襲いかかる嘔吐感を飲み伏せ、完全体セルは空いている方の掌に気を収束させる。
放たれた数発のエネルギー弾は究極体セルの顔面に炸裂する前に尻尾で防がれてしまった。
カウンターがほんの少しのダメージで終わった直後、
鋭い膝蹴りが完全体セルの顎をかち上げる。
脳が激しく揺れほんの一瞬ではあるが、彼の意識が暗転する。
そして続けざまに究極体セルの右ストレートが頬骨を砕く。
度重なる攻撃に体勢は崩れ、大きくバウンドしながら錐揉み回転で近くの山へと突っ込んだ。
「おっとイケない...復讐心が若干先行してしまったようだァ。
さぁて...早く戻ってこイ。
土煙で見えない山肌だが、地面に落ちていく岩石の大きさが衝撃の大きさを物語っていたが...
「...ほゥ?
気が上がっていく。
そうだァ...そうでなくてはつまらないからなァ。」
顔を歪めるようにして笑う究極体セル。
自分の力で、
それがセルの望みと意思すらも吸収した13号達の望みを同時に果たせるのだ。
その思考が一瞬電脳内を駆けたが、思考は別の方へ向けられる。
爆音が届く前に崩れた山肌から超高速で抜け出た完全体セルが雄叫びを上げながら、矢のように突っ込んでくる。
彼から溢れるオーラは一回り肥大し、金色の色も更に色濃くなる。
完全体セルの全力の飛び蹴りが究極体セルの頬へとめり込む。
「貴様の実力は大したものだと認めよう。
だが、私が本気を出せば簡単に片付けられる。
13号と同じようにスクラップにしてやろう。」
そのまま背後に回り込み、首に腕を絡みつけるように腕を滑らすと、満身の力を込めて締め上げる。
「ぐ、うむぅぅぅ...ふ ふふ...クックックッ...。」
想像以上の怪力に、思わず口から苦悶の声が漏れるが、
すぐに苦しげな表情は消え失せて薄く笑い始める。
圧倒的な不利な状況での不敵な笑み。
この状況で笑うと言うのは常識では考えられない。
それを見て、逆に不機嫌な表情となるのは完全体セルである。
ギチギチと締め付けるパワーを更に強め、究極体セルの意識を絶とうとする。
「フ...フハハハハハ!
この程度のパワーで俺を倒せると思っているのかァ?」
「強がりを言ーーー!?」
締め付けている右腕の根元。
肩甲骨辺りにザクリと音を立てる衝撃。
思わず究極体セルを手放してしまう。
「き...貴様っ!」
「あまりにも背後に隙があったのでなァ。
デスソーサー!」
その瞬間、先程までの熱いような痛みが嘘のように途絶える。
それは自らの肩から腕にかけて切断された事に気づくのに時間は要らなかった。
そして突如として腹部に突き刺さる自身の倍の大きさのある拳。
そして背中には吹き飛ばないように右手まで添えられていた。
それが左右を変えて2回続く。
全ての動きを認識出来たのは全て事後である。
「~~~~っっっ!!
グヌル.......ボロォォオォオ!」
嘔吐。
胃の内容物があっという間に吐き出てしまった完全体セル。
内容物と言っても消化中の物のものではなく、自らに取り込んだと思われた18号だった。
たった2発で凄まじいダメージを受けた挙句、18号を吐き出してしまったのだ。
「ゴホゴホオエェェ...ッ...カハァッ...。
ぬァ、何だとぉ!?」
「おやおやァ?
完全体セルと言う割には随分と弱々しい。
そんなものかね、完全体とやらはァ?」
「ぬぅ...この私の力を思い知れい!!」
第二形態になってしまったセルだが、自らの気を最大限に上げて殴り込む。
その時を狙って、クリリンが18号を救出に動く。
意識は無くグッタリしていたものの、脈がある為安堵する。
遅れてやってきた16号ラディッツと共に、離れた所まで連れていく。
だがセルはそんな事にも気づいていなかった。
それどころか、18号を吐き出してしまい、体格も変わり果ててしまった事にも気づいてなかった。
「ブルルゥアアアアッッ!」
乱れのない正確な攻撃は寸分狂わず、確実に究極体セルの顔面に命中する。
ただし命中とダメージが比例する事は無い。
自分が絶対強者という自信を挫かれた焦燥感に支配された思考はひとつの結論を導き出してしまう。
勝てない
相手が圧倒的な強さを得て、攻撃がまるで効いていない。
本来は自身のパワーダウンなのだが、その事実に気づけていない程冷静さを欠いていた。
今の攻撃は相手を倒すという意味での攻撃のつもりだが、どちらかと言えば追い詰められた生物が行う最後の抵抗のような気がして余計に焦る。
そんな悪循環に陥っているも、究極体セルの無防備な身体に攻撃を当て続ける。
「フッフッ、完全体セルとやらよ。
数日前の自信はどこォへ言ったのだァ?」
「~~~~ッッ!!」
絶対的な自信がへし折られ、徐々に追い込まれていく。
この時点でやっと、自分が完全体から第二形態に退化していた事にも気づいた。
追い詰められた...この感覚は実は初めてではない。
身体が...細胞が...DNAがそれを記憶していた。
宇宙一の絶対的な支配者。
力も影響力も、悪と言われながらもカリスマ性も自負していた自分がじわりじわりと追い詰められていくその記憶が、潜在的な危機意識として現れていた。
様々な細胞を取り入れる事によって完全な生命体となった身体が、その細胞によって徐々に身体が強ばっていく。
そんな中、あるひとつの戦術がふと湧き出た。
相手はよほど自分に集中している、ならば間接的な攻撃ならば有効打になると考え、殴り続けていた腕の動きを止める。
「...究極体セルとやらよ、確かに貴様は私よりも遥かに強い。
認めざるおえないだろう。
だが、そんな貴様は受け止めることが出来るかな?
私の全力のパワーを。」
ゆっくり浮上し、気を限界まで引き上げていく。
第二形態セルの周りは黄金のオーラが湧き上がる。
第二形態ではあるが、嘘偽りの無い正真正銘の本気をぶつける様子が伺える。
対する究極体セルも強者の余裕と言わんばかりに何もせず仁王立ちするだけだった。
「おいふざけんな!
そんなの撃ったら地球が無くなる!」
この状況に大慌てなのはZ戦士達だ。
宇宙空間でも生きていられるあの二体なら問題ないが、彼らは酸素が無いと生きていけない。
というかその前に地球の爆発エネルギーで自身らが消し飛んでしまう。
「実力は認めよう...だが勝負となれば話は別だぁっ!!
ギャリック砲!」
不意をつくギャリック砲。
それが究極体セルに向けてなら全く不意なのではなかったのだが、真下に撃てばそれも不意になる。
突然の凶行、それはかつて帝王フリーザがナメック星を葬る際に用いた手段と皮肉にも酷似する事となる。
予想外の事態に、爆発に巻き込まれたら死ぬことも忘れて戦士達は地に伏せる。
この星の消滅に究極体セルを巻き込もうという算段...空中にいる自分は何とかシールドを張って生き残ることが出来るが、地表にいる究極体セルは爆発は免れないだろう。
戦いには敗れたかもしれないが、生死を賭けた勝負という点では完全勝利するという考えだ。
「クソ...よもやここまで私が追い込まれるとはなぁ...。」
シールドを張りながら一言呟く。
そして下を見る。
...おかしい。
爆発するはずの地表はまだ何も変化が起きていない。
目を見開いて更に真下を見る。
そこには無傷の地表と無傷の奴がいた。
「これくらいの事で勝ったとでも思っていたのかァ?
つくづく哀れなァ。」
言葉が出なかった。
周りの景色の色彩が消えていき、音すらも聞こえなくなっていく。
代わりに、自身の体の感覚が際立って感じるようになる。
頭から血の気が引いて目がクラクラする。
先程までの高揚的だった胸の鼓動も、やけに大きく音を立てる。
汗も滲み出てきた...。
戦っている最中に考えついた、奴を討つ最適の方法だったのだが、こうも簡単にくじかれるものなのか。
「地球の爆発にィ、私を巻き込もうと言う算段か。
悪くは無い、むしろいい考えだったが...相手を間違えたようだなァ。
その健闘の賞賛はこれでいィかな?」
究極体セルから放たれる紫状の光線。
先程のギャリック砲がシールドを張った第二形態セルに向かっていく。
即座に球体だったシールドを前部に集中させ、全力を持って抗う。
だが残念な事に、いとも簡単にシールドにひびが入り、次の瞬間には上半身が消し飛ぶ結果に終わった。
力なく地面に墜落していく下半身。
地球の消滅は免れたものの、胸を下ろす結果にならないZ戦士達は固唾を飲んで見守るしかなかった。
「再生シろ、貴様の猿芝居なんぞくだらん。」
「.......ゥゥゥううう.....ちいいいくしょぉぉぉぉおおおお!!」
上半身がせり上がるように再生した第二形態セル。
いよいよ打つ手が無くなったのか、大声を上げて地団駄を踏む。
地面は裂け、瓦礫が空を舞おうとも激昴は収まらない。
「ちくしょーーー!!
ちぃぃくしょおおおおっ!!」
ボコんと身体が大きく膨らむ。
その時は不意に訪れてしまったのだ。