弱虫兄貴のリスタート   作:バタピー

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死闘って一つの意味だけじゃないと思うの

三体のセルジュニアは蜘蛛の子を散らしたように消え去った。

夜の瓦礫まみれの街中...しかも逃走の際に気も消す抜かりのなさだった。

自分達の戦闘力と人数に分が悪いと判断したのだろう、Z戦士達や16号のパワーレーダーでも補足できなかった。

 

 

「どこへ行った!?」

 

「呆気なく逃げられたな。

気も消されたんじゃ俺達でも探せないな。」

 

「なんて素早いんだ、1匹くらいは仕留めたかった。」

 

 

悟飯や16号・18号も索敵するも発見には至らなかった。

ぐしゃぐしゃの兵士を落ち着かせ、16号に耳打ちするラディッツ。

 

「気づいたか?」

 

「...引き際が良すぎる。

...奴らは何かを狙っているだろう。」

 

(三体共攻撃の素振りをせずに消えた。

誰か一人でも何かしてくると思ったが...何してくる?)

 

 

逃げられた...そういうような気持ちよりも、セルジュニア達の呆気ない程の引き際の良さに何か得体の知れない不穏な物を感じた。

彼らの思考をもう少し考察したいのだが、いなくなった者をいつまで考えてもしょうがない。

軽い溜息を1つ落とし、ラディッツ達は兵士達のベースキャンプへと案内をしてもらう事にした。

 

 

「...うぅ...あなた達は命の恩人です。

ですが一つだけ聞きたいことがある。

背中とその胸のロゴ...レッドリボン軍なのがわかるが、君達を信じていいのか?」

 

 

ベースキャンプと言う民家のソファーに腰掛ける兵士。

もちろん着替えは済んでいる。

彼らは命の恩人...しかしレッドリボン軍のロゴがある以上、リラックスして腰掛けることは無かった。

いつでも動けるように、浅く、軽く腰掛ける程度に過ぎなかった。

 

 

「あぁ、コイツか?

俺は人造人間で、俺を作った奴がレッドリボン軍にいたんだ。」

 

「今となりゃ死んじまったし、アタシ達にはもう関係ないね。

まぁあのジジイは嫌いだったからね。」

 

「.....。」

 

「この人も味方ですよ。

...レッドリボン軍てそんな有名なんですね。」

 

 

一通り話終えると、兵士は口を噤んでしまう。

しばらく視線を落としていたが、少し後ろめたさがあるように顔を上げて話し始めた。

 

 

「...仲間もいなくなってしまったし、助けて貰った人達に隠し事は良くないから言おう。

俺はカッパー。

...元々はレッドリボン軍の将軍だった。」

 

 

レッドリボン軍にいたのは今から十何年も前。

当時は自身の名がついたカッパー隊の長を務めていたのだが、突如としてレッドリボン軍は崩壊してしまう。

その後は独立してレッドリボン軍の後釜のような組織を作る者と、既存の軍隊に身分を偽ったりして入隊する者と、完全に足を洗って別の人生を歩み始める者に別れた。

カッパー将軍は最初こそ、レッドリボン軍の後釜として自身の部下を中心に部隊をまとめ始め、カッパー統率軍なる軍隊を率いていた。

しかし、後継者が決まっていなかった元レッドリボン軍指揮下にいた各将軍同士による、レッド総帥の後継者争いに巻き込まれ、カッパー統率軍は外から中から分裂...そして解散。

今となっては将軍を辞め、一兵卒として今に至るそうだ。

 

 

「レッドリボン軍にいたなら、Dr.ゲロは当然知っていますよね?」

 

「あぁ...当時は既に人造人間8号を作り出し、9号の製作をしていた。

だが、自身の研究にしか目がないようでな。

他のことには目もくれずに研究に明け暮れていたせいで、ほとんど表に露出していることは無かった。

あまり評判は良くなかったし、俺も間接的にこき使われてた方だからあまりいい印象はないな。

今となっちゃぁ、Dr.ゲロと人造人間様の為に世界中の研究所を駆け巡ってた時の方がマシに思えるがな。」

 

 

皮肉たっぷりにそう答えるカッパー。

2回目のセルゲームの世界中継の後、この地上は酷い有様だった。

我先にとシェルターや安全な地へ駆けて行く人はまだ良い方だ。

シェルターに来る人間から金品を脅し取り、反抗するものは殺し屋を差し向ける者。

誰もいなくなった街に現れる火事場泥棒。

避難場所を得る為に銃器を用いて殺し始めるクズ共。

それが一般市民ならまだ良かったかもしれない。

他の隊の面子がそれをやっていたとしたら...止める為に同士を殺さなければならなかったとしたら...。

 

 

「人間性なんて極限状態になれば無くなってしまうもんだ。

俺らが見た事が...やってしまった事が全部本当なら...人間なんてセルに滅ぼされた方がマシだ!

こんな!

ここここんな…ううううわあああぁ!」

 

 

カッパーは立ち上がり、両腕を交差して両腕を擦り始める。

室内はそれほど寒いわけではない。

だが彼の額からは次々と脂汗が滴る。

目線は...どこにも焦点があって無く、ただただその空間に向けられているだけのようだ。

身体中がガタガタと震え始め、呼吸も短く浅く、更に酸素を貪るように速くなっていく。

 

 

「ラディッツさん!」

 

「お おい落ち着け!」

 

 

ラディッツが立ち上がったと同時に、カッパーは懐から薬を取り出してかろうじて飲み込んだ。

トランクスと共に防弾ベストやヘルメットを含めた装備品を取り外し、回復体勢にした頃にはだいぶ落ち着いた。

 

 

「...すまない、恥ずかしい限りだ。

色々と思い出して発作が起きてしまったようだ。

申し訳....ない...」

 

「...寝てしまったんですか?」

 

「...みたいだね。」

 

 

悟飯も何が起こっているのか分からず、困惑している。

 

 

「PTSDとかパニック障害なんじゃないかな?

雑誌で見た事あるんだ。

子どもを刃物で突き殺したことがいまでも頭にこびりついている。

部落民を殺したのが脳裏に残っていて、悪夢にうなされる。

子どもを殺したが、自分にも同じような子どもがいた。

夢の中で殺した領民が恨めしそうに見てくる...とかな。

おそらく彼もそんなところかもしれん。

今回は戦争ってな訳じゃないけど.....このような人を少しでも増やさないようにしなければ...。」

 

 

会話が終わると同時に、遠方から近づく気。

それも複数...数にして五体。

 

 

「セルジュニア!」

 

「なんだ、もう殺されに来たのか。」

 

「ふん、アタシらも舐められたもんだね。」

 

「とりあえず一体でも減らさないといけませんね。」

 

「よし、行こう。

クリリン、お前はここに残ってそいつを守っておいてくれ。」

 

 

えぇ、ちょっと待て! と顔に出ていたが、お構い無しに外に出る。

クリリンはさておき、意気消沈のセルは何も言わずに部屋の隅の子椅子に腰掛けた。

 

まだ炎上している複数の車両が未だに松明のように明るく照らす死んだ街に、五体の生命体が囲うようにしてそこにいた。

声も色も、そして形も同じだからわからないが、セルジュニアというのだけはわかっていた。

 

 

「みんな気をつけて。

気のコントロールも出来るようだから、どれくらいの強さかもわからん。」

 

「所詮はあの糞野郎の子分だろう?

一瞬で片付けてやる。」

 

 

17号は手近なセルジュニアの顔面を捉えるつもりだった。

拳の先端が僅かに掠っただけに終わり、あろう事か運動エネルギーをそのまま使われて、向かいの住宅を破壊する程の力で投げ飛ばされてしまった。

17号の単純な戦闘力なら、この面子でこそ下位に位置してしまうが、ここまで簡単にいなされる程やわでは無い。

次は自分達の番だと言わんばかりに、セルジュニアが次々と襲い掛かる。

応戦するは悟飯、トランクス、16号、17号と18号、ラディッツだ。

ただし、セルジュニアの強さが尋常ではない。

全員すぐにそれを察知する。

 

 

「ラディッツさん、コイツら相当手強いです!」

 

「先を見据えて戦おうとするなよ悟飯!

コイツらをここで必ず殺しておかないとどんどん増える!」

 

 

1時間に最低でも一体は増えていくセルジュニア。

ここで2.3体は始末しておきたいのだが、それどころの騒ぎではない。

自分達よりも格下どころか互角...それ以上なのだ。

ただ人造人間達が戦っているセルジュニアは、悟飯たちよりも劣るようで辛うじて有利に戦えている。

連携戦術が上手く機能しているというのもあるのだろうか?

 

 

「キキーッ!」

 

 

一体のセルジュニアが一際大きな声を上げると、またしても散り散りに退散していく。

素早く引いていく奴もいれば、舌を出して嘲笑いながら消えるセルジュニアもいた。

深追いしてでも一体は…と意気込んではいたが、気を消し瓦礫や暗闇を利用すれば余程のヘマをしてくれない限り見つける事は困難だった。

 

 

「ちっ…あいつら一体何を考えてやがる。」

 

「勝てると思って来たらやっぱり強かった的な感じか?

わからんな…とにかく戻ろう。」

 

 

 

一体も倒せず、再び元の家に戻る一行。

特にこの建物には被害は無く、クリリンもカッパーの無事も確認出来る。

 

 

「すまん、成果無しだ。」

 

「そうか。

なぁ、俺ここでずっと気を探ってたんだけどさ…アイツら本気で戦いに来てないんだと思う。」

 

 

釈然としない表情を浮かべて腰掛ける一同。

 

 

「多分だぞ?

全員じゃないけど、さっきのセルジュニアと気が少し違ってたんだ。

多分俺達の戦った奴は休ませて、別のセルジュニアが来たと思うんだ。」

 

「なるほど…って事は、向こうはこっちの体力を削りつつ、体力温存・回復しながら戦って、更にいえば時間が経てば戦力が増えていくという戦法か。」

 

「…撤退の指示をするセルジュニアは変わらんようだな

と言っても、それ以外はサッパリ分からんがな。」

 

「何か考えてる事があるなら話してくれ。」

 

 

不意に呟くセルに対し、近づくラディッツ。

ならば…と自分の考察を簡潔に述べる。

 

 

「ハッキリ言ってやろう。

奴らは今すぐには攻めては来ない。

…が、殺せるなら殺すつもりだろうな。

第一次…二次…三次と、休ませる間もなく襲撃して、被害が出ない内に撤退。

他の地に出向いてるやつが来たり、1時間に数体増えるなら、これからもっと激しく来るだろう。

体力がなくなった時が死ぬ時だ。

勝てる訳が無い。」

 

 

増えて行く敵、削られる体力、未だ本気で戦っていない的、そしてまだ姿も見せずに本気も出していない究極体セル。

そう、普通どころかどう足掻いた所で絶望しか待ち受けていないのだ。

 

 

「セル、俺はお前のように頭が良くないから目の前の事をやる事しかわからん。

けど頭が良いお前でも良く考えればわかるだろう。

ここで諦めたらそれでおしまいだが、戦えばもしかしたら生き残れるかもしれない。

お前には孫悟空の細胞が混ざってる…ならば、どんな強敵だろうと絶対諦めない心も何処かにあるはずだ。」

 

 

心にモヤモヤとしたものを抱えながら、全員の視線に耐えるセル。

彼もわかっている、今ここで腐っても何も無いことに。

 

 

「……。」

 

 

それでも背を向けて奥の部屋へと消えていく。

戦士達は追うことをせず、次の襲撃に備えて体を休めることにした。

 

 

---

 

--

 

-

 

 

セルゲームが始まってから5日が経過しようとしていた。

あれだけあった街の建物も、ほぼ全てが崩れ落ちた。

荒廃した街の瓦礫の中に、ギリギリ建物として形を保っている建物…そしてその周りに散乱するセルジュニアの死体。

あれから彼らは不眠不休で戦い続けていた。

正確に言えば最大3時間程度の睡眠は出来ていたが、幾度となく襲い掛かってくる怪物共に対抗する力に余裕は無くなっていた。

 

 

「……仙豆だ…。」

 

「すみません…ありがとうございます。」

 

 

半分に割られた仙豆を水で飲み込む。

傷や痣だらけになった体が、ある程度治っていく。

しかし、その効果が劇的にわかる程の感覚は無い。

慢性的な睡眠不足による頭痛や目眩…そして集中力の大幅な低下。

外的な傷でない、ホルモンバランスや脳内の疲労まではどうやら治せなかったようだ。

 

 

「クソ…。

奴らは今何体いるんだい。」

 

「さぁな。

ただこの数と頻度はいくら永久式とは言え無理だ。」

 

 

人造人間17・18号も永久式エネルギーとは言え、人間ベースの肉体に限界が来ていた。

このなかで唯一の頼みの綱は16号だった。

 

 

「…北から30〜60%程が22体、東から40〜50%が18体。

そのあと30秒遅れて南から60〜70%が15体と、西から70%が12体来る。」

 

「…あああああああ!!

いくら戦っても終りゃぁしねぇ!」

 

 

慢性的な睡眠不足。

完全に回復していない体を酷使し続け、90時間程断続的に生死をかけた戦いが続いている。

テレビや物語では、同じように数日間寝ずに動いてる人もいるが、ここまで極限状態なのは想像をする事が出来ないだろう。

現に、超サイヤ人化を維持するのも辛くなってきているのだ。

 

 

「一体…どれほどのセルジュニアを相手にすれば…。」

 

「わからないけど、力になれなくて…悪いな。」

 

「俺なんかたまに休ませてもらって…本当に申し訳ないです。」

 

 

トランクスも相当体力的に限界が近づいている。

既に超サイヤ人化が切れかかって戦っているのだ。

全体的に戦力がガタ落ちしている為にクリリンも昨日からぶっ通しで、カッパーを守りながら戦闘に参加している。

悟飯は子供だからという理由で夜は戦闘に参加させないでいた。

というのは建前上で、本当は悟飯がZ戦士達の最後の切り札であるからだ。

悟空…悟飯まで失ったら、今のセルに勝てる見込みがまるで消えてしまうからだ。

人造人間勢も、永久エネルギー炉のおかげでセルジュニアを跳ね除けるも、完全に数に押されている状態だった。

 

いよいよ、彼らに死というものがすぐそこまできていた。

セルジュニア達もそれが分かっているように、数の暴力で押しかけてきている。

だからこそ、この数できているのだ。

 

 

「カッパー、お前にお願いがある。

ミスターサタンをここに呼んでくれ。」

 

「ミスターサタンを…ここにです?」

 

「そうだ、頼む。」

 

 

今更あの男を?

そんな声色と表情だが、ラディッツは本気だった。

意図は読めないが、 ベースキャンプとしてギリギリ保っている家のから偵察用バイクを引っ張り出して、全力で東の都の中心へ向かう。

 

 

(あの糞アフロ野郎…生き残った時アイツだけのうのうと生きてるのは許せねぇからな。

運命を共にしてもらうぞ。)

 

 

人間、極限状態になると突拍子も無い事を考えつくようである。

16号の言った通り、全方位からセルジュニアがやってきた。

サイヤ人は金色のオーラを、その他は白いオーラが派手に吹き上がる。

 

 

「やるぞ!」

 

 

第何次になるかもわからない程に襲撃に来る中で、今回は特に数が多い。

多くて3,40体程度に対し、今回は倍近くきている。

これまでZ戦士達は、強敵に対し全員で戦うという事はあっても、自分1人に対して複数の強敵という状況は無かった。

重たい体が余計に重く、そして強張る。

 

最初こそタイマンで戦っていたセルジュニアも、円状に取り囲んでいた仲間が次々と加わる。

対2…対3…相手が増えるごとに受ける攻撃も跳ね上がっていく。

 

 

(俺は…こんな所で何を…)

 

 

第二形態へと落ちぶれたセルの体に力が入る。

目の前いる生物は、全て彼の敵であった。

それが今や、現代の自分と懸命に戦い、諦めずに拳を振るっている。

その姿はとても格好の良いものではない。

服はボロボロ。

血液体液が固まり汚れた腕や足。

土や泥や埃、そして昼夜問わず活動し、疲れ果て、隈が出来た顔。

どれを見ても酷いという表現が当てはまるだろう。

それなのに…それなのにここまで心が動かされるのは何故か?

 

 

(戦っても無駄なんだ。

大人しくしていれば楽に死ねるのだ。

何故そこまで苦しい顔をしながら闘えるのだ?

諦めるなとでも?

世の中はそんな漫画のような展開にはならない。

これは現実だ、諦めない心でどうにかなる状況ではない。

馬鹿だ、無駄なんだ。)

 

 

そう、世の中どれだけ努力したところで無駄になる事の方が圧倒的に多い。

そして世の中結果が全てであり、途中経過を見てくれる者など義務教育さえ終われば面白いようにいなくなる。

今回も同様、結果が見えきっていて今更諦めずに戦った所で無駄なのだ。

 

 

『貴様は折れてはいけない芯すらないのか?』

 

 

不意にベジータの怒声を思い出す。

絶対に折れてはいけない芯…そもそも自分にそれは存在していたのだろうか?

 

 

(俺は…私は究極の人造人間。

究極の武道家として生み出された。

私の芯…それは究極の武道家…。

今の私は…武道家?

ここで大人しく死を選べば、愚かなまま終わるだろう。

せめて死ぬのなら…。)

 

 

セルの心に再び火が灯る。

まずは追い詰められてるクリリンから助けようとした時だ。

今までベースキャンプとして機能していた家が爆散する。

セルジュニアが放ったダブルサンデーが、17,18号を外して当たってしまったのだ。

 

 

「あ…セルが。」

 

「チッ。

あの糞緑め、肉壁にもならんかったか、クソの役にも立たねぇ。」

 

 

目の前のセルジュニアに夢中でもあり、セルの態度で頭にきていたラディッツは気にもしなかったが、この機に乗じて手近なセルジュニアに尻尾を突き刺していた。

 

 

「今の俺はトランクスにすら及ばない。

ならばここにいるセルジュニア共の生体エキスを頂きまくってやるぞ。」

 

 

複数のセルジュニアがそれに気づき、5体が周りを取り囲み、全方位から同時に仕掛ける。

だが、それを全て避け切って干からびたセルジュニアを投げ捨てる。

戦闘力が上がったのもあるが、セルジュニア同士でテレパシーで連携を取っていたのが仇となっているのだ。

相手はセルなのだから、そのテレパシーの波形も読み取れて当然なのだから。

 

 

「クックック、貴様らの行動はお見通しだ。

そして、最初に生体エキスを頂いたのが相当強い奴なのも良い誤算だ。

攻撃こそ通用はしないが…これならどうだ。」

 

 

1,2日前に倒されたセルジュニアの死体を数体拾い上げ、あっという間に自らの力へと変えていく。

第二形態のまま、ジワジワと戦闘力の差が縮まっていく。

セルの復活…そして想定外の活躍。

Z戦士達も1人単位の敵が減った為、多少の隙が作られた。

その隙をついて全員が固まることが出来た。

 

 

「済まなかった、今まで投げやりになっていた。

おそくなったが…共闘させてくれ。」

 

「条件がある。

これから先この面々に手を挙げないこと。

17,18号を吸収しないこと。

協力してあのセルを倒すこと。

約束できるか。」

 

「分かった。

破った時は、遠慮なく殺して構わん。」

 

 

その間にも、セルジュニアの死体から生体エキスを吸収し続ける。

だがそれでも、ここのセルジュニア達を一掃するほどの戦闘力は身につけられない。

それでも戦力が増えるのは精神的にも少し楽になる。

だが相変わらずセルジュニアのニタついた笑みは消えない。

確かに戦力にはまだ差がある、勝てる見込みがある訳でもない。

 

 

「なんだ?」

 

「何だか嫌な予感がするねぇ。」

 

「…来た。

前方から80〜90%が40体、0.1%が8体。

そして…。」

 

「来やがったか。」

 

 

馬鹿デカい気が迫る。

さながら働き蜂を連れる女王蜂。

その存在感ははるか遠く離れたここまで及ぶ。

 

 

「今までのセルジュニアは…一体なんだったんだ?」

 

「気張れよトランクス。

ベジータの言葉を忘れるなよ、何があっても諦めるな。

どんなに強い相手でもぶち破るんだ。

悟飯、お前は悟空から怒れば最強と言われただろう?

その腕の失った意味も忘れるなよ?」

 

 

トランクスも悟飯も表情がさらに引き締まる。

クリリンには絶対死なないように伝える。

人造人間やセルにも鼓舞する。

後は…。

 

 

(ベジータやナッパは倒した。

クウラとか言うやべぇ奴にも勝てたんだ。

原作だって曲がりなりにもここまで来てる。

魔人ブウ編まで行けば帰れるんだ、こんな所で終われるか!

あの時のように限界を超えるんだ!

ヒーローのように…プルスウルトラするんだ!)

 

 

そうもしているうちに、久しぶりの奴が現れる。

 

 

「久しぶりだなァ。

全員揃っているようだが…随分とお疲レの様だなァ。

17号と18号、貴様らは永久エネルギー式のくせに疲労を感じルのか?」

 

「そこら辺のロボットと違ってな、俺達はよく出来てるんでな。」

 

「こっちはぶっ通しで戦わされてんだい。

肌に悪いったらありゃしないね。」

 

 

完全機械型の16号を除いて、全員が見るからに疲労しているのを見てしてやった顔が隠しきれない究極体セル。

波状攻撃が完全にハマったと言えよう。

確実に相手を仕留める為には、この上ないやり方であった。

 

 

「私が来た理由がわかるか?

孫悟飯?」

 

「…そんな事知りたくもない。」

 

「ふっふっふ、相当嫌われているなァ。

まぁ聞け、直接手を下しニ来た訳では無いのだよ。

…貴様らがセルジュニア達になぶり殺サれるのを見物に来てやっタのだ。」

 

 

強弱様々なセルジュニアが、円状に展開する。

これまでとは違い、全員が殺気を漲らせている。

これまで戦ったのは、あくまで殺さない程度だった。

今回こそ、痛ぶり殺せる。

 

 

「お、おい…。

これ一体何体いるんだ?」

 

「数にして94だ。」

 

「1人辺り…最低でも10体は相手にしないといけませんね。」

 

「奴らを全員倒して、そしてその後、ヤツと戦う。」

 

 

適当な岩を裁断して即席の椅子を作り、浮上して腰掛ける究極体セル。

文字通り高みの見物を決め込むつもりだろう。

 

 

「クックック…第二回セルゲームのハイライトだァ!

なぶり殺せ、セルジュニアよ!」

 

 

高らかな号令と共に、セルジュニアはZ戦士達へと襲いかかる。




」…セルの奴ほんとに殺しに来てないコレ?」


画面に映されるセルジュニアの数を見て呟く無神。
その横ではラディッツも険しい顔をしている。
強さにバラつきはあるものの、物量で確実に殺す算段の戦術に対抗出来るものなのだろうか。


「はぁ…やっぱりラディッツの体じゃぁ無理ゲーだったかの。」

「ふざけるな、仮にも俺はサイヤ人なんだぞ!
それに、カカロットの息子もまだ超サイヤ人2になってもいない。
…サイヤ人ならきっと切り抜けるに決まってる。」


と言いつつも、界王拳を使ってやっと孫悟空に届くかという強さの河野にはあまりにも酷な状況。
やはり悟飯の覚醒にしか活路は見いだせない。


(頼むぞ河野、カカロットの息子。
こんな所でくたばったら、俺がぶっ殺すからな!)


積まれた単行本を背にして、ラディッツは祈る。
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