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サヨナラとは言わないで
「…あ、知らない天井だ。」
ネタ的要素のあの有名な台詞を、まさか自分が言える日が来るとは思わなかった。
二日ぶりに目覚めたラディッツは、周りをよく見ようとするも身体が動かない事に気がつく。
頭痛も激しく吐き気もするが、環境が整って落ち着いた睡眠をとったことはかなり体力の回復に貢献したようだ。
「目覚めたようだね?」
「あ あれ、先生!」
口ひげとメガネがトレードマークの担当の医師。
ベジータ戦が終わった時にお世話になった医師が、何故かまたいいタイミングで扉を開けてやって来た。
「本来はこちらの医師が担当するのだがね、見ての通り人材不足で派遣されたんだ。
まさか、またラディッツさんがいるとは思わなかったけどね。
それにしても…なんでまたこんな大怪我しているんだ。」
半ば呆れながら笑う。
それもそうだ、身体中の筋断裂に隈がはっきりと作られるほどの酷い顔。
普通の患者では有り得ない怪我、プロレスラーや格闘家でも現れない症状に、医師はもう笑うしか無かった。
「君は一体、いつもいつも何をしているのだね…。」
「え…まぁ言っても信じてくれないから言いません。」
「フッフッフ、その体は並大抵の鍛え方をしなければつかない筋肉だ。
そして絶対安静の重症から突如として全回復…。
信じないわけがないだろう。
君は今回セルジュニアと戦ったんではないのかね?」
まさかほぼ核心に近い所まで当てられるとは思わなかったラディッツ。
「え えぇまぁ。」と誤魔化そうにも、その反応で確信に変わった。
「巷ではミスターサタンがセルを倒したとみんな信じている。
私も信じている…が、君達も見えない所でかなりの戦いをしているのだろう。
君たちの怪我の具合や、素晴らしい肉体を見ていればよく分かる。
肉体は嘘はつかない。」
「まぁ、今回はミスターサタンのおかげですよ。
実質あの人が倒したようなもんですから。」
窓の外を見れば、様々な所でミスターサタンの旗が立っている。
壊れかけたマンションの柵には、「ここをサタンシティに!」などと横断幕までが作られてる始末だ。
この街はセルジュニアがうじゃうじゃいたのだが、サタンが全て駆逐したような話になっている。
一部過剰に盛られた話になっているのだが、セルジュニアはいなくなり、証拠も無く、それでこそあの世界格闘チャンピオンがそう豪語するのだ。
見た人がいない上に、事実セルジュニアは消えているのだから、信憑性はある。
熱狂的ファンの指示も上乗せされ、世界はサタンバンザイという声で埋め尽くされていた。
「まぁとにかく、今回もしばらくは安静にしてもらうよ。
全身の筋肉どころか、睡眠不足で脳にも影響がきている。
今回こそ、絶対安静だからね!
そのかわりに、完全個室だしテレビは見れるようにしてある。
何かあればナースコールで呼んでくれたまへ。
では、ほかの人の往診もあるから、これで失礼するよ。」
医師はキチンと釘をさして部屋を出る。
仙豆は手もとに無いし、しばらくはしょうがないと思い、再び眠るラディッツ。
こればかりはどうする事も出来ない。
今だ頭痛のする頭を横に向け、大人しく夢の中に引きこもる。
「次の患者はどこの病室かね?」
「次は…26号室です。
Dr.ブロイラー。」
「あぁ、ありがとう。」
名前を呼ばれた医師は、再び往診のために歩き出す。
彼の顔は、悪くなかった。
(次は、あの人の身体を完璧に調べないとな。
S細胞、そして身体の特性と構造…全てが興味深い!
今のままではダメだ。
更に研究押し進め…肉体を完成させるのだ!
ブロイラーと呼ばれた医師は回診の為に歩を進める。
足音が遠のいて行くことを扉越しに確認すると、ラディッツは動き始めた。
寝ようかと思ったがやらねばならないことを思い出した。
気を探ると彼がすぐ近くにいるのはすぐに分かる。
ベッドの横に備え付けられていた車いすに武空術で飛び乗ると、ある部屋へ向かい、扉をノックする。
「なんだ、起きてたのか。」
「はい。」
隻腕の戦士 孫悟飯。
今回の真の英雄。
彼もまた、別の医師に絶対安静を言い渡された口だ。
悟飯は真面目にその忠告を守っているようだが、病室の机の上にはなぜか参考書が高く積まれていた。
「…お前は大変だな。
地球を救った数日後にはもう勉強しているのか。」
「母さんから渡されたんです。
今は安静だけど、暇があれば必ず読んでおきなさいって。」
セルとの戦いが終わったらキチンと勉強する…。
まさか傷も癒えてない内からやらせるなんて何て親だろう…とゾッとするラディッツ。
自分が親なら先ずは体を休めさせるのだが…それも何も言わずにこなそうとする子も子で問題だと思うのだが。
「悟飯、気晴らしに屋上行こう。
なぁに、先生や母さんにはバレない様にな、な。」
少しバツの悪い表情になるが、同じように車いすに飛び乗る。
話したかったのだ。
他の人を除いて、二人きりで。
誰もいない屋上に来てしまえば、何も気にする事無く車いすから立つ。
リンゴジュースとブラックコーヒーを自販機で買い、何も言わずに二人はベンチに腰掛けた。
「…俺、正直もう駄目だと思った。
セルが、あんな化け物じみた変身なんて知らなかったし、知らない人造人間だって出てきた。
俺の知らない展開ばかりになるし、もうどうしたらいいのかわからなかった。」
「いえ、ラディッツさんが皆を率いていなかったら、俺たちはあっと言う間にセルジュニア達にやられてました。
諦めずにいたから、セルを倒すことができたんです。
とても感謝しています。」
「…そうか、それならよかった。
でも…それでもすまなかった。」
悟飯の言葉に嘘は無かった。
紛れも無く、父親 孫悟空がいなくなった瞬間から、彼は心の支えだった。
彼がいなかったら、途中で心が折れていただろうとも思っていた。
それでも、ラディッツの心は晴れない。
何故なら、守ってもらってしまったから。
自分がそのトリガーとなってしまったのならば、自分で収めなければならないと思っていたからだ。
ターレス、クウラ機構戦隊とクウラ、人造人間13・14・15号、究極体セル。
元々ドラゴンボールを知らないが故に、その存在すらわからない敵もいたが、間違いなく単行本にはいないイレギュラーなキャラクター達。
それでも乗り越えていくZ戦士達。
それについていけなかった河野。
(俺は…弱い。)
精神と時の部屋で、他人の弱さを責めた。
己も責めた。
結果、悟飯はその自分の弱さを克服し、自分は守られた。
自分は結局、何も変われなかったのだ。
味方が…仲間がやられそうな時、助ける事が出来なかった。
強くなると言う事は、絶対に勝たなきゃならない時に、戦える力を身に着けておく事なのだから。
何とかなるなんてそんな楽観的な都合なんざ、相手は聞く訳が無いのだから。
だからこそ今回は、ラディッツは悟飯の足手まといになり、その全てを悟飯は守って見せたのだ。
「俺、もっともっと強くなるよ。
今回は、悟飯や悟空に助けてもらったんだ。
この恩は、忘れないよ。
…ってかお前の腕、ドラゴンボールが集まったら治してもらわなきゃね。」
「俺、考えてたんです。
失くした腕は、そのままにします。」
「それはダメだ。
この先もどんな強敵が来るかわからない。
その時に万全の体でなきゃ、それが命取りにもなる。」
「これは、これまでずっと甘えていたからこうなってしまったと思うんです。
そのせいで父さんは死なせてしまったし、ピッコロさんは二回も死なせてしまった。
ここで元に戻してしまえば、いずれ忘れてしまうと思うんです。
僕は弱虫で調子に乗りやすい…だからこそ、この腕を戒めにしなきゃいけないんです。」
その言葉は、とても10歳辺りの子供の重みでは無かった。
それ程に彼の表情や目は語っていた。
もう二度と自惚れない。
4歳の頃からだ。
全てはラディッツに拐われ、怒りにより潜在能力が浮き彫りになった時から、熾烈すぎる闘いに参戦せざるを得なかった悟飯。
闘いが誰よりも嫌いなのに、潜在能力の高さゆえに頼りにされてしまった悟飯。
セルとの戦いを終わらせ、学者さんになることへの希望を繋いだのだが、この経験が彼の進むべき道を決めさせてしまった。
「僕ははっきり言って戦いは嫌いです。
そして、将来はもちろん学者になりたいんです。
…が、父さんやピッコロさん…僕の知る人に危害を加える人がいるなら、俺は戦います。
だからこそ、
平和な未来は訪れた。
その代償は希望ある若者の腕一本だけでは無かったようだ。
出来れば悟飯には、原作通りに学者にさせて、魔人ブウ編に繋がるような戦いはさせたくなかった。
戦いが嫌と言う彼に戦闘を無理強いせず、穏やかに過ごして欲しかった。
彼を思ってそうしたかったのだが、今の彼の目はその様な未来は歩まない覚悟が出来ていた。
「…わかった。
悟飯、本当はお前に戦っては欲しくなかったんだ。
お前は悟空とは違う、サイヤ人だが戦いたくないなら戦わなければいい…そう思っていた。
が、現実はそう上手くいかないのもわかった。
だからこそ、お前がこれから強くなる為に必要な事を言おう。
感情のコントロールだ。
これまでお前は怒りにより爆発的に潜在能力を発揮してきた。
逆に言えば、怒りが無ければ強さを引き出せない。
怒り無しで潜在能力を発揮し、その凄まじいパワーをコントロールする…秘めた力を必要迫られたときでは無く、自由自在に操れる様にするんだ。」
「怒りの…感情のコントロール…。」
「そうさ。
怒りのままに力を出せば、そりゃあ単純に力は出るさ。
だけど怒りのパワーは長続きしないし、視野も、思考も狭まり止まりがちになるからな。
肝心なのは、怒った時でも心を制する事が出来ること。
怒りと冷静さを同時に持ち合わせる事が出来れば理想…難しいけどね。
これまでのお前は怒りにまかせて、その時だけ強くなるだけなんだ。
やり方は個人で変わるだろうから、ここからお前はしばらくは悩むだろうけど、頭のいい悟飯なら出来る。」
怒っていても、客観的に自分を見れるような冷静な心を持ち合わせる。
…それが出来る人間はそうそういない。
子供なら尚更難しくなるだろう。
それでも悟飯の目は迷わない。
ただひたすらに真っ直ぐ、ラディッツの目を見る。
「やります、やってみせます。
俺は強くなるんです。」
「おう、俺もまずは超サイヤ人2を目指す。
いつまでも悟飯に助けられちゃ堪らんからな!」
『 ラディッツさん聞こえますか?
たった今、地球のドラゴンボールが揃いました!』
そんな時だ、頭の中に
これでようやく、Z戦士達や死んでしまった人間達を復活させる事が出来る。
「お待たせしてすみません!」
「うおっ!
後ろかよ。」
ミスターポポの絨毯で既に後ろに回り込んでいたデンデとポポ。
もちろんドラゴンボールも揃っている。
だが、こんな病院の屋上で神龍を呼び出す訳には行かない。
まずデンデは、悟飯とラディッツの治癒を施す。
これにはまたしても例の医者を仰天させる事となるが、経過観測として何回か通院するのが条件として、病院から出してもらえた。
「はぁ…またあの先生に質問攻めにあったよ。
『またあなたは全快ですか!
この子も一体どういう身体してるんですか!?
今回は特別に大目に見ますが、後日検診に来なかったら実験材料としてモルモットとしますからね!』ってさ。」
「ははは、悟飯さん達も辛いものですね〜。」
「俺達、デンデ君のお陰で医者いらずだもんね〜。」
笑いを抑えきれないデンデは必死に平静を装っているものの、その気苦労のおかしさに顔が綻びそうなのを耐える表情が手に取るようにわかった。
ミスターポポの無機質な視線に耐えきれず、そそくさと絨毯に乗り込み急いで天界へと向かう。
天界では、既に生き残った戦士達は全員揃っていた。
「あれ、クリリンは病院じゃ無かったのか?」
「俺は比較的軽傷だったからな。
命に関わらないと分かると直ぐに追い出されたよ。
18号も一緒さ。」
「あんなつまらない所にいつまでも閉じ込められたくないからね。
逆にありがたいもんさ。
…で、そこの緑のガキ。
ここに呼び出すって事は、それ相応に何かあるんだろうな?」
「この方 地球の新しい神様。
失礼 ダメ。」
戦士達も集まって居たのだが、ブルマや亀仙人を筆頭に、その他のいつもの面子も集まっている。
ワイワイガヤガヤ…みんな期待に溢れているのだ。
仲間が生き返るのを。
「じゃぁデンデ、そろそろ始めてくれ。」
「はい、わかりました。
出よ神龍!
そして願いを叶えたまえ!」
空が暗くなり、7つの玉は光り輝く。
その玉からは巨大な龍が昇り、空を覆い尽くすように身体をくねらせ、その目はこちらに向ける。
「さぁ願いを言え。
どんな願いも3つ叶えてやる。」
「3つ?
前までは一つだけだったのに…今回は随分気前がいいんだな。」
クリリンの言葉で、まだ神龍の事を詳しく話していない事を思い出したラディッツ。
神龍への願いの前に、その説明をまず行う。
「って事は、願いは3つ叶えられて、尚且つ大勢生きかえるのか!」
「ですけど、沢山生きかえらせたら願いは2つになるんですね。」
「まぁ神龍次第だと思うからわからんけど。
そうだよな?」
「…願いを言わないのな「そうですね、今回はそういう風にしてあります。」
「3つもあるなら1つは良いよな、JDのパン「ウーロンあんた!
ぶっ殺すわよ!!」
「どうでもいいけどさ、これ以上卑猥な事言うならアタシも手伝うよ?」
「すすすすみません!
殺すのだけは許して〜!」
「…あの〜、そろそろ願いを言わないなら消えますけど?」
---あーでもないこーでもないで3分後---
「願い事、決まりました!」
「あぁ、やっとですか…。」
くたびれ気味の神龍はそっぽを向けていた顔を元に戻す。
願いは決まった、最低2つでもなんとかなる。
デンデが言うのではなく、ラディッツが代表して口を開く。
「人造人間が現れた時から死んだ人を、超極悪人を覗いて全員生き返らせてもらって、人造人間達と戦った戦士達だけをここに連れてきて欲しいんですが、ベジータは超極悪人になりますか?」
「願いが2つっぽいし長いな…サービスで一つの願いにしてやろう。
ベジータは極悪人では有るが、超極悪人ではない…生き返らせてやれる。」
「ならば、それでお願いします!」
「…まぁ容易い願いだ。」
瞳が一際赤く光ると、目の前に絶命したZ戦士達が表れる。
ただし1度生き返った者まではダメみたいで、ベジータ・トランクス・16号・17号がこの世に帰ってきた。
さらにセルまで。
「!!??」
「お前まで!
何故生き返った!?」
「落ち着け落ち着け!
超極悪人じゃないんだから!」
「そうだよ、セルがダメならベジータだってダメだろう。」
「貴様、舐めた口叩けないように俺がぶっ殺してやろうか?」
宥めるラディッツの後ろで青ざめるクリリン。
その姿を見てフンッとそっぽを向いて腕を組む。
せっかく生き返ったというのに機嫌はすぐに斜めになってしまったようだ。
いや、本来馴れ馴れしくする気が無い彼にとっては通常運転なのだろう。
そのやり取りの影で、セル自身も自分が生き返った事が信じきれずに呆然としていた。
「…ラディッツさんに感謝するんだな。
貴様は本当は、そのまま地獄にいるべきだったんだから。」
悟飯はまだ警戒を解かない。
それは17号も、生き返った16.18号も同じであった。
究極体セルとの戦いで共闘したとはいえ、そう簡単に信頼が得られるものでは無い。
それをセル自身も分かっている。
「…そう構えるな。
厄介者は消えよう。
だが、この借りと約束は忘れないからな。」
セルは背を向けて、天界から飛び降りる。
行き先はわからないが、地球人達を殺しに行くような気は感じられなかった。
1人にさせてくれ…第2形態の背中が去り際に言い残しているような気がして誰も止めなかった。
「そう言えば、悟空の奴やっぱり2回死んでるからダメなのか。」
「いえ、ナメック星のポルンガなら生き返らせれるはずです。」
『よぉみんな、オラだ!
おらは生き返らせなくていいぞ!』
『悟空!?』
「あの世から界王様通じて喋ってんだけどよ、ちょっと聞いてくれ。
前に誰かが言ってたけどよ、オラが色々悪ぃ奴を引き寄せてるって言われてさ。
確かにそんな気がするし、オラがいねぇ方が地球は平和な気がすんだ。
なんかよくわかんねぇけど、閻魔のおっちゃんがあの世にいれば特別に身体付けてくれて、歳までとらねぇようにしてくれるってさ!
あの世にはほかにも過去の強ぇ奴が沢山いるらしいし、オラはこのままでいい!」
以下にも孫悟空らしいと言えばらしい。
前半よりも後半が魅力的だから死んだままがいいと思っているのだろう。
あまりの
「だからよ、チチや悟飯には悪ぃが生き返らせなくていいや。
オラがいなくたって悟飯やラディッツがいるし、しっかりしてるからな。
というわけで、いつかみんながおっ死んじまったらまた会おうな、ばいばーい!!」
小学生の別れ際のような声色で消えていく彼の声。
そのせいか想像以上に悲しいお別れをせずに済んだが、何だか違和感のある今生の別れかたをしてしまった。
「さぁ願いは叶えた。
次で最後の願いだ、さぁ言え。」
「やはり2つしかないか。
じゃぁクリリン。
お前、願い叶えたそうにしてるから言っていいよ。」
「えぇっ!?」
叶えたいと言う気持ちは言い出すつもりはなかった。
正確に言えば、誰もいないのならば勿体ないから言おう程度の物だった。
ラディッツに聞いても願望は無い、悟飯に聞いても同じ答えだった。
それならば…
「か 改造された人造人間達を、人間に戻すってことは出来ますか?」
「「!?」」
「それは出来ない、私の力を遥かに超えるからな。」
「ですよね…。
ならせめて体内にある爆弾くらい取り除いてくれませんか?」
『え!?』
あまりの願い事に、一同驚きの声を上げる。
確かにあのセルを倒す為に共闘はした。
誰か戦士達を殺した訳では無いが、Dr.ゲロが造り出した人造人間である以上、味方であるとは言い難い。
その上トランクスにとっては自分の敵であり、師を殺した仇である。
「どうしてです!?
クリリンさん、そいつらは人造人間ですよ!」
「わかった、願いを叶えよう。」
「貴様!!
自分が何を言っているのか分かっているのか!?」
「願いは叶えた、さらばだ。」
「わかった、クリリンさんは人造人間が好きになったんだ!」
「具体的に言うな!」
「違うぞ悟飯、"愛してる"って言うん「いい加減にしてくれ!」
「…最後まで無視なのね。
…グスン。」
ドラゴンボールは7方向に飛び散り、神龍が消えて、空が明るくなる。
その短い間に、続けざまに悟飯とラディッツの頭に真っ赤なたんこぶが作られていた。
そのたんこぶ以上に、クリリンの顔は真っ赤になっていた。
彼の目には、自爆装置と爆弾が取り除かれた感覚に驚いている二人が映る。
どんなに彼女を庇おうも、彼女に尽くそうも、クリリンには絶対的に不利なのだ。
「いいんだよ…俺には不釣り合いなのさ。
あの子よりも強くもないし、背も小さいし。
高い鼻もないし、ダサい丸坊主だし、弱虫で臆病だからな。
そんな俺より、隣にいる17号ってやつの方がよっぽどお似合いなんだ…。
互いに人造人間になっても、二人が幸せになってくれるならそれでいいんだよ。」
17号はきっと彼女のフィアンセなのだろう。
でなければずっと2人でいるはずがないし、一緒になって人造人間に改造されている訳が無い。
美形同士、二人が付き合っているのならば…それはそれは、とてもお似合いなカップルだ。
(俺なんかが叶う訳ないよ…。
けど…せめて体から爆弾さえ無ければいいと思っただけなん「何を勘違いしてるんだオッサン、17号は双子の弟だ。」
そうだよ、双子の弟の方が俺より格好良い…「え!?」
「俺はフィアンセでもボーイフレンドでも無い。
良かったな、まだフリーだぞ?」
クリリンの反応は、なんともまぁ気の抜けた返事である。
てっきりそういう仲だと思い込んで色々と本心をさらけ出してしまった。
彼らの言い分に嬉しさ半分、その本心を言葉にしてしまった恥ずかしさと、嘘であってほしさ半分だ。
「え…じ じゃぁ「自惚れるなよハゲのオッサン、私は助けて欲しいと言った事も無いし爆弾を取って欲しいとも言ってないからな!
そんな事でアンタに惚れるとでも思った?
行くよ17号。」
「あっさりフラれたな。
じゃぁな。」
「そ そんなぁ〜…。」
セルに叩きのめされた時よりもダメージが大きい。
言葉って…こんなに殺傷能力あったっけ?
膝から崩れそうで、涙すら流しそうなのを必死になって辛抱しながら思い起こす。
唯一の味方の戦士も、戦闘以外の事に関してはズブの素人の為に援護のえの字すら出来ずにいた。
ベジータに至っては興味すらなくそっぽを向いて別の思考をしている始末である。
さっさと神殿の端まで行き、17号が姿を消し、18号もいざ降りようとした時だ。
「…またな。」
最後にそう言って消えた。
さよならでは無い、またなと言ったのだ。
「クリリン良かったな、またな だそうだ!」
「喜んでいいのかな、最後にけちょんけちょんに言われたけど。」
「た 大丈夫ですよ!
嫌いな人ならそんな事言わないですよ!」
必死のフォローにより、先程まで放っていたドス黒いオーラが消え去った。
少なからずこれで17号が嫌うことが無くなった事は、ラディッツにとって二重の意味でホッとしていた。
神龍は願いを叶えたから消えた。
地上の一般人は生き返った。
他の死者はナメック星のドラゴンボールが集まるまで待つしかない。
今やるべき事は終えただろう。
「これで…終わったんですね。」
トランクスがぽつりと呟く。
そう、終わったのだ。
彼の時代では無いが、事の収束に安堵の声を出す。
人造人間19・20号。
そして13・14・15号。
絶望の未来の歴史に近い程の、戦士達の犠牲。
精神と時の部屋。
人造人間セル。
更に究極体のもう1人のセル。
超サイヤ人を超えた、若き師。
だがこれで終わりではない。
終わったのはこの時代の戦いだ。
まだ自分自身の時代には、凶悪な人造人間が二体残っている。
その二体を消し去らない限り、終わったとは言えない。
そしてセルも。
「タイムマシンで戻って、人造人間達を…セルを倒せば、全てが終わる。」
「そうだな。
そうだ、これからの事を話さなければならない。
トランクス、これは君にも聞いてもらわなければいけないかもしれない。
魔人ブウについての話だ。」
『魔人ブウ?』
あまりに身に覚えの話に、全員が眉をひそめる。
このタイミングで振った話だ。
絶対いい話では無いだろう。
ましてや自分達の未来を知る者が話す話…関係ないなど有り得ないだろう。
「なんだかふざけた名前だな。」
「まさか…まだ人造人間が残ってるって訳じゃねぇだろうな?」
「大丈夫、人造人間はもう終わりだと思う。
この話は今から数年後…悟飯がハイスクールに通い始める辺りの話だ。
トランクスの時代に出てくるかわからないけど、頭に入れて置いて欲しい。」
ラディッツは知っている限りの事を話す。
魔導師バビディと暗黒魔界王ダーブラ。
そして人間の何かしらのエネルギーを吸い取って復活する魔人ブウ。
登場から復活まで…もちろん洗脳されたベジータと悟空…超サイヤ人3、アルティメット悟飯までこと細かく話す。
「ま まだバケモノが残ってんのかよ…。」
「魔人ブウ…。
悟飯さんの超サイヤ人2ですら凄まじい強さなのに…それすらをも超えると言うのか!」
「超サイヤ人3…まだ更に上がありやがるのか。」
「俺にそんなに潜在能力があるのか…。」
「各々色々と考えがあるようだが、これまでまともに節目を迎えた試しが無い。
俺ももうこの記憶が10年以上前だからな、本当にこの通りには行かないはずだ。
少なくとも魔人ブウやダーブラがこれよりも強いとか、他に新しい敵が増えている可能性が高い。
下手したら、数年後なのに数カ月後に来るとか言うレベルで変わってくるかもしれん。
これは、俺が知ってる最後の強敵だ。」
ドラゴンボールの話は魔人ブウが最後。
この戦いを無事に終えれば、晴れて河野は元の世界へ帰れる。
ドラゴンボールGTと言われればまだ先があるが、ひとまず漫画を主体にこの世界が飛ばされているのならば…。
(この面々と一緒に居られるのも…あと数年「おい、あのクソジジイを呼べ。
その情報が確かなのか確かめさせろ。」
人が少し感傷に浸ってる瞬間をぶち壊すベジータ。
心の中で舌打ちしながら渋々あの神を呼ぶ。
ほんの数秒間が空くが、例のクソジジイは現れた。
「誰がクソジジイじゃゴルァ!
多少は敬えベジータ!」
「おい、コイツの言っていることは本当か。」
「無視かテメェ!
チッ…嘘では無い。
ワシも漫画以外で出てくる敵には驚いておるが、そう言うのを抜きにすればこやつは正しい事を言っておる。」
「それなら安心したぜ。
ならカカロットはまた生きて戻って来るという事だな。
クックック…この俺様がナンバーワンだとカカロットの野郎に認めさせる事がまだ出来るという事だ!」
「そういう事は、まずトランクスやラディッツの強さを上回ってから言えよ。」
無神の言葉など今のベジータには入らない。
孫悟空はもう二度死んでしまったので超えられぬまま。
孫悟飯は自分を超えてしまった。
悟空を超えると言う大きな目標を失い、次の世代の台頭と来れば、ベジータには戦う理由が無くなっていただろう。
だがまだ奴は更なるレベルで生き返ってくる。
また強敵が現れる。
ならば自分はどうするか。
孫悟空を笑顔で出迎える?
強敵は次世代に任せて隠居する?
冗談じゃない。
(超えてやる…超えてやるぞカカロット!
超サイヤ人2だろうが3だろうが、俺様はそれすらも凌駕する程強くなってみせる!
待ってろよカカロットォ…。)
「あー…ダメだ聞いてないや。
とにかく、全員今以上に修行に励め。
特に孫悟飯、お主は本来勉学に明け暮れてほぼ成長せずに足でまといになりかける。
勉学も大切じゃが、確たる信念を見つけたのならば修行は怠らぬように。」
「俺が…足でまといに…!?
…わかりました、俺ももっと強くなります!」
無神は満足したように笑うと消える。
これで変化する未来に対応出来るかもしれない。
無神が消えた事により、話のおおよその区切りが着いた。
これで…本当に人造人間編が終わったのだ。
トランクスの旅立ちに再び顔を合わせる約束をし、神と同化した為に残る事にしたピッコロを除いて、各々帰る場所へと向かっていった。
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数日後、カプセルコーポレーションでトランクスのお別れ会が開かれた。
と言っても、人造人間とセルを倒したらまた報告に来るつもりらしい。
「未来の私に伝えておいて頂戴。
人造人間になんか負けるんじゃないわよ!
…ってね!」
「はい!
こっちの母さんも、お体に気をつけて。」
タイムマシンへ乗り込むと、ハッチが閉まっていく。
ハッチ越しに周りの面々を見渡す。
自分の時代には、母親以外皆死んでいる戦士達ばかりだ。
ラディッツと言う全く知らなかった存在もいた。
だが悟空の兄と言うこともあり、とても頼もしい存在だった。
師である悟飯も未来の時より幼いのにも関わらず、芯の強さは変わらず強さはそれ以上だった。
「俺は皆から色々な事を学びました。
本当にありがとうございます!」
ふわりと浮かぶタイムマシン。
周囲を取り囲む仲間達から離れた所に一人の男が立っていた。
いつも通りだった。
ムッとした表情のようにも見える彼だが、今回ばかりは違った。
瞳はトランクスを真っ直ぐに見据え、腕組みから僅かに見える別れのサイン。
(元気でなトランクス。 人造人間やセルなんかに負けるんじゃないぞ。)
(父さん…俺は必ず…人造人間やセルを倒して、平和な未来にして見せますよ!)
トランクスの今の力量なら、間違いなく人造人間とセルを倒すだろう。
その吉報を待ちながら、戦士達は次なる敵へ向けて修行を積む。
次なる敵は今現在最強の悟飯よりも格上。
立ち向かえなければ、セル戦以上に死人が増え、自らも死ぬだろう。
ある者はさらなる危機に備え。
ある者は超えられなかった奴が生き返った時に自らが最強を示すが為。
ある者は甘えの戒め、償い、そして大事な人を必ず守る為。
ある者は絶対に生き残る為に。
再び彼らは、より強くなる為に鍛錬に励む。