遊戯王SDV スピリット・ドライヴ   作:【新鮮なる闇】

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 続けてどうもアポリアです。

 新規カードがたくさん判明したここ最近、嬉しい事もあれば悲しい事もある。

 そんな現実でも自分は生きていることを何故か実感している此処最近です。


No.0 僕と私のプロローグ
入学試験のジャッジメント


  童実野町

 

 決闘者《デュエリスト》の聖地とさえ呼ばれたこの町は多くの技術により再開発されたことで発展し、多くの高層ビルが立ち並ぶこの町はネオドミノシティと呼ばれるようになった。

 

 だがネオドミノシティは過去に起こった未曾有の大災害、ゼロ・リバースにより被害を受けなかったシティサイドと、甚大な被害を受けたサテライトサイドに分断されたことでネオドミノシティは二層の格差社会となった。

 しかしモーメントの開発者である不動博士の息子にしてサテライトの英雄 不動 遊星の活躍により、完全な復興を果たしたことで本来の姿を取り戻した。

 

 そしてネオドミノシティで行われたワールド・ライディング・デュエル・グランプリ――WRGPの終了直後に上空に現れた謎の巨大建造物が落下してくるという大事件があったがWRGPの優勝チームとなったチーム・5D'sの活躍により、阻止された。

 

 その巨大建造物落下未遂事件から十年。とある少年がネオドミノシティに来ていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ふ、こ、う、だあぁぁぁぁあぁぁあぁぁ――ッッッ!!!!」

 

 ネオドミノシティ。海の上に建設されたレーンの脇に有る通常道路で全速力で駆け抜ける一機のD・ホイールがあった。

 後部に付けられた白い翼の装飾とあちこちに入った黄色のパーツ、バイクの胴体には動力が虹色に光り輝いている。

 D-ホイールは近年の法律改正で操作補助のAI搭載が義務付けられたことにより、ライセンス取得年齢が引き下げられた。

 

 そんなネオドミノシティのサーキットをD-ホイール――【シャイニー・スワロー】に乗っているのは一人の少年だった。

 体の線は細く、小柄でヘルメットで見えづらい顔立ちも何処か中性的で女装も似合いそうだ。

 彼の名前は光道(こうどう) 遊理(ゆうり)。なぜ彼がこんな叫びを上げる羽目になったのか、それは視線の先に広がる光景が答えだった。

 

「――いけ!! 《 X (ダブル) X (エックス)-セイバー ガトムズ》! 相手を蹴散らせ! セイバー・スラッシュ!!!」

 

「迎撃しろ! ジャイアントレーナー!!」 

 

 ついさっきまで通っていたサーキットを二台のD・ホイールがに乗った二人の決闘者が召喚した二台の大剣を背負い、赤いマントを羽織った白銀の鎧纏う巨漢の鎧騎士と背中に無数のバットを背負った巨漢の熱血戦士がバットと大剣を激しくぶつかり合わせていた。

 

 そう、このライディングデュエル専用のデュエルレーンは一般道との共用であり、ライディング・デュエルの申請が行われるとライディング・デュエルの方が優先されるため、コンピューターによって決定されたルート上を走行している関係ない車両は速やかに退避しなければならない。

 そのせいで予定していたルートを通ることが出来なくなり、彼は急がざるを得なくなってしまった。

 

『――急ごう、遊理!!』

 

「んなもん僕が一番わかってるわ! ったく、最短ルートは……このまま全速前進だぁ!!!」

 

 そんな彼が近年搭載が義務付けられたオートパイロット用サポートAIで道を検索しながら走るD-ホイールに並走するように浮かんでいる半透明の少女の姿があった。

 

 

 

 

 

 

                *

 

 

 

 

 

 

 彼女の名前は天音(あまね) 美花(みか)という。

 

 

 五年前に海上で起こった豪華客船沈没事故。結構な大事件となって無論、新聞にも載ったほどだ。

 生存者は約半数以下で乗客の六割が亡くなってしまった。かくいう僕もあの事故に巻き込まれ、今では事故の事はよく覚えていないのだが収容された病院でのことはよく覚えていた。

 

 薄暗い病室、言葉の通じない看護師、輸血用の管や電極を付けられ、全身に包帯を巻かれている自分。だけど父の姿も幼馴染の姿が無かったこと。

 そんな薄暗い病室の片隅で目覚めた僕は不安だった。寂しかった。辛かった。

 

 そしてどんどん自分自身の感覚がなくなって消えていく。そんな異様で異質な感覚に襲われたのだ。なぜこんな感覚に襲われてしまったかなど分からない。

 だがその感覚はなんとなくで恐ろしいものだという事は分かった。

 

 必死にもがこうとするが体は動く気配はなく、どんどん、どんどん、自分自身の感覚が消えていく。これが死というものなのだろうか。

 目の前の闇が無限に広がっていく。自分がおかしくなりそうだった。そして自分が消えかけた直前だった。

 

『大丈夫だよ……』

 

 そんな中、幽霊の様な存在になった彼女の声を、彼女の言葉を聞いたのはこれが初めてだったんだと思う。

 生きていたはずの彼女がもうこの世のものではないと言う事はすぐにでも分かった。人は薄らと光輝きながら半透明で宙に浮かない。

 そんな彼女が僕の目の前に現れてくれた。闇を照らしてくれた。引きずり戻してくれた。彼女の輝きに祓われていくかのようにあの感覚が消えてなくなっていく。

 

『私が側にいるよ……泣かないで。私が側に居るから』

 

 消えかけたような気がする僕を彼女の存在が引き戻してくれたのだ。

 そして彼女は僕に憑りつく幽霊みたいな精霊らしきものになっており、その日以来、僕にはカードの精霊というものが見えるようになった。

 

 

 

 

 

 

                *

 

 

 

 

 

 

 

 天音 美花という少女が事故で行方不明になってから三年が過ぎた。

 彼女自身この状況を気にしていないどころか何処か楽しんでいる節があるが彼女が見えるのは僕だけだ。

 美花のお母さんに言っても信じてもらえないだろうし……だけど何時か彼女を元の体に戻す。それが今の僕の目的だ。

 

 そのために僕はオカルト関係を中心に様々な事を調べたが途中で捜査を断念せざるを得ない事態に何度も陥った。

 

 千年アイテム、闇のゲーム、デュエルモンスターズの精霊、星の民の伝説、イリアステル。

 

 数多くの文献を探ったがどれも確証はなく美花を元の身体に戻してやらないといけない。

 僕にしかできない事だから。それが僕にできる◆一の◆◆だから。

 

『――間ぁに合ったぁ!!』

 

「……急がないと!!」

 

 そんな事を考え、運転していると試験会場の前までたどり着いた。

 盛大に遅刻した為、減点は必死だが筆記の方は結構良い点数を取っていたから実技で挽回すれば無問題だ。

 そう考えながら会場前にスワローを停車させ、受付目がけて走り抜ける。その時だ――

 

『ちょっ!? 遊理、まえっ!!』

 

「えっ!? うわぁっ!!?」

 

「うおっ!?」

 

 前を見ないで進もうとしたせいで目の前に現れた青年に勢いよくぶつかってしまった。

 その衝撃で自分の腰についていたデッキケースからカードが何枚か散乱してしまう。すぐさま拾いながら男性に謝る。

 

「すいません……大丈夫ですか?」

 

「……あぁ。平気だ。そっちこそ大丈夫か?」

 

 目の前の青年は何故か赤を基調とした古いデュエルアカデミアの制服を着ており、その下には黒のタートルネックを、ズボンは黒いズボンを穿いている。

 髪は茶髪で大人びた整った顔立ちをしているイケメンだ。……羨ましい。

 

「……君はアカデミアの受験生なのか?」

 

「はい。ライディングの実技に遅れてしまって……」

 

「……ハハハ」

 

 青年が受験生かどうか尋ねてくると遊理は苦笑いしながら説明する。

 すると青年が軽く笑った。まるでそれは懐かしい事を思い出したかのようだった。

 

「なら、こいつをやるよ。お前の所に行きたがってるみたいだからさ」

 

「えっ?」

 

 そう言うと青年が腰のデッキケースから一枚のカードを取り出し、遊理へと手渡した。

 思わず受け取ってみてみると……それなりに便利そうなカードだが今現状、調整している時間はないので適当にケースに放り込む。

 

「じゃ、僕は受付に行ってきます!!」

 

『じゃあね~』

 

「頑張れよ!」

 

 そして遊理と美花は青年の声援を背に受付まで走り抜け、受付をすると停車させていたスワローに乗って試験用のサーキットへと向かっていった。

 

 

 

 

 

                *

 

 

 

 

 

 

 アイランド・デュエルアカデミアはデュエルアカデミアプロジェクト創設期に建てられた記念すべきデュエルアカデミア第一号であった。

 その当時はデュエルアカデミア本校と呼ばれ、今でもなお名を轟かせるプロデュエリストたちを数多く輩出している。

 

 例を上げるならば万丈目 準。彼は当時の万丈目財閥の三男であり、かつて最上級寮に所属していたが諸事情で最下級寮まで転落する。

 しかし、数多くの困難やライバルたちを乗り越えてプロリーグでプロデュエリストとして名高い成果を叩き出した。

 

 次に丸藤 翔。彼は入学当初、最下級寮に所属する一デュエリストであった。しかし、デュエルアカデミアに入学してあるデュエリストを慕ってから徐々にその腕を伸ばして行った。

 そして実の兄であり、ヘルカイザーと呼ばれた丸藤 亮と共に新たなデュエルリーグを建設するなどそのサクセスストーリーは今での高い評判を持つ。

 

 最後に天上院 明日香。彼女はアカデミアで行方知れずとなっていた実の兄を探すために入学してきた女傑で気の強い振る舞いから兄と同様に多くの女子生徒を虜にし、海外留学を通してデュエルアカデミアの教師となって彼女も多くの生徒たちを導いた。

 ちなみにある最下級寮に所属していた青年との熱愛やその青年を巡って後輩の少女と修羅場があったなかったとか。

 

 そんな数多くの名高いデュエリストたちを輩出したデュエルアカデミアであったが彼らが在籍していた当時、多くの事件にも見舞われたのだ。

 彼らが入学していた一年の時にはセブンスターズを名乗る者達によって封印されていた三幻魔と呼ばれるカードが復活した。

 

 二年の時には当時プロデュエリストであったエド・フェニックスのマネージャーをしていた斎王 琢磨という男が設立した光の結社と呼ばれる組織がオベリスク・ブルー寮を占拠し、ホワイト寮を名乗ったのだ。

 そして当時に開催された第一回ジェネックス大会でレーザー衛星を秘密裏に譲渡され、その矛先を地球に向けた。

 

 そして三年。これは三つに分けて説明するべきだろう。

 前半ではウェスト、サウス、イースト、アークティックのデュエルアカデミア四校から最優秀生徒を選び、留学していた。

 留学当初、デスデュエル――正式名称はデスクロージャーデュエル――と呼ばれる実戦デュエル形式のシステムを取り入れたのだがデスデュエル直後、過労に近い症状で倒れる者が続出して文字通り死の(デス)デュエルとなった。

 この事案に生徒たちが独自で行動し、プロフェッサー・コブラを止める事に成功するがその直後に新たな異変が起こったのだ。

 

 ――デュエルアカデミアの本校舎の異世界漂流だ。

 デュエルモンスターズのモンスターが実体化し、デュエルに敗北した生徒がゾンビのような状態でた生徒に襲い掛かる等、非科学的であったが多くの生徒の証言により、事実ではないかという見解が存在している。

 この事案はI2社の会長にしてデュエルモンスターズの生みの親、ペガサス・J・クロフォード氏とアークティック校の生徒の協力により、生徒たちのほぼ全てが帰還した。

 

 しかし、アークティック校の留学生 ヨハン・アンデルセンが行方不明となり、再び一部の生徒たちが異世界へと向かってしまった。

 この中には万丈目 準、丸藤 翔、天上院 明日香が含まれており、その数日後にヨハン・アンデルセンを連れて帰還したのだ。

 

 だがその直後に新たな騒動が起こった。

 この騒動に関しては殆ど記述が残されておらず、あるデュエリストが騒動の元凶となった存在を討ったことで騒動が終結したらしい。

 

 これらの多くの一件や隠蔽されていた特待生の行方不明の一件から教育委員会を通して保護者の苦情がデュエルアカデミア、ひいては設立したKC社に殺到し、デュエルアカデミア本校は施設の再点検や安全の再確認などの名目に閉校となる。

 そしてゼロ・リバースが起こり、長い空白の時が過ぎるがアーククレイドル落下を阻止した英雄 不動 遊星がアカデミアの事を知るとその援助を名乗り出たのだ。

 彼から受ける大きな援助をきっかけとして不動 遊星主任の元、再開発が行われてデュエルアカデミアは5年前にアイランド・デュエルアカデミアと名を変えて開校された。

 

 なお、それらの騒動を解決へと導いた名高いデュエリスト 遊城 十代は今もなお、行方が掴めていない――

 

 

 

 

 

                *

 

 

 

 

 

 

 そんなアイランド・デュエルアカデミアの入学試験場。

 サーキットを駆け抜ける二台のD-ホイール。一機は試験官の乗る試験官専用にチューンされた灰色のD-ホイール。

 もう一機はクリアブルーのカラーリングに機体先端部をドラゴンの頭部を思わせ、後部には竜の翼と思わせる装飾が成されている。

 ヘルメットの竜の上頭部を意識している様な形状で、表情はヘルメットとサンバイザーで良く見えないが体格から見て女の子――少女であることが良く分かった。

 

「――さすがだな。しかし効果を無効にされ、私のモンスターに攻撃力を上回られれば太刀打ちできまい!!」

 

「……」

 

 試験官の場には二つの光球に一際輝く光球を漂わせた白い真珠を思わせる宝石騎士《ジェムナイト・パール》と力の源である光球を奪われた鉱石で出来た体を持つ竜《カチコチドラゴン》が並んでいる。

 対戦相手である少女の場には赤の装飾とクリアブルーの身体を持ついくつもの光が宿り、まるで銀河のような瞳を持つ竜が体中を鎖で縛りあげられた状態で静かに佇んでいた。

 縛り上げている鎖は《デモンズ・チェーン》。効果モンスターを対象にそのモンスターの効果と攻撃権を封印する優秀なカードだ。

 

「行け! 《ジェムナイト・パール》!! クレイジーラァッシュ!!!」

 

 《ジェムナイト・パール》が三つの光球を取り込むと一際輝き、凄まじいオーラを放出する。

 荒々しくも澄んだオーラを纏う《ジェムナイト・パール》は静かにだが力強く目の前の銀河竜目がけて飛び込んだ。

 だがそれを大人しく見る相手ではない。

 

「――罠カード。《 反 射 (フォトン・)光 子(ライジング・) 流 (ストリーム)》を発動します。

 光属性のドラゴン族が相手モンスターと戦闘するとき、相手モンスターの攻撃力をそのまま攻撃力に加えます。反撃のフォトン・ライジング・ストリーム」

 

「っ!! うおおぉぉぉ――ッ!!!」

 

 神さえ封じる鎖を引きちぎり、光り輝き名が咆哮する銀河竜は逆らう宝石騎士を容赦なく大きく開かれた口に貯めた破滅の閃光が横薙ぎに放たれ、《カチコチドラゴン》もろともに《ジェムナイト・パール》を消し飛ばす。

 そしてその攻撃は試験官も巻き込み、そのLPを削り取ると敗者となった試験官のD-ホイールが煙を上げて停車する。

 

 試験官:LP0

 

「むぅ……受験番号95番の試験デュエル終了。君の勝利だ、おめでとう」

 

「……ありがとうございます」

 

 少しだけ表情を緩めた試験官の言葉に少女が鈴の音の様な綺麗だが感情を感じさせない冷淡な返答を返す。

 少女がD-ホイールに乗ったままサーキットを出ると次の受験生と後退し、試験官もデッキを変えながらD-ホイールを再起動させる。

 そしてそんな試験を見つめる一人の少女がいた。

 

「――彼女も計画の候補に入る。至急調べておいてくれ」

 

 小学生くらいの小柄な背。ワインレッドの綺麗な瞳に話しながら肩に掛かったプラチナブロンドの髪の毛を背中に掃っているその仕草が異様に似合っており、髪の毛が金色にさらさらと輝いている。

 背後にいる黒服に命令する尊大な口調が小学生ギリギリにしか見えない少女には似合っていない。

 そして彼女が着ているのはアイランド・デュエルアカデミアの制服であることが彼女がアイランド・デュエルアカデミアの生徒である事が良く分かった。

 

「それにしても……」

 

 彼女が召喚した銀河そのものを瞳に宿している様な強い力を発しているあの竜。

 確か、かつて伝説のデュエリストである海馬 瀬人が宇宙のエネルギーをカードに取り込むという一大プロジェクトを行ったらしいが……そのデータから生まれたカードだろうか?

 

「……要監視だな」

 

 そう考えてみればあのカードに関係して何かが起こる可能性が浮上する。

 改めて彼女に対しては自身の元へと引き込み、監視が必要と少女が結論づけた。

 そして教員席では……

 

「――彼女のデュエル、見事なものだったな」

 

「あぁ。あのパワーの中に緻密な計算が入り混ぜられた濃厚な戦術。これは審議の必要もないですね」

 

 そうやって話している一般教員二人の隣でサーキットを見下ろしているのは一人の女性。

 くすんだ長い銀髪をポニーテールにして鋭くサーキットを睨み付けるように見つめていた。

 彼女の名前はアリソン・デ・メディチ。彼女はイギリスの由緒正しい家系であり、このアカデミアと深い関わりを持つ縁者であるクロノス・デ・メディチの様にこの実技最高責任者ある。

 

「すいません……」

 

「……なんだ」

 

「受付時刻ギリギリにやってきた受験生がいて……」

 

「……落ちこぼれか、筆記試験順位は?」

 

 受付時間ギリギリに? いったいどこの落ちこぼれだろうか?

 そう一方的に決めつけながら半場、睨み付けながら問われて受付をしていた女性は「ひっ」と怯えた声を上げながらも答える。

 

「――3番、受験番号3番です」

 

「……優秀生である以上、模範とならねばならんというのに……」

 

 アリソンはその答えに心底嘆かわしいと言わんばかりに頭を仰いだ。

 優秀たるものは模範として相応しい行動を心掛けなければいけない。それこそが上に建つ優秀なものの義務であり、責任だからだ。

 それだというのに3番という優秀たるものが遅刻するなど我慢ならなかった。

 

「――受験資格はない。さっさと追い出せ、入学試験に遅刻する様な奴は学園にいらん」

 

「その言い分はあんまりではないですか?」

 

「……シニョーラアキか」

 

 冷たく切り捨てるアリソンの言葉に二つ後ろの席に座っていた赤い髪の女性が抗議する。

 彼女の名前は十六夜 アキ。去年からこの学園で保険医としてやってきた女性で多少後ろめたい経歴こそあるがチーム・5D'sに所属していた英雄の一人であり、多くのファンを持っていた。

 

「確かにD-ホイールによる遅刻は問題ですがシティからやってくる以上、それ位の誤差が生じても問題はないのではないですか?」

 

「ぬぅ……」

 

 確かにネオドミノシティではライディングデュエル優先ルールにより、交通が安定しないことが多い。

 それによる遅刻はアカデミアの試験に置いて特例として認められているのだ。そのため、その特例を認めずに入学試験を受けさせず、追い返すなど問題になりかねない。

 だが模範たるべき優秀な受験生が遅刻するなど潔癖な彼女は我慢ならなかった。

 

「……ふん。良いだろう、なら私自らがその受験生の相手をしてやる」

 

「待ってください! アリソン先生、ならばこの試験用のデッキを!!」

 

「必要ない。遅刻する様な愚かな受験生に手加減は不要!」

 

 そう言って教員が渡そうとする試験用デッキを無視してアリソンは教員席を後にする。

 その姿を見てアキはため息をついていた。

 

「……確かに優秀なんだけどあの潔癖気味な性格は直してほしいわ」

 

 アキの呟きに何人かの教員が苦笑する。確かに彼女の経歴は非常に華々しいものだ。

 かつては多くのデュエル大会で優勝し、プロリーグで一桁台まで駆け上がった実績の他、第二次フォーチュンカップで彼女の仲間の一人、クロウ・ホーガンを下す等、彼女の優秀さはアキも良く知っていた。

 ……ちなみに苦笑していなかった教員は「そんな姿も、良いぃっ♡」と身悶えながら頬を染めていたのをアキは全力で見逃した。

 

 

 

 

 

                *

 

 

 

 

 

 

 薄暗いD-ホイール専用通路の中。

 其処で順番まで待機するように言い渡され、遊理はスワローに跨りながら静かに待機していた。

 一種の精神統一というべきか、おかげで思考は冴えている。

 

『頑張ろ、遊理!』

 

「あぁ」

 

 微笑んでいる美花に遊理は冷静に答える。 求めるはただデュエルを、そしてデュエルの勝利を。ただそれだけを求めた先を。

 彼はそれを求めている。

 

『受験番号3番。第一サーキットにて試験デュエルを行います。受験番号3番は第一サーキットに来て下さい。繰り返します、受験番号3番は……』

 

「時間だな……!」

 

 アナウンスを聞いて遊理はスワローでAIマップによる案内に従って第一サーキットへと向かう。

 すぐに光が見えて、遊理はそのまま第一サーキットの入り口から飛び出した。遊理は白いスタートラインに並ぶ。

 其処には試験官用ではなく鈍い銀色をした自分のD-ホイールに乗った高身長のスタイル抜群の美女――アリソン・デ・メディチの姿が有った。

 

「シニョール遊理。私は実技最高責任者であるアリソン・デ・メディチ。貴様の試験を担当させてもらう」

 

『うわ~実技最高責任者だって! 期待されてるよ、遊理!!』

 

「……よろしくお願いします」

 

 美花の言葉にはなるべく反応しないようにアリソンに対して一礼する。

 現状、誰にも見えない美花に反応しても気味の悪い目で見られるだけだという事は嫌というほど経験していた。

 一礼する遊理を睨みながらアリソンは鼻を鳴らして意識を集中する。

 

「ふん……では始めるぞ! フィールド魔法! 《アクセル・ワールド》!! セット、オン!!」

 

【DUEL MODE ON! AUTOPIROT STANDBY!】

 

 機械音声がデュエルの始まりを告げ、互いのD-ホイールを中心に光が広がっていく。目の前にソリッドビジョンのランプが浮かび上がると空中にカードが巨大な球体上に集まる。

 

 アレが《アクセル・ワールド》と《スピード・ワールド》シリーズとは違いの象徴。それは《アクションカード》と呼ばれるサーキット場に散らばったカードの事だ。

 《アクションカード》は手札に一枚しか持てないのだが拾える枚数の制限がないため、手札コストとして有用性が高いのだ。

 

 このルールは現プロリーグのデュエルキングであるジャック・アトラスが参加の元に開発された。

 当初は批判があったがデュエルにジャックが行ったデモデュエルでアクションを持ち込むという新時代的なデュエルに多くの人が魅了され、《アクセル・ワールド》が現在のデュエルの主流となった。

 

「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」

 

 その掛け声と共に無数のカードが集まった球体が砕け散り――

 

「「デュエル!!!」」

 

アリソン:LP4000

 

遊理:LP4000

 

 ――ライディングデュエルが始まった。

 

 




 とりあえず、オリカに当たるので効果は出しておきますねー

 《アクセル・ワールド》
 フィールド魔法
(1):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、アクションカードを使用できる。
アクションカードは1枚しか手札に加える事ができない。
(2):お互いのプレイヤーはお互いのスタンバイフェイズに1度、自分用の スピードカウンターをこのカードの上に1つ置く。(お互い12個まで)
(3):このカードはこのカード以外の効果を受けず、フィールド魔法を発動する場合、このカードに重ねて発動し、このカードの効果も適用する。
(4):【 Sp(スピードスペル) 】と名のつく魔法カード及びアクションカード、または(ペンデュラム)カード以外の魔法カードを発動した時、自分のスピードカウンターを1つ減らす。

 とりあえず原作の《クロスオーバー・アクセル》を軸に《スピード・ワールド》シリーズを統合してPを使っても問題ない様に弄った使用となっています。
 専用フィールド魔法を使うデッキやカテゴリの為の専用魔法カードを使うのにも対応した初心者に優しいライディングデュエルです。
 オリカ創るのは久しぶりだったからこんなので大丈夫かすごく不安なので意見はバシバシと求めます

 とりあえず、現状で判明させたリメイク前との相違点。

 ①:美花が幽霊?になった事故が隕石の落下から客船事故に変更。

 ②:遊理の名字が変更。零時から光道に。

 ③:時代が大幅に変更。GXから5D's終了十年後に。

 ④:それに伴ってデュエルアカデミア本校をアイランド・デュエルアカデミアにリニューアル。

 ⑤:遊理がモロ十代。

 ⑥:遊理のデッキが変更。【セイクリッド】⇒【??】

 他にも色々変化がありますがこれからの楽しみとなるよう頑張ります。
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