遊戯王SDV スピリット・ドライヴ   作:【新鮮なる闇】

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 知ってる方はお久しぶり、知らない方は初めまして、アポリアです。

 約三か月、お待たせしました。

 今回、遊戯王映画の前売り券の販売開始記念とペンデュラム・ドミネーション販売記念を兼ねて投稿させてもらいます!!

 では本編をどうぞ!!


No.1 学園生活に潜み迫る影
戦慄の入学式


 アイランド・デュエルアカデミア本島。

 かつて多くの事件を起こして閉鎖されたこの島は不動 遊星の手で再開発を行われたことでその面先を大幅に広げる人口島(ギガフロート)化が行われた。

 それにより、島一つが巨大な都市町となったことで都市外へと繋がる巨大なサーキットのハイウェイが無数に建設されている。

 そして島の中心、其処には巨大な火山を背に改装された旧校舎とそれに増設する形で建てられた新校舎が存在しているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

        *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合格の吉報から一週間。遊理は入学式に出席していた。

 孤島であったこのアイランド・デュエルアカデミア本島にネオドミノシティのハイウェイから続くサーキットが増設されており、遊理は孤島にもかかわらずD-ホイールで向かうことが出来た。

 

 入学の前、受付で制服も渡されており、その色で所属寮が決まる。成績上位者からオベリスクブルー、ラーイエロー、オシリスレッドの順にそれぞれの寮へ振り分けられるのだ。

 

 アイランド・アカデミアには寮ごとに階級制度が存在し、遊理に振り分けられた制服は『赤』、オシリス・レッド。

 オシリス・レッドはアイランド・アカデミアの最下級の寮で補欠入学者たちの寮だ。

 

 今回、其処に入る理由になったのはあの遅刻だろう。

 遅刻で不戦敗とみなされ、負けに繋がるのではデュエリストとしては未熟と判断されてオシリス・レッドになったのだろう。

 

 入学式を行っている講堂内。その壇上に一人の老人が立った。

 

「新入生の諸君。アイランド・デュエル・アカデミアへようこそ。私はこの学園の長を務める鳳凰院 影光というものだ」

 

 ――鳳凰院 影光。アイランド・デュエル・アカデミアの学園長である。

 着物を着た長い髭を伸ばす威圧的な外見をしており、殺気さえ感じそうな鋭い眼光で生徒たちを見渡し、静かに響き渡る。

 

『ふぁ~……暇だね。眠くなってきちゃった……お休みzzz』

 

『クリィ~クリィ~』

 

「……ハァ」

 

 今は理事長の話なのだが長いせいか美花は僕の真上で胎児の様なポーズをとるとそのまま眠ってしまった。いつの間にかオシリスレッドの女子制服になってるし、まるで意味が分からんぞ。

 そして虹色に輝くひし形の宝石をおでこに持つ一頭身のモンスター――《(にじ)クリボー》はというと僕の上でぐるぐるとまわって楽しそうにしている。

 

 《(にじ)クリボー》

 相手モンスターの攻撃宣言時に手札から装備カードとなって攻撃を無力化する効果とダイレクトアタック宣言時に自身を守備表示で特殊召喚する二つの効果を持ったレベル1、光属性、悪魔族モンスター。

 実技試験の前に出会った男性から譲られたカードであり、いつの間にか精霊の宿ったカードとして僕のデッキから抜いてもいつの間にか入っているようになったのだ。

 そんな一人と一匹?に注目していると理事長が式辞の締めに入ろうとしていたのに気づき、話に耳を傾ける。

 

「最後に、君たちに一つの言葉を送ろう。伝説のデュエリストにしてこの学園の初代オーナーである海馬 瀬人の言葉である。

 

『人生という名の戦いのロード、それに挑む決闘者(デュエリスト)たるもの、強者たれ』」

 

 その言葉と共に周囲が一気に静まり返る。それは伝説のデュエリストである海馬 瀬人の言葉として有名であるからだ。

 

「何を持って戦いのロードと捉えるか。何を持って決闘者(デュエリスト)と考えるのか。誰を強者と足るのか。

 君たちにあるこれからの三年間、自分たちに考える事で切磋琢磨する手がかりにしてほしい。さすれば君たちの望む未来も開くだろう。

 私からは以上である。三年間の学園生活、存分に楽しんでほしい」

 

「(強者たれ……か……)」

 

「う~ん……中々考えさせられることを言われてハードルが上がっちゃったね?」

 

 遊理が影光の言葉を聞いて考え込んでいると右隣に座っているオシリスレッドの少年?がそう話しかけてくる。

 軽く耳にかかる程度まで伸びた所々はねた癖のある茶髪。顔も腕も腰も足も細く小さく、肌は汚れを知らぬ初雪のように白く、全体的に柔らかな造作の可愛らしい顔立ち。

 

 だが()が着ているのは同じく学年別で分けられる黒のブローチをつけたオシリスレッドの男子制服。

 それが彼が彼女(女子)ではなく(男子)であることの証明……だと思……だといいな。

 一瞬、遊理も男装でもしてるのかと疑うがあんまり外れない直感が目の前の生物(なまもの)を同性であると認識している以上、現実逃避はそろそろやめにしよう。

 

「……僕も単純な決闘(デュエル)の強さだけではだめだと改めて実感させられてしまった。これがデュエルアカデミアなんだな……」

 

 デュエルモンスターズに魂を賭ける決闘者(デュエリスト)ならば強者を目指すのは当然。ならば強者の定義とはなんなのか?

 言葉の主である海馬 瀬人の様に単純な実力なのか、決闘王の親友であった城之内 克也の様に勝利を引き寄せる豪運なのか、それとも初代決闘王の武藤 遊戯の様な真の優しさという名の強さなのか。

 デュエルモンスターズという特殊な文化を町一つの法にまで発展させた偉人である彼らの持っていたとされる強さの一つでもあれば彼女はこんなふうにならなかったのだろうか……?

 

「あはは、そうだね。僕は(ミコト)鮫島(さめじま) (ミコト)だよ。よろしくね」

 

「遊理。光道 遊理だ。遊理で構わないからよろしく頼むよ、鮫島……くん?」

 

「命でいいよ。よろしくね、遊理!」

 

 一瞬、悩みながらも自己紹介を交わし、命はニコリと笑う。笑顔で小首を傾げる様子が実に絵になっていて軽く戦慄しながら改めて遊理は強く思った。

 ……こいつ、本当に男か? 男装してるって言われた方が納得できる。

 

「――以上が私が言えることだ。それでは、新入生達に向けて各分野の教師たちを発表しよう。まずはXクラスのアリソン・デ・メディチ教諭から頼むとしよう」

 

「アイランド・デュエルアカデミアでデュエル実技最高責任者とブルー寮の寮長を任されているアリソン・デ・メディチだ。私の教えを受ける以上、私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には一人一人、きちんと出来るまで丁寧に指導してやる。

 ――優秀なものにはそれ相応の振舞い方もな。逆らっても構わないがお前たちがこのアイランド・デュエルアカデミアに決闘者(デュエリスト)としての高みを臨んで入学してきたことを忘れるな!! 私からは以上だ」

 

 学園長の言葉でまず最初に立ち上がったのは遊理が入学試験でデュエル実技の最高責任者であるアリソンだ。

 かなり無茶な言葉による高圧的な自己紹介だが共感し得るものも多いのもまた事実だ。ただし一瞬、遊理を睨んだのは気のせいではないと思う。

 そしてそれぞれの分野における教師たちが紹介されていく。

 

新谷(あらや) (すもも)です。みなさん、よろしくね」

 

「ルーク・マグシオンだ。此処の施設の整備も兼任させてもらっている……三年間よろしく頼むよ、諸君」

 

「はいはいは~い☆ 防人(さきもり) 瑞葉(みずは)で~す♪ よっろしっくね~☆」

 

「は~い♪ リリアーヌ・本郷(ほんごう)デ~ス! 気軽にリリン先生とお呼びくだサ~イ!」

 

 ウェーブがかかった薄紅色の髪とふんわりとした雰囲気を持った少女のような女性が、手入れのされていない紫の髪に金の瞳を持つ白衣の怪しげな雰囲気の男性が、コスプレ衣装のような物を着た新入生たちと年が近いくらいの少女が、薄い金色の髪に露出の多い巫女服を着た女性が、それぞれの分野の授業を担当する教師たちが自己紹介を行っていく。

 そしてそんな中で白衣を着た紅に近い赤毛の女性が壇上に立つと講堂内の雰囲気が変わった。

 

「今年からこのアイランド・デュエルアカデミアで総合保険医統括を担当させてもらう十六夜 アキです。これから三年間、よろしくお願いするします」

 

 壇上の上で微笑を浮かべて自己紹介をする女性には見覚えがあった。

 

 ――十六夜 アキ。

 

 ネオドミノシティで十年経った今でもその名声を保つ最強にして伝説のチーム、チーム5D'sにベンチウォーマーとして在籍して一試合だがチーム5D'sの選手として出場した女性決闘者(デュエリスト)だ。

 自己紹介の直後、ビッグネームの登場から多くの生徒たちから歓声が上がり、一瞬呆けた顔をすると歓迎されていることを理解したのか微笑みと共に軽く手を振って壇上を降りて行った。

 

「――以上でアイランド・デュエルアカデミア、第5回入学式を終了します」

 

 そして興奮が冷めない中で入学式が終了し、新入生全体に指定されたクラスへ移動するようにと指示が出て、生徒達が講堂を後にする。

 遊理と命も入学案内書に従って講堂を出て行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処か……」

 

「同じクラスみたいね♪」

 

 Zクラスと書かれたクラスプレートが輝く教室の前。遊理と命は入学案内書に掛かれていたクラスを確認していた。

 

 パンフレットにはかつてアイランド・デュエルアカデミアは海外のスクールや大学に似た受講制度を取っていた様だが開校に伴い、本土のアカデミアの制度に近づけた学年5クラス構成を採用したことが記されている。

 

 それはともかく遊理は間違いがないか改めて確認をした後、教室のドアを開いて入っていく。教室の中に人は全員がオシリスレッドの制服に身を包んでいる。

 床の汚れは確認できていないし、少しばかり高級感がある。それに電子黒板にも汚れはない。

 

「――あら? ミコっちゃんじゃない?」

 

「真理也!」

 

 教室を見渡していると命に低く響く声を掛けてくる一人の青年がいた。

 百八十㎝くらいはある高身長。顔立ちも整っており、イケメンと言えるだろう。だが飛び出してきた予想外の口調に遊理は唖然とする。そんな遊理に対して青年――真理也は優しく微笑んだ。

 

「あら、ミコっちゃんが世話になったわ。初めまして、アタシは刀堂(とうどう) 真理也(まりや)っていうの。気軽にマリア♡って呼んで頂戴?」

 

「……光道 遊理だ。よろしく 真理也(まりや)

 

「華麗にスルー……やるわね」

 

 あまりにも予想外すぎた口調に思わず、一瞬思考が停止しながらも遊理が真理也の言葉をスルーして自己紹介をするのを見て真理也が戦慄する。

 内心、精悍な外見から放たれたオ ネ エ(予想だにしない)口調に果てしなく混乱こそしているが途中で思考を放棄する。趣味は人それぞれだ。

 そんな風に話し込んでいるとクラスがざわついたのに気が付き、三人がクラスのドアに視線を向ける。

 

「……」

 

「あら?」

 

「うわぁ……」

 

「――っ」

 

 するとそこには絶世と言うほかない美少女がいた。

 室内にもかかわらず黒の帽子――キャスケットと呼ばれる頭部を覆う部分がふんわりと丸みを帯びて膨らんでやや短めのつばを持つタイプの帽子――を被っており、髪の毛の殆どをその帽子に収めている。

 身長は160㎝くらいの僕より少し低く、腰ほどまである髪は澄んだ青空のような空色の髪(スカイブルー)、透き通る初雪のような雪色の肌(スノーホワイト)、そんな中で際立つ眼鏡を掛けた水銀色の瞳(メタリックブルー)と一目見れば絶対記憶に残って色あせないであろう――そう言えるくらいにまで整った容姿だった。

 制服には学年別で分けられる黒のブローチが付けられており、一年生であることが分かる。

 

 まるで完成された西洋人形(ビスク・ドール)のような表情というものが見て取れない容姿は他者に可愛いというより綺麗と言える印象を受けた。

 そんな少女の姿に遊理はもちろんのこと、クラス中の生徒が彼女に視線を向け、見惚れていた。

 

『……なぁに? 一目惚れ?』

 

「……(そんなわけないだろ……)」

 

『ふ~ん……』

 

 少しだけ見惚れていると美花がそんな事を言ってきた。反射的にそう伝えると疑うような視線を向け、それでいて拗ねた様な雰囲気で顔を背けてしまう。

 前に後輩と過ごしていた時も大体こんな感じになってしまったのを思い出しながらこういう時は触れないのが一番と判断していると少女は一番後ろの右端の席に座る。

 

「――な、なぁあの娘って……」

 

「こ、「恋華(こいばな) (かなで)」だ……」

 

「ま、間違いないよ! くぅ、この学園に入学してよかったぁ!!」

 

「っ? 「恋華(こいばな) (かなで)」って……?」

 

 ざわついた教室内でひそひそと始まった会話に聞き耳を立てると聞きなれない名前が出てきた。

 それが彼女の名前なのだろうか? やけに広まっている理由を命と真理也に尋ねると二人揃って驚いた表情を見せた。

 

「ゆ、遊理君!? 「恋華(こいばな) (かなで)」を知らないの!?」

 

「……「恋華(こいばな) (かなで)」ってのはねぇ……」

 

 「恋華(こいばな) (かなで)」。

 絶大な人気を誇るミュージシャンであり、その恵まれたルックスと清み渡るような美声に圧倒的な歌唱力から驚異的なヒット曲を数多く連発した国民的歌手と言っていいほどの存在である。

 

 ……と命と真理也が教えてくれた。そんな有名人とは……僕自身、そういったことにはあまり興味は持っていなかったんだが……

 

 時間を見てみるとそろそろHRが始まるであろう時間が迫っていた。

 三人はそれぞれ名札がある席へと向かい、席に着いた。机は二人で使える幅の長いものがいくつも並んでおり、命は一番前の右端、その隣には真理也が座っている。

 

 遊理はというと先ほどの少女――「恋華(こいばな) (かなで)」の隣の席を引き当てていた。内心で自身の幸運に感謝しつつも察しのつくやっかみの視線を無視して待っているときにそれは起こった。

 

 ――ガラガラガラッ!!!

 

「ッ!!?」

 

『……なんで窓?』

 

 大きな音を立てて窓が開き、視線が集まる。内側から窓を開けた人間はいない。窓の外からにゅっと細い腕が伸び、窓の縁を力強く掴む。

 遊理を含む新入生が警戒する中、窓から飛び込んできたのは――

 

「もっすもっすひねもっす~♪ あ~んど♡ 入学おっめでとー☆」

 

 まごう事なき……コスプレイヤー?だった。

 頭からは機械的なウサミミが生えている様なカチューシャに何故かリリカル★本気狩るな世界で魔王とよばれた魔法少女?が使っている様な白い制服のコスプレ。

 同年代か少し年上くらいの女性というべきか少女というべきかそんな人物が窓から現れたのだ。

 

「瑞葉はこのクラスの担任をする防人 瑞葉だよ♪ 気軽に瑞葉先生って呼んでくれていいからね♪」

 

『(よ、寄りにもよってこの色物かぁっ!!?)』

 

「ん~? あれあれ~? 皆反応ないな~?」」

 

 新入生の殆どが考えていることが今ここで一致した。

 まさか寄りにもよって入学式の時にもいた色物教師を引き当ててしまうとは。遊理も美花とは違った方向に無駄にハイテンションで正直なところ、どういった反応を示せばいいのか分からなかった。

 

「はっ! もしかして瑞葉の可愛さに皆がメロメロに――」

 

『それはない』

 

「はうっ!? 皆による謎の一致団結だとぅ♪ 可愛い糞餓鬼どもだぜ☆」

 

 変な解釈をしようとした瑞葉に対して全員から修正が入る。無駄にハイテンションな教師だが生徒たちによる一致団結に一瞬驚きながらも笑顔で悪態をついた。

 ……こんな担任で大丈夫か? 大丈夫じゃない問題しかない。

 

「さ~て☆ 私の自己紹介フェイズを終えて、それじゃ君たちのタ~ン♪ 自己紹介と行こうか~♪」

 

 瑞葉の牽引によって左際の席から右側の席へと順々に自己紹介が開始する。

 外見も動作も少女的な命が本当に男なのか疑われていたり、容姿端麗な真理也に沸いた黄色い悲鳴に耳と抑えたりと概ね問題なく自己紹介は進んでいき、瑞葉に指差された遊理が立ち上がる。

 

「光道 遊理です」

 

「おぉぅっ!? 話には聞いてるよ~♪ あの堅物アリソンをぶっ倒した猛者って職員室で話題になってたけどイメージと違うな~……

 なんかこう、紫キャベツみたいな髪型で紫のマント付き軍服みたいなのを着た子って聞いてたんだけどね♪」

 

「誰ですか、それ……?」

 

『ぷっ、クク、ハハハ、アハハハハ! なにそれ!? なんでそんなイメージが付いちゃったの!?』

 

 どこから仕入れてきたのやら、妙に具体的なイメージに遊理は突っ込みを入れながら冷や汗をかいた。

 美花に至っては笑い転げてるので無視する方針を固める。というか何故そんなイメージが付いたのかまるで意味が分からない。

 ホント訳が分からない。

 

「んじゃ次はそっちの帽子ちゃんだね! スタンバイ!!」

 

「……天草 花恋」

 

 そして次に立ち上がったのは遊理の隣の席の少女――「恋華(こいばな) (かなで)」だ。

 彼女はどこか感情の籠らない冷たいながら澄んだ声で芸名ではない名前を言うだけの自己紹介に一瞬、空気が静まり返る。

 

「……それだけ?」

 

「……」

 

「……そ、それじゃみんなにこれを配っちゃおー!!」

 

 周りから続きを期待するように視線を向けられるがそれらを一切無視して少女は着席してしまった。

 そんな少女に白けてしまった空気を切り替えようと瑞葉が何処か空元気が混じった様な大きな声で伝え、クラスの生徒たちにデュエルモンスターズカードに似た学生証、寮生活のしおりが配られる。

 

「全員に行き渡ったかな? 校則や寮則は空いた時間を使って調べておかないと瑞葉さんが直々にめっ♡ってしないといけなくなっちゃうから気を付けてね~!!

 後、学生証は各自のDパッドに読み込ませておいてね♪ メモリは2500MBくらいとっちゃうけど購買で使えるDP用のクレジットカードにも生徒手帳にもなるから便利だよ!!」

 

 そう言えばそんな事が記述されてたなぁと遊理は学校案内(パンフレット)にそんな事が記述されていたのを思い出す。

 

 ちなみにDパッドとは近年、不動 遊星によって開発されて一般普及されたデュエルディスク機能を持つD-ホイールに装着可能な携帯端末だ。

 機能も様々搭載されており、電話機能やメール機能はもちろんのこと、インターネットに接続したり、ゲーム機としても幅広く使用可能な上に精密機器だというのに高い強度や防水性を持つことから近年に開発されたばかりだというのになくてはならない必需品となっている。

 

「すいません。DPとは……」

 

「おぉ♪ 良い質問だね☆ DPっていうのはこのアイランド・アカデミアに存在するお金のような物だよ♡ 基本的にアイランド・アカデミアではこれをやりくりして購買で好きなものを買ったり、食堂で食券を買ったり、後はアカデミア製のD-ホイールのパーツも買えるんだ♪

 本土のネオドミノシティでも使えるし、DPを稼ぐだったら図書委員会や保健委員会に参加するのも良いけどやっぱりデュエルが一番効率がいいね☆

 Dパッドでデュエルして勝てば戦績に応じた分はもらえるし、負けても雀の涙ほどなら手に入るから♡」

 

 瑞葉からの意外と丁寧なDPに関する説明に軽く驚きながらもその内容を理解する。

 つまり授業でも平時でもデュエルして勝ち続ければお金代わりのDPがたくさん稼げるという事なのだ。

 

「DPでカードとかを買うとかはできるみたいですけどカードでDPを貰うとかはできたりするんですか?」

 

「でっきなっいよ~♪ 基本的にDPは委員としてのきちんとした働きの報酬かデュエルでしか手に入れられないから貢いだりするなら間違っても食券とかで貢いでね☆ じゃないと風紀委員とチェイサーズに取り締まられちゃうぞ?」

 

「デュエルの戦績って……」

 

「ん~♪ 例えば相手をワンキルした時とかジャストキルとか☆ 特殊勝利による勝利とかするとDPが多くもらえたりするんだ♡

 去年まではオーバーキル出来た数値の分だけだったけどどっかの馬鹿が新入生一人を囲ってリンチするなんて事件を起こしちゃったから制度が改正されちゃったんだよねっ♡」

 

 しかもデュエルか委員としての正当な報酬でしか手に入らないのも中々厳しいルールである。しかし劇的な勝ち方をすればより多くのDPが配給されるという事。

 実に単純かつデュエルの絡んだ面白いルールでまさにかつてデュエルアカデミア本校と呼ばれたこのアイランド・デュエルアカデミアに相応しいルールであった。

 

「後、他に質問無~い? ……ないみたいだね☆ それじゃあ、月一試験と~最後に6月に行われるクラス代表対抗戦について説明するよ~☆」

 

「月一試験?」

 

「クラス代表対抗戦?」

 

 瑞葉の発言にクラスがざわついた。

 此処は数多くの国に存在するデュエルアカデミアの中でも孤島に位置する特異な環境を持ったデュエルアカデミアだ。

 そんな中だからこそ独自の行事や授業というものは存在しているのは予想できた。

 

「月一試験っていうのはこのアイランド・デュエルアカデミアの伝統的な行事でね! 毎月生徒たちがどれだけ努力したかっていうのを筆記と実技に分けて試験するんだよね☆

 この月一試験の結果次第では各上の寮の生徒とデュエルしてその結果で寮の格上げもあるし、格下げもあるから皆~! このクラスの誰一人欠けないよう頑張ろうね~♪」

 

 このアイランド・デュエルアカデミアで一般教養やデュエルに関する知識が問われる筆記試験とデュエルの実技試験をする月一試験。その成績によって寮の昇格や降格もあり得るということ。

 その成績によって今以上のランクに昇格できる以上、昇格を夢見て努力しようとする気力となることだろう。

 瑞葉による分かりやすい説明によってそれを理解したところで次のクラス代表対抗戦の説明に入る。

 

「次に~クラス代表対抗戦、通称《リーグ・マッチ》。このリーグ・マッチは6月の月一試験の代わりにそれぞれクラス代表三名が入学時点から各クラスの実力推移を測るために四組のトーナメントでマッチデュエルするのだ!!」

 

「代表者はどうやって決めるんですか?」

 

「ん~……やっぱりデュエルが一番だね♪ 月一試験までに最もDPを稼いだ3人をクラス代表にする予定だよ! みんな、頑張って――」

 

 ――キ~ン、コ~ン……

 

「おぉう、ちょうど時間みたいだし、今日は授業がないからこれで解散! 本格的な授業は明日からするから午後に行われる寮ごとの新入生歓迎会まで各自で自由にデュエルしてDPは自分で稼いでね☆」

 

 瑞葉が説明していたその時、ちょうどチャイムが鳴ってSHRが終わりの時間を告げて今日は終わった。

 順応したそれぞれの生徒たちがDパッドを操作していらないデータを消している所もあればすぐに学生証を読み込ませている。

 遊理はDパッドのデータ容量を食っていないので後者だった。花恋も同じ、真理也と命は軽く操作していくつかのデータを消してから学生証を読み込ませるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『中々個性的な担任の人だったね~』

 

「あぁ……」

 

 HRが終わり、遊理はパンフレットに載っていたオシリスレッド寮へ徒歩で向かっていた。

 D-ホイールは授業か帰省以外では校舎の駐車場に置く決まりとなっており、寮までは少しばかり距離があるが急ぐ理由がない以上、のんびりと美花とこれからの学園生活に思いをはせる。

 そして寮の少し手前に差し掛かったその時だった。

 

「――おい、ちょっと待てよ」

 

「……」

 

 オシリスレッド寮の手前にある木から姿を現したのはに待ち構えていたのは他寮のオベリスクブルーが三人。

 相手は3人。三年のつける白のブローチが一人、後は一年が付ける黒のブローチの二人だ。遊理は訝し気に視線を向けると業を煮やしたようにこちらに近づいてくる。

 

「何か用――」

 

「うるせぇ、黙ってついて来い!!」

 

 そう言って二人が遊理の両端を塞ぐように立つ。力づくで振り払って逃げてもいいが下手に刺激して大事になっても面倒だ。

 そして遊理がおとなしくついていくとたどり着いたのは校舎の近隣に生い茂る原生林。少なくとも寮から出てすぐの場所からは見えないくらいの位置まで離れると背中から突き飛ばされ、木を背後にオベリスクブルーの三人が囲った。

 

「お前さぁ? まぐれに入学試験で勝ったからって調子乗ってんじゃねぇぞ?」

 

「……」

 

『何こいつら、感じ悪ぅ……』

 

「そう、そう! レッド風情が調子にならないよう僕らがしつけてやるよ」

 

 にやにやと見下すように笑う彼らを遊理はその金の瞳で見つめている。  

 どこか感情を読み取らせないその瞳に不快感を覚え、オベリスクブルーの一人が遊理の胸ぐらを掴み上げる。

 

「まずはその小生意気な目から矯正して――」

 

「――御託はいい」

 

「うがっ!?」

 

 だが遊理はその瞳に宿す感情の色を変えもせず、右腕で胸倉を掴み上げる腕を掴んで締め上げる。

 細い外見からは予想だにしていなかった握力に思わず手を放してしまい、そのまま腕を掴まれていたオベリスクブルーの生徒は遊理に突き飛ばされた。

 反撃を食らうとは思っていなかったのか、怒りと屈辱から醜く表情を変えたオベリスクブルーを遊理は一瞥して言った。

 

「――せっかくここまで離れたんだ、決闘者(デュエリスト)なら」

 

 左腕を自分の右肩までもっていくと右手で左胸のポケットに入れてあったDパッドを取り出し、左腕に装着した。

 そして左腕で自分の目の前の何か振り払うような動作をして勢いよく左腕を胸の前に構えて、デュエルディスクを展開する。

 

「言いたいことは決闘(デュエル)で言えよ」

 

『うわっ、遊理の悪い癖が出た』

 

 鋭く細められた金の瞳に好戦的に歪んだ笑み。それには強い戦意が宿っていた。

 美花は仕方がないと笑っているがオベリスクブルーの生徒たちは顔を真っ赤にして憤慨する。

 

「上等だ!! バトルロイヤルルールで叩き潰してやるよ!!」

 

 オベリスクブルー生徒たちが懐からDパッドを装備し、デュエルディスクを展開する。相手は三人、態度はアレでもエリートとしてふさわしい実力くらいは持っているはずだ。

 下手をすれば負けるかもしれない。そうすればこの先の学園生活はお先真っ暗という奴だろう。

 だが負けを恐れていては前に進めない。負けを恐れれば勝利を恐れるのと同義だからだ。自分を、デッキを、今を信じることしかできないが、それでも勝つビジョン以外を一切疑わない。

 

 ――常にイメージするのは勝利する自分。いつだってそれを意識してきた。だから――

 

「「「「デュエル!!!」」」」

 

遊理:LP4000

 

オベリスクブルーの生徒A:LP4000

 

オベリスクブルーの生徒B:LP4000

 

オベリスクブルーの生徒C:LP4000

 

 ――ただ、がむしゃらに勝利(敗北)へ向かうだけだ――!!!

 




 どうも、遊理のキャラが思ったように動かせずぶれてきたなと感じ始めてるアポリアです。

 アイランド・デュエルアカデミアの設定を出しましたのでここで多少まとめておきました。

  ・アイランド・アカデミア
 本作の主舞台。活火山を持つ太平洋の孤島を中心に開発して拡張された半人口島に設立された全寮・寄宿制のデュエリスト養成学校で中高一貫校でかつて多くのプロデュエリストを輩出しながらも多くの事件を経験した島であり、その影響で一時期は閉鎖されていたが技術革新とサテライトの英雄 不動 遊星からの援助により、大規模な再開発がなされた。学園長は鳳凰院 影光。

 敷地内には大規模なデュエル場がいくつも存在するほか、2人1部屋の学生寮や食堂、大浴場も設けられており、海上にはネオドミノシティに通ずる大規模なライディングデュエル専用のデュエルサーキットが開発されている。

 生徒のレベルによって階級が分けられており、オシリスレッド、ラーイエロー、オベリスクブルーの順に階級が上がり、寮はカラーリングの違う男女共用の同一寮。それに伴い、セキュリティも最大限に強化されており、プライベートスペースなどに関するセキュリティは高い。

 学年ごとに制服に付けられたブローチの色が違い、一年は黒、二年は紫、三年は白のブローチを付けることを義務付けしており、素材は最新の物を使用している。


 ……とまぁ大まかな設定はこんな感じです。学年のブローチはそれぞれ城之内の《真紅眼の黒竜》、遊戯の《ブラック・マジシャン》、海馬の《青眼の白龍》を意識しました。
 ついでに寮に関する軽い設定も出しておきますね。

 ・オシリス・レッド
 アイランド・アカデミアにある寮の一つ。名前の通り由来は【オシリスの天空竜】とカードカラーのレッド(赤)から取られている。
 名高いプロデュエリストである万丈目 準や丸藤 翔、最強の英雄と謳われたデュエリストがかつて在籍していた。
 そのため、オベリスク・ブルーと人気を二分していたが出席日数と単位が他の寮よりも緩く、優秀であっても素行不良の問題児や家庭に事情を持つ者が多く在籍する問題児と落ちこぼれの巣窟という認識がある。
 寮長は体育系担当教師である防人 瑞葉。

 ・ラー・イエロー
 アイランド・アカデミアの寮の一つ。名前の由来は【ラーの翼神竜】とカードカラーのイエロー(黄)から取られている。
 オシリス・レッドやオベリスク・ブルーの中間に位置するため、どっちつかずの半端ものな立ち位置に存在として扱われている。
 寮長は化学系担当教師であるルーク・マグシオン。

 ・オベリスク・ブルー
 アイランド・アカデミアの寮の一つ。名前の由来は【オベリスクの巨神兵】とカードカラーのブルー(青)から取られている。
 かつてはヘルカイザー亮やプリンス吹雪、デュエルアカデミア名誉教員となった天上院 明日香などが在籍していたことからオシリス・レッドと並んで人気を二分する寮となっている。
 寮長は実技最高責任者であるアリソン・デ・メディチ。 

 一応、こんな感じの設定です。

 ついでにリメイク前との相違点の一つとしてリメイク前ではまだ隠していた天草 花恋のもう一つの顔――偶像(アイドル)の「恋華(こいばな) (かなで)」として素性も判明させました。
 本来ならば生徒会副会長はアイドルって前のあらすじで書こうかなって思ってたんですがこれからストーリーに関わってくる組織の広告塔でもあるので身分を隠すのは少しおかしいかなぁって思った結果です。
 ……ネタバレかな?

 今回、今日の最強カードはお休みです。

 どっか矛盾があったり、誤字脱字があるならばどんどん指摘お願いします。
 では次の話でまたお会いしましょう!! ノシッ!!
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