トラピーズ・マジシャンが戦闘ダメージも遮断できることを初めて知ったので大規模修正を行いました。
誤字や効果の間違いなど、おかしな点があればどうぞご指摘ください。よろしくお願いします。
来月初にある月一試験。遊理は主要カードの禁止化に伴い、構築に悩みこんでいた。
そんな遊理を見ていられず、命と真理也がデュエルに誘う。
3人のバトルロイヤルの中、燃え上がる遊理が新たに呼び出したシンクロモンスター《閃珖竜スターダスト》。
そのモンスターの姿に命も真理也も目を奪われた。
その姿はまさしく、伝説の英雄 不動 遊星のエースモンスター《スターダスト・ドラゴン》そのものだったから――
*
遊理:LP3000
手札:1枚
モンスター:
・《
・《閃珖竜スターダスト》攻2500
魔法・罠:
・セット
・セット
Pスケール
赤:《
青:《
命:LP1300
手札:4枚
モンスター:
・《サイバー・ドラゴン・コア》攻400
魔法・罠:
・《サイバー・ネットワーク》
・セット
Pスケール
赤::
青::
フィールド:《チキンレース》
真理也:LP3000
手札:5枚
モンスター:無し
魔法・罠:無し
Pスケール
赤::
青::
「ぼ、ぼ、僕のターン!! (あ、あの《スターダスト・ドラゴン》にそっくりなモンスター……一体何だろう……?)」
勢いよくカードを引く命。その視線と思考は《閃珖竜スターダスト》に向けられていた。
あんなモンスターは見たことも聞いたこともない。普通ならば違法に作られたカードではないか、と疑う者もいるだろう。
だが自身の知る光道 遊理はそんなことをするような人物ではない。
となればあのカードは一種の曰く付きと考えるのが妥当だった。
かの遊城 十代が持っていたとされる伝説の《
そんなカードを使ってくれるほど信頼しているのだ。ならば自分もその信頼に応えないと……!
「僕は《チキンレース》の効果でLPを払って……一枚ドロー!」
命:LP1300→300
命がその意志を持ってカードをさらにドローする選択をする。
そして引いたカードを見て命は目を見開いた。
「(《パワーボンド》……これなら手札の《機械複製術》で……)」
『――何がリスペクトデュエルですか。相手に敬意を払う? はっ、反吐が出ますね』
「――ッ!! ぼ、僕は……《機械複製術》を発動!! 僕の場にいる攻撃力500以下の機械族モンスターを選択……!
選択したモンスターと同名モンスターをデッキから二体まで特殊召喚する! 《サイバー・ドラゴン・コア》は《サイバー・ドラゴン》として扱われる……《サイバー・ドラゴン》二体を特殊召喚!」
直後、命が何かを振り払うように発動された魔法カード。
それによって現れたのは二体の完成された銀の機械蛇のようなボディを持つ機光竜。《サイバー・ドラゴン》の
攻2100
攻2100
「ぼ、僕は……僕は……」
『――力、それ以外に全く価値なんてないんですよ。サイバー流なんて』
「っ僕は……僕は……《パワーボンド》を発動! フィールドの《サイバー・ドラゴン》三体を融合!」
「ミコっちゃん……」
「命?」
そしてまるで何かを恐れるかのように発動された融合カード。
フィールドにいた《サイバー・ドラゴン》扱いの《サイバー・ドラゴン・コア》と二体の《サイバー・ドラゴン》が光の渦に飲まれて消えていく。
「核たる機光の竜よ! 二対の始まりたる機光の竜よ! 今こそ昇華の渦にて混じり合い、終焉たるその姿を現せ! 融合召喚! レベル10! 《サイバー・エンド・ドラゴン》!!!」
そして眩い光がフィールドに煌めき、現れたのは見上げるほど巨大な銀色に輝く機光竜の姿。
大きな翼を広げ、体から稲妻をまき散らしながら形状の違う三対の頭部が絶対の王者の如くこちらを見下ろす姿は圧倒的な威圧感を放っていた。
攻4000→攻8000
「……これが……!!」
「……(そう、貴方はサイバー・エンドを……)」
これが伝説のサイバー流の最強モンスター。《サイバー・エンド・ドラゴン》……その姿に遊理は興奮が抑えきれなかった。
その反面、真理也はどこか悲し気にサイバー・エンドへと視線を向ける。
本来、遊理の場には二枚の伏せカードを破壊を防ぐスターダストがいる。
先ほどの《機械複製術》を妨害しなかったことを見るだけであのカードが迎撃系か蘇生系の二択に絞り込むことが出来る。
一部の召喚反応系……《黒魔族復活の棺》の類ならまだしもそれらのリスクがあっても呼び出すべきモンスターを呼び出すことが出来たはず。
それにまだ、今の《パワーボンド》でまた別の融合モンスターを呼び出せたはずなのに。
「《サイバー・エンド・ドラゴン》でトラピーズ・マジシャンを攻撃!! エターナル・エヴォリューション・バーストォォッ!!!」
命の指示にサイバー・エンドが中央の首と左右の首を鶴のようにゆっくりと伸ばし、大きく口を開かれる。
その口内には目の前の全てを破壊する光というべき機械特有の高出力のエネルギーが充填されていく。そしてその三頭の頭が一体のモンスター――トラピーズ・マジシャンに狙いを定め、三本の強大なエネルギーの本流として一気に放出する。
『遊理!』
「分かってる。手札の《
『くりぃっ!!』
「なっ!!?」
目の前に光の奔流が迫りくるも現れた虹色の宝石を付けた一頭身のモンスターが虹色の障壁で攻撃をかき消すとそのまま移動しながら生み出す虹の軌跡がサイバー・エンドを縛り、機能を停止させる。
これで《
「ふ、防がれた……」
さっきだって安易にサイバー・エンドを呼ばず、ノヴァからあのカードを呼べば無抵抗にスターダストも処理できて《
伏せカードを警戒せず、攻撃したからこうなったのだ。
「……僕はカードを一枚伏せてターンエンド……」
遊理:LP3000
手札:0枚
モンスター:
・《閃珖竜スターダスト》攻2500
魔法・罠:
・セット
・セット
・《
Pスケール
赤:《
青:《
命:LP300
手札:3枚
モンスター:
・《サイバー・エンド・ドラゴン》攻8000
魔法・罠:
・《サイバー・ネットワーク》
・セット
・セット
Pスケール
赤::
青::
フィールド:《チキンレース》
真理也:LP3000
手札:5枚
モンスター:無し
魔法・罠:無し
Pスケール
赤::
青::
「……アタシのターン」
何処か冷えた声色のままカードを一枚ドローする真理也。彼はやはり命の闇は根深いのだと改めて考えていた。
――鮫島 命は本当に優しい子だ。
それこそ過ごしてきた居場所を、
だからこそがら空きの自分を攻撃しなかった。その優しさが命取りだとしても……
「《チキンレース》の効果でLPを払って一枚ドロー! アタシはスケール1の《超重輝将ヒス-E》とスケール8の《超重輝将サン-5》でペンデュラムスケールをセッティング!!」
「ペンデュラム!!?」
真理也のフィールドの両端に青い光の柱が立ち上る右の柱の中には1の数字が、左の柱の中には8の数字がそれぞれモンスターと共に存在していた。
右の柱には翡翠のような緑色の身体を持つ超重輝将が、左の柱には珊瑚のような淡い色合いの身体を持つ超重輝将が出現し、二体の間に大きな光の円が生まれた。
「これでアタシはレベル2から7までの【超重武者】を召喚可能! ペンデュラム召喚! 来なさい! 《超重武者ジシャ-Q》! 《超重武者装留ビッグバン》! そしてチューナーモンスター《超重武者ホラガ-E》!!」
光の中で振り子が揺れ、真理也のフィールドに三つの光が飛び出して着弾する。
まずは両腕に磁石を持ちながら巨大なU字磁石を背負った《超重武者ジシャ-Q》、青い爆弾のような機械パーツ《超重武者装留ビッグバン》、そしてその名の通りに小さな体に法螺貝を持つ《超重武者ホラガ-E》。
守1900
守1000
守600
「アタシはレベル4のジシャ-Qとレベル3のビッグバンにレベル2のホラガ-Eをチューニング!!」
ホラガ-Eがその手に持つ法螺貝を吹いて大きく音色を響かせるとその身を二つの光り輝く緑の
そしてジシャ-Qとビッグバンが
「人を呪う狐の魂やどりし石よ! 今ここに厄災を齎すべく新たな姿で新生なさい! シンクロ召喚! レベル9 《超重魔獣キュウ-B》!!」
そして縦に並んだ
その尾には七本、頭には二本の燃え盛る炎がまるで九尾の尾の様に揺らめいており、その手は身の丈ほどある機械の錫杖が握られていた。
守2500
「キュウ-Bは相手フィールドの特殊召喚されたモンスター一体に付き、900ポイント守備力をアップする。
貴方たちのモンスターは合計して3体。よって2700ポイントアップするわ!!」
『しゅ、守備力5200!!?』
守2500→守5200
「キュウ-Bは表側守備表示のままで攻撃できる。しかも守備力を攻撃力として扱いダメージ計算を行うのよ」
「ふざけた効果を……」
「ふふふ♡ ふざけた効果は褒め言葉よ♪ さらに手札から二枚目のビッグバンをキュウ-Bに装備。
このカードを装備したモンスターは守備力が1000ポイントアップするわ」
先ほどシンクロ素材となって消えた青い爆弾のような機械パーツ――ビッグバンがキュウ-Bの背に装着されるとそれから得たエネルギーによってその守備力は高まる。
しかも実質攻守6200。守備表示で攻撃とかだいぶ変な効果だろう。
守5200→守6200
「キュウ-Bでスターダストを攻撃!!」
「――かかった! 永続罠《追走の翼》発動! フィールドのシンクロモンスターを対象にこのカードがフィールドに存在する限り、対象のモンスターは戦闘及び相手の効果では破壊されない!」
「あら? それだけ?」
スターダストめがけてキュウ-Bが錫杖を構えるとその先端にエネルギーを溜め、レーザーとして放出する。
確かにこれだけならば破壊されないだけで戦闘ダメージは受ける。しかし《追走の翼》の効果はこれだけじゃない!!
「《追走の翼》の更なる効果! 対象のモンスターがレベル5以上の相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時、そのモンスターを破壊し、対象のモンスターの攻撃力をターン終了時まで、この効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力分アップさせる!」
「なんですって!?」
「迎撃しろ、美花!!」
『おっけ~!!』
「『
《追走の翼》から降り注ぐ光の粒子を纏い、キュウ-Bの錫杖から放たれたレーザーをかき消して光をまき散らしながら飛翔するスターダスト。
そのまま急降下してキュウ-Bに突貫。そのまま貫こうとするが……
「させない! アタシは《超重武者装留ファイヤー・アーマー》の効果発動! このモンスターを捨ててアタシの場の守備表示の【超重武者】1体を対象にし、ターン終了時までそのモンスターの守備力を800下げる事で、戦闘・効果では破壊されない!」
「っ、破壊できないということは……!」
「そうっ! 相手を破壊できなかろうと攻撃は続行よ! キュウ-B!!」
守6200→守5400
凄まじい速度で突撃してくるスターダストにキュウ-Bは《追走の翼》から放たれた破壊の光をその身に纏った自らをも傷つける炎で身を守りながら錫杖で薙ぎ払う。
キュウ-Bの一撃を受けて吹き飛ばされながらも《追走の翼》で破壊されず、再度スターダストは空高く飛翔する。
遊理:LP3000→100
『いった~……酷い目にあったよ』
「くっ……大丈夫か?」
『平気、平気! むしろ燃えてきたよ!!』
思わず遊理は美花に声を掛けるが美花は楽し気に笑っている。
スターダストの姿となってもなんとなくだが美花の感情は自分もわかるのだ。根っこの部分で繋がっているようなそんな感じだがそれも悪くない。
「アタシはこれでターンエンドよ」
遊理:LP100
手札:0枚
モンスター:
・《閃珖竜スターダスト》攻2500
・《
魔法・罠:
・《追走の翼》スターダスト
・セット
・《
Pスケール
赤:《
青:《
命:LP300
手札:4枚
モンスター:
・《サイバー・エンド・ドラゴン》攻8000
魔法・罠:
・《サイバー・ネットワーク》
・セット
・セット
Pスケール
赤::
青::
フィールド:《チキンレース》
真理也:LP2000
手札:0枚
モンスター:
・《超重魔獣キュウ-B》守6200
魔法・罠:
・《超重武者装留ビッグバン》キュウ-B
Pスケール
赤:《超重輝将ヒス-E》:1
青:《超重輝将サン-5》:8
「僕のターン! ドロー! 魔法カード《ハーピィの羽箒》を発動!! 相手フィールドに存在する魔法・罠カードを全て破壊する!!」
遊理の場に現れたのは虚空に浮かぶ羽箒。
それが一振りされるとフィールドに訪れた烈風が相手フィールドの小細工を全て切り刻む。
守6200→守5200
「このタイミングで……決着を付けに来たわね。でも……」
「は、破壊される前に《サイバー・ネットワーク》の効果で三枚目の《サイバー・ドラゴン》を除外するけど……
そ、そしてこの瞬間、破壊された《サイバー・ネットワーク》の効果発動! 除外された光属性・機械族モンスターを可能な限り特殊召喚できる!
次元を超えて帰還せよ! 《サイバー・ドラゴン・ドライ》! 《サイバー・ヴァリー》! 《サイバー・ドラゴン》!!」
「というわけで特殊召喚されたモンスターが増えたからキュウ-Bの守備力も上がるわ」
羽箒によって《サイバー・ネットワーク》が破壊され、命のフィールドを土煙が覆いつくす。
そして土煙が晴れるとそこには三体のサイバーモンスターが帰還していた。
守800
攻0
守1600
守5200→守7900
「さらに伏せてた《ブレイクスルー・スキル》の効果でトラピーズ・マジシャンの効果は無効!! スターダストは二回攻撃できないよ!!」
「……罠カード発動! 《タイラント・ウィング》!! フィールドのドラゴン族モンスター1体を対象にこのカードを攻撃力・守備力400アップと1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できる装備カード扱いとして、そのモンスターに装備する!
スターダストに《タイラント・ウィング》を装備!!」
「ええっ!?」
『漲ってきたぁ!!』
さらに命が発動した《ブレイクスルー・スキル》によってトラピーズ・マジシャンの効果が無効化される。
しかし遊理が発動した《タイラント・ウィング》から放たれた光がスターダストの翼に降り注ぎ、その翼をより力強いものへと発達させ、神秘的だが力強く輝くその姿はより美しく洗練させる。
攻2500→攻2900
「まずは命から! スターダストでサイバー・エンドを攻撃ぃ!! 『
《追走の翼》から降り注ぐ光の粒子を纏い、星屑のような光をまき散らしながら飛翔するスターダスト。
そのまま急降下してサイバー・エンドに突貫。凄まじい速度で突撃してくるスターダストにサイバー・エンドもエターナル・エヴォリューション・バーストで迎撃するも放たれた破壊の光を突っ切ってサイバー・エンドの胴に風穴を開け、光の粒子をまき散らすように再度飛翔する。
「《追走の翼》の効果! レベル5以上の――」
「墓地の《超重武者装留 ビッグバン》の効果発動」
「ゑ?」
フィールドに現れたのは青い爆弾のようなモンスター。
その体はチカチカと明滅を始め、段々と間隔が短くなってくる姿には嫌な予感しか感じない。
「アタシの場に守備表示の【超重武者】モンスターが存在して相手がバトルフェイズ中にカードが発動した時、墓地のこのカードを除外する事で、その発動を無効にして破壊する。その後、フィールドのモンスターをすべて破壊してお互いに1000ポイントのダメージを受けるのよ。……永続罠の効果の発動にチェーン出来るからね」
「なっ、真理也の場には……っ!?」
「あら、気が付いた? キュウ-Bは【超重武者】扱いなの」
「ま、真理也……? 真理也のLPだけ2000だよね……ってことは」
《チキンレース》も無き今、命が気が付いたように恐る恐る聞いた。
《追走の翼》の効果がかき消され、火花を散らしているサイバー・エンドにビッグバンが取り付くと同時にビッグバンの身体が限界を迎え――
「――アタシの総取りね♡」
そして、サイバー・エンドもろとも、フィールドの全てを飲み込むような大爆発を引き起こす。
もちろん、美花は
『ごめんね、私の
「ふ、ふざっけんなぁぁぁ――ッッ!!!!」
「あ、あぁぁんまりだぁぁぁ――!!!!」
そして遊理と命も爆発に飲み込まれた――
*
「酷い負け方したなぁ……」
「あ、あははは……」
『ふぅ、吹っ飛ぶかと思っちゃったよ』
デュエルが終わってその疲れから座り込む遊理と命。
最後の最後で油断した。まずは命を倒してからって思ったら墓地からモンスター効果による爆破バーン。まさかあそこで真理也が総取りしてくるとは……
後、美花は許さん。絶対にだっ!!
『なぜにっ!?』
「あら? でもあのスターダストには驚いたわ」
「そうだよ! 《閃珖竜スターダスト》なんてカード、聞いたこともないよ!?」
「あぁ……」
幽霊の姿に戻った美花をスルーしていつの間にか僕の方に来た真理也から手を借りて立ち上がると命からも質問が返ってくる。
そしてエクストラデッキから《閃珖竜スターダスト》のカードを取り出し、その眼を向ける。
本当にこのカードは《スターダスト・ドラゴン》に似ている。
姿はもちろんステータスといい、破壊に関する効果といい……属性が光属性であること以外は《スターダスト・ドラゴン》に酷似しすぎている。
あの事故以来、手に入れたこのカード。美花の憑代ともなっているこのカードは一体何なのだろうか?
「……まぁ、そっちは考えても仕方がないか」
「えっ?」
「今はデッキ調整のことを話してもいいかな」
それに関してはいつまでも答えは出ないし、いったん放置しよう。
それより今はデッキ調整に関してだ。
「やっぱりヒグルミが抜けたのは痛いんじゃないかな? デッキからのリクルート手段が大幅に喪失してるし」
「確かになぁ。【魔装戦士】は少しでも回転力を維持できないかなと思ったんだが……やっぱり今度のパックで入る破壊されて効果を使うスケール5の
「破壊されて効果を使えるスケール5の
……でもそれを入れるならいっそ【
命と真理也、二人を伴ってデッキ構築の相談をする。そんな中で真理也からの意見を眼力で却下したその時だった。
奇妙な集団が現れたのは。
急に現れて、自分たち三人を囲う様に立つ彼らは背丈こそ自分たちの平均くらいなのだがオシリスレッドの赤とも、ラーイエローの黄とも、オベリスクブルーの青とも違う制服――金糸で縁取りを施した真っ白な改造制服。
その中でも一際目立つのは男性しか確認できないむさくるしい改造制服の集団の中、一人だけいる他とは違った意匠の改造が施された制服の少女だ。
「光道 遊理様ですね」
「……そうだけど、君たちは?」
「私は風紀委員副委員長を務めさせていただいてます、
その少女の制服ははっきり言えば白を基調としたメイド服にしか見えなかった。
真っ白なメイド服にハニーブロンドの三つ編み、整った顔立ちに眠たげな瞳の少女――何処か丁寧だが気だるげに自己紹介を行った。
風紀委員って……
「風紀委員長命令です。貴方には我々に同行してもらいます。拒否権と抵抗は無意味ですので抗わないことをお勧めします」
「……はっ?」
「えっ!? ええぇぇっ!!?」
「……」
淡々と告げられた白服――風紀委員たちの目的。
同時にそれは交渉の余地のない、有無を言わせぬ命令であり、事実。驚いている遊理と命を他所に真理也はじりじりと自分たちを囲んでいる白服たちが徐々に距離を詰めていることに気が付いた。
「それで? 風紀委員会が遊理ちゃんに何の用なのかしら?」
「それを聞く権利は貴方たちにはありません」
「蚊帳の外って奴ね。それで? どうすんの、遊理ちゃん? 拒否するなら手、貸すわよ?」
普段が乙女を自称するとは思えないほど鋭く研ぎ澄まされた眼光で睨み付け、理由を問う真理也だがそれを意に介さず、冷たく切り捨てるめぐる。
めぐるの返答に肩をすくめて友人が無理やり連れていかれるというならばと遊理に手助けすることを決める。
「――分かった、行くよ」
「えっ?」
「あら、いいの? こんな風に呼び出すなんてきっとろくな事じゃないわよ?」
「いいさ、こんなことをしてまで呼び出そうなんて……何を考えているのか逆に気になる」
しかし遊理は彼らに着いていくことを決める。
真理也は遊理を引き留めるが遊理はそう言って彼らに一歩踏み出した――
*
四方八方を白い改造制服の風紀委員たちに囲まれ、校舎を出て連れてこられたのは巨大なデュエルコートを有する豪華な宮殿のような建物。
あちこちが黄金色に輝く建物の中に連れられて昇降口の正面に見える階段を上り、階段を上りきった巨大な扉の前にたどり着く。
「(これが大筒木財閥の御曹司が率いる組織の力って奴か?)」
『うわっ、ここも金ぴかだよ。遊理』
「(成金趣味という奴か? 庶民には分からない感覚だな)」
大筒木財閥。
日本屈指の大財閥でこの学園のスポンサーの一つだ。その御曹司殿は一体僕に何のようなのやら。
そんなことを考えていると少女が軽く呼吸を整えて扉を叩く。
「――お連れいたしました。栄一郎様」
「おう、入りな」
扉の奥から粗暴な雰囲気を感じさせる声が聞こえてくる。
ドアを開けて振り返っためぐると背後から白服の生徒に押されて僕らは部屋に足を踏み入れる。
絨毯を敷きつめ、高価そうな家具が配置された一室。それはまるで生徒会室というより、何処かの王宮めいた雰囲気を漂わせていた。
そんな広い部屋の最奥には艶やかな革製の椅子と高級な雰囲気を漂わせるデスクが存在しており、椅子に一人の生徒が座っている。
前髪を全て後ろに流してワックスで固めたオールバックの髪型に老けた厳つい顔立ちを持つ青年だった。
2mは越す体格の良い巨躯に風紀委員たちが着ていた白の改造制服を着崩した着方をしており、一目見るだけで気弱な命は卒倒してしまいそうな威圧感を放っている。
この部屋の主である彼こそが灯衣の言っていた風紀委員長、あの傍若無人が関わらない方がいいと言われた男 大筒木 栄一郎……
「入学試験、見てたぜ。LPをギリギリまで削って攻撃力10000で大逆転とか結構面白いことしやがるじゃねぇか」
「……そりゃどうも」
「あの糞堅物もそりゃたいそうハラワタ煮えくり返っただろうよ。力あるものは責任がどうの貴族は相応しい振る舞いがどうのうるせえからな……あれだ、〝のぶれす・おーしゅ〝だったか?」
開口一番に放たれたのは入学試験での評価。
別に狙ったつもりなどない。それのあれはアリソン先生のプレイングミスに救われただけであって自分の実力ではない。
いつでも逃げ出せるよう、周囲を警戒しながらも話を聞いている。
※ちなみにのぶれす・おーしゅではなくノブリス・オブリージュである。直訳すると「高貴さは(義務を)強制する」を意味する言葉である。
「……」
「はっ、そんなに警戒するこたぁねぇだろ。
――第一逃げられるわけがねぇだろうが」
『っ! 遊理っ!!』
遊理の考えを見抜き、嘲笑うように言った栄一郎の言葉に遊理は表情を硬くする。
部屋の脇に十人近くの生徒たち。2、3年生くらいだろうか? 背後からも少女が扉を閉めて自分を連行した白服たちと合わせて遊理を取り囲む姿により警戒心を固めていた。
「……それで、僕に一体何の用ですか?」
「――お前のデッキを献上して俺の下に付け。そうすりゃ、カードでも女でも大抵のことは融通してやるよ」
見下すように言い放ったのはデッキの献上命令。
突然、そう言われて訝し気に睨み付けると栄一郎が楽し気に頬を緩ませた。
「おっ? 訳が分かんねぇって顔してんな。理由は簡単だよ、【No.】には特異な力があるって都市伝説は聞いたことあるよな」
「……話にくらいは」
曰く、7番目の【No.】を持つ者は絶対的な強運を持つ。
曰く、瞳の【No.】には他者の心を弄ぶ力がある。
曰く、射影機の【No.】を持つ者には未来を見ることが出来る。
曰く、死神の【No.】を持ったものは四十八日で死ぬ。
曰く……
といった具合に様々な【No.】の都市伝説が存在する。
一時期、美花に生身の肉体を取り戻すことが出来ないか?と後輩の唯香を連れて本格的に調べたことがある。まぁ、ほとんど眉唾ものだったが何度か危険な目にあってからさすがに懲りている。
僕一人だったらまだしも何も知らない
「ほとんどの【No.】の番号が確認され、市販化されているがお前が持つ《No.39 希望皇ホープ》は未確認。大筒木財閥のデータベースにも存在しない初見の【No.】だ。
――さっきデュエル場で見せた《スターダスト・ドラゴン》に酷似したモンスターもな」
「……」
「そりゃあ苦労しただろうなぁ。自分だけが持っている特別なカード、一目出せば反則扱いされただろう?
安心しな、俺の下に着けば俺が最高のデッキを提供してやるよ。もちろん、お前が使う【No.】もスターダストもどきも市販化して――」
「――言いたいことはそれだけですか?」
「……何?」
別に自分だけが持っているカードだから、なんて驕ってるつもりなんかない。
それだけの苦労はしてきたつもりなのは事実だ。だけど何を好き勝手僕のことを調べて勝手に僕の心情を妄想したのか知らないが……
「僕はこのデッキを手放すつもりはありません。
――意思とか、責任とか心底どうでもいい。例え誰かに批判されようといつだって僕は僕の願いのために戦う。それだけです」
『遊理……』
僕は美花ともう一度、触れ合いたい。彼女は自分にとって半身ともいうべき存在なのだから。
たとえ、それがどれだけの苦痛と絶望が待ち受けていようとしても。僕は自分のデッキを信じたい。誰かの作ったデッキになんてそんな答えがあるとは思えない。
ただ、この答えは彼のお気に示すものではないのは明白だった。
「――所詮は庶民か。はっ、くっだらねぇ」
「……」
「低俗な願いに縛られて目標も低いってわけか、なぁ?」
「……いい加減にしろよ。
「違うね」
スカウトをきっぱりを拒絶すると途端に態度を変え、栄一郎の見下しきった物言いに遊理もいい加減、イラつきを隠しきれなくなった。
敵を睨み付けるような目で反論しようとするとはっきりとした物言いで遮られる。
「俺はいずれこの学園の、全世界全ての
「……」
見下しきった暴君の発言。
不思議と暴力的なカリスマ性を感じさせ、冗談とは思えない言葉に周りの白服の数人――女子が感涙の涙を流しているのが見える。
他者を心酔させるカリスマ。努力では決して手に入らない才能だ。
「来月の月一試験、お前の学園生活はお終いだ。俺に逆らう奴は誰であろうと許さねぇ……この風紀委員長 暴帝の大筒木 栄一郎が作り上げる最高の舞台でお前の
遊理を見下しきった好戦的な目で栄一郎は宣戦布告を開始する。
こうして新たなる因縁が構築されるのだった――
遊理「今日の最強カードは――」
美花『――遊理が私に使った《追走の翼》だよ!』
《追走の翼》
永続罠
自分フィールドのSモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、対象のモンスターは戦闘及び相手の効果では破壊されない。
(2):対象のモンスターがレベル5以上の相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。
その相手モンスターを破壊する。
対象のモンスターの攻撃力はターン終了時まで、この効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力分アップする。
(3):対象のモンスターがフィールドから離れた場合にこのカードは破壊される。
遊理「このカードはシンクロモンスターにのみ装備可能な装備変化系カードの亜種ともいえるカードだ。ちなみに装備変化系カードは《鎖付きブーメラン》や《メタル化・魔法反射装甲》が有名なカードだね」
美花『このカードの最大の特徴は二つ。戦闘と効果に破壊耐性を与えるという効果とレベル5以上のモンスターと戦闘を行う場合、相手をダメージステップ開始時に破壊してその元々の攻撃力をターン終了時まで奪う効果だよ!』
美花『一つ目は言わずもがな! 前回紹介した私の憑代《閃珖竜スターダスト》と組み合わせることで《閃珖竜スターダスト》を戦闘と効果の破壊から守りつつその効果で《追走の翼》の破壊から守るという凄まじい硬さを誇る布陣を作り上げることが出来るよ!』
遊理「二つ目の効果はシンクロモンスターはもちろん、融合モンスター、上級モンスターを相手取ったときに問答無用で破壊できる強力な効果だ。
ただしレベルを持たないエクシーズモンスターには効果を発動できないので注意しよう」
美花・遊理『「全てを守護する聖なるの光!