遊戯王SDV スピリット・ドライヴ   作:【新鮮なる闇】

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月一試験! VS風紀委員 デュエル・チェイサーズ

 真理也と命、二人を相手に遊理は美花の憑代である《閃珖竜スターダスト》を使って一歩も引かないデュエルを繰り広げる。

 しかし真理也の味方を巻き込む容赦のない戦略に敗北しながらもその敗北から新たにデッキ改良のプランを練る遊理たち。

 

 そんな3人の前に現れたのは白の改造制服の生徒たち。

 彼らは風紀委員。学園の秩序と裁きを司る彼らは遊理を連行するとたどり着いた先に待っていたのは風紀委員長 暴帝の大筒木 栄一郎だった。

 

 彼の目的は遊理が持つ【No.】と《閃珖竜スターダスト》。

 その二つを差し出し、自分の下に着くように命令ずるが遊理は美花との再会のために自身のデッキを信じてその申し出を拒絶。

 栄一郎から月一試験での宣戦布告を受けるのだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――風紀の連中め……私が唾を付けるつもりだった奴に手を付けようとするとは……」

 

「落ち着けよ、ミレア。さすがにその言い草は色々まずい」

 

 生徒会校舎の会長室。

 その口にくわえていた棒付きのキャンディを噛み砕きながらつぶやいたミレアの言葉に対面に用意した椅子に座る逆立てた白髪にバンダナを巻いた人相の悪い青年が注意する。

 十三歳でその言葉は色々と犯罪的だ。自分以外の誰も聞いていないのだが。

 

「む? ……そうだな。……確かにそうかもしれないな。とりあえず、攻撃力の上がった死偉王ヘル・アーマゲドンでエクスカリバーを攻撃」

 

「罠カード……って《誤封の契約書》で封じられるか。俺の負けだ」

 

 すると言葉の注意を受けたミレアはそれを反省しつつ進行形で生徒会のテーブルの上で行っていた卓上デュエルに決着をつける。

 当然、防ごうとする才牙だがミレアの場にある《誤封の契約書》によって罠カードは発動できないので防ぐことが出来ず、そのままダメージを受けるとぴったりLPが0になる。

 

「ふむ、私の勝ちだな。だが才牙も悪くはなかったぞ?」

 

「へいへい。……ところで、風紀の奴らはどうするんだ?」

 

「確かに……あの男、腕だけはいいんだがあの性格はどうにかならないものか……」

 

 ミレアが自身の勝利にあくどい笑みを見せ、才牙がため息をつきながら肩をすくめるとそのまま話を戻す。

 するとミレアがそう言って顎に手を当てながら考え込む。

 

 大筒木 栄一郎。風紀委員長である彼もまた一流の決闘者(デュエリスト)である。

 実力だけならば相性問題も含めてまともに相手になるのはミレアと少し厳しいだろうが新入りの花恋くらいだろう。

 今の主流であるエクストラデッキに主力を置くデュエルの中で強力なエクストラメタである彼のデッキは相手にするのはエクストラに主力の多くを持つ才牙はもちろんもう一人の少女も厳しいし、光道 遊理も勝てる可能性はかなり低い。

 

「相手の全てを封じ込めて蹂躙し、帝の如き暴虐と圧政のデュエルを行う暴帝……末恐ろしいな。……そう言やぁ朱音(シュオン)の奴は?」

 

 場にいない一人の少女の行方を尋ねる。

 もう一人、書記を担当する少女はともかく、彼女は一体どこへと行ったのか?

 

「奴か? 奴はまだ購買だろう」

 

「ったく……あのドローパン狂はどうにかならないのかよ……?」

 

 毎日朝昼晩と食べているドローパン。

 健康に悪いからと言っても辞めずに満面の笑みで食べ漁る年上にもかかわらず幼い外見の少女の笑顔を思い出しながら才牙はため息をつくしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――っち、外れか」

 

『ゆ、遊理……なんか殺伐としてきてない……?』

 

 風紀委員長からの宣戦布告から時は過ぎて月一試験前日――四月の月末。

 遊理は美花を連れて購買の休憩スペースでDPを使って買い漁ったデュエルモンスターズのパックを剥いて――もといパックの封をピリピリと開いていた。

 

 風紀委員長からの宣戦布告から今日までまでオベリスクブルーを辻斬りしてDPを漁って回っていたのだ。

 このアイランド・デュエル・アカデミアでデュエルをすればするほど――特に上位の寮に勝てばそれ相応のDPが手に入る。

 オシリスレッド相手でも大体五人を相手に勝利すれば安く見積もって一食分が賄えるほど。オベリスクブルーは一人倒すだけで一食分だ。

 

 そうやって片っ端から叩き潰したオベリスクブルーとのデュエルで得たDPで遊理は月一試験に向けて新たなカードを買っていたのだが中々欲しいカードが当たらない。

 必要なカテゴリのカードは大体集まったのだがまだいくつか手に入ってないのだ。

 

 ……今度は学園のカードトレーダーに出そうかなと思い始めながらも買ったパックを剥いた。

 

「さて……今 度 は お 前 か 」

 

『ん? 何々? ……あはは』

 

 金に輝く両目のハイライトを消して引き当てたカードを見つめる遊理。

 そんな表情を見て怖いもの見たさで美花は遊理の身体をすり抜けながら真正面から覗き込んでみる。

 

・《融合識別》

 

・《月光狼(ムーンライト・ウルフ)

 

・《エッジインプ・シザー》

 

・《ダーク・ダイブ・ボンバー》

 

・《魔装邪龍 イーサルウェポン》

 

「確かに強いけど僕はお前は呼んでいないんだ。(誰が) D (どう見ても) B (ぶっ壊れ)……お前はストレージだ」

 

 《ダーク・ダイブ・ボンバー》。

 何でも初期生産版はターン制限とメインフェイズ1にしか発動できないという制限がなかったため、即座にエラッタが行われたカードである。

 フォーチュンカップで不動 遊星と対戦したボマーと呼ばれるデュエリストが使ったことで有名であり、その初期生産版の効果があまりにもデュエル社会に致命的な損害を与えかねないこと、そしてその名前を直訳して(誰が) D (どう見ても) B (ぶっ壊れ)……そう呼ばれている。

 

「さて、次は……うしっ」

 

 光り輝く絵柄に金色の輝くカード名。最後の一枚のウルトラレアカードはちょうど欲しいカードの一枚。

 

「……大体集まってきたな……」

 

 これで欲しいピースがほとんど揃った。後は……

 

「――ねぇ? さっきからパックのカード見ては一喜一憂してるみたいだけどキミ、何してるの?」

 

 カードパックを開けていると唐突に背後から声が掛けられる。女の声――女子生徒だろうか?

 そう思い、背後を振り向くと、そこには一人、不思議そうな表情をした少女が佇んでいた。

 

 年齢は見た目、小中学生程度の年齢だが飛び級という実例がこの学園にある以上、年齢は関係ない。事実、彼女が着こなすフード付きのオシリスレッドの制服には三年生を現す白のブローチが縫い付けられている。

 顔立ちも整っているが何より特徴なのは髪型だろう。若草色のくるくるとした変わった巻き方のパーマが特徴的。

 

 そしてその手に握られているのはこのアカデミアのロゴが入ったパンの袋。この購買で売られているそれの名前はドローパン。このアイランド・デュエル・アカデミアの伝統と呼ばれたパンであり、ドローの名の通りに具材は明けてみるまで分からないランダムである。

 キャビアやフォアグラからくさや、挙句の具なしパンなどふり幅がとてつもなく大きいのだがそんなギャンブルパンが人気なのは毎日五個しか作られない黄金の卵パンだろう。

 かつて本校と呼ばれていた頃は一個しか作られていなかったのだが黄金の卵パンの卵を産む鶏が繁殖して増えていたことから五つに増えたのだ。

 

「ん? いや、さっきから欲しいカードが中々……後は《置換融合》が一枚なんだが……」

 

「ふ~ん……はい、《置換融合》」

 

『「えっ?』」

 

 何処かで見たような少女を一瞥して遊理は再び購買部にパックを買うことを決めたその時だった。

 少女がデッキケースから《置換融合》のカードを取り出し、差し出してきたのだ。見知らぬ相手から差し出されたカードに警戒するとそのまま遊理の座るテーブルの上に置く。

 

「ボクはそれ、いらないからあげるね。代わりにこれ、もらってくから」

 

「あっ」

 

 すると少女は流れるようにパックで先ほど当たったカード《エッジインプ・シザー》を掠め取って去っていった。

 人を食ったような態度でドローパン――ちらりと見えた中身は煌めく黄金の卵――を食べながら上機嫌に去っていく姿を見てようやく彼女のことを思い出す。

 

人食い人形(カニバル・ドール)……?」

 

『えっ? あの子が? いい子そうなんだけどなぁ……?』

 

 森谷 朱音。その二つ名で知られる3年生の危険人物。

 なるほど、あの人を食ったような態度からそう呼ばれているのだろう。ただ……

 

「それだけとは思えないんだが……」

 

 何かまだ隠し持っているような印象を受けた。

 ……まぁ、とりあえず今はデッキの構築を行うために当てたカードたちを持って寮室へと戻ることにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ってわけだ。できるか?」

 

『ふむ、大事な研究のスポンサー殿に頼まれては仕方がないね。こちらでデュエルチェイサー119と光道 遊理君がデュエルするように対戦カードを組み替えておくよ』

 

「頼んだぜ? マグシオンの旦那」

 

 風紀委員会校舎の委員長室。

 栄一郎はデスクに内蔵されたホロモニターで通話相手との通信を切った。

 いつも学園セキュリティから独立させた研究所のマッド野郎でも教師は教師。利用できるものならなんであろうと利用する。

 あの男からすれば学園の対戦カードを決めるコンピュータにハッキングすることなどキャンディを食べながらだってできるのだ。

 

「――おい、めぐる」

 

「はい。なんでしょうか」

 

「デュエルチェイサー118の奴を呼べ」

 

「かしこまりました」

 

 扉のすぐ脇で待っていためぐるに命令し、めぐるは部屋を出て行くと栄一郎は机の上に足を乗せるという無作法な格好で一息をつく。実家からの回し者とはいえ自分の監視役などご苦労なことだ。

 それはともかく、しばらくして聞こえてきた足音で栄一郎は足を下ろすと扉が開く。

 

 めぐるが連れてきたのは一人の男子生徒。

 風紀委員の金糸で縁取りされた白の制服にさらりとした前髪、眼鏡をかけた切れ長の目に薄い唇の気真面目そうな顔立ちの青年だ。

 

「お呼びですか、栄一郎委員長」

 

「おう、呼んだぜ」

 

 デュエルチェイサーズ。

 このアイランド・デュエル・アカデミアの秩序を司る風紀委員の執行部隊。

 不審者や校則違反を行った生徒をデュエルで捕らえる彼らは一人一人がライディングでもスタンティングでも学園の中で一流の決闘者(デュエリスト)だ。

 

 その中でも彼は入学して風紀委員に所属してから一か月という短い間に高い実力を得た次代のエース。

 この計画が成功すればチェイサーズの部隊一つは任せても良いほどの実力者である。

 

「お前には明日の月一試験でこの風紀委員に逆らった愚か者、光道 遊理と対戦してもらう。

 学園内の秩序を司る風紀委員に逆らう愚か者が無様に敗北する様は入学したての一年に良い見せしめになるからな。

 ――俺に逆らった愚か者をチェイサーズとして徹底的に叩き潰せ」

 

「はっ!」

 

「話は以上だ。下がっていいぞ」

 

 栄一郎の命令に何の疑問さえ抱かず、敬礼してめぐるが扉を開けるとそのまま部屋から退室する。

 あんな愚直な馬鹿でも本物に劣るとはいえ習得難易度の高いデミ・アクセルシンクロにたどり着いた実力者だ。実力に関しては信用できる。

 だが万が一ということもあるだろう。

 

「……めぐる、SFSの連中も呼んでおけ。バックアップも用意しておかねぇとな」

 

「了解いたしました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 デッキに必要なカードを集めて部屋に戻った遊理。

 一応、ノックを忘れずに入ると中に気配を感じ取る。もちろん同性同士ならば問題はないのだろう。

 しかし自分のルームメイトは異性。間違いでも起こってしまえば学園から追放などシャレにならない。最大限の注意を払わないといけないのだ。

 気を引き締めて部屋にまた一歩足を踏み入れると――

 

「――ぷしゅぅ」

 

「ちょっ!? どうした 天草さん!?」

 

 ベッドに寄りかかるようにぐったりとダウンしてグロッキーな天草さんがいて張りつめていた一気に切れた。

 今朝、授業に出た時はまだ問題はなかったのだが一体何が……其処まで考えた後、理由に行き当たる。道理で何処かどんよりとした雰囲気を纏っているわけだ。

 

「あぁ、月一試験の勉強してなかったのか」

 

『あっ、遊理言っちゃだめだよ? 花恋さんだって忙しいんだから』

 

「……」

 

 図星だった上に美花のフォローが聞こえない天草さんはさらにどんよりとした雰囲気を重くする。

 現役アイドルと学業の両立はかなり難しいものだ。過去にこのアカデミアにはプロリーグと学業を両立していたプロデュエリストがいたそうだが記録によるとほとんど授業には出席せず、単位が他の寮よりも緩いオシリスレッドに形だけ在籍して寝泊りは自家用クルーザーで生活していたらしい。

 この絶海の孤島である学園の学業と島外でのアイドル活動を両立させるのはそれ以上に困難な道なのだろう。

 ……まぁ、仕方がないか。

 

「よかったら僕が教えようか? 力になれるか分からないけど」

 

「……良い、の……? …迷惑じゃ……ない……?」

 

「入学初日にサポートしてくれって言ったのは天草さんだよ? それくらいは力を貸すよ」

 

 遊理の言葉に恐る恐るで躊躇いながらもこくんと首を縦に振る姿にそんな可愛らしい音が聞こえてきそうな感じなのはさすが現役アイドルの恋花 奏というべきか。

 

 この一か月、彼女とルームメイトとして何度か過ごしているうちに彼女の素というべき性格を多少認識できた。

 彼女は排他的な性格で人を頼るということに抵抗感を抱いているところがある。初日で言ったようにいざ頼ろうって考えても足踏みしているのがその証拠だ。

 それでも入学初日にサポートすることを約束しているルームメイトに勉強を教える事に抵抗感はない。だがたった一日――時間で言えば半日くらいでの勉強は付け焼刃という他ないだろう。

 

 それに成績優秀を驕ってオベリスクブルー狩りでDP稼ぎに精を出していた自分が多少積み上げが必要になる教科を教えられるだろうか?

 ……自分も覚える気で教えて頑張ろう。

 

 そうと決まれば即席の勉強会が始まるのは早かった。

 時に分からないところは教え、自分でも分からないと思ったことは調べながら勉強していくのは中々楽しかった。

 相手が現役アイドルになれるほどの美少女だから――ではない。いや、あるのかもしれないが勉強中に時折見せる素の表情が普段から周りに気を張っているせいか素とのギャップが可愛らしい。

 

「っ? どうか、した?」

 

「いや、何でも」

 

『あっ、分かった。えっちぃことでも考えて……』

 

「(少し黙れ)あっ、そこ違う。《カタパルト・タートル》の旧テキストは……」

 

 だがそんな彼女は何を思って此処に来たのか。

 学業とアイドルの両立というだけならば本土の学校でもできたはずなのに。

 その理由に何故か後ろ暗い何かを直感的に感じ取りながらも気のせいだと考えて彼女に少しでも勉強のことを教えるべく頑張ることにする遊理なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 昨日の勉強で疲れたのか少しいつもより起きるのが遅れてしまったが問題のない時間だ。

 その分、今日の朝食は簡単なものになってしまったが臭いにつられて途中で起きてきた着ぐるみパジャマの花恋さんと一緒に朝食を済ませて制服に着替え、昨日買ったカードによるデッキ調整をして寮を出る。

 

「あっ、おはよう。遊理君! 天草さん!」

 

「おはよう。お二人さん」

 

「あぁ、おはよう。命、真理也」

 

「……おはよう」

 

 すると寮の前にいた命と真理也が出てきた遊理と花恋に挨拶を交わす。

 一応、寮が隣部屋であることから遊理と花恋が同室のルームメイトであることと事情は遊理からの説明で把握済みである。

 四人で校舎へと向かい、時折絡んでくる花恋のファンを軽く捌いて玄関から校舎へと入って教室へと向かう。

 教室内ではすでにだいぶ人が集まっており、試験開始を待つだけとなっていた。

 

『やっぱり五分前行動は基本だね!』

 

「(その場のノリで動く美花が言えた義理か?)」

 

『それはそれ、これはこれ……だよ!』

 

『くりぃ!』

 

 教室中を見渡した美花の言葉に遊理がツッコミを入れると(にじ)クリボーと共に反論が返ってきて思わずため息をついた。

 命と真理也からは月一試験に対する不安と見られたのかなんか温かい目で見つめられ、そそくさと天草さんを連れて席に着く。

 そして時間になって勢いよく飛び込んできたのは――

 

「チャロチャロ~♪ つっきいっちしっけん♡ 筆記試験をはっじめっるよ~!!!」

 

 水色のワンピースに白いエプロンドレス。

 かの有名な童話『不思議の国のアリス』に出てきそうなメルヘンチックな格好に何故か武骨なメカメカしいうさ耳を装備したなんとなく危ない印象を与えるコスプレ?である。

 その人物は言わずもがな。このクラスの担任である瑞葉だ。相変わらずというかなんというか、毎回ほぼ別のコスプレでよくバリエーションが持つなと言いたい。

 それはともかく試験開始の時間となって一斉に思考を切り替える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――キーン、コーン……

 

「はいは~い♪ 其処まで~♡ 次の実技はライディングデュエルだよ♡ 地下のD-ホイールガレージからD-ホイールに乗ってライディングデュエル試験場で待っててね! 遅れちゃったりしたら課題を増やすからお楽しみに♪」

 

 チャイムの音が筆記試験の終了を告げる。

 教壇に立つ瑞葉が実技最高責任者にはあんまりな呼び名とちょっと学生からすれば恐ろしい一言を残し、教科書などの資料類を机で整えて教室を後にしたその瞬間、多くの生徒が崩れ落ちる。

 それも当然だろう。彼女の授業はお茶らけているくせに授業が分かりやすくもやたら難しいのだ。ダウンしない奴は相当タフな生徒だけだ。

 

「疲れたぁ……」

 

「……やっと、終わった……」

 

『うわぁ……大丈夫?』

 

 花恋と共にグロッキーな遊理。

 今回の筆記試験ではなかなか難しい問題が多かった。カードの種類からくる特徴や「時」や「場合」に関する効果認識まで幅広い内容で中にはひっかけ問題もある中々に意地の悪いテストだった。

 

「にしても次の実技試験はサーキットでライディングデュエルか……」

 

 学園内じゃ授業でもほとんどD-ホイールを使わないからな。

 久しぶりのライディングデュエルとなるとデッキ改造してもギリギリといったところか。

 

「お二人さん。早めにいかないと遅刻しちゃうわよ」

 

「……ん」

 

「分かった……」

 

 考え込んでいると真理也に呼ばれ、ゆらりと席を立った花恋に続いて遊理も立ち上がり、教室の前で待っていた命と一緒に教室を出る。

 

 そして階段を下って数分。たどり着いたのは地下にある無数のガレージ。途中で三人と別れて入学した日に運んだ自身のD-ホイール――シャイニー・スワローのあるガレージのロックを外してガレージ内に足を踏み入れる。

 ……何ら傷つけられている様子もないし、人の気配もない。風紀委員が何かした痕跡はない。

 

「さて……」

 

 D-ホイールに乗りこんでOSを起動させてみても何も問題はない。風紀委員が何か小細工でもしてくるかと思ったけど杞憂だったのか?

 そう考えるとそのままライディングデュエル試験場へ向かう。

 

 ライディングデュエル試験場。

 その名の通り、アカデミアの人工島部分に建設されたライディングデュエル実技の授業を行う際に使われる専用の大型試験場である。

 天井の中心に試験管席を吊り下げた大きなスタジアムのような構造をしているがサーキット自体は地下に建設されており、地下へと続く通路が中央部分に空いている。

 何層にも分かれる円形の地下サーキットには反則防止のため、いたるところに監視カメラを設置しており、複数のライディングデュエルを試験場の壁沿いの出番待ちや試験を終えた生徒のための観客席兼通路で中央部分に投影されたホロビジョンで同時に見ることが出来る。

 

「――あら? 早かったわね?」

 

「真理也、天草さんと命は?」

 

「あそこよ」

 

 そしてD-ホイールに乗って試験場にまでやってきた遊理は観客席で先に来ていた真理也にその場にいなかった花恋と命の行方を尋ねると命が指さしたホロビジョンに映し出されているライディングデュエルの決着が今着く瞬間であった。

 

「――《輝光子パラディオス》でダイレクトアタック。フォトン・ディバイディング」

 

「う、うわぁぁぁぁぁ――!!!」

 

 近未来的な白の鎧を纏った輝く騎士が上段に剣を構えると一際強く輝き、踏み込んで対戦相手の生徒目がけて斬撃を叩きこんでそのLPが0を刻む。

 そして聞き覚えのある悲鳴を上げた対戦相手が駆る白銀のD-ホイールが蒸気を吹いて急停車し、もう一台の竜を模したスカイブルーのD-ホイールが停車して乗っていた生徒――花恋がヘルメットを脱いだのを見て戦っていたのは命と花恋の二人だったのだと納得する。

 

「やっぱり天草さんって強いんだなぁ。さて、僕の対戦相手は……」

 

 デュエル状況を見て花恋のLPが1も減っていないことを知り、自分が苦戦した相手を難なく倒す花恋に改めて戦意を抱きながらもその戦意はこれからのデュエルに向けるべく映し出される対戦表へと視線を向ける。

 対戦表はホロビジョンに映し出される仕組みとなっている。一学年大体約百人前後。最低でも五十組はデュエルが組まれており、画面の上から下まで名前がずらりと並んでいた。

 

「あった」

 

「で?」

 

『対戦相手は……うわっ』

 

 間違いようのない自分の名前を発見し、そのまま横に視線を移動させて対戦相手を確認する。

 映っていたのは……

 

《オシリスレッド 光道 遊理 VS オベリスクブルー 慕谷(したいたに) 雷一(らいいち)

 

「いきなり、オベリスクブルーか」

 

「昨日の風紀委員からの呼び出しで何かしたの?」

 

「勧誘されたけど断った。デッキ献上しろとかふざけんな」

 

「……貴方って人の下に着くの苦手なタイプよね。きっと」

 

「いんや? でも僕我儘だし、自分勝手だから俗にいう一部の人以外にはとことん嫌われるタイプ」

 

「それって余計ひどくなってるわよねっ!!?」

 

 表示された対戦相手がいきなりの他寮の生徒。

 真理也が訝し気に視線を向け、聞いてきたので簡単に真実を話すと驚いたように口元を抑えた後、納得した様な表情を見せる。

 そんな真理也にフォローとしてそんなことを言ってみれば良いツッコミが返ってきてにやりと笑みを浮かべてしまう遊理なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オシリスレッド:光道 遊理。オベリスクブルー:慕谷 雷一君。第五試験用アンダー・サーキットの入り口に着くように』

 

「出番か」

 

 生徒たちが試験の結果で騒がしい会場に機械音性の大音量で遊理と対戦相手の名が呼び出され、座っていた椅子から腰を上げて腕を曲げて軽いストレッチをする。そして共に観戦していた面々へと視線を向けた。

 

「それじゃぁ、行ってくるよ」

 

「ふふふ、行ってらっしゃい」

 

「頑張ってね!」

 

 そう言って応援して背中を押してくれる命と真理也。真理也はしれりと自身のデュエルを終えており、完勝を収めていた。

 

「……」

 

「あ、天草さん?」

 

「……頑張って」

 

 それは彼女なりの声援だった。社交辞令に様なくらい感情の籠っていない淡々としたものだったが間違いなく不器用な彼女なりのエール。

 思わず、頬を緩めて笑みを浮かべるとそっぽを向いてしまったがすぐに気を引き締めて観客席から試験場にあるDーホイールの駐車場に向かい、D-ホイールで5番と大きく電光掲示板に表記された地下サーキットの入り口に着く。

 すると少し遅れて着いたのは白と青を基調とし、後部にライトグリーンに輝くパトランプが装備された如何にもというべきD-ホイール。そしてそれに跨るのは風紀委員腕章をつけた白のライダースーツの青年。

 やっぱりというか、風紀委員の手が掛かっていそうな対戦相手だと思っていたがここまで露骨だと呆れを通り越して称賛を覚えてしまいそうだ。

 

「――初めに言っておく。

 私、デュエルチェイサー118のライディングデュエルによる検挙率は入学してから100%だ」

 

「それで? 何が言いたいんだ?」

 

「すなわち! それは貴様のような身の程知らずの悪党は決して我々風紀委員という正義の前には決して敵わないということだ!!

 此処で私が勝利して、貴様を検挙してやろう!!」

 

「勝手に悪党、というか犯罪者扱いしないでくれないか?」

 

 ビシッと音がしそうなくらいの勢いで遊理を思い切り指さすデュエルチェイサー118と名乗った生徒に訝し気にしながらもこちらを悪と決めつけるその言動に対して遊理は冷静に反論する。なんていうか思い込みの激しい人だなぁ。

 そんな感想を抱きながらも戦意を最大限高める。

 

「――フィールド魔法! 《アクセル・ワールド》!! セット!!」

 

【DUEL MODE ON! AUTOPIROT STANDBY!】

 

 機械音声がデュエルの始まりを告げ、互いのD-ホイールを中心に光が広がっていく。目の前にソリッドビジョンのランプが浮かび上がると空中にカードが巨大な球体上に集まる。

 カードが散らばるのは地下サーキットだが視線を向けてみれば他の入り口の方でもスタートについてライディングデュエルの開始を今か今かと待っている生徒たちが確認できた。

 そしてサーキット入り口上部、電光掲示板の下に設置されたがスタートのカウントダウンを開始する。ピッ、ピッ、ピッと音を立てて赤い三つのランプが灯り、三つの信号は青に変わった瞬間、遊理を含む生徒たちはエンジンをスタートさせた

 

 「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」

 

 その掛け声と共に無数のカードが集まった球体が砕け散るとともに……

 

「「デュエル!!!」」

 

遊理:LP4000

 

雷一(119):LP4000

 

「っ!?」

 

『えっ!? なにあの馬力!!?』

 

 この試験サーキットルールでは先に地下のサーキットに突入した方がデュエルの先行となる。

 しかし遊理が駆る黄色のパーツと後部に白の翼の装飾を持つD-ホイール――【シャイニー・スワロー】と雷一(118)が駆る風紀委員専用D-ホイール【ポリス・チェイサー】は一瞬にして距離を離されてしまう。

 遊理は知る由もなかったが【ポリス・チェイサー】はネオドミノシティのセキュリティが使うD-ホイールをベースに風紀委員による執行用のために簡易加速装置や強制決闘形態(デュエルモード)システムなど一般的なD-ホイールを上回るスペックを持つ。

 故に先に地下サーキットへと突入したのは雷一(118)の【ポリス・チェイサー】だ。

 

「私のターン!」

 

遊理:SC:0

 

雷一(118):SC:0

 

「私は《 Sp(スピードスペル) オーバー・ブースト》を発動! このターンの間、自分のSC(スピードカウンター)を4つ増やす代わりにエンドフェイズに自分のSC(スピードカウンター)を1つにする!」

 

「先行でそれを使うか!」

 

 発動されたのはこのターンの間、SC(スピードカウンター)を増やす【 Sp(スピードスペル) 】だ。

 しかしエンドフェイズにデメリットとなるSC(スピードカウンター)を1に減らす効果があるがSC(スピードカウンター)に左右されず発動可能な【 Sp(スピードスペル) 】であり、そもそもSC(スピードカウンター)の貯まらない先行で発動された今、そのデメリットすらもメリットとなるのだ。

 

雷一(118):SC:0→4

 

「さらに私は《 Sp(スピードスペル)-エンジェル・バトン》を発動! 手札の《ボルト・ヘッジホッグ》を墓地に送り、カードを二枚ドロー!

 私はチューナーモンスター《アタック・ゲイナー》を通常召喚する!」

 

 雷一(118)が宣言したとたん、D-ホイールの横に光の輪が現れると赤い髪を持つ小人が姿を現す。

 

攻0

 

「此処で墓地に送った《ボルト・ヘッジホッグ》の効果を発動! 私の場にチューナーモンスターが存在する場合、場を離れた時に除外される代わりに墓地から特殊召喚できる! いでよ!! 《ボルト・ヘッジホッグ》!!

 

 《アタック・ゲイナー》に続いて現れたのは背中から針の代わりに無数の螺子が飛び出した可愛らしいハリネズミ。

 一見、獣族に見えるが実は機械族である。

 

攻800

 

「レベル2《ボルト・ヘッジホッグ》にレベル1《アタック・ゲイナー》をチューニング!!」

 

 《アタック・ゲイナー》がその身を一つの光り輝く緑色の同調倫(チューニング・リング)へと姿を変え、《ボルト・ヘッジホッグ》が勢いよく同調倫(チューニング・リング)に飛び込んだ。

 そして《ボルト・ヘッジホッグ》がその身を二つの星へと姿を変える。

 

「絶対なる権力の鉄壁よ! その力で敵を鎮圧せよ! シンクロ召喚! お上の力、思いしれ! レベル3! 《ゴヨウ・ディフェンダー》!!!」

 

 そして縦に並んだ同調倫(チューニング・リング)と星が光の柱となり、光が晴れて現れたのは右手にジュッテ、左手に盾を持った小柄の岡っ引き。

 

攻1000

 

「一ターン目からのシンクロ召喚……」

 

「私は《ゴヨウ・ディフェンダー》の効果を発動! 私の場に地属性のシンクロモンスターしか存在しない場合、エクストラデッキから同名モンスターを一体特殊召喚できる!」

 

「なっ!?」

 

「現れるがいい! 二体目の《ゴヨウ・ディフェンダー》!! さらに二体目の《ゴヨウ・ディフェンダー》の効果で三体目の《ゴヨウ・ディフェンダー》を特殊召喚!!」

 

 現れた一体目の《ゴヨウ・ディフェンダー》の両側に並ぶように飛び出してくる二体の《ゴヨウ・ディフェンダー》。

 それぞれが盾とジュッテを構えている。

 

攻1000

 

攻1000

 

「さらに私はフィールド魔法《召喚制限-エクストラネット》を発動!!」

 

 発動されたフィールド魔法によって空間が変質する。

 地下トンネル状のアンダー・サーキットが自分たちが進むサーキットと天井の障害物を緑色の網目状に縁取り線だけを残して暗黒を見透かしているような不可思議な空間へと変わっていた。

 

雷一(118):SC:4→3

 

「このカードはエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した場合、特殊召喚したプレイヤーから見て相手プレイヤーはデッキから1枚のカードをドローすることが出来るフィールド魔法。

 だが罪人の貴様にはこのカードの施しを受けるためには代償を払わなければいけなくなるのだ」

 

「だから誰が罪人だよ……」

 

 意味深に笑う雷一(118)の罪人扱いにいい加減ウンザリしてくる。

 俗にいう勧善懲悪によっている正義の味方でも気取っているつもりなのだろうか? 勝手に悪党扱いしてくる言いぐさにもイライラしてくるものだ。

 

「さらに私は永続魔法《一族の結束》を発動! 墓地のモンスターの種族が一種類の場合、私のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする!

 私の墓地には戦士族の《アタック・ゲイナー》一体のみ! 機械族の《ボルト・ヘッジホッグ》は自己蘇生のデメリットによって墓地から除外されている。よって《ゴヨウ・ディフェンダー》三体の攻撃力を800ポイントアップする!!」

 

攻1000→攻1800

 

攻1000→攻1800

 

攻1000→攻1800

 

雷一(118):SC:3→2

 

「さらに私はカードを一枚伏せて、エンドフェイズにオーバー・ブーストのデメリットによって私のSC(スピードカウンター)は1になる。ターン終了だ。」

 

雷一(118):SC:2→1

 

遊理:LP4000

手札:5枚

モンスター:無し

魔法・罠:無し

Pスケール

赤::

青::

フィールド:

SC:0

 

フィールド:《アクセル・ワールド》

 

雷一(118):LP4000

手札:0枚

モンスター:

・《ゴヨウ・ディフェンダー》攻1800

・《ゴヨウ・ディフェンダー》攻1800

・《ゴヨウ・ディフェンダー》攻1800

魔法・罠:

・《一族の結束》

・セット

Pスケール

赤::

青::

フィールド:《召喚制限-エクストラネット》

SC:1

 

 

 




 どうも最近、《月光(ムーンライト・)紅狐(クリムゾン・フォックス)》にさらなる可能性を感じてならないアポリアです。

 あのカードって週末……《終末の騎士》とか効果で墓地に送ったりすることでターン終了時まで相手モンスター一体の攻撃力を0にする効果と対象効果から身を守ってLPを回復させる効果がありますよね。
 前者の効果が遊戯王Wikiを見た限り、某燃え上がる拳なカテゴリのグラスジョーさんと同じ分類がしてあったのでエクシーズ・モンスターの効果で使っても効果が発動出来て攻撃力を0にできると思うんです。
 知ってるカード店に居た人が脇から口を挟んできて「できないだろ馬鹿なの?死ぬの?」って全力で嘲笑われてイラッと来ましたが皆さんは発動できると思いますか? 発動できないと思いますか?
 とりあえず、発動できると思うけどVジャンプ販売日に期待っと。

 あっ、後は誤字脱字があればバシバシ指摘してください!

 今回のデュエルで使用された【 Sp(スピードスペル)】と関連カードを紹介します。

 Sp(スピードスペル) オーバー・ブースト》
通常魔法
(1):このターン、自分のSC(スピードカウンター)を4つ増やす。エンドフェイズに自分のSC(スピードカウンター)を1つにする。

 SC(スピードカウンター)をその名の通りにオーバー・ブースト……デメリットを承知で一時的に増やすカードですけど雷一(118)が使ったように先行で使えばデメリットがメリットになる。たぶん、これから多用されるんじゃないかなぁ。

 ちなみに雷一こと118の名前の由来は皆さんご察しの通り、デュエルチェイサー227さんです。
 番号は227の少ない方の数字を減らして多い方の数字を増やしました。

雷一(118)「今日の最強カードは私が使う《ゴヨウ・ディフェンダー》だ!!」

《ゴヨウ・ディフェンダー》
シンクロ・効果モンスター
星3/地属性/戦士族/攻1000/守1000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが
戦士族・地属性のSモンスターのみの場合に発動できる。
エクストラデッキから「ゴヨウ・ディフェンダー」1体を特殊召喚する。
(2):このカードが攻撃対象に選択された時に発動できる。
このカードの攻撃力はそのダメージステップ終了時まで、
このカード以外の自分フィールドの戦士族・地属性のSモンスターの数×1000アップする。

雷一(118)「このモンスターはレベル3のシンクロモンスター」

雷一(118)「低レベルでありながら厳しい条件による増殖効果を持つ様々な活用法あるシンクロモンスターだ」

雷一(118)「シンクロモンスターを素材とした融合、ランク3のエクシーズといった様々な方向に使えるが諸君らには使いこなせるか?」

雷一(118)「屈すること無き権力の団結! ゴヨウ・フォーメーション・カウンター!!!」
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