「・・・・・・これは一体どういうことです?」
カルデアの一室において彼らは集められた、一人はブリテンの王にして、騎士王と崇められたアルトリア。
「・・・・・・マスターから話があると聞きましたが」
「・・・・・・私も」
もう一人はへそを大きく出した痴女さながらの服装を纏うライダー牛若丸と、純白の衣を身にまとった戦闘王アルテラの三人が集っていた。
「まぁ、おそらく私たち三人に共通する事柄なのでしょうが、心当たりはありますか」
「うーん、私はお二方のようにセイバーでも、ましてや王でもありませんからね。三人とも女性である。くらいでしょうか」
「でしたら、他の方だっているでしょう、マシュさんや、ライダー・・・・・・メデューサとかもいるでしょうし」
頭を抱えて悩むアルトリアと牛若丸だが、そんな状況に際し、アルテラは一言漏らす
「TS?」
「「あ」」
そうか、この三人、史実では男として語られていた身、そうなると頷けるが・・・・・・。
「・・・・・・いや、その場合だったらネロ皇帝がいないのはおかしいですよ」
牛若、渾身のファインプレーをするが
「いや、ネロはローマですから」
「ローマ・・・・・・ローマ・・・・・・」
「駄目だこいつら、ローマ面に汚染されてやがる」
アルテラさん、貴方最初はローマ蹂躙してたでしょう、東ローマとか、貴方にとってカモだったじゃないですか。一発ぶん殴った方がいいのではと思ったときに、扉が盛大に開かれた。
「おはよう諸君! 今日もいい救済日和だ!」
「救世主・・・・・・レフ・・・・・・、うっ、頭が!」
なぜかアルテラのトラウマが再発しているかは兎も角、今日も今日とてマスターはテンションが高かった。
「いやはや、聞いてくれ、今日は何と1/1サイズのオルガマリー抱き枕が手に入ってね、これが中々萌える。流石Dr.浪漫だ。おっとっと、今はそんな話をしている場合じゃなかった、君たちにも朗報があってねマシュ、連れてきなさい」
「はい、先輩」
部屋の中に足を踏み入れた、マシュは神妙な面持ちで、部屋に入ってくる。マスターであるぐだ子は楽しそうに笑っているが、なんだろう、寒気しかしなかった。
「兄三銃士を連れて来たよ」
「「「兄三銃士?」」」
疑問を漏らす三騎に対し、マスターは笑みを浮かべつつ答えた。そして、その言葉に意味に気づいてしまった。
「フン族の共同王、和議で貰うお金が大好き。クラスはライダー、ブレダ兄さん」
「うっす、よろしく」
「タイム・・・・・・」
短髪に口髭を蓄えた大柄な男、彼こそアルテラの兄であるフン族の王、ブレダである。
アルテラの脳内に出てくることだけじゃ飽き足らず、こうまでしてでも出たかったのか。ちなみに出場権は庄司との裁判の結果手に入れたと言っていた。
ブレダ、無言のサムズアップ。アルテラはそっと目を逸らした。
「・・・・・・これはもしや」
なぜだろう、冷や汗が止まらない。アルトリアはまさかまさかとは思いつつも、アルテラとブレダの様子を見るしかなかった。
「ツンデレ毒舌お兄ちゃん。クラスはキャスター、サー・ケイ卿」
「アルトリア、悪いことは言わん。その剣を寄越せ」
「義兄上ェ・・・・・・」
アルトリア、目頭を抑える。できるなら、もう二度と会いたくはなかった。それほどまでに苦労と負責を背負わせてしまった義兄なのだから。
大丈夫だ、アルトリア、たかが致命傷だ。冷たい視線が、アルトリアに深く突き刺さっていた。
そして、その状況に際し、一段と目を輝かせている少女がいた。そう、牛若丸である。
この状況、おそらく兄だ。そう、彼女の敬愛する兄が来るのだ。そう思うと自然と胸が高鳴る。
「知勇兼備にして、大軍を統率した武士。あとは分かるな牛若丸」
「はい! 兄上ですね!」
「そうだ、入ってきてくれ」
そう、彼こそが大英雄。武家の棟梁として君臨し、鎌倉幕府というシステムを創り上げたもう一人の天才。
「やぁ、九郎。久しぶりだね」
官服に身を包み、身だしなみを整えた、好青年。雰囲気でわかる温厚そうな顔立ち。
源頼朝―――
―――の弟である範頼くんだった。
「違う、お前じゃない」
「「え?」」
君、牛若丸の兄だよね?
ええ、一応轡を並べて戦った仲です。
ぐだ子と範頼の混乱はさらに深まるばかりであった。おかしいな、せっかくの家族との対面、涙を流しながら抱擁するとばかり思っていたのに。くだ子は訝しんだ。
「牛若丸、あんなにも兄上兄上と言ってたじゃないか、範頼の何が不満なんだい」
「もしかして、わしが無能なのがいけないのかい?」
兄頼朝以下の政治能力と弟以下の戦術能力を持つ範頼ならむべなるかな、あんなにも兄上のことが好きだという牛若の為に石を割り続けた結果がこれとは許されざるよ、諭吉を返して。
「いや、違うのです。兄上なんですけど、兄上じゃないんです」
「・・・・・・確かに母親は違うが」
「複雑なご家庭なのですね」
「ええ、だからこそ、家族の絆は大切にしたいのですよ。平氏討伐まで生き残ったのは、兄と全成と九郎だけでしたから・・・・・・」
平氏討伐が終わった後、源氏兄妹12人の内範頼が知る中で生き残ったのはわずか5名。勇猛な義平兄様、お優しかった朝長兄様等を筆頭に、従兄弟の義仲も指針の違いにより討ち取った。
本当に、本当に苦しい戦いであったと、範頼は今でも思うのだ。
「範頼さん、可哀想です」
「牛若! 謝りなさい!」
「今なら範頼さんも許してくれますよ!」
謝れ! 範頼さんに謝れよ!
「えっ!? なにコレ! 私が悪いの!?」
みんなどうしたんだよ!? 混乱する牛若。
牛若は人の心がわからない。同情の視線が範頼の集中する。
「そもそも、源氏が平氏に勝てたのは、範頼さんのおかげじゃないか!」
「そうだぞ、範頼さんが大手軍を率いたからこその戦果じゃないか!!」
「そうです、牛若丸さんが奇襲なんていうワンマンプレイが出来たのも、範頼さんが居たからじゃないですか・・・・・・!」
「なん・・・・・・だと・・・・・・!?」
なんだこの状況、みんな何いってんだろう。頭が可笑しくなりそうだ。
助けて、頼朝兄さん。え、無理? 事実だからしょうがない?
「わ、私が義仲を討伐できたのは・・・・・・」
「範頼が、戦上手の今井兼平を引きつけていたからだろう、京都から逃げられないように逃げ口を塞いだのも特筆に値する」
「貴方の功もあるでしょうが、それ以前にさっさと京都に入って範頼はいませんなんて讒言したので差し引きゼロですね。しかも貴方はそれ以来朝廷に頭が上がらなくなっている」
「ぐぬぬ・・・・・・」
ブレダとケイによる追撃でぐうの音も出ない牛若丸。何せ事実だからだ。
「一の谷! 一の谷の戦いはどうです!?」
「正直、君いなくても勝てたんじゃない。いや、戦を早々に終わらせたのはすごいと思うよ」
「ですが、それも範頼が敵主力を生田の森で足止めしていたからですね。まぁ、それなりに功はありますが」
「なぜ真っ向から認めてくれない」
「「ぶっちゃけ範頼とお前なら範頼の方を買ってるから」」
「ぐふぅ・・・・・・」
円卓にもいましたよ、牛若みたいな厄介な奴。範頼ポジ? いなかったね、皆なにか拗らせてた。まともそうだったのはアグラヴェインぐらいでしたよ。
範頼と牛若なら範頼の方が安定するよね。理解できる良将と理解できない天才なら、そら良将を取るよ。
ケイ兄さんからはとんでもない苦労人臭が、ブレダ兄さんは予想以上に安定志向だった。
「まぁ、それでも家族だ。アルテラも昔は可愛いところもあってだな」
「やめて、やめて! ホントやめて!!」
「アルトリア、後で説教ですからね。反省文百枚。終わるまで御飯抜きです」
「なっ!?」
途端に二人が話題を逸らした。
なんだろう。まぶしい、あの二人がすごくまぶしく感じる。
「いいえ、わしが悪いのです。そうか、異母兄弟の私より、同母兄の全成が良かったのか」
違います、範頼兄様は勘違いしています。あとやめて、私の立場が無くなっちゃう。
「ぐだ子殿」
「あぁ、わかっている。みなまで言うな。必ず全成を召喚してやろう、だからお前が犠牲になる必要なんてないんだ、アサシン」
「これが、BUSHIDOU・・・・・・」
「なんてカッコいいんだ、これがSAMURAI・・・・・・」
きっと、ドラゴンにだって勝てるんだ。だってアサシンだもん。
「そうと決まれば石を拾いに行こう、ヒャッハー! オルレアン周回だぜ!」
「わしもお伴しましょう」
「くっ、キャスターであるこの身が嘆かわしい、仕方ない。妹の再教育があるので私はお暇しましょう」
「え?」
「俺はいくぜ、久々に妹と一緒に戦いたいしな」
「はぁ、兄上も困った方ですね。貴方は直接戦闘より交渉の方が得意でしょう?」
「なーに、俺もフンヌの戦士だ。俺の弓馬の腕を甘く見ちゃいかんよ。あ、そうだ。ついでにローマを攻めよう! 小遣い稼ぎになる」
「いかんでしょ、まあ小次郎とハサン先生も誘ってドラゴン狩りですね、準備してきます」
「ヒャッハー! Dr.浪漫の胃はズタズタだぁ!!」
こうしてオルレアンはSAMURAIとハサンとBANZOKUによって平和になったとさ、めでたしめでたし。
「いや、なんもめでたくないから!!」
一人残された部屋の一室で、牛若丸は一人叫ぶのであった。
小ネタ
妹たちと会うまでの兄貴たちの会話
ブレダ「うーむ、互いに出来のいい妹を持つと苦労しますなぁ」
範頼「然り、然り」
ケイ「でも、可愛かったんでしょう」
範頼「そうですね、命は取ることは出来なかった」
ブレダ「なにせ、家族ですから、年下の妹の為なら何でもできる。そんな感じでした」
ケイ、範頼「わかるわ」
ぐだ子「先に入って、場を温めてくるんでスタンバイよろしくおねがいしまーす」
兄貴たち「「「はーい」」」