俺ガイル短編集   作:さくたろう

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八幡が社畜になったお話全3話です


社畜となった俺の人生にだって多少の甘さはあってもいい

 時計を見ると時刻は20時を過ぎていた。

 

「今日ももうこんな時間か……」

 

「お疲れ、比企谷君。今日もまだ帰らないの?」

 

 もう少しで仕事の目処がつきそうなところで話しかけられる。いきなり後ろから声かけるのやめてください、びびるんで。

 少しシワの寄ったスーツ姿にちょっとボサボサ気味の髪を後ろにまとめた女性がコーヒーを手渡してくる。この人が俺の上司であり、主任の三崎美沙さん。彼女のかけている眼鏡の奥は優しげな瞳をしていて少し安らぐ。

 この時間会社に残っているのは俺の他にはこの人くらいだ。

 

 

 俺がこの会社に入社して3年の月日が流れた。世間一般的に言えば、この会社はブラックとは真逆のホワイト企業と言えよう。給料だって同年代の奴らからしたら貰っているだろうし、休日だって完全週休二日制とはいかないまでも、年間休日は120日ほどある。

 ただ、それは仕事をしていない奴らの尻拭いをしている俺や主任からすればそうは言えないのが現状だ。

 主任の場合、毎日上司に大量の仕事を渡されたり、ほとんどの部下が何かわからないことがあると彼女に助けを求めていて、上司と部下の板挟みな分俺よりもきついかもしれない。それでもそれをこなしてしまうからまた新たに仕事を頼まれる。断ればいいのにと思うのだが彼女はそうはしない。

 これらを踏まえて考えると決して全員から見てホワイトというわけではないはずだ。こうやって他のやつの仕事をサービス残業で片付けたり、それが間に合わなければ休日手当が付かなかろうが休日出勤だってしなくちゃならない人間がいるのだから。

 

 俺からすればこの会社は、いや、この環境はブラックだ――

 

 

「もう少しで終わるんでそしたら帰りますよ」

 

「そっか……、あ、じゃあ今日は久しぶりに一緒に帰ろっか」

 

 明日は休日ということもあり、多分この一緒に帰ろうというのは飲みに行こうということなのだろう。次の日が休みでお互いが残っているとき、たまにこうして誘ってくる。俺も特に用事があるわけでもないし、上司の誘いを理由もなしに断ることもしない。まあ、高校時代なら断ってたかもしれないが……そう考えると高校生の頃に比べれば俺も変わったのだろう。

 

「終わりました、それじゃあいきますか」

 

 流石に主任を待たせるのも悪いので予定よりも少し作業を抜かして終わらせる。今日できなかった分は明日昼にでも来てやれば問題ないだろう。

 ……はっ。当然のように休日に出勤しようとしてるなんてやっぱり社畜だな、俺……。

 でもまあ、勤務中には見せないような、にこにことした笑顔で待ってる主任を見たらそんなに待たせるのも悪いと思うわけで、仕方ないな。

 

「よーし、じゃあ今日はとことん飲もうね!」

 

 会社を出て今日の飲み場を探しながら歩いてると、カバンを振り回しながら主任はそう言った。危ないんでカバン振り回すのはやめてくださいよ。というか、もういい年なんですからそういう行動はどうかと思いますけど。直接主任の年齢を聞いたことはないが確か二十代後半、つまり、アラサーだったはずだ。アラサーって言うとあの人を思い出すな……いやもうアラサーじゃないけどあの人。未だに独身のはずだったからいい加減本当に誰かもらってやれよ……。

 

 そんなことを考えていると横から「び~る、び~るっ」とリズムのいい声が聞こえる。

 何回かこの人と飲みに行ったことがあるが、酒好きで飲みに行くとつまみはあまり食べずにひたすら飲むタイプだ。ただ、酔っ払うと会社の愚痴を永遠と語り続け、手に負えなくなることがある。

 

「ほどほどにしてくださいよ、主任が酔っ払った時の愚痴聞くの辛いんで」

 

「そう言わないでよ、君くらいにしか愚痴なんて言えないし」

 

 俺くらいにしか、か……。

 

「そうですか」

 

「うん、そうだよ」

 

 にこっと微笑む彼女の瞳の奥はどこか悲しげな目をしていた。

 

「よし、じゃあ、今日はここにしよーか」

 

 主任の選んだ店は焼き鳥屋だ。中に入ると女性客は少なく、ほとんど仕事帰りのおっさん達で賑わっている。その店内を彼女は鼻歌交じりで空いてる席まで歩いていく。なんというかすげえなこの人。

 

「すいませ~ん」

 

 席に着くなりすぐに店員を呼ぶ。主任の中ではこれがデフォでもう既に頼むものは決まっているのだ。「比企谷君は決まった?」と聞かれたので主任が頼むであろうと予想されるビールを頼む。

 

「ご注文の方お決まりでしょうか?」

 

「あ、はい。生中2つと串焼きの盛り合わせ、それと枝豆ください」

 

 うん、予想通りだわ。この人枝豆本当に好きだよな。中身おっさんじゃないかと疑う。身だしなみも決していいとは言えないし……スペックは悪くないと思うのだが。いや、むしろこの人がちゃんと身だしなみを整えたらいい線行くと思う。

 

「おまたせしました、お通しと生中になります」

 

 テーブルにお通しとビールが置かれる。二人ともビールを持ち「今週もお疲れ様(です)」と乾杯をするとぐいっと飲み込む。うめぇ……まさか自分がこんなに酒を美味いと感じる日が来るとは思っていなかったが、仕事終わりで疲れた体に染み渡る。半分くらいを一気に飲んだところで向かいの主任を見るともう既にジョッキが空になっていた。

 

「ぷはぁ。ん~~っ、生き返るねぇ~!」

 

 もうあなたおっさんじゃないですかそれ。いや言わないけどさ。

 

「主任、飛ばしすぎっすよ……」

 

「ん~、いいじゃない。明日はどうせ休みなんだし、それに会社の外で主任は止めてって前に言わなかったっけ?」

 

「主任は主任じゃないですか」

 

 そんな言い方されるとなんか勘違いしそうなんでやめてくださいお願いします。それに会社で主任と一緒にいる時間が長いせいでもう主任呼びが定着してるんだよな。

 

「むぅ……」

 

 少し頬を膨らませながらジト目でこちらを見たあと「はぁ……」とため息をつかれる。

 

「なんかさ、会社以外で主任とか呼ばれると仕事のことが頭にちらついちゃうんだよね。だから三崎さんと呼びなさい、これは上司命令です!」

 

 いや、それおかしくないですかね? 仕事のことを思い出したくない人が上司命令とか言ってるの矛盾してませんか? っべーわこの人、既に酔いが回ってきてるんじゃないの。

 

「三崎さんがだめなら美沙さんって呼ばせるよ?」

 

「はぁ……なんでそうなるんですか」

 

 なんで難易度簡単になるどころか上がっちゃうんですかね? はぁ……、もうめんどくさいしここは素直に名字で呼んでおくとするか……

 

「わかりましたよ、三崎さん」

 

「ん、よろしい」

 

 彼女は満足気な表情を浮かべ、すぐそばを歩いていた店員にビールの追加を頼む。いや、だからペース早いんじゃないんですかね? この後苦労するの絶対俺なんだけど。

 

「お待たせしました、こちら生と枝豆、串焼きの盛り合わせになります」

 

 少し待つと注文したものが運ばれてきて、本格的に二人の飲み会が始まる。三崎さんは二杯目のビールを片手で持つと、残り半分を切った俺のジョッキにコツンと当てて「かーんぱいっ」と言って二回目の乾杯をする。この仕草が少しだけ可愛らしいと思ったのは秘密にしておこう。一口目をぐいっと飲むと好物と思われる枝豆を食べ始めた。

 

「ん~っ、やっぱりビールには枝豆だね、比企谷君」

 

 うん、さっきのやっぱなし。この人、確実に中身はおっさんだわ。

 俺は枝豆よりは焼き鳥の方が好きなので軽く「そっすね」と相槌をうち、串焼きに手を伸ばして口に含む。うむ、美味いな。やっぱりビールと一番合う肉って鶏肉だ、異論は認めない。

 一杯目のビールを飲み干し、店員に追加で頼もうとすると三崎さんも追加で頼む。本当にペースが早い。ビールが届くまでの間、酒もないので食べることを一旦やめてタバコを取り出し火をつけて一息つく。酒とタバコの組み合わせとは何故こうも殺人的に合うのだろうか。タバコなんて一生吸わないと思ってたつもりだったがこの会社に入社してしばらくして吸い始めてしまった。

 

「比企谷君って意外とタバコ似合うよね」

 

「意外ってなんすか」

 

 そもそもタバコに似合うも似合わないもないと思うのだが。ああ、でも平塚先生は似合ってたな……。

 

「ところでさ、比企谷君って休日は何してるの?」

 

「休日出勤してるじゃないですか、三崎さんも知ってるでしょう?」

 

 俺が休日出勤するときは大体この人もいるしな。本当に二人して仕事大好きっ子なんだからまったくもう。……なんて本当に仕事大好きなら良かったんだけどな。

 

「あはは……、そうじゃなくて本当に休みの日とかさ」

 

「日頃の疲れを癒してますね、つまり寝てます」

 

 俺の休日なんてそんなもんだ。わざわざ休みの日に外に出ようなんて思わないし、平日の間溜め込んだ洗濯物や、部屋の掃除やらをやってたら一日の終わりが来るわけで他に体力を使うなんてあほらしい。ああ、でも明日の夜はあいつらと会うんだっけな。

 

「なんかそこは比企谷君らしいね」

 

 俺の答えにクスッと微笑みながらそう言うと、枝豆をつまみながらビールを飲む。微笑んでたときは可愛らしく、枝豆をつまむ仕草はおっさん臭い。なんか調子狂うんだよな、この人。

 

「じゃあ三崎さんは何してるんですか?」

 

 そう質問すると「う~~ん」と唸りながら顎に手をやって悩み始める。いや、そんなに悩むことなんすかね、これ。まあ大体想像できるからいいんだけどな。

 

「私も寝てるかなっ」

 

 あはっ、と笑って答える。その答えを出すのにどんだけ悩むんだこの人。しかも想像道理なんですがそれは……まあ、一人暮らしでろくに休みもなければ大体そうなるよな。休む日だから休日なわけで疲れることをするなんて家事くらいで十分だ。

 

「あ、でもね、よくケーキ屋さんには行くかな。あとレンタルビデオ借りたりするよ」

 

「へえ、三崎さんがケーキとか食べるっていうのは意外ですね」

 

「それってどういう意味かな?」

 

 ひえっ、怖い、怖いですから! 彼女の俺を見る目が笑ってない。あ、ヤバいまじでこれ怒ってるやつなの? 意外って言葉だけでこんなに人って変わるものなの? 誰か教えてください。

 

「い、いえ、なんでもないです、はい」

 

「そっかそっか。まあ、私はシュークリーム買いに行くんだけどね。行きつけのケーキ屋さんのシュークリームが凄く美味しいの! 比企谷君は甘いの好きかな?」

 

 シュークリームの話をし始めた三崎さんは、今まで見たことがないくらい目を輝かせていた。それだけでこの人がどれだけシュークリームを好きなのかわかる気がする。多分俺も小町や戸塚のことを語っているときはこんな感じだ。

 

「甘いのは好きですね、むしろこんだけ人生が苦いんです、それなりに甘いもんでも食べて糖分摂取しないとやっていけないっすよ」

 

 俺の言葉に笑いながら「そうだね」と頷くと、今度三崎さんのオススメのケーキ屋に連れて行ってくれると言い始めた。最初断ろうとすると先ほどと同じような目をして睨まれたので仕方なく了承することにした。

 それから機嫌が良くなった三崎さんと会話をしながら再び飲み始める。徐々にだが三崎さんがいつものように酔っ払い始めて、話の話題は会社のことになっていった。

 

「比企谷君はさ、なんでいつも残業とか休日出勤してるの?」

 

「なんでですかね、俺も知りたいですけど。まあ、せっかくこんな捻くれ者を拾ってくれたんで少しぐらい恩返ししてやろうかと」

 

「でも、それを私以外は見ていないし、誰も気にしてない。この会社なんてそんなものだよ?」

 

 確かにこの人の言うとおりだ。俺が残って他の奴らの仕事をやってることなんてこの人以外誰も知らないレベル。評価もされない仕事をこなしてるなんてあほらしい。それでも、誰かがやらないとそのうちどこかが崩れて崩壊する。他の奴らはそれに気づいていない。だから気づいてる俺がやってる。そんなところだろうか。

 自己犠牲か……。

 いつだったか葉山に言われた言葉を思い出す。あれから何年も経つのにな。

 しかし、俺がそうなら、今、目の前で枝豆を食べ終え、ビールから日本酒に変わってそれをつまみもなしにひたすら飲み続けている彼女はどうなのだろうか。いつも俺と同じくらい会社に残って、休日も出勤して……彼女と俺はどこか似ている気がした――

 

 

 それから完全に三崎さんが酔っ払ったところで本日の二人の飲み会は終了した。

 酔っ払った三崎さんに自分の肩を貸して店を出ると秋の夜風が少し肌寒い。三崎さんの酔い覚ましにはちょうどいいかもしれないが。

 そのままどこかでタクシーを捕まえようと大通りの方に向かって行くと、後ろから聞いたことのある声に話しかけられた。

 

「あれ、比企谷君が女性と一緒に夜の街を歩いてるなんて珍しいね」

 

 雪ノ下さんじゃないっすか……、本当にこの人は俺が誰かと一緒にいるとどこからともなく姿を現すのな。もしかして俺のこと監視しているんじゃないのなんて思ってしまう。今は雪ノ下との仲も改善されたとは言え、この人に対しては少し苦手意識がある。

 

「どうも、ご無沙汰してます」

 

「うん、久しぶりだね」

 

 そう返事をした雪ノ下さんは、俺の肩に掴まって俯いている三崎さんの方を見ると少し驚いた表情をしながら口を開いた。

 

「比企谷君、なんで美沙と一緒にいるのかな?」

 

 なんでって? 逆になんで雪ノ下さんは三崎さんのこと知っているんですかね? 

 

「会社の上司なんですよ、それで三崎さんに誘われて飲みに来た帰りです」

 

「そっか、そういえば君たち同じ会社だったね、まさか一緒にいると思わなかったから正直びっくりしたよ」

 

 俺の答えに「そっかそっか、美沙にもついに春が来たのかぁ」と何かに納得しながら頷いている雪ノ下さん。全くついていけてないので俺は雪ノ下さんにとりあえず気になったことを聞いてみることにした。隣で俯いて寝てる人は起きそうにないしな……。

 

「それで雪ノ下さんはなんで三崎さんのこと知ってるんですか?」

 

「だって美沙は私の友達だもの。友達を知っていて当然でしょ? まさか比企谷君と一緒にいるなんて思わなかったけどねえ。そういえば比企谷君、明日雪乃ちゃん達と会うんだったね。これは雪乃ちゃんに報告しちゃおうかな~?」

 

 いや待って、俺何かやましいことでもしましたか? してないですよね。ただ上司と一緒に飲みに来てただけで、なんで浮気の現場目撃されてそれを報告すると脅されてるような感じになってるの、八幡わかんない。

 つうか雪ノ下さんと三崎さんが友達ってまじか。なんか意外な組み合わせというかなんというか。この二人が一緒にいて何かしてるっていうのがあんまり想像できないな。

 

「とりあえずそれはやめてください。めんどくさくなりそうなんで」

 

「ごっめ~ん、もう雪乃ちゃんにメールしちゃった」

 

 雪ノ下さんはいつの間にか携帯を手に持っていてそこにはメールの送信画面が見えた。いや、どんだけメール打つの早いのこの人。これ明日めんどくさいやつだわ、絶対。送った本人はてへぺろみたいな顔してるし、いくら綺麗だからってあなたももうアラサーなんですからね? そんな表情に騙されませんよ俺は。少しドキっとしましたけど。

 

「比企谷君、今何か失礼なこと考えてたでしょ」

 

 なんで俺が心の中で女性の年齢に対して考えたりすると毎回バレてしまうのだろうか。今度から十分に気をつけていかないとな……。

 

「べ、別に何も考えてないでしゅ」

 

 あ、噛んじゃった。てへ……

 

「あはは、動揺してるねえ、比企谷君。静ちゃんと違うんだから別にそこまで気にしてないよ。それよりさ、美沙のことよろしくね」

 

 なるほど、まあ友達が俺みたいなやつとこんな時間に一緒にいたらそりゃ心配するよな。というわけで三崎さんのことは雪ノ下さんに任せよう。うん、それがいい、そうしよう。

 

「心配なら雪ノ下さんが送ってあげてくださいよ……」

 

「そういうことじゃないんだけどね。この子さ、昔からすぐ無理しちゃうんだよね。人付き合いが不器用っていうか、なかなか他人を信用しないんだよね。そのせいか辛いことがあっても人に頼んだりしないの。だから同じ会社の比企谷君と飲みになんて行くのも意外だったんだ。だからさ、比企谷君、もしこの子が辛い時は助けてあげて?」

 

 ああ、そういうことか。この人は三崎さんの会社の状況をたぶんわかってるんだ。それが良くないということも。だからこうしてまっすぐ俺を見つめながら頼んでいるのだろう。

 

「どれだけ力になれるかわかりませんが頑張りますよ。俺もこの人のこと嫌いじゃないんで」

 

 俺の言葉に「そっか」と微笑む雪ノ下さん。その顔は昔、雪ノ下との仲が改善した時以来の優しい顔をしていて不覚にも見惚れてしまう。普段からこれくらいの表情をしていてくれればいいのにな。まあ、昔ほど仮面をつけているわけではないのだが。

 

「それじゃあ、私は帰るから比企谷君、美沙のことよろしくね」

 

 ちょうど迎えの車が来たようで、そう言って彼女はその車に乗った。……いや、待って! 迎えの車があるなら友達の三崎さんも乗せてあげてくださいよ、本当にあなたたち友達なんですかね……。

 俺の想いも虚しく雪ノ下さんの乗せた車は去っていき、俺と三崎さんだけが残った。

 このままでも仕方がないので寝ている三崎さんを起こす。なかなか起きなかったが頬を思いっきり抓ると起きてもらえた、お返しされたけど。

 

「今日はごめんね、楽しかったよ比企谷君。また来週会社で」

 

「うっす、お疲れ様です」

 

 近くを通りかかったタクシーを捕まえ、挨拶をして三崎さんがタクシーに乗るのを見送る。

 

「さて、帰るとするか……」

 

 明日は休日なのでお昼くらいまで寝る。その後、会社に行ってやり残した仕事を終わらせ、夜からはあいつらとの食事を楽しむとしよう。秋の夜風に吹かれながら帰宅途中、そんなことを考えていた――

 

 

 次の日、予定通りに昼ちょっと前まで寝た俺は、完全回復と言わないまでも、ある程度平日の疲れが抜けたので身支度を整えて会社に向かう。流石に私服で行くわけには行かないのでスーツだ。まあ楽だよな、スーツ。

 会社に着くと、今日は俺以外には誰もいない。ポケットからイヤホンを取り出して耳に付ける。うん、音楽を聴きながら仕事できるっていいな。こんなこと休日出勤か、残業してて誰もいないときくらいしかできないからなんか得した気分だ。……休日出勤とかして得した気分ってなんだ? 何か虚しくなり「はぁ……」とため息をついて仕事に取り掛かった。

 

 それから無心で仕事をし続けて時計を見ると時刻は16時。仕事の方も片付いたので、退社して待ち合わせの18時までどこかで時間を潰すことにした。

 駅前にたどり着き、本屋が目に止まったので中に入る。最近は忙しくてあまり読書をする時間がなかったので随分と部屋に未読のラノベやら小説が溜まっている。ただ、それでも新刊を見ると買ってしまうのはなんでなんだろうな。今日も読めてないラノベの新刊を何冊か見つけて購入した。今度の休日にでも時間を見つけて読むとしよう。

 本屋を出て喫煙所を探すが見つからなかったのでカフェに入る。最近は駅前の喫煙所が少なくなってるせいで、こうしてカフェの喫煙ルームに入らないとタバコが吸えなかったりする。コーヒー一杯を注文して喫煙ルームに入り、タバコを取り出し火をつける。コーヒーとタバコも割と合うよな。不思議だ。昔、平塚先生が缶コーヒーを飲みながらタバコを吸っていたが今ならその意味がわかる。携帯を見ながらコーヒーを飲み、時間を潰すと大体待ち合わせの20分前くらいになったので店を出て待ち合わせ場所に向かった。

 待ち合わせ場所に着くと既に3人がそこにはいて、どうやら俺が最後のようだ。

 

「うっす。早いな」

 

「先輩、遅いです!」

 

「ヒッキーが遅いの!」

 

 いや、まだ待ち合わせ時間の10分前だよね? なんでこんな責められてるわけ? 一色と由比ヶ浜に文句を言われたのでとりあえず「わりぃ」と一言謝った。

 

「久しぶりね、比企谷君」

 

「おう、久しぶり」

 

 雪ノ下、由比ヶ浜、一色とは休みの日にこうして会ったりしたりしている。高校生の頃、いろいろとあったが今も友達として関係を続けていて、俺はこの関係を気に入っている。雪ノ下は両親の会社に自分の意志で入り、由比ヶ浜は専門学校に行ってから今は美容師、お菓子作りが得意だった一色は今はパティシエをしていて3人とも忙しく、そんなに頻繁に会うことはないがそれでもこうやってみんなが空いた日は集まって食事をしたり遊んだりと、高校時代の俺からは想像できないだろう。

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

 雪ノ下の言葉で目的地の店に向かう。大体こういう集まりの時は雪ノ下が店を選んで、俺たちがついていく感じだ。まあ、こいつならセンスあるし、安心して任せられる……と思ってた時期が俺にもありました。

 雪ノ下についていきたどり着いた場所は昨日三崎さんときた焼き鳥屋だった。これってどう考えてもあれだよな、雪ノ下さんのせいだよな……。

 

「あら、比企谷君、どうかしたのかしら?」

 

 こちらを見て不敵な笑みを浮かべながらそう訪ねてくる雪ノ下。あれ? 俺顔に出してた? つうかこいつの笑い方少し雪ノ下さんに似てきてないか? やめてくれよな、あんな人は雪ノ下さんだけで十分だ。

 

「な、なんでもない。お前がこういう居酒屋をチョイスするなんて意外だと思っただけだ」

 

「まあまあ、あたしはいいと思うよ! たまにはこういうお店も! ね、いろはちゃん」

 

「そ、そうですねー、まあ先輩の言うとおり少し意外でしたけど、い、いいんじゃないですかね?」

 

 おい、一色、お前目が泳いでるから。嫌なら嫌って言ってやれよ。俺は二日連続で同じ居酒屋とか嫌だぞ。言わんけど。

 

「そう、では中に入りましょう」

 

 由比ヶ浜は何やらノリノリのようで雪ノ下が店内に入るとその後ろにくっついて入っていった。一色は「せっかくいいお店で食事出来ると思ったのになあ……」なんて呟きながら少し遅れて店内に入っていく。まあ、あいつの言うことはわかる。雪ノ下が選ぶ店って毎回レベル高くて美味いもんな。

 店内に入ると昨日とは違う個室のような部屋に案内してもらい、腰を下ろす。

 

「じゃあみんな、飲み物何にするー?」

 

「ほんじゃ俺は生で」

 

「私は赤兎馬で」

 

 おい、雪ノ下、お前そんなの飲むのかよ似合わねえな、おい。

 

「それじゃ、私はピーチサワーで!」

 

 俺たち3人の注文を確認すると由比ヶ浜が店員を呼び、他に食べ物を何品か一緒に注文をする。注文を受けた店員は昨日もいた店員で、何やら俺の顔を見たとき少しニヤついてた気がするが多分、いや、絶対誤解してるやつだわ。

 タバコを吸い始めようとしたとき、注文した飲み物とお通しが運ばれ4人で乾杯をする。お通しは昨日とは違うので多分毎日変えているのだろう。

 

「それで比企谷君、三崎さんという方とはどういう関係なのかしら?」

 

 おい、お前いきなりぶっ込みすぎだろ。

 

「え、先輩、それ誰ですか!?」

 

「ヒッキー、なんのこと!?」

 

 なんでこいつらこんなに食いついてるんだよ。

 雪ノ下の言葉で一色と由比ヶ浜がこちらを見て聞いてくる。お前ら距離近くなってるから!

 

「どういう関係って……昨日も雪ノ下さんに説明したが会社の上司と部下で、それ以上でもそれ以下でもねえよ」

 

 本当にそれだけだ。確かにあの人には良くしてもらったりはしているが。それは多分、仕事を頑張っている部下へのご褒美的な何かなんだろうと思ってる。周りの部下に比べたら仕事している自覚はあるしな。

 

「へえ……で、ヒッキー、三崎さんってどんな人?」

 

 何を気になったのか由比ヶ浜がそう聞いてきた。どんな人か……。

 

「そうだな……、まあ、見た目はちゃんとすれば綺麗だと思うぞ。いつもなんかだらし無さがある感じの人だけど。あと仕事はできる。まあ、そのせいかそれよりも雪ノ下さんの言う、人付き合いが不器用のせいか、苦労してる人な気がするな。悪い人じゃねえよ」

 

 そう言うと、3人は少し考え、それぞれ何か納得したようだった。

 

「要するに、なんとなく先輩に似てるんですね、その人」

 

 一色の言葉に他の2人も同じことを思ったようだ。やっぱり少し似てるのかもしれないな。

 

「似てるっていうのはあの人に失礼だな。俺よりも仕事できるし。あの人のおかげでうちの部署が業績を上げれてるレベルだしな」

 

 そこから何故か久しぶりの再会だというのに話の話題は俺と三崎さんのこと、主に三崎さんのことを中心とした話題だった。どんだけ彼女に興味があるんだこいつらってレベル。一つ一つ聞かれたことに答えて言っていると気づけばいい時間になっていた。

 

「大体、わかったわ。比企谷君、三崎さんは大事にしなさい。あなたのような人を気にかけてくれるなんて滅多にいないのだから」

 

 雪ノ下が何を理解したのか俺はわからないが、その言葉を由比ヶ浜と一色はわかったらしく同時に頷く。

 

「それじゃ今日はこのくらいで解散しましょう」

 

「そうだな」

 

「じゃあまた今度ですね!」

 

「ヒッキー、たまにはうちで髪切ってよね!」

 

 4人で店を出て別れの挨拶をした時だった。

 

「比企谷君、やっほー」

 

 昨日と同じように後ろの方から聞いたことのある声に話をかけられる。ただ、それは昨日声をかけてきた雪ノ下さんではなくて、さっきまで俺たちの話題の中心になっていた人物、三崎の声だった。

 その声に反応して振り向くが彼女のような人が見当たらない。確かにあの声は三崎さんの声だと思ったはずなんだが。

 

「比企谷君、どこ見てるの? こっちこっち」

 

「え、どちら様でしょうか?」

 

 声のする方を振り向くと、綺麗な人が俺を呼んでいた。こんな人俺の知り合いにいなかったはずなんだが。

 

「ああ、そうか。なんかショックだけどこれでわかるかな?」

 

 そう言って彼女はカバンから眼鏡を取り出し、綺麗な長い髪を後ろで一つにまとめた。あ、俺この人知ってるわ……。ていうかこの人ちゃんとすればここまで綺麗なのかよ!

 

「三崎さん……」

 

「やっとわかってくれたね」

 

「いや、変わりすぎじゃないですか……そんな綺麗なら普段からそうすればいいのに」

 

「え?」

 

 俺の言葉に少し頬を染める三崎さん。眼鏡を外し、髪の毛をまた元に戻す。俺も自分で言った内容をあとから気づき、恥ずかしくなってきた。多分同じように顔を赤くしていることだろう。

 

「と、ところで三崎さんなんでそんないつもと違うんですか」

 

「ああ、これは今日友達の結婚式だったの。それでいつもの感じで行ったら私の友達にちゃんとしなさいって言われちゃってね。で、いろいろ直されちゃった」

 

 てへっと笑う彼女は、いつもと違い、凄く大人びていて、それでいてとても綺麗だった。

 

「ひ、ヒッキーこの人が?」

 

 俺が彼女に見惚れていると後ろから由比ヶ浜に声をかけられる。そういえば別れの挨拶はしたものの、まだ解散はしていなかったんだった。

 

「初めまして、陽乃の妹の雪ノ下雪乃です」

 

「初めまして、比企谷君の上司の三崎美沙と言います。君たちのことはさっき陽乃から聞いたよ。実は陽乃に送ってもらってる最中にあの子が気づいて私をここに降ろしたんだよね」

 

 本当にあの人は……一緒に降りないのは意外だがここに三崎さんを召喚して一体どういうつもりなんだよ。

 

「先輩、先輩、あの人が噂の三崎さんですか?」

 

 三崎さんが雪ノ下と由比ヶ浜と話してる間に一色に耳元でそう呟かれる。いきなり耳の近くで話しかけないでくれるかな? 恥ずかしいだろ。「そうだよ」と答えると「ふぅん……すごい綺麗な人ですね」と言い、俺のことをジトーっと見てくる。ちょっと怖いんですけどいろはさん? 

 

「でもあの人どこかで見たきがするんですよね……」

 

「気のせいじゃないのか?」

 

 そう言うと「う~~ん」と何かを思い出そうと一色は必死になっているようで、それ以降返事を返してこなかった。

 三崎さんは雪ノ下と由比ヶ浜と話終えたのか今度は俺に話しかけてきた。

 

「そういえば比企谷君、明日暇だったりしないかな? 良かったらちょっと付き合って欲しいんだけど」

 

 彼女の言葉に雪ノ下と由比ヶ浜は驚きながらこちらを見つめる。三崎さんも急に変なこと言わないでくださいよ、まじで。休日に付き合うとかデートかと思っちゃうじゃないですか。

 

「明日は家でいろいろすることがあるんですけど……」

 

「あ、これヒッキー暇なやつですよ!」

 

 おい、由比ヶ浜、お前なんでそういうこと言っちゃうの?

 

「そうですね、彼がこう言う時は大体暇なときです」

 

「そっか、じゃあ明日お昼くらいに駅前でね。今日はもう遅いし、みんなもお疲れ様」

 

 そう言って彼女は台風のように現れて去っていった。

 いや、本当に何しにきたの、あの人。

 それからまだ何かを思い出そうとしている一色を由比ヶ浜がこちらの世界に呼び戻し、雪ノ下が再び別れの挨拶をして今日は解散となった。

 

 3人と別れ帰宅した俺は、三崎さんが明日何に付き合わせたいのかわからず、多少の不安と期待を胸に眠りについた――

 

 セットした携帯のアラームに起こされ、洗面所に行き顔を洗う。約束はお昼なのでまだ時間はある。というかお昼って具体的にどこからどこまでなんだろうな。昨日はお昼としか言われなかったし、部下の俺としては少し早めに待っていたほうがいいのだろうか。そう思って大体11時半くらいに駅に着くように準備をして家を出た。

 

 予定通りの時間に着いて辺りを見渡すがそれらしき姿はない。

 そういえばあの人、今日はどっちの格好でくるのだろうか。いつも通り? それとも昨日のような感じか? いや、ていうか俺は何考えてんだよ……別に三崎さんがどっちの姿できたって関係ないだろ。

 あの人を待つ間、今日読むつもりだった未読のラノベを読み始める。しばらくして12時になったのでまた辺りを見渡す。すると昨日と同じように綺麗に髪を整え、眼鏡をしていない三崎さんがこちらに歩いてきていた。

 

「ごめんね、待たせちゃったかな」

 

「あ、……いえ、今来たところなんで」

 

 何言っちゃってるんだろうな俺は。この三崎さんの姿はダメだ。ずるい、そんなしょんぼりとしながら謝らないでくださいよ、調子が狂ってしまう。

 

「それじゃいこっか」

 

 そう言って俺の手を握り、案内するかのように前を歩く。

 急な出来事で一瞬何が起きたのかわからなかったが、女性に手を握られているという現状を理解して恥ずかしくなってくる。握られた手が若干汗ばんで来ているのがわかる。というかいきなり人の手を握るとか本当に人付き合い苦手なんですか、この人。後ろからじゃ三崎さんが今どんな表情をしているかわからないのが悔やまれる。

 

「あの、どこいくんですか」

 

 このまま握られっぱなしで移動するのはさすがに俺のライフが危うく、質問をすることで二人の足を止めさせた。彼女は握っていた手を離して俺の方を振り向いて答えた。

 

「こないだ比企谷君甘いの好きって言っててケーキ屋さんに連れて行ってあげるって言ったじゃない? 今日暇だったし一緒にどうかなと思って」

 

 若干俯きながら答える三崎さん。そういうことならそうと言ってくれればいいのに、別に断ったりはしないのだから。

 三崎さんの言葉に「じゃあ連れて行ってください」と答え、二人で並んで彼女の行きつけのケーキ屋に向かった。

 

 ……しばらく歩くと目的の店に着いた。着いたのだがそこは俺も知っている店だった。店を知っているというよりは店で働くパティシエを知っている。あいつが昨日何かを思い出そうとしてたのはこういうことか……

 

「はいろっか」

 

「うっす」

 

 彼女に促されて店内に入る。ここの商品は何度か食べたことがあるが確かにどれも美味い。ただ店内には来たことがなかった。奥に進むと、ちょうど一色がショーケースにケーキを並べているところで、俺に気づいて話しかけてきた。

 

「せ、先輩、なんで三崎さんと一緒にいるんですか!?」

 

 いや、昨日そういう話してただろ……あ、そういえばあの時こいつ全く話聞いてなかったな。

 

「昨日お前が三崎さんのこと思い出そうと必死の時にそういう話ししてたんだよ。まさかお前の店とは思わなかったけどな」

 

「てことは三崎さんうちの常連さんだったわけですか、でもこんな綺麗な人がお店に来たら覚えてるはずなんですけどねー」

 

「ああ、いつもとはちょっと違うからね。髪の毛とかボサボサだし」

 

 三崎さんがそう言うと、一色は昨日と同じように何か思い出そうとして今度はすぐに思い出したようだ。

 

「ああ! いつもシュークリーム買ってくれてる、あの地味な人!」

 

 おい、地味な人は失礼だろ。三崎さんもちょっと苦笑いしてるじゃねえか。「まあ確かに地味だよね」と納得しつつ、ちょっと傷ついてる気がした。

 

「ここのシュークリームは私が作ってるんですよ」

 

 そう言って高校生の頃よりも発育した胸を少し張る一色。

 

「そうなんだ! ここのシュークリーム大好きなの、本当美味しいよ」

 

 そう言われると一色は少し照れながら「ありがとうございます」と言い、俺の方に近寄り、耳元で「先輩、この人良い人じゃないですか。大事にしなきゃダメですよ?」と言ってきた。てか、お前はなんで一々俺の耳元で話しかけるんだよ。くすぐったいしゾクッとするからやめろ。

 近づいてきた一色を引き離すと「それじゃごゆっくり~」と言い、厨房にさがっていった。

 俺と一色が話している間に三崎さんはシュークリームを二個購入していた。

 

「比企谷君もシュークリームでいいよね?」

 

「あ、はい。いや、というかお金は払いますよ」

 

「いいよ、今日は私に付き合ってもらっちゃってるわけだし。これくらいは奢らせて、ね?」

 

 優しい笑顔でそう言われると俺に反論の言葉は思い浮かばず、彼女の言うとおり奢ってもらうことになった。そのまま三崎さんが会計を済ませ、二人で空いている席に座る。お互いに顔を合わせ「いただきます」と言い、シュークリームを口に含んだ。

 

「ん~~っ、おいひぃ~~!」

 

 満面の笑みでそう言う彼女。その顔は綺麗な大人の女性とは違い、どこか少女のようにとても可愛らしいもので、それに見惚れてしまった俺は自分の食べたシュークリームの味がわからなかった――

 

 

 それから味もわからないままシュークリームを食べ終えてにやにやとした一色に見送られながらケーキ屋をあとにした。

 

「今日は、……もかな、ありがとうね、比企谷君」

 

「いえ、俺も美味しいシュークリームご馳走してもらってありがとうございます」

 

 本当は全然味なんて覚えていないんだけどな……。

 

「それじゃあ、比企谷君。来週も一週間頑張ろうねっ! おーっ!」

 

「そっすね、頑張りましょう」

 

 三崎さんの掛け声で来週も頑張ろうという気持ちになりつつ、挨拶をして解散した。

 

 

 その日の夜、俺はベッドに横になりながら週末の出来事を振り返っていた。三崎さんとは何回か飲みに行ったりしているがこんなのは初めてかもしれない。今までは会社の付き合いというのが一番だったのに……。

 三崎さんに対する感情が自分の中でどういうものが少しだけ心当たりがあるが、それでもその答えを出すのが少しだけ怖くて、俺は無理やり意識を断ち切ろうと眠りについた。


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