城下町のダンデライオン〜長男は魔法使い〜   作:ソール

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第二十六話

修学旅行が終わり、十二月を迎えていた

 

もう寒い季節になった事で、みんな学生も冬服に着替えて登校をしていて、寒いこの冬の季節も真達の家族はやることがたくさん

 

期末テスト

 

クリスマス

 

正月の準備など

 

12月はやることがたくさん多くあり、残念ながら今月も忙しく、まともな休日を過ごせる日々はあまりない。特に王族である真達は。この十二月は彼らにとっても大きなイベントはたくさんはあるが、その中でまだやるべきことが残っている

 

 

もちろんそれは王様選挙

 

 

これが彼らの最もやるべきことであり、兄妹全員がそれに取り組んでいる様子もある。

 

十二月が始まってから、父であり現櫻田王である総一郎が、正式に王様選挙の最終決定日が決められた

 

 

 

それは来年の三月の九日

 

 

 

つまりはあと四ヶ月のみしか選挙活動は残されていない。この十二月も忙しい時でも、時間を作って皆取り組んでいる。それだけもうあまり猶予はない

 

限られた時間の中で皆その中で活動をし、王様になれるよう励むように

 

 

今言われている

 

 

「三月の九日が最後になる。もう降りている子も居るが、それでも最終選挙は参加するように、王様にならない理由をしっかり伝えるために、最終演説は全員やって貰う。全員の演説が終わったら、全国の国民の皆さんから投票をして貰う形になる。栞と輝はまだ幼いから私か五月さんと一緒にやって貰う。こんな感じになるけど、何か質問はあるかな?」

 

「父さん。演説の順番はどうなる?」

 

「年齢の下の子から演説をして貰う。栞、輝、光、遥、岬、茜、奏、修、葵、そして・・・最後は真だ。この順番で行く。順番を変えてもいいが、どうする?」

 

 

「俺は必ず最後にして欲しい。みんなは?」

 

「私もこの順番で」

 

「俺も異議なし」

 

「私も」

 

「私は・・・・その・・・・」

 

「あんたもこの順番でいいでしょ?どうせ出番は回ってくるんだから?」

 

「うう・・・・はい」

 

「私もOK。でも遥と一緒にやっていい?」

 

「父さん。僕と岬は一緒にやらせて欲しい。ちょっと国民の皆さんにどうしても伝えたいことがあるから」

 

 

「分かった。遥と岬は一緒で、光は?」

 

 

「私も大丈夫かな。ただ岬お姉ちゃんが遥お兄ちゃんと一緒にやるなら、私も友達の『さっちゃん』とやってもいい?私はアイドル関係があるから」

 

 

「そうだな。ただその時はあのプロデューサーさんもな?」

 

 

「うん、松岡さんにも来て貰うように伝えるよ」

 

 

「それで、栞と輝は私と五月さんに付き添いをしなければならないが、どっちにする?」

 

 

「じゃあ僕は母上で!」

 

「私はお父さんとお願い」

 

 

「うん、分かった。五月さん。輝を頼みます」

 

「はい。輝。緊張せずに自分の意見をしっかりとね」

 

 

「はい!母上!」

 

 

まだ四ヶ月先の話だが

 

もう最終演説の打ち合わせをし始めていた。演説の順番を取り決め、兄妹の中には共に演説をやる子も居て、皆、何を国民に伝えようとしているのか、王様になるためにいろいろ努力していた

 

もちろんそれになるつもりもない兄妹も居て、その理由をしっかり伝えるために、もう内容をパソコンのメモアプリや紙に書いたりなどをして、演説で言う内容を既に書き始めようとしていた

 

 

「いいなあ、兄さん最後で、ねえ兄さん。最後の順番代わってくれない?」

 

「すまないが無理だ。俺が一番重要なことを言わないとならないからな」

 

「そうだよ。茜。兄さんは国民の皆さんに自分はこの国の王族ではないことを発表しないとならないのよ。これは一番最後じゃなきゃダメ」

 

「あ、そうだよね・・・忘れてた」

 

「葵も、覚悟はできているな?菜々緒も卯月も静流も、当日は来て貰うよう頼んでいる、菜々緒達も居るんだ。お前も自分の真実を国民にしっかり伝えるんだ」

 

「うん!もう私は逃げない。私も私が隠している全てを国民の皆さんに伝える!」

 

「え?隠していること?」

 

「まあ、葵にも皆に知らない秘密があるってことだ。修は・・・・花とやらないのか?」

 

「俺は花に頼り過ぎている。こればかりは自分一人で演説しようと思う」

 

「そういえば選挙活動も花とやっていたな。そこまでは彼女の力を借りずにか?」

 

「ああ、俺も自分なりに国民の皆さんに伝えたいんだ。こればかりは・・・・・」

 

「そうか・・・・なんだかんだで、もうみんな。何を伝えようとしているのか、もう決めているんだな」

 

 

真が心配することなく、もう他の兄妹達は演説内容を考えていた

 

悩んだ末はもちろんあった。そしてその悩んだ結果から、答えを何度も出しては考え直してなど、何度も何を伝えようとしているのか、自分なりに考えていた

 

岬は遥と共に、王様よりも目指したいことをやりたいがために国民に伝えたいことを二人で、岬の分身を出してまで話しあってまとめている

 

光も、アイドルに楽しさを覚えてしまい王様になることをやめている。しかしそれでも最終演説は参加、まだ国民では彼女が密かに能力で中学生の年齢に変身してアイドル活動をしていることは秘密になっている。それを明かすためにも、半分は謝罪会見にもなるが、それでも自身の全てを国民に伝えようと紙に書いて考えている

 

 

輝と栞も、国民に何を伝えるか、まだ幼い子ではあるが、それでも自身で考えたこの国のためになるようなことを伝えるために、まずは両親である総一郎と五月に相談して、紙に書いてまとめる。二人が王様を目指したいかどうかは真自身もまだわからないが、それでも、まだ幼いと言うのに、この国のためになるようなことをしたいと、前向きになるのは素晴らしいと思っていた

 

 

そして、残りは

 

 

「奏。お前はもう考えていたりするのか?」

 

「まあね、私も本気で王様になりたいから」

 

「そうか・・・・・」

 

 

奏はもう演説内容は考えているようで、今まで真剣に選挙を聞くまでもない。今までも誰よりも選挙活動を毎週必ずやったりと、王様になりたい理由があるようで、彼女は日々選挙活動をしていた。そんな彼女に演説内容は悩むことはなかった

 

しかし

 

真の眼には、どうしても彼女が心配だった

 

ほとんどの兄妹達は王様になることを諦めている。特に年齢下の兄妹達は、しかし、奏だけは違う。どうしても王様になりたいことを目的に、彼女は日々無茶なことを言ってでも、国民の支持率を上げようとしている。どうしてそこまで王様になりたいのかは、本当は分かっている真。しかし、それを口にしても彼女がこの道を進むことは変わりない。どうあっても抗えない道だった

 

それが間違っているわけでもない。けど、それでもなぜか彼女は無茶をしていると、こんなことをさせたくないと、真は妹を想って心配していた

 

でも、それは真だけではない

 

 

「兄貴。兄貴も奏のことが?」

 

「まあな、お前もか?」

 

「ああ、なんだか・・・奏の奴、無理しているところあると言うか、物凄く王様になることに執着していると言うか・・・・」

 

「ああ、物凄く執着しているところある。まあ理由は言うまでもないが」

 

「あいつ・・・・・そんなに王様になりたいのか?」

 

「『過去』のことで引きずっているならな」

 

「・・・・・・・」

 

 

修も、奏の事で心配している

 

双子の妹のことをしっかり見ている修。やはり奏にも、『過去のこと』で思い詰めているところがあるらしく、そのやり直しがしたいのか、王様になって全てを元通りにしたいようだ

 

 

「ふう・・・・少し奏と向き合う必要があるな」

 

 

彼女が大きくなってから、あまり真は奏とお互い話し合うことは少なくなった。まあお互い同じ家に居るにしても、いろいろ深くまでは話せない部分も人間にはある

 

だから、今度はしっかり彼女と向き合うために、

 

 

少し彼女と休日を過ごそうとする。真であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

毎週恒例の当番決めの際、珍しく買い物担当は奏となった。ここ最近は真か葵か茜だったが、今日は珍しく奏が買い物当番だった。彼女は運がいいのか、ここ最近は休みばかりだ。働いている週はほとんどない

 

そして真の方は、珍しく休み

 

真は逆にほとんど働いていて、休みなんてほとんどない。もちろん何かの当番をするのが嫌ってわけではない。むしろ何かの当番をするのは好きだし、働くことは毎日するのが、珍しく休みであっても誰かの当番を手伝ったりと働くのが好きだった

 

だから

 

 

「奏。買い物へ行くんだろ?手伝わせてくれないか?」

 

「え?別に言うほど買う物なんてないから大丈夫よ」

 

「一人でやるより、二人でやる方が早いぞ。それとも俺と一緒じゃあ邪魔か?」

 

「別にそういうわけじゃないけど、じゃあお願いするわ。兄さん」

 

「ああ、任せてくれ」

 

 

真は結構無理やりではあるが、彼女の買い物に付き添いをする。もちろん荷物持ちはしっかりやるが

 

目的は二人で話せる時間を手に入れて、王様になる理由を聞きたいがため、こんなことでしか時間を見つけれなかったが、少なくとも奏との時間を作れた。

 

真はなんとかタイミングを見つけて、彼女の目的を探ろうとしていた

 

 

 

 

 

 

 

買い物は実はなんだかんだで多い

 

十二人以上の家族だ。食材は多い上に、それ以外の家庭用品も必要である。そう考えたら流石にそれを一人でやるのはキツイ。それが毎週であると、少しづつでも一人でも大変である

 

だから誰かが付いてきて手伝う。基本的に買い物係は実質一人だけの当番ではない。だから本当なら二人がかりでやる仕事である。でもそれは小さい子供での話

 

だから、もう17と18の奏と真なら一人でも問題ない

 

だが今回は荷物持ちの真も居れば

 

 

「このくらいか、やっぱり俺が居て正解だったじゃないのか?」

 

「まあね、ごめんね兄さん。こんなことさせて」

 

「これくらい問題ない。別に気を遣わなくていい。少なくとも俺は好きでやっていることだ。お前が気にかける必要はない」

 

「そ、そう。でもこれで最後だから」

 

「そうか、また必要な時は呼んでくれ」

 

「別に大丈夫よ。一人でやれたわ」

 

「この荷物の量では怪しいけどな」

 

 

買い物はなんとか終えた。真が居たおかげで多少な物は、彼が楽々に運んでくれているおかげで楽に家に帰れる

 

夕飯の食材や家庭用品、どう見ても奏一人で抱えきれる量ではないと彼は思うが、それでも痩せ我慢をする彼女。もちろん目的があるが故に、自分の力でなんとかしようとする

 

だから、歩きながらその話を彼女に振る

 

 

「奏。こんな時で悪いんだが、聞いてもいいか?」

 

「こんな時?何?」

 

「簡単な質問だから、答えられる・・・・はず」

 

 

こんな荷物多くで運んで帰る途中で、真は奏に質問をしている。別にこれだけの荷物を右手だけで持つなど、彼においては余裕。それでも、彼女について聞きたいことがあると聞く

 

 

 

「王様になって、『国家資金』を使って何をする気だ?」

 

 

「・・・・・・・・・・なんで、そんなこと・・・」

 

 

「お前が一番・・・・『過去』にトラウマを持っているからだ」

 

 

真は大体奏の考えを見抜いていた

 

王様になる権利を手に入れば、当然国家予算だって使える、この国の金を手にして、おそらく彼女は失った物を取り戻そうと、王様になろうとしている

 

そして、その失った物を取り戻すと言うのは

 

真には言わなくてもわかっている

 

 

「それで・・・・・まさか、俺の『義手』と修の『足』を治そうとしているのか?」

 

「そうよ。別にいいでしょ。その方がこれからの生活も安心できるじゃない。兄さんはこれで車も運転できるようになるのよ?左腕が無い状態じゃあ免許も取れないでしょ?それに・・・修ちゃんだって・・・」

 

「そうだな。もう18歳だし、車やバイクにも乗ってみたかった。だがこれでは流石に危ないからと免許も取れない。修も小さい頃からの夢だったサッカー選手になりたかった。だがそれは叶うことはできなくなった。でも俺も修も後悔していない。あれは間違いじゃないんだ。それに誰にでも過ちはある。それに左腕に関してはお前のせいじゃない。それでも『お前も』俺に何かしたいのか?」

 

「私にとっては・・・・取り戻したいのよ。修ちゃんや兄さんが失ったものを」

 

「そうか・・・・お前はそうまでして・・・」

 

 

彼女が取り戻したいもの

 

それは彼女が過去で失ったもの。それは瞬く間に俺と修が奪われたもの

 

しかし、俺の左腕は彼女は関係ない。これは別の話である。それでも俺に何かしたいのはおそらく別の理由。そして理由は修にも関係する

 

彼女が取り戻したいもの。過去で失ったもの

 

 

それは

 

 

 

 

 

 

「お前は、俺から『背中の傷』をつけて、そして修から足を奪った。その後悔を取り戻したいんだな?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

 

これは過去の話

 

まだ真が7歳で、修と奏が6歳の話

 

 

実はその日、総一郎と五月が二人とも国のお仕事で家に居なかった。その時にはもう左腕はないのだが、それ以外で真と修が奏の無茶が原因で傷を負った出来事

 

両親が仕事で家に居ない時、真と葵と修と奏と茜で家で留守番をしていた話。普通に良い子に家でお留守番をしていた。その時は両親が居ない間の家事を真と葵でしていた。それ以外の修は勉強で、奏はまだ幼い茜といろんなことで遊んでいた

 

しかし

 

奏があまりに家に居るだけでは退屈だと。外で遊びたいと言い出した

 

もちろん父と母である総一郎と五月には、くれぐれも外で遊びに行く事はしないようにと言いつけられたいた

 

それでも我慢ができない奏は、茜を無理やり連れて外に遊びに行った。それはダメだと、真と修が言ったのだが、それを奏は聞かずに勝手に外へ行った。流石に二人だけ行かせるわけにもいかないと修が付き添いで奏の後を追いかけた。真も行きたかったが、葵一人に家の家事をさせるわけにもいかず、まだ幼いからと葵と一緒に家の手伝いを終えてから奏達の所へ行くことにした真

 

そして家事を済ませ、もう少しで総一郎と五月が仕事から帰ってくる。その前に三人を連れ戻そうと真と葵は家に鍵をして、奏たちがいつも遊ぶ公園に居るはずだと、そこへ向かった

 

 

それが

 

 

 

事件の始まりだった

 

 

 

時間を掛ける事なくいつも遊ぶ公園に着いた。そしてその着いた途端、修と奏と茜が遊んでいたのだが、奏の能力で作ったと思われる小さな城が公園にあった。公園にはない遊具。明らかに奏がお年玉を使って能力で生成したものだとわかった。そこまではよかった

 

しかし

 

 

その城が突然、崩壊した

 

 

何がどうなっているかわからないが、崩壊していく城の中には奏と茜が居た。その崩壊する中、崩れる中で怖くて動けない奏と茜。城全体は見る見る内に壊れ、最後は屋根も壊れていく。このままだと崩壊していく屋根に埋もれると、城の外に居た修と真が、二人を助けようと、城が崩壊していく中を入っていき、彼女二人を抱き抱えて、そのまま崩れてきた屋根の破片に覆いかぶされ、埋もれてしまった

 

 

そして、二人を庇ったことで、奏と茜が無事な代わりに真と修は、屋根の破片にやられた

 

その結果

 

 

 

真は背中に屋根に付いていたガラスの破片がいくつも刺さり

 

修は屋根の瓦礫が足に落下して、右足を骨折した

 

 

 

その光景を外で見た葵は、近くに住んでいた人に救急車を頼み、念のために買って貰った携帯電話で急いで総一郎と五月に連絡して、すぐ来てもらうよう頼んだ

 

その公園の近くに、偶然にも病院が近いため、そんなかかる事なく救急車が早く来てくれた。来てくれたはいいが、修はともかく、真は複数のガラスの破片が刺さり、中にはかなり大きなガラスの破片が大量出血で手術する羽目に、なんとか手術を早めに行った事で事なきを得た

 

つまりはこれで真と修はなんとか助かった。奏と茜も二人が庇ったおかげでなんとか無事だった

 

 

 

 

しかし

 

 

真はこの事件で背中に多くの傷が残り

 

 

修は足に後遺症が残り、走れなくなる

 

 

 

二人は助かったものの、自分の一部を失った。その事で修は走れなくなりサッカーができなくなった。真もあまりの重傷により半年程学校を休むことになり、リハビリも激しかったと

 

 

奏の能力が原因で二人は体の一部を奪われた

 

 

奏の能力は確かに資産を対価にしてなんでも物を作る事はできる。しかし、もしも資産を超える物を作った場合は、既に作った生成物が消失していくと言う対価があった

 

それを知らなかった彼女は、知らなかったとは言っても、いつまでも悔やんでいた

 

もちろん怪我を負った二人には、自分を憎まないようにと慰めを受ける。

 

 

それでも

 

 

忘れる事はできない。自分のした事への後悔

 

 

それを取り戻そうと、王様になろうと必死に選挙活動をしている。国民の投票を多く貰い、真と修の失ったものを取り戻すために、あの忘れらない過去からいつまでも悔やみ続け、あの過ちを取り戻そうと、総一郎が今年から始めた王様選挙を始めると言って、これで王様になれば資金を、国家のを、好き放題使える。義手や足の神経を治すのには莫大な金は要る

 

これならなんとかできると思ったが

 

 

そんな事は

 

 

「奏。流石にそれをしても嬉しくない。俺も修もな」

 

「なんで!?」

 

「俺も修もそんな事は望んでない。言ったろ。あの出来事の後でも、俺達は別にあの事件のことは気にしていない。なんの後悔もないんだ」

 

「どうして!?そんな姿になってまでその失くした腕を取り戻そうとしないのよ!修くんもそんな話をしたけど、兄さんもおかしいわ!」

 

「別におかしくないさ。それに失くしたものは取り戻せない。そんなものは簡単に取り戻せるものじゃないし、今の俺だってこんな姿になっても後悔はない」

 

「国民の一部は兄さんのこと、『片腕王子』なんて言われているのよ!」

 

「まあ、一部はよく思わない人も居てもおかしくない。その点では完全に差別だが、仕方ない。それは俺が選んだ結果だからな、腕を失くしたことは後悔していない」

 

「兄さんが気にしなくても、私は気にするのよ!兄さんはいつだって正しいことをしているのに、どうしてそれがこんな扱いを受けるのよ!」

 

「それが人間だ。どう思うかなんてその人の自由だ。悪いけど、俺はこんな姿になったことを悔やんだことは一度もない。修もな」

 

「なんで・・・・兄さん達はいつも・・・・」

 

 

「まあ、兄だからな」

 

「っ!?」

 

 

いつもそんな理由で、兄である真と修は、家族である妹のためにいろんなものを捨ててきた。

 

真も修も兄であるがために、妹のため、大切な家族のためになんでも置き去りにしてきた。それだけ家族は大切であり、そのためならなんでもできる

 

それが

 

 

兄だから

 

 

「兄だから、お前達妹を大切にしたい。そのためならどんな無茶でもする。まあ・・・・・兄の意地みたいなものだ」

 

「じゃあ妹の私はいつまでも兄の言うことを聞かなきゃダメってこと?」

 

「全部じゃない。でも・・・・これは本当に要らない。俺も修も失くした分だけ大事なものを手にした。十分な代償は得ている」

 

「それは?」

 

 

 

 

「やっと家族の絆が深まった。みんな色々兄妹となると、少し距離があるところがあったからな、特に俺は」

 

「そんなことは・・・・・」

 

「みんな。そういうところのあるのさ、兄妹同士で比較する部分もあるし、家族だから悩むことはあるけど、それでも同じ家に住んで、あまり仲良くない部分もあったからな、王様選挙が始まって以来は、そんな感じだったからな」

 

「みんな・・・・自分の目的のために必死だから、そんな家族らしくなかった?」

 

「俺はあまり好きじゃない。家族同士で変な争いをするのはな、だからあまり乗り気じゃなかった。本当の家族じゃないことも知っていたから余計だ。だから色々代償を払って、やっと家族になれた。そんな気はする・・・だけどな」

 

「じゃあ・・・その家族のために何かさせてよ。なんでそんなことさせてくれないのよ!」

 

「望んでないからだ。もういいだろう?自分を恨んで王様になろうとしても無駄だ。そんなことのために王様になっても、俺も修も嬉しくない。今でも普通に生活できている。もう十分なものは揃っている。もう無理しなくていい。過去を忘れろとは言わないが、無理に取り戻しても良いこともないんだぞ?」

 

「我慢できないのよ・・・・・それでも!!」

 

「何が?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さんや修ちゃんが、家族が・・・・国民に障害者扱いされるのが!!」

 

「・・・・・・」

 

 

多分、これは一部の話

 

国民の中にはそういう扱いをする。国民も居る。真は報道しなくてもわかるほど、左腕のない彼の姿を見るのは多い。そして修はあの出来事以来かな、足が少し痛みがあって走れない報道されて以来。悪いように障害者扱いしてネットで口にされるなど、多くある

 

それを見た奏が耐えきれなかったのだろう。だから人らしい扱いをしたいと、真と修に義手や足を治すだけでなく

 

国民の非道な扱いも変えるつもりで、何か法律を作ろうとしている。そのために王様になろうとしていた

 

奏も家族のために、横暴なことをしようとしているのだ

 

兄達が家族のために全てを捧げたのに、最終的にこんな扱いを受けるなど、家族として我慢ならない。だから国民から受ける印象を変えたい

 

 

本音は許せない。ここまで苦しいことをしているにも関わらず、偏見で陰口を言われるのが耐えきれない

 

 

しかし

 

 

「別にいいさ、俺も修もさ」

 

「なんで!?なんでそこまで言われて文句を言わないのよ!!!」

 

 

 

 

 

 

「妹のためなら、兄としては嬉しいからだ」

 

 

「っ!?」

 

「本当に後悔してないんだよ。妹のためになんでも守れた。大切なものを守れてよかった。だから幸せだった。失ったものは多いけど、守れるものは守れた。家族を想うならこれくらいはする。だから俺も修も望んだ結果だ。そこに国民は関係ない。陰口を言われても構わない。家族のためならなんでもする。それが俺と修だ」

 

「納得・・・・」

 

「ん?」

 

「納得できない!!それでも!!どうして自分を大切にできないのよ!!!いつも!無理をして!不公平よ!」

 

「奏!」

 

 

それでも奏には耐えきれなかった

 

守られる側も辛い。痛む姿を見るのが耐えきれない彼女は、本気で悪いとは思っていても、それでも家族が傷付く姿を見るなんて、嫌だった

 

だからそれを変えようと王様になって、無理なことを言って国民を従わせようとする。家族のためなら悪事でも

 

それを許してくれず、ずっと傷ついて生きるなんて

 

愛していた奏には受け止めきれず

 

その場から逃げるように、真から離れようと走った

 

 

しかし

 

 

 

 

 

ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!

 

 

「っ!?」

 

「く!なんて突風だ!?今日は風が強くなると聞いてはいたが・・・ここまでなんて・・・っ!?」

 

 

突然の突風に、吹き飛ばされそうになる。奏と真。その突風に身動きが取れず、その場で怯む

 

しかし

 

その突風により

 

 

隣でビルを建設途中の工事現場から。鉄パイプを運ぼうとしたクレーン車が突然風で身動きが取れず、あまりの風の強さにフックに吊るしていた鉄パイプが吹き飛ばされ落ちていく

 

 

そして落ちた先に

 

 

 

 

奏が居た

 

 

「っ!?」

 

「く!」

 

 

奏は頭上から落ちていく鉄パイプを目の前に目を瞑った

 

その瞬間に

 

 

 

 

『二人』が奏を助けるために力を使う

 

 

「「させるか!!」」

 

 

と、真だけでなく、もう一人の人物から奏を守るために力を使う。それが兄だ

 

だから

 

 

 

「・・・・・・っ?・・・え!?」

 

「今度は間に合った。大丈夫か?奏?」

 

「修ちゃん!?なんでここに!?」

 

「偶然かな、偶然花と選挙活動を終えて、今日は天気が悪いから早めに終わらせて家まで能力使って帰らせたけど、俺は歩きでゆっくり家に帰ろうと思ったら、途中で兄貴と奏を見つけてな」

 

「早くなったな修?前より能力を上げたのか?」

 

「まあな。兄貴もまた便利な魔法を手にしたのか?マジでいいなそれ」

 

「簡単じゃないんだぞ?」

 

 

奏はもう押しつぶされて死んだのかと思った。悪いことながらこれで同じ痛みを得ようと、落ちてくる鉄パイプは避けようとしなかった。

 

でも、叶わない。

 

 

兄が居るから

 

 

鉄パイプが落ちてきたかと思えば。真が魔法で落ちてきた鉄パイプを地面に落ちる前に空中で浮かべ、

 

奏は修に抱き抱えていた。落ちる前に修が瞬間移動で奏を安全な場所まで瞬時に移動した。それでも連続二回のジャンプ。修も前よりもワープが簡単にできるように上達したようだ

 

これで今度は誰も怪我することなく助けられた

 

しかし

 

 

「なんでよ・・・・」

 

「何が?奏?」

 

「助けることがか?」

 

「なんで二人は無茶なことをするのよ!こんなことをしてまで!」

 

「そんなことを聞かなくてもわかるだろ?なあ兄貴?」

 

「ああ、わからないか、奏?」

 

「え?」

 

 

 

「「兄貴だからだ!!」」

 

「・・・・・・」

 

 

兄だから妹のためになんでもやる

 

だからこんな危ないことも平気でやる。それに今回は誰も怪我なく助けることができた。余は誰も怪我のしない助けをすれば、危ないことだって多少は許してくれる

 

何も、自分を犠牲になんてしていない。自分のためにはしっかりなっている

 

 

「兄貴もな。別にお前に返して貰いものなんてない。俺も兄貴もお前が幸せになって貰いたいから、無茶をするだけ、お前が無事で本当によかった。俺も兄貴も無事だから大丈夫」

 

「修ちゃん・・・・」

 

 

「だから・・・もう過去の事で泣かなくていいぞ?」

 

 

「うう・・・ああもう!本当に卑怯な兄さん達よ!うううう!うわああああああああん!!」

 

 

 

もう彼女は真と修のために王様になるのを諦めた

 

もうここまで言われては諦めるないと、無茶な事で王様になるのはやめた

 

気づかなかったのだろうか、自分の兄達がこんなおバカさんだったなんて、あんな酷い過去を与えてしまったと言うのに、それでも妹のためになんでもする

 

兄と言う生き物は、妹ができるとなんでも甘やかしてしまう。ダメな存在だと

 

 

これ以上のワガママは無駄だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。落ちてきたパイプを工事現場に戻して、ゆっくりと家に帰る三人。修が居ればテレポートもできて簡単に帰れるのに普通に歩いて帰っている

 

今日はそんな気分だろう。また昔みたいに三人で一緒に家に帰る時を過ごそうと

 

 

「奏。もう過去のことは忘れる気になったか?」

 

「それは無理。絶対に忘れない」

 

「そうか、お前にとって心に留めたいなら好きにしてもいい。だけど・・・・」

 

 

「大丈夫。私はもう・・・・私のために王様になりたいから・・・」

 

 

「ふ!だそうだ。修?」

 

「ああ、なら安心だ」

 

 

もう自分のために王様になると決めた

 

そういうことなら、もう口出しする気はないと、修も真も何も言わない。やっと自分のやりたいようなことで王様になると、もう過去に囚われないと、やっと過去から乗り越えようと決めた

 

 

 

 

しかし

 

 

「そう!私のための独裁国家を!」

 

「「・・・・・・・・・は?」」

 

 

自分のために王様になると決めたのはいいが、それがまさかの国民のためになりそうにない理想を建てていた。

 

それが奏のための独裁国家

 

 

「お、おい奏。お前正気か?」

 

「そうよ!私は家族のためにこの国を使うの!それなら別にいいでしょ!これなら家族のためになる!これなら兄さんや修ちゃんも国民に陰口も言われない!」

 

「奏。お前な〜〜〜・・・・」

 

「ふん、やれやれ。一番のワガママはこいつだったか、これじゃあ俺も修も大変になるな」

 

 

結局この先も奏のワガママに振り回されるのだと、真は覚悟を決めるまでだった。まあ多少な妹のワガママを聞いてあげるのも兄貴の仕事だと

 

この先も兄貴としての務めを果たすのみだった

 

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