ど素人な結果、いろいろ表現の仕方や書きかたがおかしいかもですが
お許しください
魔王城イシュタリオス。
そこには相対する二人の姿があった。
一人はエル・イシュタリア。
もう一人はフィーナ・ウル・イシュタリア
二人には共通点があった。
それはどちらも魔王には珍しい女性だということだ。
「この程度だというのですか? エル」
そう言いながらじっと空から見下ろしている。
「くっーー」
エルはぐっと唇を噛み締めながら思う。
(妾わらわは何故ここで闘っておるのだ…… 闘うべき相手は本来ならば勇者だというのに……)
エルは何故勇者ではなく魔王とこうして闘っているのか、何故こうなってしまったのかわからずにいた。
「何故、勇者などという下賤の者に成り下がったのですか? 私と同じ魔王と言う身でありながら」
あぁ、本当に何故なのじゃろうな……。
エルは思う。
(妾は…… あの者に命を救われた…… そして魔王と言う身分である妾を一人の同じ人として見てくれた)
エルにとってそれは初めての経験であり、なんと言っていいのか分からない感情がエルの心の中にあった。
人間から見れば魔族の者達など自分達とは違う生き物、化物としか思われていないだろう。
逆に魔族の者からすれば、人間などゴミ同然の下等生物に等しいと思っている。
人間というのは本当に面白いのだ。
怒り、憎しみ、悲しみ、様々な感情を持っている。
妾達にはそのような感情は本来ならば全く必要のない物。
エルの中に何か魔族ではなく、人としての何かが確実に心の中に芽生えているように思えた。
(これが、人の心と言うものなのか……)
「そろそろ終わりにしましょうか」
そう言いながらフィーナはその手に持っている漆黒の剣の切っ先をエルに向けた。
「漆黒の鎖よ、我が意思に従え」
エルは目を見開き距離をとろうと後ろに下がるが、そこに幾多もの闇のオーラを纏った鎖が地面から出現しエルを縛りつけていく。
「しまったーー」
そう口にするも時は遅く既に縛られた鎖によってすべての力を奪われていく。
瞳は虚になりかすかに前が見えるかどうかだった。
(妾は……死ぬのか……?)
それを見下ろしながら地面に立ち、ゆっくりとエルの元へと近づいてくる。
エルの目の前に立ったアイズはその漆黒の剣を掲げ、エルに向って降り下ろす。
「さようなら、エル……」
我が愛しい娘よーー
◆
城下町ベリオス。
がやがやと人が賑わう町中の酒場で数多くの冒険者達が酒を交わしていた。
「おうおう! 今日の成果はどうだったよ?」
「まずまずってところだ!」
「俺なんて、魔族1匹仕留めてきたぜ!」
「本当かよ?! そいつはすげーな! そのうち勇者にでもなれるんじゃないか?」
などなど今日のモンスター討伐について大声で語っている者達がいた。
その話を近くの席で聞いていた黒いフードを着た一人の人物がボソッと呟く。
「ゴミ共が……」
(くだらん……実にくだらん話じゃ……たかだか下位魔族を1匹倒した程度であの喜びようか……)
そう思いながら一人食事をとっていた。
その人物とは、魔王城イシュタリオスの城主であり魔族の姫である、エル・イシュタリアであった。
この世界に来てから色々と情報を集めているもののまだはっきりとした事は分からずにいた。
(不味い……やはり人間共の食べ物は妾には合わん……)
硬いパンに穀物のスープ、焼き魚に少しの酒。
人間共は毎日このような食事を取り、美味い美味いと口を揃えながら言っているが、イシュタリオスでの豪華な食事しか食べたことのないエルにとってはそれは何よりの苦痛だった。
(人間というのはわからぬ……)
貴族や勇者などといった者ならばまだましな食事をしているかもしれないが、平民共に至ってはこの有様か。
エルはそっと立ち店番に銅貨を払い店を出る。
(空気が悪いな……)
店の外に出たエルはゆっくり足を進めた。
そこは賑やかな町の面影は無く、盗み、強姦、様々な闇がそこにはあった。
人間共はいつもこんな感じなのじゃろうか? 何故同じ人という存在の中で争い合いが起こるのじゃ。
魔族の中では階級という物はあるにしろ同族同士での無意味な争いは決して行われない。
それが絶対服従というものじゃ。
やはり妾達魔族が、人間という下等な生き物を支配しなければ、そして争う者は殺し忠誠を誓わさなければならない。
しかし、何度か下位魔族の襲撃は目にしたが、あれはエルの知る魔族共ではなかった。
(やはり妾の知る世界ではないのだけはたしかな筈じゃが……)
そう考えながら歩いていると
《グルルル……》
エルの近くに何者かの多数の気配があった。
(この気配はーー)
腰にさしていた剣を抜こうとするが。
(ここで力を使うのは何かと不味いか……)
そう考えたエルは人気のない場所までそれをおびき寄せると被っていたフードを開け素顔を晒す。
その素顔はまさに美の結晶とでも呼ぶべきか。
《ニンゲン……食ウ……》
(下位魔族か? それにしてはただの傀儡に見えるのじゃが)
「何者じゃ、妾を誰かと知ってのふるまいか!」
《グオォォーー》
その魔族モノは雄叫びをあげるとエルに向って飛び掛かり鋭い爪を振りかざした。
「言葉すら理解できぬか……」
エルはギロっとその赤い目で魔族を睨みつける。
しかしその魔族は勢い良く爪を容赦なくエルに振り下ろす。
(チッ……)
エルは腰にさしていた剣を抜きその爪を上に弾き瞬時に後ろへと下がる。
(妾の魔眼イビルアイズが使えないじゃと……?)
魔眼、それは上位の魔族であるならば皆使え、それを見た者は一瞬にして全ての行動を封じられ、こちらの意思に従う魔族特有の特殊能力である。
だがエルの場合魔族の王家の血筋を引く姫。
相手が下位の魔族程度簡単に御せれるはずだが、それが効かないとなれば下位ではない? いや、しかしこの魔族が中位や上位、ましてや最上位クラスの力があるとは到底思えなかった。
(やはり、妾の知る魔族ではないということか)
《グゥオォォォ……》
勢いよくエルに向って飛び掛かるが、素早く横を縫う様に動きその首をはねていく。
《グガッーー》
次々と辺りに倒れていく魔族達。
やはり下位の魔族かまたはそれ以下か、どちらにせよ魔族の姫たるエルの敵ではなかった。
(しかし、なぜ魔眼がつかえなかったのじゃろうな……。この世界に魔族という者が存在するのは確かなはずじゃが私の力が使えないとなると少々厄介じゃな……)
この世界に来てからというものの、しっかりとした魔力補給は愚かなまともな食事すらできていない。
イシュタリオスにいた頃は、空気全体に魔力の根源とも言える物質【マナ】と呼ばれる物が混じっており魔力を補給するという行為自体に困った事などない。
はっきり言える事は今いる街にはそういった物がない。
魔力を補給できない以上、魔王としての力は使えないと言うことだ。
剣の腕には自信はあったものの、技量は除いたとしても魔王としての力が使えない以上力でのぶつかり合いでは女のエルにとって圧倒的に不利なのである。
(何処か魔力を補給できる所を探さなくてはならぬな……)
そう思いその場を立ち去ろうとしたときである。
「きゃあぁぁぁあ!!」
ドサッと言う音と共に何か悲鳴が聞こえる。
後ろを振り向くとそこには地面にぺたんと座り込み辺りに散乱している魔族の死体とエルの事を見ながら目には涙を浮かべている少女の姿があった。
地面には無数の花が散乱している。
(チッ……見られておったのか)
エルは少女に近寄ると被っていたフードから素顔を晒しじっと少女を見つめている。
少女はエルから目をそらそうとするもエルから放たれている魔族のオーラによって逃れることはできるはずもなかった。
身体はガタガタと震え、今にも気を失いそうなくらいの恐怖を感じていた。
(この娘どうしたものか……ここで始末するのは簡単じゃが……この世界の事も調べなくてはならぬ。
妾の僕しもべとして働かせるのもよいか)
エルはそっと少女を抱きしめると、少女は意識を失った。