Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり   作:虚空屍

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話は2月2日(土)の夜です

命を救われた士郎がのんびりと帰宅しますが、うっか凛のお陰で再び窮地に追い込まれてしまいます。


11 問おう、貴方が私の…………マスターか?

「ああ、頼んだよ、キャスター」

 

 

 

 

 

 どれ位の時が過ぎたのか、意識を取り戻し目を覚ます衛宮士郎。

 

「いったい何が…………起きたんだ…………?」

 

 疼く胸を(さす)りながら血塗れの身体と廊下を見て、何故自分がここで倒れて居るのか(かす)れた記憶を呼び起こす。

 

 自分は人技為(ひとわざな)らざる剣檄を見てしまったが為、心臓を刺され、死を意識し、恐らくは死んだであろう自分が誰かに救われたのだと。

 

「流石にこれは不味いな………」

 

 衛宮士郎は血塗れの廊下を見て呟き、半ば現状認識判断が麻痺している為、これを異常とは思わず自らの身体から流れ出た血液を綺麗に拭いて痕跡を消し、自宅を目指し帰宅の途に着いた。

 

 

 

 

 

 1人帰宅した遠坂凛はソファーにドスンと倒れ込む。

 

「すまん、凛。失敗した」

 

 程無くしてアーチャーが戻り、遠坂凛はランサー追跡の失敗の報告を受ける。一呼吸置いた後、彼女は重大な事に気が付く。

 

「あっ、不味いわ、不味いわよアーチャー!」

 

 その時遠坂凛は、再びランサーが目撃者である衛宮士郎を殺すであろう事に気が付き、アーチャーに抱えられ衛宮邸に飛ぶ。

 

 

 

 

 

 帰宅した衛宮士郎はバタりと居間に倒れ込む。

 

 ランサーとアーチャーの戦いを、そして殺された後に誰かに救われた事を思い出す。

 

 チリンチリン─────

 

 突然、結界の警報が侵入者を知らせる。するとそれと同時に天井から、学園での目撃者に止めを刺すが為、ランサーが槍を向け跳び掛かるが衛宮士郎はそれを寸でで躱わす。

 

「はぁ~、一日で二度殺す事になるとはなぁ。しかし何で生きてんだ、おめーも魔術師って事か?」

 

 朱槍の構えを解き呟くランサーに衛宮士郎は手近なポスターを丸め強化魔術を懸けて構える。

 

 再び朱槍を繰り出すランサーと強化した丸めたポスターで応戦する衛宮士郎。状況は衛宮士郎に悪くなる一方で、彼は堪らず縁側の硝子戸を壊し庭に跳び出る。しかしランサーの追随は速く、直ぐに衛宮士郎との差を詰め彼を一方的に蹴り跳ばすばかりである。

 

 そろそろ頃合いと見た、空中で監視中のキャスターは実体化し、蝶の様に拡げられたローブには幾つもの円環を繰り出しそこからランサーに向けビームを浴びせ、地には竜牙兵を呼び出しランサーの攻撃に制約を懸ける。

 

 自分を護る様に動く大きな蝶の様なサーヴァントと竜牙兵の出現に驚き混乱する衛宮士郎。

 

 ランサーは何故にキャスターがと思いながらも竜牙兵とビームを躱しながら衛宮士郎を蹴り跳ばす。

 

 ランサーは衛宮士郎をいたぶり殺してからキャスターに挑むつもりでいた。それくらいは余裕であると。しかし苛立つ!

 

「キャスター! 何故邪魔だてをする!?」

 

「…………………………………………………………」

 

「ちっ! 喰えねえ野郎だぜ」

 

 ニヤリと口角を上げる無言のキャスターによる、当たる様で当てて来ないビームと竜牙兵により、攻撃が制限されたランサーは舌打ちをし衛宮士郎を土蔵前に蹴り跳ばして仕舞う。

 

 丁度良く土蔵に逃げ込んだ衛宮士郎ではあるが、直ぐにランサーに追い詰められ朱槍を眼前に突き付けられ、これから死ぬかも知れない怖れよりも、助けられた命の為に、自分自身に課せられた生きる事への義務を強く想う。

 

 

 

 

 

 すると衛宮士郎の想いに応えるかの様に召喚陣が光りだし辺りを照らす─────

 

 

 

 

 

 ランサーの槍の切っ先が衛宮士郎に届くその時、槍を弾く光の軌道が見える。

 

「七人目のサーヴァントか!?」

 

 危機を察し咄嗟に身を翻して土蔵から跳び出し、朱槍を構えるランサー。

 

 

 

 

 

 光の中から現れた青い甲冑を纏いし金色の髪の少女。

 

「問おう、貴方が私の…………マスターか?

 サーヴァント・セイバー、召喚に従い参上した。マスター、指示を!」

 

 セイバーからの問い掛けにも、訳が解らず呆けて答えられない衛宮士郎。

 

 セイバーはマスターである衛宮士郎の危機と知り指示を待たず庭へと跳び出すが、そこでランサーと戦っているのはキャスターと竜牙兵達である。

 

 召喚された時にランサーが衛宮士郎を槍で突く寸前だった事もあり、セイバーはランサーを攻撃対象と認識する。

 

 セイバーの参戦により暫くは支援攻撃をしていたキャスターだが、押され始めたランサーが即時撤退し全てを台無しにしてしまう事を恐れる。

 

「私はキャスターのサーヴァント。貴女をそちらの坊やのサーヴァントのセイバーとお見受け致しました。もう貴女一人で大丈夫でしょう」

 

 キャスターはそう言い残すと、竜牙兵を引き揚げ霊体化する。

 

 消え去るキャスターにセイバーが声を懸ける。

 

「キャスター、我マスターの危機を救って頂き感謝します!」

 

 ここでようやく剣士と槍兵の一騎討ちとなる。

 

 やはりここでも肉眼では捉えられない剣戟が光の線となり数十合と続くがお互い決め手に欠いている。

 

 しかしセイバーの挑発に乗ってしまったランサーは宝具の真名を口にし発動させる。

 

「その心臓、貰い受ける。ゲイ──ボルク!!」

 

 必殺の一撃であるゲイボルクを遣うもセイバーは直感スキルでギリギリで致命傷を躱すが、ランサーの宝具使用により真名であるクー・フーリンを知り驚く。

 

「ゲイボルク…………そなたはアイルランドの光の皇子(みこ)か!?」

 

 こりゃ参ったなと、真名が知られたランサーは追撃するなら死ぬ気で懸かって来いとセイバーに捨て台詞を残し、塀をひょいっと跳び越え衛宮邸から離脱する。

 

 戦いを終えたセイバーは衛宮士郎とお互いに自己紹介をするが、《衛宮》の苗字に引っ掛かりを覚え一瞬、眉をしかめる。

 

 しかしセイバーは、近づく別のサーヴァントとマスターの気配を感じ取ると、塀を跳び越え近づくサーヴァントとマスターの迎撃に向かう。

 

 

 

 

 

 アーチャーがサーヴァントの気配を追って衛宮邸まで来るが、サーヴァントが二体居る事に気が付き凛に注意を促す。

 

「凛、気を付けろ! サーヴァントが二体居るぞ!!」

 

 青いサーヴァントが衛宮邸の塀を跳び越え逃走し、直ぐに別のサーヴァントも塀を跳び越え出て来るがのも凄い勢いでこちらに向かい迫って来る!

 

「待てっ! 凛!!」

 

 先行している遠坂凛を呼び止めるのと同時に前に出て、セイバーの一撃を受け傷を負うアーチャー。

 

 向かって来たサーヴァントは青い甲冑を纏う金髪の美少女。

 

 思わず腰を抜かした遠坂凛は慌ててアーチャーを霊体化させ逃がし、金髪の少女を一目見るなり驚きの余り声をあげる。

 

「セイバーのサーヴァント!?」

 

 セイバーは遠坂凛に不可視の剣を突き付けたままで何時でも止めを刺せる状態でいる。

 

 

 

 

「止めろー! セイバーーーッ!」

 

 セイバーを追い駆け、攻撃を止める様に叫ぶ衛宮士郎の令呪が反応する。

 

 敵と思われるマスターを前にしてのシロウの命令に狼狽するが、令呪を使った絶対的命令権の為にそれ以上は動けず従わざるを得ないセイバー。

 

「くっ、正気ですかシロウ!?」

 

 令呪の発動で、奇襲により確実に仕留められる状況を強制的に止められた事に対して苛立ちを隠せないでいるセイバー。

 

 立ち上がりざまに、服の汚れをパンパンと払う遠坂凛。その立ち上がった少女を見て驚いたのは衛宮士郎。

 

「お、おまえ遠坂…………!?」

 

 驚き顔の衛宮士郎に対して、無理をしてでも涼しげな笑みを浮かべる遠坂凛。

 

「取り敢えず、今晩は。衛宮君」

 

 満面に引き吊った笑顔の遠坂凛はこの騒動の張本人である衛宮士郎に、寒い所での立ち話は有り得ないと問答無用で衛宮邸に押し入るのである。

 

 

 

 

 

 終始この状況観察をしていたキャスターは、使い魔を衛宮邸内へ放ち次の行動に移り出す。

 

 

 

 

 

 教会の扉を開けて室内を見回し、スーッと礼拝堂の中央に来るキャスター。

 

「もし~、こんな夜分に申し訳御座いません。何方かいらっしゃいませんの?」

 

 程無くしてこの教会の神父が仰々しく現れ鼻を鳴らす。

 

「ふんっ、これは誰かと思えばキャスターのサーヴァントか。サーヴァントがここ教会に立ち入る事は認められてはいない筈なのだが」

 

「まあまあ、固い事は仰らずに。私はマスターの登録に代理で(まか)り越しました」

 

 一体の竜牙兵を湧き出させる。それは剣を携えた紫色の骸骨である。

 

「きっ、貴様!?」

 

 祭壇に立ち身構える神父と相対する竜牙兵。

 

 すると両腕で自らの身体を抱き、態とブルブル震えるキャスター。

 

「おお怖い怖い。勘違いなさらないで下さいな。暴れたりは致しませんわ」

 

「では何故ゴーレムを出すのだ?」

 

「生憎私が用意できる人形(ひとがた)はこれしか無いもので、空虚な間に話すよりはこれに向かって話をした方が良くなくって?」

 

「形の有る物に話し掛けろと言うのだな」

 

「そう云う事。そしてマスターも竜牙兵を通して貴方を見ているのよ」

 

「解った」

 

 攻撃しない事を確約させ一応は納得する言峰綺礼であるが、キャスターが竜牙兵にお面を掛ける行為に不信感を抱き問う。

 

「何をしている? 意味が有るのか」

 

「生憎竜牙兵の頭には口しか無いもので、それでは目を見て話せませんでょ? うふふっ」

 

 これも伊丹の趣味のキャラのお面で有るが面白半分にお面を着けていると口が裂けても言峰綺礼には言えないキャスター。

 

「しかしその面は少々馬鹿にしてはいないか?」

 

「いいえ! これはマスターの趣味なのでしてよ。それを馬鹿呼ばわりする貴方はマスターを馬鹿にしてはいないかしら! くくくっ…………」

 

 伊丹の指示で本当は馬鹿にされているのが言峰綺礼である事にキャスターは可笑しくて堪らない。

 

「それは済まなかったな。人の趣味にまで口を挟む真似をして」

 

「解って下されば結構。では宜しく。私はこれで失礼させて頂くわ」

 

 四散して消え去るキャスター。

 

 その後には無言の神父と仮面ゴーレムが取り残された────────────

 

 

 

 

 

 このやり取りを自室で視ていた伊丹は腹を抱えて転げ回る。

 

 キャスターにより、伊丹と竜牙兵を繋いで貰い竜牙兵視点での映像が伊丹の頭の中に、目の前で見ているかの様に入って来る。

 

 程無くしてキャスターが帰ってくる。

 

「お疲れさま、キャスター」

 

「ただいまですわ、耀司様」

 

 伊丹は竜牙兵に念をおくる。

 

「キャスターが用意したゴーレムで、俺の玩具に成れっ、言峰綺礼! 一丁、弄んでやるか!」

 

 

 

 

 

 口を開いたのは言峰綺礼である。

 

「マスター登録に来たと聞いたのだが、キャスターのマスター?」

 

『おいたん、だれ?』

 




最後まで読んで頂き有り難うございます。

士郎も大変でしたが遠坂凛もアーチャー中破と云う手痛い目に会いました。しばらくはアーチャー負傷の為に出番が有りませんが、士郎と凛はこの危機をどう乗り越えて行くのでしょうか。

ではでは…………


虚空屍
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