Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり   作:虚空屍

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アクセスして頂き有り難うございます。

話は日付が変わり2月3日(日)の未明となります。

場面状況は伊丹と言峰綺礼の二人きりしかおらず、動く描写が殆んどありませんが、ひたすら言峰綺礼を弄り倒します。

文中のゴーレムの話し方は、芦田愛菜ちゃんの物真似をする、やしろ優さんを意識して頂けたら幸いです。

本文中に不適切な表現が多数ありますので、その様な表現が苦手な方はご注意下さい。


12 アベちゃんだよ

『おいたんだれ?』

 

 言峰綺礼の前に佇む、縁日で売られている様なお面を被った直立不動の竜牙兵がカクカクと口を開く。

 

(くっ、キャスターめ、セーラー月姫の面を掛けたゴーレムなんぞ置いていくとは、侮れんな! いやっ、馬鹿にしているのか!? 月に代わってお仕置きなのか?)

 

 気を取り直してお面を被ったゴーレムからの問い掛けに答える言峰綺礼。

 

「私は言峰綺礼。この教会の司祭であり今回の聖杯戦争の監督役である。処でキャスターのマスター、君の名は?」

 

『ん?』

 

(俺のコードネームがアヴェンジャーだからアベちゃんでいくか!)

 伊丹は特戦群での自分のコードネームを使う。

 

「君の『アベちゃんだお』名前…………」

 

言峰綺礼の問い掛けを遮る様に答えを捩じ込むセーラーゴーレム。

 

「安部ちゃん? それが君の名前か」

 

『アベchangだお』

 

「中国系なのか?」

 

『あべちゃんだお』

 

「日本人だな?」

 

『アーベー・チャンだお』

 

「…………」

 

『アベちゃんだお』

 

「君の名前は解った」

 

『おいたん、だれ?』

 

「さっきも言ったが教会の司祭の言峰綺礼だ」

 

『せいはいせんそうってなに?』

 

 言峰綺礼は如何にも大層な儀式だと言わんばかりに両腕を大きく拡げ言い放つ。

 

「聖杯戦争。それは聖杯得るに相応し者を選抜する為の儀式だ」

 

『せいはいってなに?』

 

「持ち主に無限の力を与える杯だ」

 

『さあぶぁんとってなに?』

 

「聖杯によって選ばれた魔術師が召喚する事が出来る使い魔だ」

 

『アベちゃんだお』

 

「何回も聞かされ覚えたからもう言わなくていい」

 

『おいたん、だれ?』

 

「私は言峰綺礼。この教会の神父で聖杯戦争の監督役だ」

 

『せいはいせんそうってなに?』

 

「先程説明したのがだ?」

 

『おぼえられないお』

 

「ならもう一度言おう」

 

『せいはいせんそうってなに?』

 

「聖杯を得る為の選定の儀式だ」

 

『せいはいってなに?』

 

「望みを叶える杯だ」

 

『さあぶぁんとってなに?』

 

「魔術師が召喚できる使い魔だ」

 

『アベちゃんだお』

 

「ああ、安部ちゃんだな」

 

『よっこい庄一っと!』

 

 徐に最前列の椅子に腰をおろし脚を組むセーラーゴーレム。

 

「なんだ? 貴様、動けるのか!?」

 

 

 

 

 

 一連の言峰綺礼の反応に、竜牙兵を自宅で操作している伊丹とキャスターは大笑いをする。

 

「きゃははははっ~! 視てみろキャスター、こいつ馬鹿だよ~! 傑作だ!!」

 

「クククククッ……! 確かにお馬鹿さんですわ!」

 

 伊丹もキャスターも、言峰綺礼に対してやる事に躊躇がない。

 

「もっといたぶってやるか!」

 

「ええ、もっと精神的に弄んでやりましょう!」

 

 

 

 

 

『よっこい庄一っと!』

 

「くっ! ゴーレムが座る必要があるのか?」

 

『よっこい庄一っと!』

 

「それはさっきも言った筈だが?」

 

『よっこい庄一っと!』

 

「貴様は同じ言葉しか繰り返せないのか?」

 

『よっこい庄一っと!』

 

 

 

 

 

 自室の伊丹とキャスターは言峰綺礼の反応にゲラゲラと腹を抱えて笑い転げる。

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

『くっ』

 

「何だ、真似をするのか?」

 

『なんだまねをするのか』

 

「馬鹿にするのも大概にしないか!?」

 

『ばかにするのもたいがいにしないか』

 

「貴様の目的は何だ!?」

 

『マスター登録に決まってるじゃん! さっきキャスターが言ったでしょ、綺礼はお馬鹿さんなの?』

 

 いきなり普通に素で話すセーラーゴーレムに驚きビクついた言峰綺礼。

 

「ひっ! くっ、普通に喋れるのか?」

 

 

 

 

 自室の伊丹とキャスター。

 

「キャスター視てくれ、綺礼の奴、此方が普通に話したらビクついてやんの! だらしねーなー、男ならシャンとしろってんだ、幻滅だよ。ぷぷっ!」

 

「弄り甲斐がありますわね」

 

「歪んだ奴を困らせるのも楽しいな!」

 

 キャスターはさらりと冗談を挟み込む。

 

「耀司様も十分歪んで居ますわよ」

 

 それは心外だとばかりに伊丹はキャスターの冗談に答える。

 

「それは勘弁だ、キャスター」

 

 

 

 

 

『アベちゃんだお』

 

 言峰綺礼の額には青筋が判る程に浮かんでいる。

 

「ちっ、ならば目的は達したな。立ち去るが良い」

 

『ききたいことあるんだお。あとひたいにあおすじげんきん』

 

 彼は思わず額を擦りながらセーラーゴーレムの問を聞く。

 

「何だね?」

 

『ん?』

 

「だから何だね?」

 

『ん?』

 

「聞きたい事が有るのだろ」

 

『ん?』

 

「無いのなら帰────」

 

『ぼくはおどりがだいすきなんだ』

 

言峰綺礼の話を遮る様に話し出すセーラーゴーレム。

 

「いきなり何を言い出すんだ」

 

 やおら立ち上がりボックスダンスを踊り、胸の前で腕をクロスさせた後、万歳の形をするセーラーゴーレム。

 

『らんらんるぅー』

 

 踊り出すセーラーゴーレムにたじろぐ言峰綺礼。

 

「らんらん…………?」

 

『らんらんるぅー』

 

「るぅー…………だと?」

 

『よっこい庄一っと!』

 

 再び脚を組んで座りだすセーラーゴーレム。

 

「楽しいのかね?」

 

『ああ、楽しいぜ、愉快だぜ、お笑いだよ。そうは思わないのか、えっ、神父さんよぉ!』

 

 またも普通に素で話し出したセーラーゴーレムだったが、正気を保つ言峰綺礼。

 

「ほぅ、貴様は何に愉しみを見出だしているのだ?」

 

 伊丹は言峰綺礼の問い掛けに答えはしないが内心ではあんたにと言いたげである。

 

(それはお前の困惑、苛立ち、苦悶に俺は愉悦を覚えるのさ、綺礼! な~んてな。俺はそこまで性根は腐って居ないよ! いや、もしかして腐ってるの?)

 

 

『おいたん、だれ?』

 

「くっ、貴様は誰だ?」

 

『ん?』

 

「貴様は誰だと聞いているのだが?」

 

『おちっこ』

 

「その姿では必要が無いだろう…………」

 

『おちっこ』

 

「だからその姿では必要が無いだろうと言っているのだが?」

 

『うんち』

 

「今度は大の方か」

 

『うんち』

 

「出来る物ならしてみたまえ」

 

『おなかいたいもれちゃうお』

 

「構わん。その身体で排泄行為など出来る筈が無いのだからな」

 

 再び立ち上がるとカクカク動き出す。

 

『ぼくはおどりがだいすきなんだ』

 

「また踊りか? トイレはどうするのかね?」

 

 腕を前後に振り腰をカクカク揺らし出す。

 

『へんなお~じさんっ、へんなお~じさん♪──────────ん~だっぷんだぁ~♪』

 

 ぶりぶりゅびしゃーーーっ!!

 

 セーラーゴーレムの股間辺りから水分が多目の茶色い半固形物が噴き出す。

 

 

 

「……………………」

 

 ────異臭が漂う礼拝堂

 

『おいたん、だれ?』

 

(キャスターのマスターは幼児退行なのか?)

 

「すまん、私が悪かった。トイレはこの奥だ。さあ、行くが良い」

 

『もうすんだお』

 

「誰がこれを始末するのだ?」

 

『ん?』

 

「誰がこれを始末するのだと聞いているのだが」

 

『きれいだお』

 

「アベちゃんだろ!」

 

『ん?』

 

「貴様に片付ける様に言っているのだが」

 

『きれいだお』

 

「奥にモップとバケツが有るから早く片付けたまえ」

 

『たくさんのあさしんがやればすぐおわるお』

 

(くっ、こいつ、第四次聖杯戦争の私を知っていると云うのか?)

 

「アサシンなど居るわけ無かろう」

 

『りせいしんぷがやってくれるお』

 

「父は十年前に他界したのだぞ」

 

『ときおみさんがやってくれるお』

 

「時臣師も十年前に他界している」

 

 再び脚を組んで座りだすセーラーゴーレム。

 

『よっこい庄一っと!』

 

「処で貴様は父と時臣師に会った事が有るのか?」

 

『ぼくはおどりがだいすきなんだ』

 

「二人に会った事が有るのかと聞いている!!」

 

『ぼくはおどりがだいすきなんだ』

 

「くっ、だから二人が────」

 

『ふたりはいるお』

 

「えっ、どういう事だ?」

 

『きれいのうしろにいるお』

 

「私の後ろになど居るわけ無かろう」

 

 そうは言いつつも、言峰綺礼は思わず振り返り後ろをチラリと見てしまう。

 

『ちだらけのふたりがきれいのまわりをぐるぐるあるいてまわってるお』

 

 言峰綺礼は第四次聖杯戦争の時、璃正と時臣が自分を中心に廻りながら話をしていたのを思い出す。

 

「ひっ! いや、居る訳が無い!」

 

(父は殺され、時臣師は私が手に掛けた。そして二人の葬儀は済ませた。幽霊が居るだと? 魂は有るのか? 魂がエネルギー体でありこの世に残留して居ると云うのか!?

 サーヴァントが存在するのなら、霊魂の存在も有りなのか? そもそも何故あの二人は、私を中心にして廻りながら話をしていたのだ?)

 

『いるお』

 

(…………あの戦いの現存者は彼だけだ。そうだ、彼しか居ない。貴様の正体が判ったぞ、キャスターのマスターよ!)

 

「貴様はウェイバー・ヴェルベット、いや今はロード・エルメロイⅡ世か?」

 

『アベちゃんだお』

 

「もう良い、貴様の素性は解ったのだからな!」

 

 暫し沈黙が続く─────

 

 素性がバレて黙ってしまったのだと思い込み、口角を上げる言峰綺礼。

 

 

 

 

 

『だっぷんだぁ~!』

 

「止めろーーーーっ!!」

 

 先程の異臭を放つ光景を思いだし止めに懸かる言峰綺礼だが何も起こらない。

 

「ちっ、フェイクか…………」

 

『まんしんおう』

 

「なにっ!?」

 

(慢心王? ギルガメッシュの事か? こいつ、何を何処まで知っているのだ?)

 

『きれいもざっしゅだお』

 

「小賢しいぞ、ロード=エルメロイⅡ世!」

 

『せいはいせんそうってなに?』

 

(ちっ、しつこい! こいつ馬鹿なのか? しかし監督役としては答えない訳にはいかんな。しかし面倒臭い奴だ…………)

 

「聖杯の取り合い」

 

『せいはいってなに?』

 

「願望機」

 

『さあぶぁんとってなに?』

 

「使い魔」

 

『アベちゃんだお』

 

「ああ、そう…………」

 

『おいたん、だれ?』

 

「言峰…………」

 

 流石に苛立ちが頂点に達したのか額に浮き上がった青筋もはち切れんばかりの勢いで語気を荒げる。

 

「もうよいっ!! こんな茶番には付き合って居られない! 私も忙しい身、君は帰るがいいっ!」

 

『よるのひとりあるきはいけないんだお。ままがいってた』

 

「キャスターのマスターは子供なのか!?」

 

『い~や、迷える子羊だ!』

 

「へっ?」

 

『おいたん、だれ?』

 

「キレイだお!────」

 




最後まで読んで頂き有り難うございます。

ひたすら言峰綺礼を弄りまくり、精神的動揺を狙った物と見て頂けたら幸いです。

今後の教会内での展開は? 果たして遠坂凛と衛宮士郎はマスター登録に来るのか?

ではでは…………


虚空屍
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