話はまだまだ2月3日(日)未明です。
いよいよ超重量級のサーヴァントを従えた少女が登場します。
遠坂凛、衛宮士郎そしてセーラーゴーレムはどうなってしまうのでしょうか。
「────ねえ、お話しはおわり?」
内心ガッツポーズのセーラーゴーレム。
(キタァァーーーー!! よっし!)
振り返れば奴がいる! 織田ゆ…………じゃなく鋼色のバーサーカー!
その前に立つのは銀髪で透き通る程の白い肌の少女!
彼女は衛宮士郎に一言告げる。
「今晩はお兄ちゃん。こうして会うのも二度目だね」
言葉の主は数歩進み出、コートの端を摘まみお辞儀をする。
「始めまして凛、私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。アインツベルンって言えば解るでしょ」
「アインツベルン…………」
呟く遠坂凛だがバーサーカーを見るや否や、セイバーをも凌ぐその桁外れの能力に驚きを隠せない。
そして衛宮士郎に逃げるよう勧めるが、彼は動かない。いや、鋼色の鬼から発せられる殺気による恐怖で呆然とし動けなでいる。
イリヤスフィールは開戦の言葉を口にし出す。
「なら始めちゃっていい?」
するとセーラーゴーレムはカクカクとマリオネットの様にイリヤスフィールに近づく。
不気味に近づくセーラーゴーレムに気が付きイリヤスフィールが叫ぶ!
「キャーーッ! いや~っ! 何これっ!? キモい!!」
嫌われたセーラーゴーレムは両手を挙げ不戦の意を示す。
(流石に不味い! 折角ここまで来て、嫌われて粉砕されたらお釈迦だ! しかしゴキブリ扱いだな…………)
セーラーゴーレムは何とかイリヤスフィールの気を引こうとする。
ボックスダンスを踊っては
『僕は踊りが大好きなんだ!』
可笑しな振りを着けては
『変なおじさん、変なおじさん~♪』
腹を突き出す様にしては
『マッスルマッスルー!』
セーラーゴーレムは思い付くあらゆる事をしつみせる。
完全にドン引きの遠坂凛と衛宮士郎たが、なぜかセイバーは腰を振りリズムを取っている。
しかしセーラーゴーレムの必死さが伝わったのか、イリヤスフィールがポツリと漏らす。
「あらっ、少しキモ可愛いかも…………」
セーラーゴーレムは得物を置きイリヤスフィールに近付くが、バーサーカーがそれを阻む様に前に出るとそれは無用とバーサーカーを制し、イリヤスフィールはセーラーゴーレムに対峙する。
するとセーラーゴーレムは片膝を着き胸に手を当て挨拶をする。
『私はキャスターのマスター。この身体は代理の竜牙兵。訳あって今宵はこの姿をしています。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン嬢』
「あら? 貴方は礼儀が宜しいのね」
『お誉めに預かり光栄です』
「処でキャスターのマスターが私に何の用かしら?」
セーラーゴーレムは口に手を当て内緒話しのジェスチャーをしてイリヤスフィールの傍による。
『此処だけの話しにして頂きたいのですがイリヤスフィール・フォン・アインツベルン嬢────』
「イリヤで良いわよ、キャスターのマスターさん」
『有り難う御座います。ではイリヤさん、私の本名は伊丹耀司と申します。今の職業は高校の教師をしていまして、実は後ろのマスターの二人は私の教え子なのですよ』
「だからゴーレムで誤魔化しているのね」
『ご明察! ですからこの事は暫く他言無用でお願い致したい』
「解ったわ。貴方の秘密を私に話してくれたのだからアインツベルンの名に懸けてお約束するわ」
『有り難う御座います。そこでお話しが有りまして────』
(約束通り最初に貴方を潰すわね)
イリヤはゆっくりと身体を揺らし、宣戦を口にする。
「やっちゃえ、バーサーカー!」
バーサーカーの拳一つで消し飛ぶセーラーゴーレム。セーラー月姫のお面を残して…………
(これがお約束って訳だ! 後は任せた………………)
セーラーゴーレムが消滅し伊丹の意識は自室に戻された。
使い魔からのテレビモニターに映し出される映像を、伊丹とキャスターは茶菓子をポリポリ食べながら視入る。
セイバーとバーサーカーの剣戟は苛烈を極める。
手数で勝るかも知れないセイバーだが、バーサーカーの身のこなしも想像以上に軽い。
身の軽いセイバーはバーサーカーの重たい一撃に弾き跳ばされてしまう。
バーサーカーの攻撃で深手を負い隙のできたセイバーを、次の一太刀から逃れさせ様と彼女を突き飛ばした衛宮士郎だが、彼は胴を斬られてしまう。
殆ど上半身と下半身が分かれてしまい、臓物が四散する。
その光景にイリヤスフィールを含めた全員が凍り付く!
「なんで!?…………もういい。こんなの、つまんない」
イリヤスフィールは遠坂凛に次は殺すと言い残すと、バーサーカーを連れ去って行く。
映像を視ていた伊丹はリアルな臓物の四散光景に
「士郎もセイバーもやられちゃったね、相変わらず士郎って感じだよ」
伊丹の言葉にキャスターも同意する。
「そうですわね。あの性分はゲームの中だけかと思っていましたが、あそこまでするとは考え無しですわね」
しかし伊丹は衛宮士郎とは違った感情から、キャスター相手ならあの様な行動を取るのもい問わないと誓う。
「しかし知っている結果とは云え、なかなかエグい光景だな。しかしアーチャーも深傷を負ったし衛宮士郎も死に体で此処まではセイバールートって奴だな」
何故かむくれ顔のキャスターが答える。
「そうですわね。しかし私のルートが無くて腹立たしいですわ!」
伊丹は以前にこんな話を聞いたとキャスターに説明する。
「一応キャスタールートの構想は有ったらしいんだけど、締め切りとか作品としてプレイ時間が掛かり過ぎるとかの理由で削られたみたいなんだ。でも、キャスタールートは欲しかったなぁ~」
「そうですわ! でも耀司様に私を求められている様で些かお恥ずかしい限りですわね」
「少し考え違ってるぞ、キャスター」
やたらと胸を張り自信ありげなキャスター。
「なにを仰います! キャスタールートは私のルート。耀司様がキャスタールートを望んでいたのなら、私を求めているのも同じ事。どうです、違いますか?」
「…………そうだな、認めるよ。俺はキャスターが好きだ。でも、そんな言い方をされると色欲を求めているみたいなんだけど…………」
顔を朱らめモジモジするキャスター。
「耀司様が求めるのですなら…………」
キャスターの答えに慌てる伊丹。
「待ってくれ! そんな答えは反則だ!俺だって男だ。好みのエルフ耳の美女に言い寄られたら断れないんだぞ!」
「そんな、断るだなんて…………女に此処まで言わせて。いけずなお方…………」
「俺はキャスターが好きだ、大好きだ。だから嫌われたくないんだ。嫌われるのが怖いんだ!」
キャスターが伊丹の令呪を指でなぞる。
「私が耀司様を嫌う事など有り得ませんわ。もしそうでしたら、とっくに令呪を頂いておりますもの」
「令呪が婚約指輪って云った処だな」
「そうですわ! 私と耀司様を繋ぐ物でしてよ。何と言いましても私は許嫁なのですから…………」
これ以上言わすなとばかりにキャスターは伊丹の口に唇を重ねる。
それに応え伊丹も舌を絡ます。
こうして二人の甘い夜は更けて行く。
一方衛宮邸では、陽が昇り目覚める衛宮士郎は身体中が痛むが処置を施されている事に気が付く。
「あらっ、目が覚めた? 衛宮君」
「とっ、遠坂!? 何でここに居るんだよ」
衛宮士郎が寝ていた傍らには遠坂凛が居り心配そうに声を掛けて来た。本来ならここに居る筈の無い彼女に驚くが、遠坂凛は呆れた顔で問う。
「衛宮君、晩の事は覚えていないのかしら?」
彼女の言葉で晩の記憶を呼び戻してみた衛宮士郎はバーサーカーに身体を斬られた事を思い出し吐き気を催すが堪える。
「貴方をここまで運んで処置をしたお礼くらいは言って貰っても良いんじゃないかしら」
あの時に自分の身体から臓物がぶち撒けられたのを見て死を覚悟したのたが、今では身体中が痛い程度に済んでいるのに疑問を持ち遠坂凛に尋ねる。
「遠坂、サンキュな! しかし俺の身体は死んでいても可笑しく無いくらいな筈だったけど、遠坂が魔術で治して繰れたのか?」
「えっ、衛宮君の自己治癒の魔術じゃ無いの!? 確かに即死級の損傷だったけど、みるみる傷口が治っていったのよ!」
衛宮士郎は自分にはそんな魔術は無いと遠坂凛に告げ、彼女は一つの可能性に気が付く。
「セイバーを召喚し彼女と繋がった影響かも知れないわね」
衛宮士郎と遠坂凛、そしてセイバーは協議をし、バーサーカーの驚異を目の当たりにした事も有り当面はバーサーカーを倒す迄は同盟を結ぶ事に落ち着く。
衛宮士郎とバーサーカーを倒す協力関係を結んだ遠坂凛は、彼の魔術力向上の講師として衛宮邸に寝泊まりする事に決める。
日曜日と云うこともあり昼前に目覚める伊丹。キャスターは既に昼食を用意している。
伊丹の目覚めに気付いたキャスター。
「あらっ、お目覚めですの。もうお昼ですわよ耀司様」
「もうそんな時間なんだ? キャスターは早起きだな」
「耀司様のお目覚めが遅いのでしてよ」
「しかしキャスター、お肌プルプルだなぁ?」
「耀司様からたっぷりと魔力を頂きましたからですわ。ええ、正にハイオク満タンですわ!」
キャスターの言葉に顔を朱らめる伊丹。
「そっ、そう言う事は言わないでくれ。恥ずかしい…………」
「何を仰います。マスターの務めにサーヴァントへの魔力供給もありますのよ」
「くっ、そう来たか。確かに一理あるが余り口にしないでくれると有難いなぁ…………」
「今後もマスターの務めを果して下さいましな。耀司様!」
「はいっ! 喜んで!!」
(精も根も尽き果てるかも…………)
昼食を摂りながら、伊丹は今晩の可能性を話す。
「散々言峰を弄って目を付けられたから、恐らく奴は今晩ランサーを遣って来ると思うんだ」
「それは私も同意いたしますわ」
「迎え討つのはアサシンとキャスターで良いんだね?」
「はい、その様に」
「あのねぇ~、俺も少しは参加したいなぁ~ってね!」
「何を仰います!? サーヴァント相手では耀司様は勝てませんのよ!」
伊丹は手にした得物をカチャカチャといじり出す。
「それは判っているさ。ただこいつを使って牽制位なら出来るんじゃないかなぁ~って思うんだけど、どうかな?」
「確かにそれくらいは出来る様に強化はしてありますが、危険が無いとも限りませんのよ」
「判ってるって! 無理や無茶はしないよ。約束する。但しキャスターの危機以外はね!」
「もう~、耀司様ったらぁ!」
伊丹は小銃タイプのエアガンを魔改造し、BB弾にはキャスターの強化魔術が懸けられている。
流石にサーヴァントを倒す事は出来ないが、箪笥の角に小指をぶつけた位の地味な痛みは有るようで、相手の気を逸らせるには充分である。
時計の示す時間に気が付き立ち上がりコートを着だす伊丹。
「そろそろ約束の時間だから迎えに行って来るよ」
伊丹はそうキャスターに言うとタクシーを呼び、二人で石段下でタクシーを待つ。
「耀司様の念願が叶い、いよいよお会い出来ますのね」
「そうだな、キャスターも期待して待っていてくれ」
程無くしてタクシーがやって来て、乗り込む伊丹。
「じゅあ、行ってくるよ」
「行ってらっしゃいませ」
キャスターに見送られ、伊丹を乗せたタクシーは新都へと向かう。
少し話が遡るが、午前の冬木に1人の男が降り立っていた。
男は感慨深げに新都の街並みをキョロキョロと見回している。
最後まで読んで頂き有り難うございます。
結果、セーラーゴーレムは高見の見物となりましたが、イリヤスフィールと何を話したのでしょう。
それが判るのは、まだまだ先のお話。
ではでは…………
虚空屍