Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり   作:虚空屍

16 / 48
アクセスして頂き有り難うございます。

話は2月3日(日)の夜になります。


16 ならば力づくで押し通るが良い!

 使い魔からの報告で、衛宮士郎と遠坂凛がバーサーカーを倒す迄は同盟を結んだ事を伊丹とキャスターは知る。

 

「あちらは流れ通りだね」

 

「そうですわね」

 

「しかし、いつ迄流れ通りで居てくれるかだな」

 

 伊丹とキャスターは取り敢えずあちらが物語の流れる通りに動いている事に安堵する。

 

 

 

 

 

 今夜の戦闘服は此だと言わんばかりに伊丹は前の職場の緑の斑服を着てサバイバルハットを被りキャスターに見せる。

 

「どうだい、この迷彩服。キャスター?」

 

「その《めいさいふく》が耀司様の前の職場でのお姿なのですね?」

 

「ああ、これもその一つでね。俺は敵対する相手を倒す為の訓練を日々積んでいたんだよ」

 

「へっ、そうですの? 想像も出来ませんわね」

 

「えっ、それに俺の身体は弛んでないだろ?」

 

 キャスターは伊丹との行為を思い出し顔を朱らめながら頷く。

 

「そっ、そうでしたわね、耀司様の身体は絞まっていますわね…………」

 

 しかし伊丹は、何故キャスターが顔を朱らめたのか知らない。

 

「そうだろ、これも日頃の訓練の賜物って奴かな」

 

 

 

 

 

 深夜、柳洞寺の周囲を一通り回るランサー。しかし山門からしかペナルティー無しで柳洞寺に入れない事を理解する。

 

「ちっ、此処からしか入れねえって訳か。しかしうちのマスターも散々いたぶられた腹いせにキャスターのマスターを討ち取れとはな」

 

 石段を駆け上がるランサーの前に山門のアサシンが立ちはだかる。

 

 ぶつぶつ呟きながら刀を振り回すアサシン。

 

「斬るべしっ、斬るべしっ、斬るべしぃぃ~~! 無敵の斑鬼ぃ~!」

 

「おい侍! 此処を通さして貰うぜ」

 

 空斬りを止められ憮然とした表情で、声を掛けたランサーに半身で構えるアサシン。

 

「ほう~、拙者が心地良く剣を振るっている処を、随分と無粋な真似を」

 

「門番、もしや邪魔立てする気か!?」

 

「拙者はアサシンのサーヴァント。マスターの命により此処を通す訳には参らぬ。立ち去られよ」

 

 自分の職務に忠実なアサシンに関係無いとばかりに突っ掛かるランサー。

 

「くっ、ざけた事抜かしてんじゃねえ!」

 

「ならば力づくで押し通るが良い!」

 

 アサシンの言葉が言い終わるか終わらないうちにランサーの槍が幾度も繰り出される。

 

 それを峰で受け流すアサシン。

 

「貴様、本気でやり合わないつもりか!?」

 

「どこぞの間者が潜んで居る様だしな、それに刃零れがあっては後々面倒でな」

 

 ランサーは突きと払いを交ぜながら仕掛けるが、アサシンは相変わらず峰で流す。

 

「へっ、貴様、なかなかやるなぁ…………でも顔が怖すぎ過ぎるぞ!」

 

「そう言うお主こそなかなかの槍捌き、お見事で御座る。この顔は生まれ付いての物」

 

 

 

 

 

 キャスターは樹木の隙間から二人の戦いを監視しているライダーを見付ける。

 

 伊丹の後ろで霊体化しているキャスターは念話で彼に話し掛ける。

 

(耀司様、見付けましたわ! 石段一時の方向の樹にサーヴァントの気配が有りますわ)

 

(了解した)

 

 山門の屋根の陰に身を潜めていた伊丹は、二人の戦いに気を取られ過ぎたライダーをキャスターの指示通りスコープに捉えツータップでエアガンを撃ち込む。

 

(あららっ、何時もの癖でツータップしてた。意味無ぇ~)

 

 伊丹はエアガンのつまみを単発から連射に切り替える。

 

 太股に強化BB弾が当たり顔が歪むライダーが念話で慎二に話す。

 

(あ痛っ!地味に痛いですね。見付かって仕舞いましたか? 私の太股に当てるとは、少々油断しました。此処は一先ず退きます、慎二!)

 

 ライダーが居なくなるのを確認したアサシンとランサー。

 

「女狐も居なくなり申したな。しからば拙者も本気を出すと致すか!」

 

「ああ、そう頼むぜ!」

 

 アサシンの頭上の有利さもあるが、数合の剣戟にどちらも退かない。無双一刀流の加賀藩剣術指南役にまでなったアサシンの剣術も隙がない。

 

(これじゃ埒が空かねえなぁ。一丁宝具を使うか!)

 

 ランサーは言峰綺礼の許可を得て宝具開放の構えを執りだす!

 

 それに対し刀を鞘に納め、懐に右手を入れだすアサシン!

 

 そんなアサシンの行動に不信感を抱いたランサーが言い放つ。

 

「ほ~う、得物を納めるとは俺を舐めているのか、それとも戦いを諦めたのか?」

 

 ランサーが言い終えたと同時にお互いが宝具の真名を開放し出す。

 

 伊丹はランサーに気が付かれない様に身体を回転させ屋根の端に位置し、アサシンに後ろ弾をしない様に射線を確保すると、ランサーを牽制する為に軸足の太股辺りにエアガンを連射する。

 

「その心、貰い受ける! 玉───之丞!!」

 

 ランサーの死角から放った強化BB弾が彼をを捉える。その痛さに慌て、真名開放が遅れるランサー。

 

「痛っ、痛てて! ちっ!! どっから当ててやがる!? その心臓、貰い受ける! ゲイ───…………ん?」

 

 懐から白い塊をそっと掴み出し弧を描く様に放るアサシン。

 

 白いもふもふな塊の黒く丸々と開いた瞳孔がランサーを見詰め離さない。ランサーもその瞳に心を奪われ一瞬動きを止め得物を納める。

 

「あっ! てめー、ふざけるな!」

 

 慌てたランサーは白いもふもふの塊を優しく抱き止め頭を撫で出す。

 

「おいっ、アサシン! 俺の得物で可愛いこいつに怪我でもさせちまったら、どうするつもりだ!?」

 

 突然ランサーの背後にキャスターが実体化するが、抱えている猫をどうにも出来ないランサー。

 

「くっ、キャスター!?」

 

「隙有りね! ルールブレイカー!」

 

 ランサーにルールブレイカーをチクりと刺す。

 

「何しやがる!?」

 

「貴方に隙が有ったから私が攻撃したまでよ」

 

「ちっ、テメエ等…………汚え真似しやがって…………」

 

 ランサーのパスが言峰から離れた瞬間である。

 

 

 

 

 

 この時言峰綺礼はランサーの令呪が消えた事に驚きを露にした。

 

「ランサーがマスター替えだと!? どうしたというのだ?」

 

 マスターはサーヴァントを通じて目にした物を観る事ができるが、視界外からのキャスターの攻撃で何が起こったのか理解が出来なかった。

 

 言峰綺礼はポツリと呟く。

 

「対魔力を持つ三騎の内の一騎であるランサーをキャスターが倒すとは。キャスターを上手く使うマスター…………侮れんと云う事か…………」

 

 

 

 

 

 キャスターの手に新たに令呪が浮かび上がりランサーとのパスも繋がる。

 

「どうかしら、私のサーヴァントさん?」

 

「俺のマスターから令呪を奪ったって訳か。はぁ~全くツイてないぜ。判ったよ、これからは俺のマスターはキャスターだな」

 

「そう云う事よ」

 

 すると伊丹が山門の屋根から降りてくる。

 

 エアガンを持った迷彩服姿の頼り無げな男を見るランサー。

 

「誰だこいつ?」

 

「こいつとか失礼な事を言わないでくれるかしら。此方は耀司様よ、伊丹耀司様。私のマスターよ」

 

 キャスターの答えにひきつり顔のランサー。

 

「なっ、こんなんがマスターかよ!?…………あっ!てめえかっ!? 礼拝堂にくせえ糞をブチ撒けたのは! あれは俺が掃除させられたんだぞ!!」

 

 頭をぼりぼり掻き謝りながら挨拶をする伊丹。

 

「君が掃除をしたのかい? 可愛相に。言峰も酷い事をするね~。いやね、彼にやらせ様かと思ったんだけど申し訳無かったね。まあ、そう云う事で宜しく、ランサー」

 

「まっ、宜しく頼むわ、耀司! それにしても、あんたの攻撃は地味に痛いから勘弁な…………」

 

「ちょっとお待ちなさい、ランサー! 今、聞き捨てならない事を言ったわね!」

 

 ランサーにはキャスターが何に怒っているのか解らない。

 

「はぁ?」

 

「寄りによって耀司様に対して《耀司》だなんて! 耀司様を名前で呼べるのは私 だ け な の! しかも呼び捨てにするなんて許しませんわ!! 伊丹様とお呼びなさい!」

 

「何もそこまでしなくても…………なら伊丹でいいからそう呼んでくれ」

 

 流石に伊丹もそれはやり過ぎと思いランサーに呼び捨てでも良いと言う。

 

「キャスターのマスターがそう言うならそう呼ばせて貰うぜ。宜しくな!」

 

「それに私は貴方のマスターなのですよ。キャスターではなくマスターとお呼びなさい」

 

「はいよ~、マスター。いちいち面倒臭えなぁ~」

 

 いちいち面倒臭いと不貞腐れるランサーに伊丹は霊体化して付いていて来るよう命じる。

 

 周囲に人が居ない事を確認しノックをした後、部屋に入るとランサーはいきなり実体化し驚きの声を出す。

 

「バゼット!?」

 

「ラッ、ランサー!? 言峰の指示で私に止めを刺しに来たのですか!?」

 

「違う、違うんだバゼット! 生きていたなんて…………」

 

 伊丹はバゼットの勘違いを直し、山門前の戦いの経緯を話す。

 

「いやいや、勘違いをしないで下さい。ランサーは貴女を殺しに来たのでは無く、キャスターか私を倒しに来たのでしょうが結果、キャスターのサーヴァントになったのです。ですので安心して下さい」

 

 申し訳無さそうな顔をしてランサーはバゼットに謝る。

 

「済まなかった、あの時は守ってやれなくて…………」

 

「貴方に咎はありません。あるのは言峰綺礼です。しかし何故キャスターのサーヴァントになったのですか?」

 

 即座に口を挟む伊丹。

 

「それはキャスターの力ですよ…………」

 

「で、伊丹、俺はどうなるんだ?」

 

「ランサーはキャスターのサーヴァントのままで居て下さい。バゼットさんには他のサーヴァントが居て、流石に今の身体の状態では二体のサーヴァントの使役は難しいと思いますよ」

 

 すると姿を現すアヴェンジャー。

 

「そう云う事だ、ランサー。俺はこのねえちゃんのサーヴァントのアヴェンジャーだ」

 

「てか、アヴェンジャーってなんだ!? そんなクラス聞いた事ねえぞ! それに伊丹とバゼットは協力してるのか?」

 

「そうだ。ただバゼットさんが本調子では無いから、回復したら活躍して貰うしアヴェンジャーを借りる事も有り得るけどね」

 

 ランサーはカッカッカッと笑う。

 

「バゼットと伊丹が協力関係なら安心した。俺も存分に戦えるって訳だな」

 

 キャスターと顔を見合わせ困り顔の伊丹。

 

「まあ、戦えるって云えば戦えるけど、俺とキャスターの戦い方は他のマスターと少し違うかも…………」

 

 要領の得ない答えに不満顔をするランサー。

 

「どう云う事だよ?」

 

「ランサーがセイバーのマスターを庭で追い詰めた時のキャスターの攻撃をどう見る?」

 

 ランサーは衛宮士郎を土蔵まで追い詰めた時のキャスターの攻撃の事を思い出す。

 

「あ~、あの邪魔しやがった時か…………やっぱりそう云う事か!!」

 

「気が付いた!?」

 

「ああ、俺の攻撃を坊主が土蔵に転がり込む様に陽動していたよな。キャスターが何か変な攻撃をして来るとは思ったんだが、そう言う訳かい!」

 

 大正解とばかりに伊丹は言い放つ。

 

「うん、そう云う事!」

 

 

 

 

 キャスターのサーヴァントとなったランサーに伊丹とキャスターの基本方針を伝える。そこで伊丹はランサーに聖杯に託す願いを聞く。

 

「俺はこの聖杯戦争で強ぇ奴と戦えりゃぁそれで満足だ。だから聖杯に叶えて貰う願いはねえぞ!」

 




最後まで読んで頂き有り難うございます。

遣わしたランサーが伊丹の手に落ちてしまいました。
言峰綺礼の次なる対応は?
そして駒が増えた伊丹陣営の動きは?

これらはお楽しみにしていて下さい。


ではでは…………


虚空屍
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。