Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり   作:虚空屍

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アクセスして頂き有り難うございます。

話は2月6日(水)となります。


20 エミヤシロ?

 間桐桜の決意を知った翌日、伊丹は朝から考え込んでいる。

 

「なあキャスター、何だか物語には無い展開になっちまったよなぁ?」

 

「そうですわね。アサシンの件は兎も角、ランサーがこちらに着くなどとは有りませんでした。それに間桐のお嬢さんもですわね」

 

 伊丹はイベント発生を書いたタイムテーブルを見る。

 

「そうだよ。こちらが衛宮君に危害を加えないから、間桐さんは中立的立場に居るんだね。それと今後物語で発生するイベントは、多少前後するかも知れないが起きると見て良いと思うんだ」

 

「同感ですわ。今一度イベントの発生を確認しないといけませんわね」

 

「ああ、最悪のアレだけは出したく無いからな…………」

 

 

 

 

 

 伊丹は学校に出勤した後に校門脇で登校する生徒達を迎えていると、それに気付いた間桐桜が挨拶をして話し掛けてくる。

 

「おはようございます、伊丹先生! やはり兄は欠席です!」

 

「やっぱ、ライダーのパンチの所為?」

 

「はいっ! 朝もベッドで鳩尾を押さえて唸っていました」

 

 するとそこに衛宮士郎と遠坂凛が一緒に登校して来て、伊丹と話をしている間桐桜と鉢合わせをする。

 

「おはようございます、伊丹先生! あっ、おはよう桜!」

 

「やあ、おはよう! 君達」

 

「おはようございます、あらっ、おはよう間桐さん?」

 

 間桐桜の表情から明るさが無くなり俯き応える。

 

「おっ、おはようございます。先輩…………」

 

(なんで先輩と遠坂先輩がこれ見よがしに一緒に来るの? 先輩…………何故ですか? いくら一時的に部屋を貸しているとは云えあんまりです。それに遠坂先輩も────)

 

「桜、今日はうちに来るんだろ?」

 

「はい、そのつもりです…………」

 

 ここで話す話ではないと、遠坂凛は慌てて衛宮士郎の会話を止めにかかった。

 

「ちょっと衛宮君! ここで話す事じゃ無いでしょ!!」

 

「そうだな、すまん遠坂、桜。さあて今日の晩飯は何にするかなぁっと?」

 

「先に教室に行きますので失礼します。先生、先輩…………」

 

 居たたまれなくなった間桐桜は早々に立ち去った。

 

 立ち去る間桐桜を見る伊丹は些かの不安を覚える。

 

 

 

 

 

 昼休みになり伊丹は売店で昼食のパンなどを買う為に並んでいると、間桐桜が声を掛けてくる。

 

「伊丹先生、まだお昼を買っていないのでしたら私が作ったお弁当を食べて頂けませんか?」

 

 これは伊丹も流石に困った。

 

「もしかして多く作り過ぎちゃったとかかな?」

 

「えっ、…………そっ、そうなんです」

 

 伊丹は、衛宮士郎と遠坂凛の二人が屋上に上がる処を観ている間桐桜を見てしまっていた。

 この弁当は衛宮士郎の為に作ったが、あの二人に割って入れない間桐桜が仕方無く伊丹に声を掛けたのだ。

 

 間桐桜の勧めもあり二人で弓道場で弁当を広げる。

 

「間桐さん、先生が食べても良いのかい?」

 

「…………先生には色々ご迷惑をお掛けしていますので…………どうぞ」

 

 伊丹は暫し考え込んだ後、間桐桜を諭す。

 

「桜君、自分自身に嘘を吐くのは先生感心しないなぁ~。君は自分の気持ちに正直で居なさい。本当はこう云う事に手を貸してはいけないんだけど…………」

 

 伊丹は間桐桜を連れ屋上に出られる踊り場に来ると、彼女を残し一人屋上に出る。程無くして伊丹は遠坂凛を連れて降りて行くが、降り際に間桐桜にOKサインを出し屋上に出る様に促す。

 

(遠坂さんゴメン! 後は君の出番だよ、間桐さん)

 

 遠坂凛はいきなり伊丹が現れ、ちょっと来てと言われ連れ出され困惑し、更には柳洞一成の居る生徒会室に立ち寄らされ様としている。

 

「ここって!? 伊丹先生! 私が生徒会室に入る用件とは何でしょうか?」

 

「ん? 用件なんてないよ。ただ来てって言ったら遠坂さんが来てくれただけなんだけど。用があるなんて言ったっけ?」

 

 この人は何を言っているんだと、困惑する遠坂凛の入室を目にした驚き顔の柳洞一成!

 

「いっ、伊丹先生! この様な女怪を連れて来るとは!?」

 

「ん? 駄目なのかい、柳洞君。まあ良いじゃないか」

 

 伊丹はドカリと椅子に腰を落とし、呆然と立ち続ける二人に席を勧める。

 

「何をしてるの? 二人とも取り敢えずえず座れば?」

 

 座りだした柳洞一成が口を開く。

 

「処で伊丹先生、こちらに何かご用がお有りでしたか?」

 

「いや、お茶をご馳走して貰おうかと思ってね。駄目だったかい?」

 

 やはり訳の解らない事を言い出す伊丹に、遠坂凛は語気を強めるが努めて冷静に質問をする。

 

「伊丹先生、ちょっと済みません。その為だけに何で私もここに連れて来られなければならないのですか?」

 

「誰かが柳洞君の淹れたお茶が美味しいって言っていたのを聞いたもんでね。遠坂さんは美味しいお茶は嫌いかい?」

 

「嫌いではありませんが…………」

 

 こいつには何を言っても答えが返って来ないと悟った彼女は、無言で柳洞一成が淹れたお茶を口にする。

 

 伊丹が退室した後、気不味い二人であるが先日の伊丹が間桐桜を送って来た件も有り遠坂凛が呟く。

 

「伊丹先生ってどこに住んでいるんだろう…………」

 

 この一言を聞いた柳洞一成はポツリと漏らす。

 

「ふむ、伊丹先生はうちで宿を取られているぞ」

 

 この一言に驚く遠坂凛。

 

「えっ? 柳洞君の所ってあの柳洞寺よね!?」

 

「何を当たり前の事を言っておるのだ!」

 

 両手を机に叩き付ける様にして身を乗り出す遠坂凛。

 

「いつ頃から下宿してるのっ!?」

 

「そうだな、先月の下旬からだが、その二~三日後に許嫁さんが来日されて同居し出してな。又この方が美しい異国の方でな。

 ああっ! 遠坂! いま話した事は他言無用に願いたい。先生から止められていたのだった…………」

 

 

 

 

 

 この柳洞一成と遠坂凛のやり取りを使い魔を通して見ていたキャスターは、早速伊丹に念話で注意を促す。

 

(耀司様、遠坂凛に住まいがバレてしまいましたわ! やはり私達を探る質問をした相手を、口止めなどをする暗示魔術でも懸けておけば良かったかしら?)

 

(お~い、キャスター。物騒な事は止めてくれよ。しかし一成が漏らしたか…………注意をしておくよ。知らせてくれて有り難う、キャスター)

 

 

 

 

 

 放課後、衛宮士郎は下校の途中にマウント深山商店街で晩飯の食材を見繕っていると、バーサーカーのマスターであるイリヤスフィールを見付ける。

 

 見た処バーサーカーも居ない様子に胸を撫で下ろすとイリヤスフィールも衛宮士郎に気が付き近寄って来る。

 

「お兄ちゃんは何をしてるの?」

 

 あまりに普通に問い掛けてくるイリヤスフィールに戸惑う衛宮士郎。

 

「ばっ、晩飯の食材の買い出しだけど、えっとイリヤスフィール?」

 

 衛宮士郎はイリヤスフィールの長い名前を確認しつつ発音すると、彼女は愛称で呼ぶのを許す、

 

「イリヤでいいわ。お兄ちゃんは?」

 

「俺は衛宮士郎」

 

「エミヤシロ?」

 

 《笑み社》みたいな発音で聞き直すイリヤスフィールに衛宮士郎は言い易そうな下の名前を言う。

 

「シロウでいいよ」

 

「じゃあシロウって呼ぶね!」

 

 衛宮士郎は、独り商店街にいるイリヤスフィールに疑問を持ち問い掛ける。

 

「イリヤはバーサーカーも連れずに、何でここに居るんだ?」

 

「戦いは夜にするものでしょ。だからバーサーカーは屋敷に寝かせて居るわ。ここに来たのもセラが五月蝿いから黙って屋敷を出て来たの。何か面白い物でもあるかなぁ」

 

 ここで話すイリヤスフィールは、極普通の女の子であると感じる衛宮士郎。

 

 商店街での立ち話も何だからと、二人で近くの小さな公園のベンチに腰を降ろす。

 

 二人は他愛も無い話をしながら時は流れる。

 

 イリヤスフィールは聖杯を勝ち取る以外にも、衛宮切嗣と衛宮士郎を殺しに来たと言うが、衛宮士郎は既に衛宮切嗣が亡くなっている事を告げると、彼女は俯き哀しげにお悔やみの言葉を言う。

 

(しかし何故イリヤは爺さんと俺を恨んでいるんだ?)

 

 陽も落ち始め各々の屋敷へと戻るイリヤスフィールと衛宮士郎は、また公園で会う約束をして別れた。

 

 

 

 

 

 伊丹が学園から帰宅し夜の遅い時間にそれは来た。

 

「おっさん! ヤバい事が起きそうだ!!」

 

 伊丹はただならぬアヴェンジャーの様子に戸惑う。

 

「慌ててどうしたんだ!?」

 

「聖杯の中の奴が動き出した! もう一つのアヴェンジャーだ!!」

 

「おいおい嘘だろ! お前が居るのにか!?」

 

 伊丹はバゼットに召喚されたアヴェンジャーが居たので、もう一つのアヴェンジャーは存在しないと思っていた。

 

 それは間桐桜の身体に埋め込まれた、第四次聖杯戦争の聖杯の欠片から呼び出されたアヴェンジャー。

 

「俺の存在は大聖杯を通してバゼットの召喚に応じた物だ。だが奴は違う。どこぞの聖杯と大聖杯の穢れた中身が繋がって現れたやがった!」

 

 伊丹とキャスターは一番最悪のイベントとルートに足を踏み入れた事を悟った。

 

 伊丹はアサシンとランサーに警戒を密にして、桜アヴェンジャーを発見後はキャスターに報告後に霊体化するか退避する様に指示を出す。

 

 伊丹はキャスターが作ったタイムテーブルを確認する。

 

「臓硯を間桐桜から摘出したからこのルートに入っちまったのかなぁ」

 

「恐らくはその通りだと…………」

 

「でもさ、士郎が凛やセイバーと行動を共にしているのを桜に見せ付け過ぎなんだよ。朴念仁だよな」

 

 この伊丹の発言に意地悪く応えるキャスター。

 

「アニメにはその様な主人公が余多にいますわね。耀司様もそのお一人なのでは?」

 

「なっ、何を言うんだ! 俺はキャスター一筋だぞ!!」

 

「まぁ、照れますわ、耀司様!」

 

 この展開の流れは知っている伊丹だが、自分の居る現実が物語のそれとは違って来ている事に困惑する。しかし現実と物語の共通項は、間桐桜と衛宮士郎のお互いの気持ちなのである。

 

(現状では士郎の桜に対する気持ちが解らない。何かそれを知る手は有るのか? それに桜のアレも手に負えないのか…………)

 

「しかし出てきたアレが引っ込む訳ないよね?」

 

「ええ、間桐のお嬢さんが、坊や相手に歪んだ愛を持ち始めたら手に負えないかと…………」

 

 

 

 

 

 今夜体調不良で寝入った間桐桜は無意識に黒い影を新都に放ち、その市民を己が影に取り込んでいくのである。

 

 

 




最後まで読んで頂き有り難うございます。

私は薄幸の女ですオーラ出しまくりの桜でしたが、伊丹は彼女の想いを士郎に渡す事が出来るのか?

黒い影はどうなるの?


ではでは…………


虚空屍
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