Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり   作:虚空屍

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アクセスして頂き有り難うございます。

まだまだ2月7日(木)の、時間的には未明の話です。ちょっと引っ張り過ぎですかね。


23 おとうさ~ん! だぁ~い好き!

 暫し考え込んだキャスターは間桐桜と二人きりで話しがしたいと伊丹に言い、彼もそれを了承し二人は別室で話し合いを始める。

 

 まず口火を切ったのはキャスターである。

 

「桜さん、正直言って耀司様や出来損ないの衛宮士郎についてはどう想っているのかしら?」

 

 キャスターからの直球とも云える質問に間桐桜は狼狽するも正直に自分の胸の内を明かす。

 

「伊丹先生とは日が浅いですが、常日頃から気に懸けて下さり、時にはその身を挺して私を守ってくれもして頂き、同世代の男子には無い頼もしさを感じました。

 衛宮先輩とのお付きあいは一年半になりますが、元々はお爺様から衛宮邸の内偵の為に送り込まれました。中学時代から気になってはいましたが、衛宮先輩の家に送り込まれてから、先輩の優しさや魔術にひた向きに取り組む姿を拝見し憧れを抱く様になったんです」

 

 この間桐桜の話しにキャスターは若干の違和感を感じた。

 

「衛宮士郎は一年半も通い詰めたそんな貴女に対しての態度はどうだったねかしら?」

 

「私が言うのも何ですが、恋愛対象と云う接し方ではありません。むしろ妹の様な感じでした」

 

「それで今の貴女はあの坊やに対する想いはどうなのかしら?」

 

「正直判らなくなりました。姉さんとつるんで伊丹先生に酷い事をしたり、しかもセイバーさんも一緒になって。卑怯です」

 

 キャスターは間桐桜が薄々は感じてはいるであろう事を話す。

 

「もしかして桜さんは気が付いて居るのではなくて? 遠坂凛や衛宮士郎がマスターとしてサーヴァントを使い聖杯戦争に参加している事を」

 

 間桐桜自身が目を背けてきた事を言われ暫し沈黙するが、目を背けてはいられない事実に向き合う事を決める。

 

「はい。薄々は感じてはいましたが深入りしない様に距離を置いてはいました」

 

 キャスターは間桐桜の口からセイバーの名前が出たのでその話をし出す。

 

「今、セイバーの名前が出たけど、坊やからはイギリスから来たとか言われたのではなくて?」

 

 その事をキャスターが知っている事に驚く間桐桜。

 

「はい。お父様の切嗣さんを頼られたとかで暫く預かると言っていました」

 

 するとキャスターは間桐桜の答えを切り捨てるかの様に言い放つ。

 

「彼女が坊やのサーヴァントなのよ」

 

 このキャスターの一言に間桐桜は驚くも納得させられた部分もあった。

 

「確かにセイバーさんは先輩から離れず、基本的に行動は共にしていました。納得しました」

 

 キャスターは話題を伊丹に変えだす。

 

「それでね桜さん、耀司様の事なのだけど…………私は耀司様に召喚されたサーヴァント。ここに泊めさせる為に取り敢えず許嫁と云う事にして零観さんに紹介して貰ったのだけど、今では耀司様も本当の許嫁と言って下さっているのね。私も同じ想いなの」

 

 間桐桜は俯きながら過去の話をし出す。

 

「私が間桐の家に養女として迎えられて直ぐに間桐の魔術に染められました。それは苦痛が苦痛により苦痛とすら感じなくなる程の苦痛でした。でもお爺様の次男の雁夜さん…………雁夜おじさんは私を間桐から救おうとして下さり、それを条件にして第四次聖杯戦争のマスターとして参加して亡くなられました」

 

 キャスターは知っていたとは云え、間桐桜の過去を直に聞き同情を禁じ得なかった。

 

「私はそんな優しく命を懸けてまで私を救おうとした雁夜おじさんの影を伊丹先生に被せてしまっていたのかもしれません」

 

 キャスターは間桐桜の心に少し触れた気がした。もしかしたら彼女は父親の愛を求めているのではないかと。

 

 キャスターは暫し考え込んだ後、間桐桜に話し出す。

 

「桜さん、私は耀司様の愛を誰にも渡すつもりは無いのよ。でも貴女になら少しだけ分けて差し上げますわ」

 

 間桐桜はキャスターの意図している事が判らずに居ると、キャスターは話を繋ぐ。

 

「恐らく桜さんは父親の愛情を求めているのだと私は思うの。それを耀司様に求めているのならば、私は少しは分けてあげられると思ったのよ」

 

 暗く俯いていた間桐桜が、顔をあげながら明るさを取り戻していく。

 

「本当にいいんですか!?」

 

 満面の笑みで問い掛ける間桐桜に、キャスターは釘を刺す。

 

「ええ、ただし父性愛だけよ」

 

 キャスターの答えに間桐桜はポロポロと涙を流し始める。

 

「お父さんが出来た、お父さんが出来た! お母さんはキャスターさん…………」

 

 間桐桜が嗚咽しながら言った《お母さん》の(くだり)にキャスターは思わず顔をしかめる。

 

(私は桜さんの様な歳の子供が居る年格好ではなくてよ!)

 

「でも桜さん、耀司様がそれに同意なさるかどうか問題だわ」

 

 キャスターの杞憂に間桐桜は目を輝かせながら言い返す。

 

「大丈夫です。必ず認めさせます!」

 

(キャスターさんには申し訳有りませんが、女の武器を使わせて貰います)

 

 更に二人はこの後、様々な事についてお互い正直に話し合いを続けた。

 

 

 

 

 

 話し合いが済み、二人が笑顔で居間に戻ると伊丹やライダー、ランサーはその変わり様に驚く。

 

 伊丹が口を開こうとした瞬間、間桐桜は伊丹に突撃し、抱き付いて柔らかい胸をグリグリ押し付けてくる。余りの勢いで伊丹と間桐桜が倒れ込むと彼女は伊丹に呼び掛ける。

 

「おとうさ~ん! だぁ~い好き!」

 

 更には伊丹の頬に彼女は頬をすり合わせる。

 

「おとうさんの髭がチクチクしてイタ~い!」

 

 流石のキャスターも間桐桜がここまでやるとは思わなかった。

 

(くっ、策士だわ! 桜さん、恐ろしい子!)

 

 驚いたのは伊丹と他、サーヴァントの二騎。ライダーは口をパクパクさせ、ランサーはやれやれと言いたげな表情を浮かべている。

 

「キャ、キャスター! 説明してくれ…………」

 

 どうにか伊丹はキャスターに問い掛けるが、キャスターは目を逸らしながら答える。

 

「それは後程…………」

 

 倒れた伊丹に抱きついたまま離れない間桐桜は、相変わらず『お父さん』と呼んでいる。

 

 落ち着いた伊丹が、間桐桜の顔を覗き込みながら話し出す。

 

「桜君、そろそろ起きあが…………」

 

 伊丹が覗き込んだ彼女の瞳からは涙が溢れ零れ、伊丹の胸を濡らしている。

 

「お父さん────」

 

 泣いている間桐桜を見て伊丹は優しく頭を撫で、彼女の身体を支えながらゆっくりと起き上がり、落ち着くのを待つ。

 

 

 

 

 

 キャスターから二人で話し合った内容を聞き、頭をバリバリと掻く伊丹。

 

「で、俺が親父で桜君が娘か? えっ、キャスター?」

 

 勝手に決められた話しに対して、伊丹の僅かな苛立ちを感じるキャスター。

 

「む、娘ではありません。なにせ養子縁組の手続きをしていませんから。只、父性愛を求めているに過ぎません。彼女の身体の事もありますし、耀司様も彼女の想いに応えて頂けたらと…………」

 

 困惑する伊丹に間桐桜が瞳を潤ませながら追い討ちを掛ける。

 

「先生の事情も考えず、私一人が先走ってしまいました。こんな話はご迷惑ですよね…………」

 

 ポロポロと涙を溢す間桐桜に、伊丹は完全に降伏した。涙は女の武器である事を存分に思い知らされる。

 

「桜君、悪かった。迷惑とかではないんだよ。君の想いに僕が充分に応えられるか不安なんだ」

 

 涙を拭き明るく微笑む間桐桜。

 

「もう既に充分に応えて下さっています。もう先生に対する想い抜きでは、私が私では居られません」

 

 間桐桜の重たい想いに一応の理解を示す伊丹は、彼女に幾つかの質問と確認をし出す。

 

「桜君は俺をお父さんと呼んで、父と娘みたいな関係を築きたいんだよね? それなら学校以外ならそう呼んでくれても構わない」

 

 これには間桐桜も喜びを隠せなかった。

 

「本当ですか!? 先生の事を《お父様》と呼ばさせて頂きます。ですから私の事も《桜》と呼んで下さい!」

 

 そこに割って入るキャスター。

 

「桜さん、私の事は何と呼んで下さるのかしらね? 《お母様》は勘弁してもらいたいものね」

 

 キャスターは間桐桜に《お母様》と云う地雷を示しておく。

 

「キャスターさんは、《お姉様》です。お姉様も私を桜と呼んで下さい」

 

 この間桐桜の気配りに感心したキャスターは、嬉しさの余り彼女を抱き締める。

 

「嗚呼、私には解っていたわ! ええ、解っていましたとも!! 貴女は出来る子だわ! 桜!!」

 

 そこに面白半分に割り込んで来たランサーとライダー。

 

「なら嬢ちゃん、俺は何だ?」

 

 暫し考え込む間桐桜がランサーに言う。

 

「ランサーさんは、お姉様をお守りして居るんですよね?…………番犬さん」

 

 この犬発言に朱槍を出し青筋を立てるランサー。

 

「貴っ様~! 俺を犬と言うか!? 朱槍を喰らう覚悟があっ────」

 

「ランサー、消えなさい」

 

 空かさずキャスターが言い放つ。

 

「ての────」

 

 強制的に霊体化させられ退場するランサー。ライダーも興味津々で聞いてくる

 

「サクラ、私は何と呼んで貰えるのですか? やはりお姉様ですか?」

 

「えっ、ライダーはライダーなんだけど…………」

 

(先生はお父様で、キャスターさんは許嫁でお母様なんだけどお姉様と呼ぶし、かと云ってお姉様は二人も要らないから…………)

 

 またまた考え込んだ彼女はライダーに言う。

 

「叔母様!」

 

 間桐桜の一言にライダーはバイザーからダラダラと涙を流す。

 

「サクラ、私は悲しいです…………」

 

 ライダーはやさぐれて自らの意思で霊体化して消えていく。

 

 ここに来てはたと気が付くキャスター。

 

「そうだわ桜、アサシンのサーヴァントを紹介するわね」

 

 間桐桜は山門で気配を感じたサーヴァントの事であると察する。

 

「宜しくお願い致します。お姉様」

 

 伊丹とキャスター、そして桜が山門に来ると、アサシンが玉之丞を抱いて姿を現す。相変わらの濃くて怖い顔で間桐桜を睨むアサシン。

 

「桜、アサシンと玉ちゃんよ」

 

 キャスターがアサシンを紹介し出す。

 

 桜はアサシンから玉之丞を渡され、()(かか)え頭を撫でながら恐る恐る自己紹介をする。

 

「はっ、初めまして、アサシンさん。ライダーのマスターで今日から伊丹家の娘になりました桜です。」

 

 桜の紹介にギロりと睨む様な顔つきで応えるアサシン。しかし自身の真名を明かす事を控える。

 

「そうで御座るか。拙者、元加賀藩剣術指南役、無双一刀流免許皆伝、斑鬼と申す。」

 

 ドスの効いた声に怯えた桜であったが、猫を()でるアサシンに些かの可愛さを見出だす。

 

「玉ちゃん可愛いですね。しかもアサシンさんに良くなついているし」

 

 玉之丞を話題にされ思わず顔が綻ぶアサシン。

 

「そうであろう、そうであろう。玉之丞は江戸で一、二を争う程の可愛さなのだ。あまりの可愛さに、どこぞの大名の姫様に拐われたりもしたな」

 

 そんなアサシンの思い出話を受け流し、空かさず桜は笑顔で聞き返す

 

「でも浪人、無職なんですよね?」

 

「うっ…………」

 

 桜の一言に凍りつくアサシン。さらに追い打ちを掛ける。

 

「奥様やお子さんは居らしたのですか? そんなんでは離縁されてしまいますわね」

 

 何も言い返せないアサシンは暫しの沈黙の後、居たたまれなくなり霊体化する。

 

(あの小娘、姑殿と同じ事を言いよる…………)

 

 

 

 そしてここに疑似家族《伊丹家》が成立する。居間に戻った三人は、今後の身の振り方について語りだす。

 

 




最後まで読んで頂き有り難うございます。

大胆な桜ですが…………でも桜です。今後も桜です。


ではでは…………


虚空屍
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