イリヤの過ごし方が纏まらず投稿が遅くなってしまいました。
もう少し違う話が書けたらと思っています。
休戦日の日曜日の朝、ライダーはイリヤスフィールからベンツを借りる。
「私が運転する自動車にも、騎乗スキルが効くのでしょうかね」
ライダーは、制限速度でアインツベルンの森の入口に着くと、イリヤスフィール邸に続く道を猛スピードで走り、カーブに際しては四輪で車を滑らせながらコーナーを抜ける。
「ペガサスとは違った面白さが有り、これは楽しいですね」
ベンツは、ライダーが運転する事により、基本性能以上の性能を発揮する。但し、運転をし終えたベンツは使い物にならない程にガタガタになってしまった。
ガスケットは吹き飛び、クランクシャフトのメタルはささくれて焼き付く寸前、タイヤに到ってはドレッドパターンが無くなり丸坊主である。
このような状態であっても、ライダーがステアリングを握ると、基本性能以上での走行は可能となる。
夕方まで十二分にクルマで遊んだライダーは、陽が沈む前に柳洞寺へと帰る。
柳洞寺付近の駐車場にクルマを停めたライダーは、改めてベンツノ惨状に驚きを見せ、困り果てる。
明らかに廃車状態である。
「困りました。なんとイリヤスフィールに弁明をしたら良いのか…………」
ランサーは夜明け前から行動を始めていた。
彼は釣り道具一式を持って埠頭に向かう。
折り畳み式の簡易な椅子を広げ、腰を下ろすと竿を伸ばし糸を垂らす。
「よいせっと。集中集中っと!」
彼は気配を消し、ピクリとも動かない。勿論釣竿の先も微動だにしない。
当に釣りをする彫像のようである。
暫くすると、竿先の鈴がチリンと鳴り、浮きが沈む。
「ん? 早速来たか」
果たして彼の釣果は如何に!?
所有するベンツをライダーに貸した為、遠出が出来ないイリヤスフィール。
「ライダーにクルマ貸しちゃったし、行く所も無くて暇だわ。何とかしてよ、セラ~」
「何とかと言われましても…………」
イリヤスフィールの言葉に困るセラ。
「イリヤ、これで遊ぶ」
リーゼリットがイリヤスフィールに小さな鉄の塊を見せる。
「何これ?」
「ニホンでべーゴマと云われている」
リーゼリットからべー独楽を受け取ると、珍しそうに眺めるイリヤスフィール。
「どうやって遊ぶの?」
リーゼリットは紐を取り出し、端に結び目を二つ結って、べー独楽に巻き付ける。
「これで投げて回す」
外に出たイリヤスフィールとリーゼリットとセラ。
リーゼリットが紐を巻き付けたべー独楽を投げると、それは確かに回りながら飛び、10メートル程離れた木にめり込む。
「こうして遊ぶらしい」
どう見てもおかしい事に気が付くイリヤスフィールとセラ。
「ちょっとリズ! それ誰からもらったの?」
「レイカン」
リーゼリットは木にめり込んだべー独楽を取り出しイリヤスフィールに渡す。
べー独楽をつぶさに観察しだすイリヤスフィール。
「平たい所に文字が刻まれているけど、何かの呪文かしら?」
べー独楽には《王》の文字が浮かんでいる。正確には刻まれているのではなく、製造行程の鋳造の型で取られた物である。
「《王》ってキングの事かしら? もしかしてチェスみたいなゲームの駒かも。ちょっとレイカンに聞いてくる」
イリヤスフィールが零観の所へ行く事暫し、彼女が戻って来るや否やマウント深山商店街に行くと言い出し、セラが同伴する事になった。
「突然どうなさったのですか、お嬢様」
訝しげにイリヤスフィールに尋ねるセラに彼女は答える。
「べー独楽の販売店に行くのよ。そこには他にも品物があるってレイカンから教えて貰ったのよ。ちょっと見てみたいじゃない」
「お嬢様がその様な庶民が通う店になど…………」
「何が有るか解らないから楽しいんじゃないのよ。セラ、行くわよ」
イリヤスフィールはセラを引き連れマウント深山商店街へと向かうが駄菓子屋が見つけられない。
業を煮やしたイリヤスフィールはセラに言い放つ。
「セラ、この商店街の品物、片っ端から買えば駄菓子屋の物も手に入るわよ」
「お嬢様、その様な無駄遣いはお止めになった方が宜しいかと…………」
「いちいち五月蝿いわねセラは。買うって決めたら買うの!」
そう言い出したイリヤスフィールは、商店街の端の店から飛び込み根刮ぎ商品を買い拐う。勿論、如何にも駄菓子屋ではない店は除いてではある。
そして支払いはカード払い(カードが使えない店は現金払い)で、商品は宅配便で柳洞寺に送って貰う。
こうしてマウント深山商店街は、イリヤスフィール特需を迎えるのである。
何軒か回った時にイリヤスフィールとセラは子供達がたむろしている駄菓子屋に辿り着く。
間口は狭く、色とりどりの怪しい菓子と玩具が所狭しと並んでいる。
「セラ、きっとここが駄菓子ショップよ」
「その様で御座いますね、お嬢様」
塊っている子供達を押し退け、店内を観ると、今まで見た事もない駄菓子や玩具に目を輝かせているイリヤスフィール。
「ねえセラ、味見がてらに一つづつ買って食べてみるわよ。店主のお婆様、このお菓子のお値段は幾らなの?」
大体10円から30円と言われ、イリヤスフィールは10円をセラに払わせ、あんこ玉を摘まむとポイと口に入れる。
「ねえセラ、駄菓子はお茶うけに良いかもしれないわね」
「そうでしょうか…………」
イリヤスフィールは子供達がクジを引き、ハズレたの当たりだのとの会話を聞き不思議に思う。
(当たりが欲しいなら箱ごと買えば良いだけなのに)
クジを引くワクワク感を知らないイリヤスフィール。
そんな彼女は子供達の目の前で、クジを引く玩具を箱ごと買い取ってしまう。
その他にも面白そうだとの理由から、毒々しい色をしたジュレや飴玉、その駄菓子やクジを引く玩具を何か解らずとも、根刮ぎ買い漁ってしまうイリヤスフィール。
「処でお嬢様、べー独楽を買うのではなかったのですか?」
「べー独楽? あんなのよりお茶菓子を買うに決まってるじゃない!」
店の在庫全てを買った為、イリヤスフィールは払いをカードで済まそうとするが、当然なからカード決済など出来る筈もない。
「お嬢様、このような庶民の子供相手の店でカードは無理かと…………」
「そっ、そんな事知っているわよ! ちょっと間違ってカードを出しただけなんだから!!」
イリヤスフィールに代わり、財布から現金を取り出し支払うセラ。
「ご店主様、只今買った物は宅配便で柳洞寺までお願いします。」
駄菓子屋の在庫を全て買い取ってしまわれた子供達の悲しい眼差しを浴びながら、イリヤスフィールは店を後にする。
衛宮士郎は、朝の空いた時間に木刀で素振りをしていると、それを見ていた零観に声を駆けられる。
「士郎君は剣道をするのか?」
「昔、爺さんや大河に稽古を付けて貰った時期がありましたから」
「ほう、あの冬木の虎にか…………ならば私に突き合ってくれないか」
衛宮士郎に答える間を与えず、零観は彼を板の間の部屋に通す。
胴着に着替えた素手の零観は、衛宮士郎に木刀で懸かって来いと言う。
「零観さん、本当に良いのですか?」
「子供に心配される様では俺も随分と舐められたもんだ────」
零観が言うや否や、その両腕は既に衛宮士郎を掴んでいる。
「!?」
衛宮士郎の身体は背負われ軽く投げられる。
零観が軽く投げ下ろした為、痛みが無かったが、手を抜いたら痛い目に合う事が出来た判った衛宮士郎。
「次は無いよ、士郎君」
零観が言う『次』とは、手加減をした攻めである事を直ぐに理解する衛宮士郎。
「申し訳ありませんでした」
お互いが距離を取り、一礼をして構え出す二人────
────単調な剣筋と攻めの所為で、何度やっても零観に木刀が掠りもしない衛宮士郎。流石に零観も呆れ果てる。
「素直と云えば素直な剣筋なんだが、型がないんだな。大河ちゃんに相手して貰ったんだろうに…………」
ボヤく零観に衛宮士郎は、今迄見てきたアーチャーの戦い方が何故か思い起こされる。
「零観さん、もう一本木刀を貸して頂けますか?」
「ほう。構わないけど、二刀流ならなんとかなるのかな?」
木刀を二本構える衛宮士郎は、アーチャーの剣筋を思い出しながら一礼をし、零観に立ち向かう。
初めこそ、良い様に投げ飛ばされている衛宮士郎だが、徐々に手数が上回り始め、手を出す零観の腕を払う位にはなってくる。
「型は無くとも手数で凌ぐか…………」
衛宮士郎の変わった戦い方に興味を持った零観は、衛宮士郎からの毎朝の稽古の手合わせの約束をしてその場を立ち去る。
残った衛宮士郎は、二本の木刀で記憶にあるアーチャーの太刀筋の真似事を続ける。
そこには自分が守るべき者を必ず守り抜く為の熱い決意を胸に秘めながら…………
伊丹とキャスターが新都に出掛けた為、家に残った桜と遠坂凛は、久し振りにお互いの長話に花が咲く。
そんな中遠坂凛は、間桐の術式に興味を持ち話を切り出す。
「ねえ桜。私は宝石に魔力を込めるけど、貴女はどんな風に間桐の魔術を習得したのかしら」
遠坂凛の発した言葉に、桜は俯き暫し沈黙する。思い出したくない、忘れたい過去。しかし桜はそれらを受け入れる様に話し出す。
「姉さん。間桐の術式は蟲です。蟲を身体に取り入れる事で、間桐の魔術を行使します」
始めて聞く間桐の魔術師の育成方法に、言葉を失う遠坂凛と、尚も話を続ける桜。
「私が引き取られた幼い頃から、蟲蔵の中で、間桐の蟲で満たされた棺に入れられ、身体の穴と云う穴からその蟲達が入り込んで来ました」
「桜…………その話はもう────」
流石に遠坂凛が桜の話を止めさせようとするが、桜は話を止めさせようとしない。
「それがどんなに痛く苦しくて我慢しても、誰も助けてくれないんです。だから私はそんな苦痛から逃れる為に自分を自分で無くしました。そして気が付いたら、髪や瞳の色が変わっていました」
ポロポロと涙ながらに話す桜を遠坂凛は抱きしめ、桜の身の上に起きた、彼女が知らなかった事実に衝撃を受け涙を流す。
「ごめんね桜。間桐の術式がそんな酷い物とは知らずに…………そんな苦痛に耐えていたなんて」
「そんな生活の中でも、雁夜おじさんは命と削って私を助けようとして下さりましたが、前の聖杯戦争で亡くなられて仕舞いました。」
遠坂凛とも顔馴染みだった間桐雁夜が、マスターだった事を今更ながらに知る。
「でも桜をそんな酷い目に合わせた臓硯は赦せないわ!」
「それはお父様とお姉様が、お爺様に屈辱を与えて下さいましたから。それにお爺様の命は、今ではお姉様が握っているも同然なんですよ」
瞳を潤ませながらもニコリと微笑む桜。
そんな桜を見ながら遠坂凛は安心した様に語り掛ける。
「でも良かったわ。桜が伊丹先生やキャスターの様に善い人に保護されて、今の関係を築けたんだから。羨ましいわね」
「そうです。お互いを良く知らないうちから伊丹先生は、私に色々して下さったのですよ。正直凄く嬉しかった…………」
顔を朱らめる桜に、遠坂凛が突っ込みを入れる。
「あなた伊丹先生の事を好きなんじゃないのかしら~」
桜は遠坂凛の突っ込みに毅然と答える。
「はい、大好きです! 御姉様がいらっしゃらなかったら私がその愛を独占しようとも考えました。しかし、お父様には御姉様が既にいらっしゃいましたし、御姉様からも父性愛なら分けてあげるとも言われました。御姉様には敵いませんわ」
「でも、伊丹先生の環境の中で貴女が自分の存在意義を見付け出してくれた事には感謝しないとね」
そこまで遠坂凛が言い終わると、深呼吸をして桜に語る。
「あの、桜。私たちは姉妹でいられるのかしら?」
遠坂凛のこの質問に、桜は瞳を輝かせながら答える。
「もちろんです、姉さん。こちらこそお願いします」
桜と遠坂凛は、今まで話せなかった事をさらけ出し、真の姉妹に戻っていった。
2人の女子の話は以外と長く、気付けは夕方になっていた。
「そろそろお父様と御姉様が帰る頃かしら?」
「それにしてもあの二人、今日一日を楽しめたのかしらね」
「それはもう二人はラブラブですからね、ウフフッ」
最後まで読んで頂き有り難うございます。
本当にイリヤの過ごし方に不満を残しながらの投稿になってしまいました。
ではでは…………
虚空屍