Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり   作:虚空屍

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アクセスして頂き有り難うございます。

話は2月11日(月)の朝から夕方になります。

作中の一部に大人の会話を想像させる内容が有りますので、その様な話が苦手な方はご遠慮して頂けたら幸いです。



35 だっ、代行者として私やキャスターを狩りに来たのですか!?

 朝に目覚めた伊丹は、自分の身体に痛みが無い事に気が付き、キャスターの治癒魔術に由るものと理解をし、先に起きていた直ぐ横に居る彼女に礼を言い上体を起こす。

 

 そんなキャスターは優しく伊丹に問い掛ける。

 

「処で耀司様、少しはお心が落ち着かれましたか」

 

 夜中の戦闘で自らの失態によりランサーを失った事による精神的なダメージを心配しての問い掛けであるが、イリヤスフィールからの言葉もあり精神的に少しは落ち着いたと答えを返す。

 

「しかし皆にヘタれた処を見せちまったな。済まなかったキャスター。俺は幹部自衛官失格だよ」

 

 指揮官が部下に冷静さを欠いた行動を見せると、隊の士気が低下するので見せてはいけない行為である。

 

「耀司様とて普通の人です。むしろ私はその様なお考えになられた耀司様の人となりを見た気が致し安心致しました」

 

 ランサーを失った伊丹の反応は、人として当たり前だとキャスターは優しく伊丹に諭す。

 

「有り難うキャスター。早く服を着ないと桜達が戻って来るぞ」

 

「きゃっ! そっ、そうでしたわね」

 

 伊丹は顔を朱らめるキャスターを抱き寄せ、口付けをしてから布団を抜け出し着替えを始める。

 

 キャスターは布団から顔だけを出して伊丹が着替え終えるのを待つ。

 伊丹が着替え終わり部屋を出た後に、キャスターは布団から出て着替えを始める。

 キャスターの首には愛し合った痕跡でもあるキスマークが目立っている。

 

(流石にこのままでは恥ずかしいですわね。今日はストールでも巻いておきますか)

 

 首回りにストールを巻いてキスマークを隠すコーディネートをする。

 今日もお洒落なキャスターさん。

 部屋に戻った伊丹が着替えたキャスターを見て顔を朱くして照れる。

 

「綺麗だよ、キャスター」

 

「耀司様からのそのお言葉が、私を一人の女にさせますのよ」

 

 二人が見詰め合っている丁度その時、玄関が開けられ桜と遠坂凛が帰って来た。

 

「おはようございます。お父様、お姉様」

 

「只今帰りました。先生」

 

「ああ、おかえり~」

 

 桜と遠坂凛は既に制服を着ている。昨晩、イリヤスフィールの部屋に泊まりに行くときに二人に気を使って着替えも持って行っていたのである。

 

「私達、朝食もイリヤさんの所で頂きましたので鞄を取りに来ました」

 

 遠坂凛が伊丹と顔を会わせると彼女はニヤリと笑う。

 

「夜はキャスターに慰めて貰えましたか? せ・ん・せ・い。 ウフフ」

 

「姉さん! その様な事をお父様とお姉様に訊かないで下さい。全くデリカシーが無さすぎです! そんなの激しく慰めて貰ったに決まっているじゃないですか!」

 

 遠坂凛と桜の会話に、顔を朱くする伊丹とキャスター。

 

「桜っ! それと遠坂さん! 子供がして良い話じゃないぞ!」

 

「あ~ら、御免あそばせ。キャ~~、ラブラブよ~!」

 

 多感な思春期の子供達にからかわれてしまう伊丹とキャスター。

 

「とっ、遠坂さん! 大人をからかうのは止めなさい! てか、早く学校に行きなよ」

 

「何を言ってるんですか。私と姉さんはお父様を待って居るんですよ」

 

「そっか、済まないな。急いで朝飯食うからちょっと待っていてくれ」

 

 伊丹とキャスターは素早く朝食を済ませ、出勤の準備を整える。

 

「二人ともお待たせだ。ではキャスター、行ってくるよ」

 

 四人が山門へと向かい、伊丹はキャスターに片手を挙げる。

 

「皆さん、行ってらっしゃ~い」

 

 いつものように山門でブンブンと手を振り見送るキャスター。

 

 石段を降りきり山門がみえなくなった所で、桜と遠坂凛が伊丹を両側から挟む様に並び、伊丹の腕に彼女達の腕を絡めてくる。

 

「ちょっと待った! 君達は何を考えているんだ!? こんな処を他の生徒や教師に観られたら一大事だぞ!」

 

「早めの通学ですから、他の生徒もいませんわ。お父様」

 

「先生。両手に花ですね」

 

 桜と遠坂凛は面白半分に胸を押し付けてくる。

 

「姉さんは止めて下さい! これは私とお父様のスキンシップなんですから」

 

「ちょっと待ってくれ桜! 俺はこんなスキンシップを許した覚えはないぞ! (でも嬉しいぞ、桜) 」

 

 桜と伊丹が仲睦まじく過ごす姿を目にしている遠坂凛はポツリと呟く。

 

「私もお父さんが欲しいわよ…………」

 

「ご免なさい…………姉さん…………」

 

「なんなら先生の事をお父さんと呼ん────」

 

 冗談半分に言った伊丹だが、遠坂凛は即行で答える。

 

「お断り致します!」

 

「だよね~…………」

 

 学校近くまで来た為にそれぞれが腕を離し校門を抜ける。

 

「桜も遠坂さんも、まだ早いから職員室でお茶でも飲んで時間を潰すかい」

 

「姉さん、そうさせて貰いましょうよ!」

 

「確かにちょっと早いから、そうさせて貰おうかしら」

 

 こうして伊丹と桜そして遠坂凛は朝の時間を職員室で潰しながら、伊丹が教師として朝から授業の準備をしている姿を見る。

 

「やっぱり教師なんですね、先生」

 

 朝の準備をしている伊丹の姿を見ながら遠坂凛は感心した様に話す。

 

「今更かよ!! 散々教壇に立って授業しただろ!」

 

「あの時は敵マスターとしか見ていませんでしたから…………」

 

 確かにお互いの陣営がサーヴァントを介した戦いへと成ったこともあった。

 

「しかも勝手な敵認識だったよな。散々な目に合わされて…………酷い仕打ちも受けたよなぁ。あっ、六万円を────」

 

「そろそろ教室に戻りま~す」

 

 遠坂凛に引っ張られる様に職員室を後にする桜は去り際に一言残す。

 

「伊丹先生。今日も一日宜しくお願い致します」

 

 教師としての伊丹の一日が、こうして始まる。

 

 

 

 

 

 衛宮士郎は早朝から零観に稽古を付けて貰っている。

 

 零観の目から見ても昨日の衛宮士郎の太刀筋や身体の使い方が変わった事に気が付く。

 

「士郎くんは昨日とは全然違う戦い方だな。儂もうかうかしてはいられないな」

 

 なとどと言い、思わず全力で衛宮士郎を投げ飛ばしていた。

 

「しまった! 済まん士郎君、大丈夫か!?」

 

 上手く受け身を取り、構えだす衛宮士郎。

 

「大丈夫です。さあ、次いきましょう」

 

(稽古も大事だけど、実戦に優るもの無しだな)

 

 

 

 

 

 稽古を終えてシャワーを浴び朝の支度を済ませ、伊丹達より遅くに柳洞一成と共に登校する衛宮士郎。

 

 教室に入るや衛宮士郎の周りに生徒達が集まりだす。

 

「おおっ、衛宮殿はご無事であらせられたか!」

 

 後藤劾以が衛宮士郎の身を心配して話し掛けてくる。

 

 衛宮士郎のクラスメイトの後藤劾以は、テレビの影響を受けての話し方になる少し変わった友人である。

 最近は《大あばれんぼう 吉宗》に嵌まっている様である。

 

「ん? 何か有ったのか」

 

「何を言っておられる! そこもとの屋敷が壊れておると、巷では噂になっておりますぞ!!」

 

「あっ!」

 

 聖杯戦争に浸かっていて、ある意味破壊が身近に在ることに疑問を持たなくなっていた衛宮士郎は、事の重大さ、世間に与える影響を今更ながらに痛感する。

 

(このままでは不味いな。何とか誤魔化さないと)

 

「俺の家がかなり老朽化していて、建て替えるまで柳洞寺にお世話になっているんだ。危ない危ないって云われていたけど、まさか本当に崩れるとは思わなかったよ、あはははは~ぁ…………」

 

「そうで御座ったか。安心したで御座るよ」

 

(何とか誤魔化せたけど、家の修理どうしよう…………先生に相談だな)

 

 この相談を受けた伊丹は、後日聖堂教会に掛け合い、魔術秘匿の文言を用いて改築費用の全額を引き出す事に成功するのである。

 

 

 

 

 

 放課後、桜は衛宮士郎と柳洞一成と帰宅するが、柳洞一成と犬猿の仲の遠坂凛は伊丹を待っての帰宅となる。

 

「あれっ、遠坂さんは皆と一緒に帰らなかったの?」

 

「はい。柳洞君は私と顔を会わせたく無い様ですし…………」

 

「なら、一緒に帰ろうか」

 

 

 

 

 

 一日の仕事も終え伊丹と遠坂凛が柳洞寺に戻ると零観が困り顔で彼を迎える。

 

「伊丹さん、お部屋に珍しいお客人がお待ちかねですぞ」

 

 はてと首を傾げる伊丹。

 

 伊丹が部屋に入ると、その服装から教会関係者と思われる人物がキャスターと話し込んでいる。

 

 その人物は伊丹の帰宅に気が付き自己紹介を始める。

 

「伊丹耀司さんですね。私は聖堂教会で司祭をしていますディーロと申します」

 

「だっ、代行者として私やキャスターを狩りに来たのですか!?」

 

 状況が判らず慌てる伊丹にディーロ司祭は話し掛ける。

 

「滅相も無い。この度は貴殿方に聖堂教会を代表してお詫びに参りました」

 

 本来なら聖堂教会の役目でもある棄権したマスターの保護を伊丹とキャスターが行っている事に対するお詫びである。

 

「身内の恥を晒すようで心苦しいのですが、教会の神父であった言峰綺礼が反旗を翻し暴走いたし、伊丹さんを始め、周りの方々にご迷惑をお掛けした事をお詫び申し上げます。」

 

 ディーロ司祭は深々と頭を下げ、鞄からかなりの厚みのある封筒を二つ取り出し伊丹に差し出す。

 

「こちらに保護されている方々の当座の生活費と、本来教会神父が行うべき棄権したマスターの保護業務をして下さっている伊丹さんに些少でございますが手当をお渡し致したく思います」

 

 生活費は有り難いが、業務の手当と云う言葉に引っ掛かりを感じた伊丹。

 

「生活費に関しては有り難く頂き、こちらの柳洞寺にお渡し致しますが、業務手当を払うから私とキャスターに魔術の秘匿もやれって事ですか!?」

 

「いえいえ、そこまでは申しません。ただ棄権したマスターの面倒を看て頂けたら有り難く思います。魔術の秘匿は聖堂教会が今まで通り行いますのでその点は安心して下さい」

 

 伊丹は成り行きで棄権したマスターの面倒を看て居たので、お金を貰う事に些か抵抗感を持つ。

 しかしキャスターはさも当然と言わんばかりに業務手当を受け取る。

 

「キャ、キャスター! 何でまた────」

 

「耀司様がお金を頂くのは本意ではないと、その心中をお察し致します。しかし聖杯戦争の(いち)マスターに過ぎない耀司様の現状は、本来なら在るべき姿ではありません。そんな現状を業務と割り切る為にもこの業務手当を頂いた方がよろしいと思います」

 

「本来なら持たなくてもいい責任感を漠然と感じるよりも、或意味割り切る事も必要って訳か…………」

 

 これ以上保護するマスターも居ない事もあり、今まで通りに皆の面倒を看て居れば良いのだと納得する伊丹。

 

「お二人共に納得して頂けたら有り難い。ではお納め下さい」

 

 こうして伊丹とキャスターはディーロ司祭から出された業務手当を頂く事にした。

 

「因みに一時的に聖堂教会の出張所を駅前のホテルに開きまして私が常駐して居ますので、ご連絡があればそちらにお願い致します」

 

「スイート借り上げですか」

 

 冗談半分に伊丹はディーロ司祭に尋ねるが、その答えに目を見開く。

 

「いいえ、ロイヤルスイートです」

 

 




最後まで読んで頂き有り難うございます。

やっと聖堂教会も重い腰を上げて伊丹の支援に乗り出しました。

果たして聖堂教会は伊丹に対してどこまでの支援をしてくれるのでしょうか?

ではでは…………


虚空屍
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