話は2月12日(火)の朝になります。
生き残りキャストの復習その1
●伊丹耀司=元陸上自衛隊三尉。冬木の同人誌即売会に来たら文部科学省に出向辞令が下り穂村原学園の教師となる。オタク趣味。
冗談半分で召喚呪文を唱えたらキャスターを召喚する。
☆伊丹の武器=自動小銃型のエアガン。
小銃自体とBB弾にキャスターの強化魔術が懸けられている優れもの。
ゆえにサーヴァントの露出している所に玉が当たると、箪笥の角に小指をぶつけた位の地味な痛さがある。
生身の人間には貫通して致命傷を負わせて仕舞う凶器であるが、身体に強化魔術を懸けていればサーヴァントと同じく箪笥の角に小指をぶつけた位の地味な痛さがある。ちなみな銃剣の脱着は可能。
聖杯戦争後の望みはキャスターを嫁にすること
●キャスター=伊丹と契約した稀代の魔術師といわれる魔術使用に特化したサーヴァント。
その魔術は超一流。伊丹の嫁になる為に伊丹と戦う。
●間桐桜=伊丹とキャスターに救われた間桐家の次期当主。
契約サーヴァントはライダーと、桜の心臓に埋め込まれていた聖杯の欠片で大聖杯が繋がりそこから溢れ出た桜アヴェンジャー。
最初は自分のライダーを兄である慎二に貸していたが、ある時桜の逆鱗に触れ叩きのめす。伊丹とキャスターの協力もあり間桐臓硯を監視下に置き、間桐家の実権を握り、伊丹とキャスターの養女になる事を約束される。
●ライダー=桜のサーヴァント。常に冷静沈着。
彼女の基本思考は桜を助ける事。桜を傷付ける者には容赦がない。
桜と令呪の関係が切れてしまってもライダーは桜を守ると決めている。
今日はこの辺で。
今朝の伊丹達の登校の光景を見た藤村大河は大変なショックを受ける。
「士郎がぁ~、私の士郎がぁ~! 桜ちゃんとあんな関係になっているなんて~~!」
朝からそればかりを口にしている藤村大河に伊丹は周囲の目を気にし出し、二人きりになれる社会科準備室に彼女を連れ込み、席を勧め語り掛ける。
「藤村先生、衛宮くんも一人の男なんですよ。同じ年頃の女子に目が向くって事です」
「でも私の士郎がぁ~、桜ちゃんに取られたぁ~~!」
これは藤村大河の授業に差し障りが出ると感じる伊丹は彼女を諭す。
「藤村先生も衛宮君から子離れしないといけませんよ! いつまでも衛宮君の家に入り浸って朝晩のご飯を平らげているのも如何なものかと…………」
伊丹から日常の事を言われドキリとする藤村大河。
「そっ、そんな事無いもん!」
(大河! 幼児退行か!?)
流石に藤村大河の返答に焦る伊丹はそれでも彼女を諭す。
「そろそろ彼を一人の男として接した方が良いと思いますよ。藤村先生もいつまでも彼に寄り添って居る訳にはいかないでしょうに」
藤村大河が衛宮切嗣を想っていての行動である事は解っているが、伊丹がその事を口に出すべきでは無い事も承知している。
「藤村先生も暖かい目でそんな彼を見守ってあげたら如何ですか?」
徐々にではあるが自分を取り戻しつつある藤村大河は、伊丹に諭された事を考え彼に頷く。
「グズッ、伊丹先生。お見苦しい処を見せてしまい申し訳ありません。私も少しは大人にならないといけませんね。でも朝晩のご飯は食べに行きます!」
伊丹と泣き晴らしたら藤村大河の二人が社会科準備室から出てくる処を衛宮士郎と出会す。
そんな二人を見た衛宮士郎は思わず口にしてしまう。
「藤姉? どうしたんだ!」
泣き晴らしたら姿を衛宮士郎に見られてしまった恥ずかしさから冗談を口にする藤村大河。
「愛の告白よ。でも断られちゃった」
藤村大河のこの発言に驚く衛宮士郎と狼狽する伊丹。
「なんだって!?」
「ちょっと待って下さいよ、藤村先生!」
「藤姉! 伊丹先生には許嫁さんが居るのは知ってるだろ! 何考えているんだよ!」
藤村大河の冗談を真面目に捉えている衛宮士郎。
「衛宮君、これは藤村先生の冗談なんだよ。藤村先生が感極まって思わず泣いてしまった事の照れ隠しだよ」
「しかし藤姉が伊丹先生と話して泣くってどんな話だったんですか?」
藤村大河の泣く処を見た記憶がない衛宮士郎は伊丹に問い掛ける。彼女を泣く状況にまで追い詰めたのが伊丹ならば許さないとも思う。
「う~ん、平たく言えば『生徒指導と私』って感じかな。藤村先生も色々と悩む事が多いいんだよ」
「そっかぁ、藤姉も悩むんだな。今日の夕飯は俺も台所に立って藤姉の好物を用意しておくから、晩飯に柳洞寺に来ればいいよ。楽しみにしていてよ」
(藤村大河を駄目にしているのは衛宮士郎、君の所為だな…………)
「キャ~! 士郎有り難う! 晩御飯には柳洞君の所にお邪魔させてもらうわ! でも士郎、学校では藤村先生と呼びなさいって言っているでしょうがぁぁ~!」
藤村大河の振り下ろす拳骨をヒョイと躱して走り去る衛宮士郎。
「ごめ~ん、藤村先生~~」
改めて伊丹に向く藤村大河。
「伊丹先生、有り難うご座いました。胸の
「人は悩みや不安を抱えて生きています。仕事に対しても同じです。私で良かったらいつでも相談に乗りますよ」
今朝の登校で、犬猿の仲と云われている遠坂凛と柳洞一成を引き連れての伊丹の姿に、勘違いをする藤村大河。
「流石は伊丹先生です。遠坂さんや柳洞君に人気が有る訳ですね」
「いやっ、それはちょっと違いますが…………」
この日、学校中に可笑しな噂が流れ出す。
『許嫁がいる伊丹が遠坂凛と付き合い、藤村大河をも
噂を聞いた本人達はこれを必死になって否定するのだが、誰かが火の無い所に煙は立たない等と言い出し、否定をすればする程、噂は
伊丹は頭をポリポリ掻きながらこの噂の出所を考える。
(まさかなぁ~…………いやっ)
伊丹は然り気無く席を起ち職員室から抜け出し人気がない場所へと移動すると、クルリと向き直り言葉を発する。
「イリヤさん! 気配を消しても私には解りますよ! 姿を現したらどうですか」
「あらっ、またイタミに見つかっちゃったわ」
やれやれと云った感じで伊丹はイリヤスフィールに問い詰める。
「イリヤさん。怪しい噂を流すのは止めて下さいよ。なんでこんな事をするかなぁ…………」
しかしイリヤスフィールは悪びれる素振りもなく平然と答える。
「だっていつ来るか判らない者を相手に柳洞寺に篭っているのは疲れるしストレス溜まるのよ」
「かと云ってこんな怪しい噂を広めなくても良いでしょうに────」
伊丹の言葉を遮りイリヤスフィールは話す。
「何を言っているの! 同じ事を繰り返して過ごしていては、突発的に不測の事態が発生しても対処出来ないのよ。だから私が貴方達マスターに刺激を与えているの」
「それなら他にもやり様があるでしょう。と、云うかイリヤさんも状況は同じな訳ですよね。なら今日一日私の傍に居て下さい。また学園生活をお見せ致しますよ」
伊丹の提案に目を輝かせるイリヤスフィール。
「やったぁ~! イタミと学校に居られる!」
伊丹は学園長に、知り合いがドイツから来日し、穂村原学園に興味があるから見学したいとの話をして、伊丹に同行しての見学の許可を得る。
こうして今日一日、イリヤスフィールは伊丹の傍に付いて学校内を満喫する。
伊丹の傍に居るイリヤスフィールを見掛けた遠坂凛。
「ちょっと! なんでイリヤがここにいる訳? こっちは怪しい噂で頭が痛いって云うのに」
「あらっ。私はきちんと学園長に許可を貰って見学をしているのよ。それにそんな噂でオロオロしている方が恥ずかしいわね」
「そんな噂って…………あんたが何で噂の事を知っている訳。もしかしてあの噂を流したのって────」
噂話の元凶を察した遠坂凛の顔が強張る。そんな彼女を見たイリヤスフィールは遠坂凛を更に弄る。
「キャ~、イタミ~! 般若が現れたわ!」
「般若ですって!? ちょっと、待ちなさいよ!」
伊丹の周りを遠坂凛とイリヤスフィールがちび
(はぁ~、二人共このままバターになってくれ)
切りが無い伊丹を中心とした遠坂凛とイリヤスフィールの追い駆けっこ。
伊丹は追う側である遠坂凛を抱き締め止める。
「遠坂さん、皆が見ているよ。たぶん幼女を追い駆ける趣味があるとか噂が増えるよ」
確かに幼女とも見えるイリヤスフィールを追い駆け回していた遠坂凛。周囲の視線が痛い程に彼女に降り注ぐ。
「かっ、勘違いしないでよね! あんたみたいな子供を相手にしている程、暇じゃ無いんだから!」
授業開始のチャイムに慌ててクラスに戻る遠坂凛と伊丹の背後にはニヤニヤ笑みを浮かべて見送るイリヤスフィールが居る。
「イタミ、学校って楽しいわぁ! あんなお猿さんも居るのだから」
「不味い! 次のクラスの授業に行かないと…………確か次は士郎君のクラスだったな」
早歩きで歩く伊丹の後をひょこひょこと付いて来るイリヤスフィール。
伊丹は衛宮士郎の居る教室の扉を開け中に入るとイリヤスフィールも続いて入る。
イリヤスフィールが教室に入った途端、透き通る様な銀髪の少女にクラス中がざわめく。
「お兄ちゃ~ん! あっ、イッセイも居るんだ!」
衛宮士郎を見つけたイリヤスフィールは彼に手を振る。
「イッ、イリヤ!?」
「イリヤスフィールさん!?」
騒ぎが頂点に達したと同時に伊丹は出席簿を教卓に叩き付け皆を黙らす。
「こらぁ~、黙らんかぁ~。この馬鹿ちんがぁ~」
伊丹の似ていない金
「今日はだな、ドイツの貴族の称号を持つイリヤスフィール・フォン・アインツベルンさんが、日本の学校の視察として来ています。柳洞君と衛宮君は顔見知りだよね」
「只今ご紹介に預かりましたイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと申します。日本の学生の皆さんがどのようにして学園生活を過ごしているのか、拝見させて頂きます。ご迷惑かと思いますが、宜しくお願い致します」
スカートの端を摘み軽く一礼をするイリヤスフィール。
イリヤは教室の最後部に椅子を用意して貰い、伊丹の講義を聴講する。
全ての授業も終えた放課後、衛宮士郎、柳洞一成そして桜が一緒に下校をし、遠坂凛とイリヤスフィールが未だ学校に残って伊丹の帰りを待つ。
「なんで遠坂さんは衛宮君達と一緒に帰らなかったんだい」
「先日も言いましたが柳洞君とは犬猿の仲とでも云いますか、お互いが顔を会わせるのが気不味いんですよ。それと伊丹先生を待って居たのは…………何となくなんです」
「遠坂さんもイリヤさんも悪かったね。もう事務仕事も終わるから、そうしたら帰ろうね」
てきぱきと仕事を済ませ帰り支度をし、三人で校門を後にしたのは夕方であった。
伊丹は遠坂凛とイリヤスフィールの手を徐に握り、ブンブンと振り出しながら唄のフレーズを持ち出す。
「さあて、カラスと一緒に帰ろうか」
伊丹の一言に疑問を持ち、キョトンと首を傾げるイリヤスフィール。
「イタミ、何でカラスと一緒に帰らなくてはいけないの?」
真剣に聞き出すイリヤスフィールの姿に思わず笑い出す遠坂凛と、説明をする伊丹。
「日本にはそう云う歌詞の童謡があるんだよ」
伊丹とイリヤスフィールが歌いながら歩き始めると、自然と遠坂凛も口ずさみ出す。
帰宅途中の道で廃墟の前を通り掛かる。
「そう云えばここで遠坂さんと衛宮君に襲われたっけな。先週の事なのに昔の出来事の様に感じるな…………」
「あの節は申し訳ありませんでした。今、この様な関係になるとは…………」
俯く遠坂凛を見て、はっと思い出した伊丹が口にする。
「あっ、六万円!」
伊丹の一言が聴こえないかの様に更に
三人で柳洞寺の山門をくぐるとキャスターが出迎えて居てくれる。
「あらあらまあまあ、三人で随分と楽しそうですわね」
「ああ楽しいぞキャスター。今度はキャスターも一緒に手を繋いで出掛けような」
「その日を楽しみにお待ち致しておりますわ」
それぞれが部屋に戻り風呂を済ませた伊丹は、先に帰宅していた桜と共にキャスター、遠坂凛と夕食を済ませる。
伊丹は今日の学内での噂話の件を桜に向ける。
「桜も学校の噂話で大変だったんじゃないか」
話を振られた桜は顔を紅くして拳を握りプルプルと震えながら答える。
「そうです! 何ですかあの噂話は! 二股だなんで人を馬鹿にするのも大概にして欲しいです! 私は先輩一筋なのに…………それにお父様と姉さんの噂にも頭に来ました」
「まあまあ桜。俺は気にもしなかったし、噂の出所には話もしたんだ。しかし或意味気分転換にはならなかったか?」
「強いて云えば、日頃の聖杯戦争の事からは気が紛れました」
「そうだよな。それでいいんだよ」
桜と遠坂凛は部屋に篭り、居間には伊丹とキャスターが残される。
「なあキャスター。もしかして俺は戦い方を間違えたのか?」
「この状況の事を仰っているのであれば、仕方が無い事だと思います」
キャスターも伊丹の考えている事が解り彼を諭す。
「戦況など刻一刻と変わるものです。それに対処出来れば問題など有りませんわ」
「そうだな。言峰達が来る間、皆の士気を上げるのも俺の役目だな。今日はイリヤさんに教えられたよ」
今日の学内での噂話の件をキャスターに話す伊丹は、済ませておかなくてはならない事を思い出す。
「あとキャスターに頼みがあるんだ」
「何ざましょ?」
キャスターも彼女なりに伊丹の緊張を解そうとしての受け答えである。
「プッ! キャスター。その『何ざましょ?』は止めてくれ。 実は柳洞寺の僧侶の皆さんを死なない程度で病院送りにして貰いたい」
「あらまっ! 物云いが丁寧な割に随分と物騒な事を仰いますわね」
今まで一般人からの精気の搾取は最小限に留め置く様にキャスターに命じた伊丹とは思えない物云いに、彼の人となりを理解しているキャスターは思わず噴きそうになるのを堪える。
「ああ、ギルガメッシュとの戦いでここの皆さんに犠牲者が出るのを防ぎたいんだよ」
「耀司様のお考えなどこのキャスター、既に解っておりましたわ。もう支度は整えてありますのよ」
伊丹を理解し、既に事を済ませているキャスターに驚く伊丹。
「キャスター仕事早っ!」
「そうですわね。僧侶の皆さんが眠りましたら精気を死なない程度に頂きますわ。まあ回復まで一週間って処で宜しいですか?」
伊丹は自分が考え望む事を常に先回りをして準備をしてくれるキャスターに握り拳に親指を立てて言う。
「グッジョブ!」
「嗚呼、耀司様から最高のお褒めのお言葉を頂きましたわ!」
そんな喜ぶキャスターの肩を抱き寄せて伊丹は願う様に言う。
「今晩は言峰達が来ない事を祈ろう」
「そうですわね」
この後、伊丹は各マスターに柳洞寺の僧侶の件を伝え、慌てる事が無い様に通達した。
そうして翌朝には伊丹が救急車を呼ぶ事になるのである。
「ヤッホーっ、零観君! 今日は士郎に誘われて来ちゃった~!」
晩飯時に藤村大河が柳洞寺を訪れ、彼女の顔を見て顔を朱らめ慌てる柳洞零観。
「えっ? たっ、大河ちゃん!?」
柳洞零観と藤村大河は高校生時代、同じ穂村原学園の同級生であった。
そんな若かりし柳洞零観は藤村大河に告白をしたのだが、藤村組組員に袋叩きにされた経験を持つ。
「済みません零観さん。藤姉が学校で落ち込んでいた様だったので、好物を作るからって誘ってしまって…………」
謝る衛宮士郎に事の仔細を聞き納得する零観。
「だから士郎君が調理場で腕を振るっての今日のこの献立なんだな。それにしても一人増えたにしては炊いた御飯もおかずの量もかなり多いいね?」
「ああ見えて藤姉は大飯喰らいなもんで…………」
「そうか…………士郎君も苦労していたんだなぁ…………」
「のう綺礼、いつ攻め込むのだ?」
ギルガメッシュはいつ攻め込むとも判らない言峰綺礼の態度に辟易としていた。
「まだ機が熟してはいないぞ、ギルガメッシュ」
「貴様が望む様にこちらに都合よく機が熟すと思うのか」
ギルガメッシュが言峰綺礼の持つ作戦の在り方に疑問を投げ掛ける。
「ん? 解らん。だから待つのだ」
「貴様はとことん詰まらん奴よのう」
結果的に受肉してまで現世に留まっているギルガメッシュにとっては、些か物足りなさを感じている。
「これが戦いと云う物。しようがあるまい」
「貴様は王たる我に戦を述べるか! 雑種が」
(用兵家としも雑魚であったか…………綺礼よ)
最後まで読んで頂き有り難うございます。
第36話の後書きに、伊丹が非情になれないと書きましたが、実は非情になる事を失念していました。
詳しく書いて仕舞うとGate/自衛隊のネタばらしになって仕舞うため表記しませんが、かなり非情な一面を持つ伊丹です。
本作の伊丹はどうなんでしょうか…………お楽しみにしておいて下さい。
ではでは…………
虚空屍