Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり   作:虚空屍

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2月13日(水)夜から14日(木)朝の話になります。

生き残りキャスト復習その3
●衛宮士郎=元セイバーのマスター。セイバーは脱落済み。しかし聖杯戦争に身を投じる。
●遠坂凛=元アーチャーのマスター。アーチャーの持ち物で遠坂凛の召喚に呼ばれる。アーチャーは脱落済み。しかし聖杯戦争に身を投じる。因みにアーチャーはある時間軸の未来の衛宮士郎。
●イリヤスフィール=元バーザーカーのマスター。アインツベルン家から参加した全身が魔術回路の少女。義理ではあるが衛宮士郎の姉に当たる。バーザーカーは脱落済み。




39 やられたよキャスター…………困ったな

「ねっ、姉さんを呼んで来ます…………忘れていました…………」

 

 早速伊丹がイリヤスフィールの部屋に遠坂凛を迎えに行く

 

 伊丹の後を着いて歩く遠坂凛が《私不機嫌ですオーラ》を周囲に撒き散らしている。

 

「こんな時間まで放置してしまい申し訳なかった」

 

「桜に部屋に上げて貰えなかった理由が『伊丹家の事情』と言われてしまいましたの。何だったのかしらねぇ…………」

 

 ニヤリと(いや)らしく笑みを浮かべる遠坂凛。

 

「本当に済まなかった。この話も本当に伊丹家の事情としか俺からも言え無いんだ」

 

「まあ、私も深くは詮索致しません。まあ大人の事情って奴ですからね。ウフフッ!」

 

 部屋に戻った伊丹に桜が話し出す。

 

「お父様、先輩を晩御飯に呼んでも構いませんか?」

 

 柳洞寺の母屋の住人は軒並み病院に搬送され、今や住人は衛宮士郎独りなのである。

 

「そうだったな、あんなに広い所で独り飯は寂しすぎるな。桜、衛宮君を呼びに行こう」

 

「有り難うございます。お父様」

 

 伊丹と桜は母屋へ向かい衛宮士郎を呼ぶ。

 

「有り難うございます、先生。これから晩飯の支度をしようとしていた処なんです」

 

「処で衛宮君。母屋の食材の貯蔵は充分か?」

 

 伊丹は衛宮士郎相手に言ってみたかった台詞(せりふ)であるが、当然その意味する真意を衛宮士郎が解る筈もなくさらりと受け流し答える。

 

「あれだけの人数の食材ですからかなり有りますよ。俺独りでは腐らせて仕舞う位です」

 

「では、腐らせて仏罰が当たっても困るから、暫くはお寺の食材を頂くとしようか」

 

 充分すぎる食材を前に今晩のメニューを考える衛宮士郎と桜。

 そこで衛宮士郎は伊丹に提案をする。

 

「先生、どうせならイリヤ達も呼んで残った皆で食事と云うのはどうですか?」

 

「それは良いね! 桜、イリヤさん達を呼んで来てくれ。あとキャスターと遠坂さんもね。今晩は皆で晩御飯だ」

 

 母屋に集まった離れの住人達に依る、柳洞寺に残された食材を無駄にしない様にする為に開かれる晩餐。

 今晩の調理担当は衛宮士郎とセラである。

 

 調理をするに当り伊丹は九~十人分になるようにセラと衛宮士郎に言うと伊丹は母屋を出て行く。

 

 主菜である洋食をセラが調理をし、副菜としての和食を衛宮士郎をが調理をしている。

 

 セラの洋食の調理に衛宮士郎は興味を惹かれ、色々と彼女に質問しながら手伝いもしている。

(セラさんの調理を教えて貰わないとな。こんな機会は滅多に無いからな)

 

 何故か九人分ある食事の配膳も済み、伊丹以外の七人が広過ぎる広間で彼を待っていると、伊丹は一人の女性と一体のサーヴァントを連れて広間に現れる。

 

 伊丹とキャスター以外は知る筈も無い人物とサーヴァントの登場に広間に居る皆がざわめく。

 

「今日は皆に紹介したい人が居る。彼女はイギリスの魔術協会から聖杯戦争に参戦する為にお越しになっていたバゼット・フラガ・マクレミッツさんとそのサーヴァントだ」

 

 スーツを着た長身の彼女が伊丹の紹介に応え、自己紹介をする。

 

「ご紹介に預かりましたバゼット・フラガ・マクレミッツです。訳あって今では魔術協会から外れた身ですが宜しくお願い致します。そして此方(こちら)が私のサーヴァントです」

 

 自己紹介を終えたバゼットはボロを纏う半裸のサーヴァントに自己紹介を振る。

 

「俺はこの姉ちゃんのサーヴァントだ。宜しくな」

 

 するとアヴェンジャーは桜をチラリと見て呟く。

 

「この嬢ちゃんか…………感じるぜ、おっさん」

 

 広間の皆がバゼットが引き連れて来たサーヴァントが、伊丹に似ている事に驚く。

 

 その事で伊丹やキャスターに質問が集中するが、当の伊丹にも特戦群での自分のコードネーム繋がりでしかなく詳しくは解らない為、敢えて返答を暈す。

 

 また、ゆくゆくは魔術協会に籍を置く事を考えている遠坂凛がバゼットに質問をし出す。

 

「バゼットさんは魔術協会で何をなさっていたのですか?」

 

「封印指定執行者をしていました」

 

「ぶはっ!?」

 

 バゼットの答えに度肝を抜かれた遠坂凛はみるみる青ざめその身を小さくする。

 

 そんな遠坂凛の隣に伊丹がバゼットを座らせて皆での晩餐が始まる。

(先生、これは何かの罰ですか、仕返しですか…………お金は近いうちに必ず返しますから…………)

 

 

 

 

 

「ギルガメッシュ、今帰ったぞ」

 

 帰るなりギルガメッシュに袋を渡す言峰綺礼。

 

 袋の中身を取り出し言峰綺礼に渡し溜め息を()くギルガメッシュ。

 

「温めろ綺礼…………今晩もこれか…………」

 

「何を言っている。空腹は最上のソースと云う。温めるから少し待つが良い」

 

 今晩も電子レンジを五分にセットし海苔弁二つを温める言峰綺礼。

 

 

 

 

 

 食事も終え伊丹はバゼットに話を持ち掛ける。

 

「今や柳洞寺の母屋も衛宮君一人の(から)の様な状態ですから、今晩からの寝所を此方に移しては如何ですか」

 

 寝袋さえあれば何処でも過ごせてしまうバゼットは特に(こだわ)りも無いので、伊丹の話を受け入れ地下空洞から移り母屋での宿泊なった。そしてこれは衛宮士郎のボディーガードを兼ねての事でもある。

 

 美人の外国の女性との二人きりの母屋での寝泊まりに周囲から衛宮士郎に冷やかしの声が飛ぶ。

 

「キャ~~! 先輩、変な事を考え無いで下さ~~い! 不潔です、不潔です、先輩は不潔です~~!!」

 

「シロウ、バゼットを襲っちゃ駄目よ」

 

「馬鹿を言うな桜、イリヤ! それにバゼットさんのサーヴァントも居るだろ!!」

 

 遠坂凛は封印指定執行者の強さを知っている為、冷やかしの言葉を口にしないでいる。

(皆、彼女の強さを知らないんだわ! 冗談でも彼女を襲ったら士郎は…………殺される)

 

 伊丹も遠坂凛と同じ事を考える。

(衛宮君、手を出したら確実に君は死ぬぞ)

 

 晩御飯も済ませた面々は、全員で後片付けをして各々の部屋に戻る。

 

 今まで会議室として伊丹の部屋を使っていたが、誰も居ない母屋の一室を会議室兼待機部屋として使う。

 

 この待機部屋に二人で居る伊丹とキャスター。彼女から手渡されたお手製の滋養強壮剤を飲み干す伊丹は彼女に話し掛ける。

 

「あっちの動きは何かあった?」

 

「特には。言峰がコンビニに行った位しか動きはありませんわ」

 

 さもひもじい日常を送る言峰達の姿を思い浮かべて笑い出す伊丹。

(王様と二人寂しくコンビニ弁当か。哀しいな、言峰)

 

「話は変わるけど、士郎の投影の技量はどうなんだい?」

 

「先日の言峰との戦い以来、その精度は増しております。今迄も毎晩鍛練とやらをしていた様ですが、あの戦いでコツを掴んだのか一条の道筋が見えたのか無駄なく投影が出来る様になりつつあります」

 

 キャスターも衛宮士郎の投影の精度の高さ、上達振りに驚きを表す。

 

「あとは戦い方の上達を待つだけかぁ。彼の今後の人生に()って英霊エミヤが生まれるんだな…………」

 

 

 

 

 

「退屈だな、ギルガメッシュ」

 

「そうだな、綺礼」

 

 自分が立てた作戦に疑問を募らす言峰綺礼。

 

「私は戦い方を間違えたのか」

 

「そうだな、綺礼」

 

 退屈で仕方がないギルガメッシュは言峰綺礼に答えるのも面倒臭くなっている。

 しかし言峰綺礼は自分が作戦の効果が薄いのではないかと考え、作戦の一部修正を考え実行に移そうとする。

 

「ならば今夜キャスターの拠点に仕掛けるとするか」

 

「呆けたのか綺礼。相手を精神的に追い詰める為に暫く様子を見て居るのではないのか」

 

「そうだ。それに一手間加えるのだ。毎晩一度で良いからギルガメッシュが山門に槍剣の射出をするのだ。別に被害など与えずとも良い。但し毎晩時間を変えての事だぞ」

 

 退屈をまぎらわすには丁度良いなとギルガメッシュが言峰綺礼に言う。

 

「ほう、綺礼にしては考えたな。誉めて遣わすぞ」

 

「奴等は襲撃と勘違いをして慌てふためくに違いない。そして今迄以上に精神的なダメージを与えられるぞ。まさに眠れぬ夜が続くのだ」

 

 慌てふためく伊丹陣営の姿を想像し歪んだ笑みを浮かべる言峰綺礼。

 

 

 

 

 

 深夜の柳洞寺の山門に突然降り注ぐ数多(あまた)の槍剣。

 

 言峰綺礼とギルガメッシュの襲来とみた伊丹はサーヴァントと各マスターを起こし事前に打ち合わせていた体制をとる。

 

 しかしその後の攻撃が来ない。

 不審に思った伊丹がキャスターに付近にサーヴァントの気配の有無を()くが、既に気配は無いと言う。

 

 伊丹は今夜のギルガメッシュの攻撃の意味を悟り考え込む。

 

「やられたよキャスター…………困ったな」

 

 キャスターも伊丹の考える処を読み取り答える。

 

「参りましたわね耀司様。毎晩にこの様な事をされますと全員が疲弊して仕舞いますわ」

 

「その通りだキャスター。こんな事を繰り返されると、どれが本当の襲撃か解らなくなり初動に於ける対応が遅くなったりするぞ! 俺は良いとしても子供達への負担が計り知れない。どうした物か…………」

 

「耀司様、あまり良い策とは言えませんが学校を休ませては如何かと。昼間は寝て夜に備えて貰っては」

 

 伊丹は桜、遠坂凛、そして衛宮士郎を呼び聖杯戦争終結までの休学の案を話す。

 

 今夜の様な事が度々続き昼夜神経を張り詰める事を考えると、日中に寝ていた方が良いと彼等もキャスターの案に同意する。

 

「インフルエンザに掛かった事にすれば三人が纏めて欠席しても怪しまれずに済むかもな」

 

 伊丹は三人にインフルエンザで欠席すると云う事にして貰い今後に備える。

 

 今晩の襲撃は無いと考え各マスターには部屋に戻って貰い、伊丹とキャスターも部屋に戻る。

 

「キャスター、俺は学校に行くから少し寝かせて貰うよ」

 

「ええ、私は待機しておりますから耀司様はゆっくりとおやすみ下さい」

 

 あとはキャスターに任せ伊丹は深い眠りに着く。

 

 

 

 

 

 朝になり伊丹はキャスターに起こされる。

 

「耀司様、朝ですよ。はいはい、起きて下さいまし」

 

 少々寝不足気味の身体を起こし滋養強壮剤を飲み干す。

 

 伊丹は寝不足気味の身体のダルさが消えていくのを感じながら朝の支度に取り掛かる。

 

「キャスター、子供達も昼夜逆転の生活を強いるから、彼等の入眠時間の管理と指導を頼むよ」

 

「そうでしたわね。昼間に眠れない様でしたら私の魔術で強制的に寝かし付けますわ」

 

 桜、遠坂凛、そして衛宮士郎はまだ寝かせている為、伊丹はキャスターと二人で朝食を済ませる。

 

「じゃあ行ってくるよ。三人の欠席の事は俺から学校に話しておくから」

 

 山門でキャスターに見送られる伊丹は独り学園に向かう。

 

 伊丹が学園に向かい歩いていると前方のガードレールに腰掛けているギルガメッシュを見付ける。

 

 学園に向かう伊丹を今朝もまたギルガメッシュが待ち伏せをしているのである。

(またかよ! 面倒臭い奴だな)

 

 伊丹は歩みを止める事無くギルガメッシュに言う。

 

「またかギルガメッシュ! 何の用だ。出勤の途中だし時間は無いぞ」

 

 再びのギルガメッシュの待ち伏せにキャスターは慌て伊丹の元に行こうとするが、念話で伊丹は一人で対応すると言う。

 

 ギルガメッシュは伊丹の歩調に合わせて歩き話し掛ける。

 

「昨晩はよく眠れたか、道化」

 

 伊丹はギルガメッシュの口振りに思わず噴き出す。

 

「王を笑うか、道化。我は真面目に訊いたのだぞ。笑う処などなかろう」

 

「済まんギルガメッシュ。悪戯っ子の言い様に思えて思わず噴いてしまった」

 

 伊丹の答えに合点がいかないギルガメッシュ。

 

 伊丹は考えながらギルガメッシュに答える。

 

「最初は驚いたし言峰の意図している事も解った。正直困ったよ」

 

「そうであろう、そうであろう」

 

 ギルガメッシュは深夜の襲撃は相当の精神的ダメージを伊丹達に与えたと思い込んでいる。

 

「しかし最上とはいかないが対処策を講じたよ」

 

「なんと! 昨日の今日で方策を練るとは…………道化、貴様はつくづく面白い。我を飽きさせぬ」

 

 伊丹の迅速な判断と行動力に驚くが嬉しさも沸き上がって来ている。

 そして伊丹は自衛隊時代の経験も踏まえ語り出す。

 

「しかしあの襲撃の着眼点は良いと思ったぞ」

 

「今さらそのような事を言われても詰まらん。やはり我と組まぬか」

 

「断る! 断じて断る!」

 

 こうしているうちに伊丹達は学校の校門に辿り着く。

 

「くっ、時間切れと云うことか。伊丹よ、我はまた明日の朝にあの場所で貴様を待っているぞ。ここまで王に足しげく通わせるのは、道化、貴様が初めてだ」

 

 ギルガメッシュはレジ袋を下げて悠然と帰って行く。

 

(ギルガメッシュ、もしかしてコンビニ弁当か。早く帰ってやれ。言峰が腹を空かせているぞ)

 

 こうして伊丹は校門をくぐり、職員室へと向かい桜、遠坂凛、そして衛宮士郎のインフルエンザを理由にした欠席を申告する。

(これで怪しまれる事無く彼等も一週間位は休めるかな)

 

 衛宮士郎のインフルエンザの件を聞き付けた藤村大河が血相を変えて伊丹の元にやって来る。

 

「伊丹先生! 士郎や桜ちゃん、遠坂さんの容態はどうなんですか」

 

「インフルエンザの初期症状でして対処も早目だった事もあり、酷くはならないと医師の方が言っていました。まあ、十分に休養が必要だと言われはしましたがね」

 

 伊丹は本気で心配をしついる藤村大河を騙している事に良心の呵責を感じずには居られない。しかし彼女は安堵の表情を浮かべ伊丹に話を繋げる。

 

「それを聞いて安心しました。先日も柳洞寺の皆さんや柳洞一成くんもが病院に搬送されたり伊丹先生も欠勤なさるしで」

 

「昨日はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」

 

「伊丹先生もご無事で何よりです」

 

 伊丹は一礼をして去る藤村大河を申し訳なく思いながら見送る。

(許して下さい藤村先生。これも彼等が生き残る為なのです…………)

 

 伊丹は気持ちを入れ換えると教師としての一日が始まる。

 

 




最後まで読んで頂き有り難うございます。

聖杯戦争も本当に残りの日数が無くなって来ています。

言峰達はいつ伊丹陣営に攻撃を仕掛けるのでしょうか?

ではでは…………


虚空屍
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