Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり   作:虚空屍

41 / 48
アクセスして頂き有り難う御座います。

2月14日(木)から15日(金)に日付が変わる頃の深夜になります。

いよいよ言峰綺礼とギルガメッシュが伊丹達が篭る柳洞寺に攻め込みます。

*アヴェンジャーの宝具がどんな物か作中に加筆致しました。


41 最終決戦

 日付が変わる頃の深夜、柳洞寺の石段を登る二つの影。言峰綺礼とギルガメッシュ。

 

 山門の警戒をしているライダーはサーヴァントが近付く気配を察知し桜とキャスターの使い魔に知らせ、キャスターから全マスターとサーヴァントにギルガメッシュの接近を伝える。

 

「まずはライダーとキャスターは山門で迎撃! 死守はしなくても構わない。山門放棄後は境内で迎撃! キャスターは牽制をしてギルガメッシュをライダーの後ろに回り込ませるな!」

 

 ギルガメッシュの後に下がっている言峰綺礼を山門の屋根の上で伏せて構えている伊丹が、エアガンのスコープ内に捉える。

 

「ターゲット捕捉っと…………」

 

 伊丹は指先だけの感覚で安全装置の摘まみを解除し、連射の位置までずらす。そしてグリップと引き金を絞り込むようにして握り射撃のタイミングを測る。

 

 呼吸を止め引き金を引くタイミングが合ったその時、言峰綺礼は猛然と山門に向かい右や左へとジグザグに石段を駆け登る。

 

「しまった!」

 

 伊丹はスコープを覗くのを止め言峰綺礼に向けてエアガンを連射して弾幕を張るが、言峰綺礼の動きは速くみるみる石段から離れて行き、山門から離れた塀を飛び越え境内への侵入を果たす。

 

「不味い! キャスターとライダーに山門は任せる。但し無理はするな。俺は他のマスターと合流して言峰を迎え撃つ」

 

「お気を付けて耀司様!」

 

「ああ、キャスターもな!」

 

 言峰綺礼には前もって各マスターとでフォーメーションを組んで居たのでその陣形に言峰綺礼を誘い込む。

 

 前衛は伊丹と衛宮士郎。遠坂凛は基本的には後方からの前衛支援攻撃をするが、前衛に穴が出来そうな時には前衛に加わり言峰綺礼に対処する。

 後方からの支援攻撃はイリヤスフィールに任せる。

 

「一応考えてはいるのだな。しかし私には無意味だ」

 

 言峰綺礼は干将莫耶を持つ衛宮士郎に集中的に攻撃を始める。

 零観から毎朝の稽古を付けては貰っているが、言峰綺礼相手ではまだまだ付け焼き刃的なものでしかない衛宮士郎。

 

 衛宮士郎と戦う言峰綺礼の横からエアガンを撃とうとすると言峰綺礼は身体を入れ替え衛宮士郎を盾にする。

 

 遠坂凛の支援攻撃も混戦状態では行えず、言峰綺礼がイリヤスフィールに向かわない様な位置を取り拳を握り衛宮士郎に加勢をする。

 

 衛宮士郎の窮状を救うべく伊丹が彼らの間に身体を割り込ませ、言峰綺礼の打擲をエアガンの銃床で受け止め流す。

 流石の伊丹も衛宮士郎に声を荒げる。

 

「士郎! 君の実力はこんな物では無い筈だ! 今は力の出し惜しみをしている場合ではないぞ! 魔力の貯蔵は充分だ!」

 

 

 

 

 

 柳洞寺の山門前でも戦いは始まっている。

 山門と云う極めて狭い場所を守る為、敏捷性の高いライダーはその機動力が生かせず戦いは(つら)い物となる。

 

 片やギルガメッシュはその狭い空間に向けて数多の槍剣を集中的に射出するだけの簡単なお仕事となっている。

 

 それでもライダーは持ち前の抜群の敏捷性をみせギルガメッシュが放つ槍剣を躱しながら石段の下で距離を取るギルガメッシュに鉄杭を放つ。

 

「頭上の状況が判らん」

 

 ライダーが山門前に居ることは解っているが正確な位置までは石段の下からでは目視出来ないギルガメッシュ。

 

「ならば」

 

 ギルガメッシュは集中させていた着点をやや広目にして槍剣を射出する。

 

 これに因りライダーの回避行動が大きくなる。

(不味いですね。段々と山門から離されてしまう)

 

 ギルガメッシュがライダーの回避行動を誘導して山門をがら空きにさせる。

 

(しまった!)

 山門から遠ざけられてしまったライダーは、石段を瞬時に登り山門に突入するギルガメッシュを見る。

 

 

 

 

 

 伊丹は言峰綺礼が黒鍵を出さない様に近接戦闘を挑み、着剣したエアガンで彼を突きや袈裟斬りで斬り着け、そして向かってくる拳を銃で防ぐ。

 深い傷は負わせられずとも言峰綺礼の腕や身体に着実に傷を負わせていく。

 しかし伊丹も言峰綺礼からの拳や蹴りを腕や脚に当て流す度にダメージを負う。

 

 片や衛宮士郎は絶える事の無い様に弧を描く様に干将莫耶を振り下ろし、そして交差をさせて拳を躱す。

 

 伊丹と衛宮士郎、そして言峰綺礼が接近し過ぎて居る為に遠坂凛同様イリヤスフィールも後方からの支援攻撃が出来ずにいる。

 

 伊丹はこんな状況でも漫画やマニメにもなった銀河帝国と自由惑星連盟の小説のとあるシーンを思い出す。

(要塞前の混戦でトールハンマーが撃てないか…………そりゃクライスト大将も味方ごと撃つわな)

 

 とうとう衛宮士郎の干将莫耶が言峰綺礼を捉え彼の身体に傷を負わせるが、それと同時に言峰綺礼からの拳を胸と腹に受けて弾き跳ばされる。

 

「ぐはっ!」

 

 前衛の一枚が剥がれ、伊丹が言峰綺礼を牽制している間に遠坂凛が衛宮士郎をイリヤスフィールの前まで引き摺り無茶を言い放つ。

 

「戦える様になるまでイリヤを守っていて!」

 

「ああ、解った。暫く頼む」

 

 衛宮士郎に替わり前に出る遠坂凛に言峰綺礼は言う。

 

「凛、おまえの腕前は師である私が一番判っているのだぞ」

 

「さぁて、どうかしら」

 

 遠坂凛は伊丹の言峰綺礼への攻撃に合わせて拳を繰り出す。

 伊丹が着剣した銃を引くのと同時に遠坂凛が拳や蹴りを繰り出し、遠坂凛が拳を引くと伊丹が銃剣を繰り出している。

 

 息の合った二人の攻撃に言峰綺礼は防戦一方になり押され始める。

(くっ、厄介だな)

 

 距離を取ろうとする言峰綺礼に、そうはさせまいと間合いを詰める伊丹と遠坂凛。二人の攻撃は()まない。

 

 

 

 

 

 

 柳洞寺に突入を果たしたギルガメッシュは言峰綺礼と伊丹達の戦いをチラリと見る。

(なかなか遣るではないか、綺礼)

 

 そこにギルガメッシュを追ってきたライダーと空中に浮遊して待ち構えて居る蝶の様なキャスター。

 

「来たわねギルガメッシュ! ライダー、もう一働きして頂戴」

 

「貴女も存外に人使いが荒いのですね」

 

 キャスターは幾つもの円環を(まと)い、そこからギルガメッシュにビームを放つ。

 

 ライダーはギルガメッシュの背後を取る様に回り込みながら鎖の付いた鉄杭を放つ。

 

「誰の赦しを得て我を見下ろしている! 不敬であろう!!」

 

 ギルガメッシュがキャスターに対して槍剣を射出するが彼女は浮遊している高度を上げ躱す。

 

 キャスターの回避を見計らいギルガメッシュはライダーにエルキドゥを投げ放つ。

 

 

 

 

 

 伊丹はパスを通じてイリヤスフィールに指示を出す。

 

(イリヤ! 俺の三秒のカウントダウンの後に言峰の半径1メートルに君の使い魔を撃ち込んで土埃を巻き上げて奴をその場に釘付けにしてくれ。別に言峰に当たら無くても構わない。)

 

 継いで遠坂凛と衛宮士郎にも指示を出す。

 

(凛! カウントダウンが1になったら言峰から4メートル下がって、俺との距離も3メートル空けるんだ)

 

(士郎! 土煙が上がったら声を上げずに俺と入れ替わってくれ。土煙が上がるまでは絶対にその場に居るんだ! いいかっ、君が動くのは土煙が上がってからで声は出すな!! 二人してイリヤの壁になるんだ)

 

 土煙の中の言峰綺礼を起点てし衛宮士郎と遠坂凛はそれぞれ4メートルの距離を取り、なお且つ衛宮士郎と遠坂凛の間隔は3メートル空けろと伊丹は指示をする。

 

(皆、準備はいいか? 三…………ニ…………一)

 

 遠坂凛がバックステップで言峰綺礼から瞬時に距離を取り出す。

 距離を取る遠坂凛の行動に言峰綺礼も一旦後ろに下がろうとするが伊丹の攻撃がそれを許さない。

 

(…………ゼロ!)

 

 

 

 

 

 ライダーはギルガメッシュが投げ付けたエルキドゥに捕まる。

 

「えっ、解けない!?」

 

 エルキドゥにより拘束され身体の自由が奪われたライダーにギルガメッシュの数多の槍剣が向く。

 

 するとギルガメッシュの背後に回り込んだキャスターがギルガメッシュにビームを降り注ぐ。

 

 ギルガメッシュはエルキドゥに囚われ動けないライダーの背後に回り彼女を盾にしてキャスターに槍剣を撃ち込む。

 

 急所は躱したもののかなりの傷を負うキャスターはギルガメッシュに空間固定の魔術を懸け、彼を動けない様にした後ライダーの元に降り立ちエルキドゥを解こうとする。

 

 しかしどうやってもライダーを絡めている鎖が解けない。

 

 とうとうギルガメッシュが空間固定を破りキャスターに言う。

 

「そのエルキドゥは相手の神性が高い程強い効果がある。雑種ごときには解けぬぞ」

 

 キャスターとライダーは二人が塊〈かたま〉っている最悪の状況の意味を理解した途端、空からギルガメッシュの数多の槍剣が降り注ぐ。

 

 キャスターを突き飛ばすライダーは足に致命的な一撃を受け動けなくなる。

 

「ライダー!? 貴女────」

 

「キャスター、ギルガメッシュを────ぐふっ!」

 

 最後まで言い終える事の無いライダーの腹部にギルガメッシュの剣が突き刺さる。

 

 瀕死のライダーはキャスターに呟く。

 

「私には構わず…………」

 

 キャスターはギルガメッシュに向き合う。

 

「絶対に許さない!」

 

「なら我を愉しませよ、雑種」

 

 お互いに回避行動を取りながらキャスターはギルガメッシュにビームを浴びせ懸け、ギルガメッシュは彼女に槍剣を浴びせる。

 

 ギルガメッシュの槍がキャスターを捉える。浮遊も出来ず地に落ちたキャスはギルガメッシュの背後に浮かぶ槍剣に自分の死を予感する。

 

「あれが放たれたら私はお終〈しま〉いです…………申し訳ありません、耀司様…………」

 

 三週間余りの伊丹との生活を思い返すキャスター。

(楽しゅう御座いましたわ、耀司様)

 

 片手を上げ槍剣を放とうとするギルガメッシュの手がピタリと止まる。

 するとキャスターを庇う様に前に現れる一体のサーヴァント。

 

 今まで見た事も無いサーヴァントに面を喰らうギルガメッシュ。

 

「王の愉しみを邪魔立てするとは万死に値するぞ、雑種」

 

 

 

 

 

 ギリギリまで言峰綺礼を牽制した伊丹も何とか1メートル以上の距離を取り、イリヤスフィールは何本もの髪の毛から作り出した使い魔を放ち、言峰綺礼の周囲半径1メートル以内に着弾さる。

 

 爆音と共に辺りは土煙で視界が遮られる。そんな視界が遮られる状況の中、伊丹と衛宮士郎は入れ替わる。

 

 気配を消しながら言峰綺礼の背後に回り込む伊丹。

 そこには片膝を着き小さく踞〈うずくま〉り身を固め、防御姿勢をとっている言峰綺礼が居る。

 

 伊丹は好機と捉え言峰綺礼の背後から彼の頭部を左手で押さえる。

 

「何故貴様が私の背後に────」

 

 意表を突かれた言峰綺礼の喉元に右手で握ったナイフを当て首に沿って滑らす。

 

「王手だ。詰んだな言峰」

 

 頸動脈と気道を切られた言峰綺礼の首からはヒューヒューとした呼吸音と共に大量の血が噴き出す。

 

 伊丹は仰向けに倒れもがく言峰綺礼の噴き出す血を浴びながら馬乗りになり、肋骨にナイフが通るように刃を横にして胸に差し込み捻〈ねじ〉る。

(こいつの心臓って────)

 

 目を見開いた言峰綺礼の眼球の瞳孔は、みるみる拡がっていき彼のハイライトが消える。

 

 

 

 

 

「穢れし者の元凶よ。己が無力を思い知るが良い、雑種」

 

 アヴェンジャーはギルガメッシュの放つ槍剣を全身に浴び手足が千切れる程の瀕死の重傷を負う。

 口からかなりの量の吐血をしてもなをニヤリと口角を上げるアヴェンジャー。

 

「げふっ…………お前さん…………やっちまったなぁ」

 

「後は死ぬだけの雑種が吠えるではないか」

 

 死ぬのも時間の問題のアヴェンジャーだが、その時間が彼に与えられた最期の宝具の真名開放に必要なものだった。

 息も絶え絶えのアヴェンジャーがギルガメッシュに向かい口を開く。

 

「ヴェルグ・アヴェスター────」

 

「何っ!? ぐはぁっ…………」

 

 ギルガメッシュの全身から血が吹き出し、手足の感覚が無くなる。

 

アヴェンジャーの宝具、ヴェルグ・アヴェスターは自身が受けた傷を相手にコピーする物。但し即死してしまっては意味がない。瀕死の重傷を負って初めて威力を出す宝具である。

 

 今度はギルガメッシュが息も絶え絶えの瀕死の重傷を負う。

 

「きっ、貴様!? 我に何を…………げふっ!」

 

 吐血しながら地面に倒れ込むギルガメッシュ。

 

 伊丹とキャスターはアヴェンジャーの元に駆け寄り、キャスターが治癒の魔術を懸けるがアヴェンジャーの姿はどんどん薄れていく。

 

「おっさん、キャスター…………俺はもうお終いだ…………キャスター、無駄な魔力は使うな…………処で言峰の野郎はどうした?」

 

「倒したぞ、倒したんだぞアヴェンジャー! お前のマスターのバゼットに対するけじめは取らせたぞ」

 

「そっかぁ、安心したぜ…………ギルガメッシュも恐らく瀕死の状態だ。後は…………任せたぞ、おっさん。いや…………もう一人の…………アヴェンジャー…………そしてこれを…………俺に飲ませろ────」

 

 最期の言葉を残し、伊丹とキャスターにギルガメッシュの事を託し消え去るアヴェンジャー。そこには小さな黒い小石が遺されている。

 

 意味が解らないが、伊丹はアヴェンジャーが遺した小石を拾いポケットに仕舞うとキャスターと共に、倒れ込み動けないギルガメッシュに近付く。

 

「ざっ、雑種ごときが…………我を見下ろすな…………不敬で…………あろう…………げふっ! キャスター、我に治癒の────」

 

 伊丹はキャスターに由って強化して貰った体で、全ての想いを噛み締めた様な歪んだ笑みを浮かべてギルガメッシュを何度も蹴り付け、馬乗りになり何度も打擲する。

 

「我に…………向け打擲…………するとは…………雑種」

 

「いつまで貴様はそんな口が叩けるんだ!」

 

「ぐはっ、止めろ雑種が…………いや道化…………その不敬を…………赦す────」

 

 歪んだ笑顔のままの伊丹の打擲は止まらない。

 キャスターを召喚してからの事が走馬灯の様に思い出され、この聖杯戦争の理不尽さを叩き付けるかの様にひたすらギルガメッシュを打擲する。

 そんな伊丹は凍り付いた笑顔のまま涙を流しギルガメッシュの返り血を浴びて再び紅く染まる。

 

「俺は雑種でも道化でも無い! キャスターのマスターの伊丹耀司だ! さあっ、伊丹耀司と言ってみろ!!」

 

 伊丹の終わりの無い打擲にギルガメッシュの顔は原型を留めない程に腫れ上がるが、伊丹の拳も腫れ上がる。更にはギルガメッシュの指を折り始め、そのポキリとした音は十回境内に響き渡る。

 

 いつもとは違う非情な伊丹に、キャスターですら声を掛けられないでいる。

 

 ギルガメッシュは口から血を吐きながら伊丹に懇願する。

 

「止めて…………」

 

 僅かに開かれている瞳には恐怖の色さえ伺える。

 

「伊丹…………耀司…………」

 

「何を言っているか聞こえないぞ、ギルガメッシュ!」

 

「伊…………丹耀…………司…………さん────」

 

 とうとうギルガメッシュの意識が無くなる。すると肩で大きく一呼吸した伊丹も意識を無くしギルガメッシュに覆い被さる様に倒れ込む。

 

「耀司様っ!」

 

 倒れた伊丹をキャスターは抱き抱えるが、伊丹は意識を取り戻さない。

 

「耀司様っ!? 耀司様っ! 耀司様っーー!」

 

 

 




最後まで読んで頂き有り難う御座います。

虚空屍が苦手な戦いの描写満載です。虚空屍としてはかなり細かく描写したつもりなのですが、如何だったでしょうか?

ではでは…………


虚空屍
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。