この第43話(完)は聖杯戦争後の一ヶ月後位の話になります。
*活動報告へは虚空屍の名前をポチっとして貰うと跳びますので、宜しかったらそちらも目を通してやって下さい。
聖杯戦争が終わってから一ヶ月が経ち、生き残ったマスター達は日常を取り戻していく。
全壊した衛宮邸は聖堂教会からの全額出資での再建と、柳洞寺は聖堂教会の匿名の巨額な寄附と檀家からの寄附で復旧工事中である。
柳洞寺が工事中であるため伊丹とキャスター、そして桜とライダーは柳洞寺の離れを明け渡し、バゼットとロード=エルメロイⅡ世が帰国して屋敷が空くため彼等が
聖杯戦争生還者は聖堂教会の心理カウンセラーに依るカウンセリングを受ける事ができ、毎晩の様に聖杯戦争での戦いを夢に見る伊丹はそれに参加をしている。
ライダーは桜が聖杯と繋がった後遺症とも云うべき半ば無尽蔵の魔力が桜に残された為、サーヴァントととして聖杯戦争後も残り桜を見守っている。
遠坂凛は自宅に戻り生活を送り、衛宮士郎は柳洞寺に残り柳洞一成と共に寺の復旧工事を手伝っている。
イリヤスフィール、セラ、そしてリーゼリットは郊外の屋敷に戻り、冬木での生活を送る事にしている。
人形師から左手の義手を貰ったバゼット・フラガ・マクレミッツとロード=エルメロイⅡ世こと、ウェイバー・ベルベットは時計塔に戻り、バゼットは封印指定執行者に復職し、ロード=エルメロイⅡ世は今回の聖杯戦争を記し魔術協会に報告をする。
学園も部活動などの再開を認め、桜も弓道部での練習に
間桐慎二は少しづつではあるが学校に通い出したが、桜の居る弓道部を退部し授業が終わると桜に会わないように一目散に帰宅している。
間桐臓硯もキャスターの管理下に置かれて居るために何も出来ず、間桐家伝来の魔術を含めた品々を手放した事を薄暗い屋敷で只々後悔しているばかりである。
衛宮士郎、遠坂凛そして桜が通う穂村原学園もあと数日もすれば春休みを迎える。
教師生活を送る伊丹の元に防衛省からの辞令が届く。
それは4月1日を以ての原隊への復帰命令書である。
「キャスター、いよいよ
「私は耀司様の
この原隊復帰に伴う転勤に桜は寂しさを口にする。
「お父様が転勤となると私は転校しなくてはなりませんね…………」
「そうなんだが…………桜は穂村原学園に居たいかい?」
「確かに居たいのですがお父様やお姉様とも離れたくはありませんし…………」
桜の想いに伊丹とキャスターが考え込む事暫し。
「もし良かったら桜は卒業まで此方に残るかい? 取り敢えずライダーと間桐家に残って彼等を監視するってのは。養子縁組の件は此方で弁護士さんを交えて進めておくから」
「そうよ桜。私達は離れていても常に一つよ。なんなら寂しくなったら直ぐにでも飛んで行くわ」
キャスターの事だから本当に飛行するんだろうなと思う伊丹。
「私は卒業まで此方に残させて貰います。有り難う御座います…………お父様、お姉様…………」
「藤村先生にもお願いしておくから、何か有ったら藤村先生に相談しなさい。勿論私に連絡をくれても良いんだぞ」
桜も今後の事で安心したのか寝室へと向かい、居間には伊丹とキャスターが残される。
「たった二ヶ月の教師生活なんて聖杯に仕組まれていたのか?」
「もしそうでしたら聖杯は耀司様を選んでいたのですわ」
「聖杯のバグかぁ…………」
そう云えば、と話を繋ぐ伊丹。
「キャスターの戸籍の件、遠坂さんの
「まあっ!? 有り難う御座います、耀司様! これで入籍も出来ますわね」
「勿論だ! これでキャスターも日本人の仲間入りだな。日本へようこそ!」
学園が春休みに入って直ぐに伊丹とキャスターは冬木教会での結婚式の日を迎える為、挙式の前日に顔見知った者達が手作りのパーティーを開いてくれる。
参加者皆が歓談し、主賓の元に酒瓶を片手に来る者もいる。そんな一人である零観。
「ほらほら伊丹さん、先ずは一杯どうぞ。しかし葬式ばかりが寺の役目ではりませんぞ! 仏前での挙式もありましたものを…………」
「えっ!? 仏前の挙式は初めて知りました!」
「檀家の方々でさえ、恐らく知らないでしょう。しかし結局伊丹さんとはお突き合いが出来ませんでしたな。その代わり士郎君とは毎朝毎晩お付き合いをしておりますぞ。いや~、なかなか以て上達が早い!」
桜に手を引かれて間桐臓硯と間桐慎二が恐る恐る挨拶に寄る。
「キャスターのマスター。今後もお手柔らかにお願い申す。これが儂の唯一つの願いじゃ」
伊丹は間桐臓硯の細やかな願いを聞き答える。
「臓硯さん。それは桜とライダーに委せますんで────」
「それが恐いのじゃ!」
間桐慎二は衛宮士郎と遠坂凛、そして桜が話している輪を見付けそこへ加わる。
「よう、衛宮。ちゃっかり勝ち組かよ。衛宮のくせに」
一応周囲を気にして小声で話す間桐慎二に衛宮士郎は答える。
「それは違うぞ慎二。勝ちは伊丹先生だ。俺や遠坂、そして桜は生き残っただけだ。慎二も生き残り組だろ」
「ちっ、衛宮が衛宮のくせに生意気なんだよ。だから衛宮なんだよ」
間桐慎二は自分の劣等感を衛宮士郎にぶつけるが、旧友でもある彼の言動を気にしない衛宮士郎。
「だが慎二。俺や遠坂と桜が慎二と違うのは最後まで戦ったかどうかだけだよ」
「けっ、どうせ僕は最後まで戦わなかったよ。大体サーヴァントを桜に返した時点で僕には関係の無い話なんですけど~~」
衛宮士郎に悪態を着く間桐慎二に、周囲に気が付かれ無い様に桜が睨む。
「ひっ、ひぃ~~────」
数歩後退りした間桐慎二は脱兎の如く部屋から飛び出す。
「ん? どうしたんだ慎二の奴」
いきなり居なくなる間桐慎二を不思議がる衛宮士郎にすかさず桜が答える。
「お兄様はトイレにでも行かれたのですわ、うふふっ」
時が経つのは早いもので、時計は深夜を指し示している。
伊丹とキャスター、そして桜は明日の挙式の事もありパーティー参加者と企画してくれた人達に礼を言い家へと帰る。
パーティー会場から家までは然程遠く無い為、伊丹を挟んだキャスターと桜は自然と彼の手を握り歩き出す
「キャスター、聖杯戦争最後の日曜に買い物をした時に言った言葉を覚えているか」
「勿論ですわ。春物の服を買い、この日を迎えると言いました」
「本当に迎えられたな。有り難うキャスター、桜。俺は幸福者だ」
「それは私とて同じです」
「あの時にお父様に助けて頂いたからこそ今の私があります。有り難う御座いますお父様、お姉様」
「あれから一ヶ月が過ぎたのかぁ…………早いなぁ…………」
伊丹は感慨深げに呟く。そして毎日思う聖杯戦争からの奇跡的な生還。未だにあの戦いを夢に見る事もしばしばある。その度に飛び起きて傍に寝ているキャスターの寝顔を見て安心する伊丹。暫くはこんな事が続くのであろう。
挙式当日、朝早く起きた伊丹とキャスター、そして桜は朝食を済ませ支度をした後、タクシーを呼び教会へと向かう。
この挙式の日の為にギルガメッシュは教会の改装を行い、内装は全てが金色に覆われている。
「ギルガメッシュ、凄い事になってるな。有り難うな」
「はい、伊丹さんとキャスターさんの人生の
ギルガメッシュは死ぬ程
式には衛宮士郎や遠坂凛を始めとした生徒達、藤村大河や教師、イリヤスフィール達、特戦群からも剣崎を始めとした面々が揃う。わざわざ時計塔からもバゼットとロード=エルメロイⅡ世が来日した。
伊丹に会いに来た特戦群の剣崎が声を掛ける。
「よう! 久し振りだな、アヴェンジャー」
セイバーのコードネームを持つ剣崎の一言に凍り付く元聖杯戦争関係者達。
「ばっ、馬鹿! コードネームで呼ぶな!」
伊丹は慌てて彼の口を塞ぐ。
「ここでは絶対にコードネームで呼ぶな。さもないと剣崎、貴様はこの世の物とは思えない災難に巻き込まれるぞ」
「あっ、ああ。心得た…………しっかし美人な嫁さんだな~」
白いタキシードを着た新郎の伊丹が新婦の居る控えの間に入ると、ライダーと桜、そして純白のウェディングドレスを纏ったキャスターが居る。
キャスターの着ているウェディングドレスは彼女が三日で仕上げた物である。
ウェディングドレスを着たキャスターに目を奪われるが、ドレス姿のライダーにも驚き目を奪われた伊丹。
間髪を入れずに桜とキャスターから突っ込みが入る。
「お父様、今ライダーに目が釘付けでしたわ」
「私と云う者が有りながら…………」
「いやいや、済まん。しかしライダーのドレス姿も満更ではないな。正直驚いたよ」
身長のあるライダーの姿はファッション・ショーのモデルの様でもある。
伊丹はキャスターに身体を向けて手を取り彼女を引き寄せ抱き締める。
「綺麗だよキャスター、いやメデイア」
「有り難う御座います、耀司様」
カレン・オルテンシアが弾く重厚なパイプオルガンの演奏と共に礼拝堂の扉が開かれ、入口からバージンロードを歩く伊丹とメデイア。
祭壇の前まで歩みを進めるとディーロ司教が二人に聖書の一節を引用した話をする。
そして二人に誓いの言葉を言わせた後、指輪の交換を勧める。
伊丹とメデイアが指輪の交換を済ませるとお互いに誓いの熱い口づけを交わす。
式は滞りなく進み、伊丹とメデイアは控室に入り一息
「メデイア、皆が外で待っているぞ。そろそろ行こうか」
「ええ、耀司様」
控室をでる前に伊丹とメデイアは抱き合い口付けを交わしお互いが想いを口にする。
「君を愛している、メデイア」
「私も貴方を愛しています、耀司」
伊丹とメデイアが礼拝堂の扉を開けると参加者が両側に分かれて並び伊丹とメデイアの為に路〈みち〉を作っている。
二人は路をゆっくりと歩きながら皆が放るライスシャワーを浴びる。
「皆、有り難う」
「皆様、有り難う御座います」
そしてメデイアは集まった参加者に背を向け、抱えていた色採やかな花をあしらえたブーケを後ろに弧を描く様にトスをするのである。
──終わり──
後日、伊丹に訪れる災難は誰にも判らない──
そう、誰にも…………
最後まで読んで頂き有り難う御座います。
第43話をもちまして『Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり』の本編を完結させて頂きます。
虚空屍のFate worldは楽しんで頂けたでしょうか?
虚空屍が崩壊させてしまったFateのキャラクター達(キャスターとギルガメッシュは除く)と一旦お別れですが、続編でたまに顔を出すかもしれません。
ではでは皆様の感想をお待ち致しております。
時折、『キャスター 地獄の大王』編が投稿されたりしますし、それと第42話での話の分岐も考えております。
読んで下った皆さん、評価やお気に入りを付けて下さった方々、感想を書いて下さった方々、活動報告にまで目を通して下さった方々、有り難う御座います。
皆さんが居て下さり話を完結させる事が出来ました。正直言いまして、暖かい感想を頂いた事も投稿を続けられた1つでもあります
一度、25話程投稿した時に全話を削除してしまうハプニングなど有りそれまでお気に入りを付けていた方々、読んで下った方々にご迷惑をお掛けした事もありました。あの節は申し訳御座いませんでした。
この話の続編を新規の話として後日投稿いたします。これは主人公伊丹の本来のフィールドである『Gate/自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』での話です。
この話ではキャスターが知らなかった伊丹の青年期を知り涙します。
宜しければ此方にも目を通して頂けたら幸いです。
ではでは…………
虚空屍