Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり   作:虚空屍

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新年おめでとう御座います。

新年からのアクセス、有り難う御座います。

これはふと思いついた小噺です。

因みに、いつ見た夢を初夢とするか諸説有る様ですが、この話では大晦日から元日の朝に掛けての夢ですから虚空屍的には初夢ではないと踏んでいます。


お正月から鬼斑と玉之丞
斑鬼と白猫の玉ちゃん


「ぐわぁーーーーっ! はぁーーはぁーーはぁー────」

 

元日の日の出前、大声を上げて目覚め跳び起きる斑目久太郎(まだらめきゅうたろう)

それに驚き一緒に寝ていた布団から跳び出す玉之丞。

 

「にゃん!」

 

ここは江戸の長屋の一室。未だに長屋暮らしを続けている無職の元加賀藩剣術指南役、無双一刀流免許皆伝の斑鬼(まだらおに)こと斑目久太郎。箪笥以外何もない部屋だが正月に向け小さくはあるが鏡餅が供えられている。

 

「玉之丞? 玉之丞!」

 

「にゃ~ん?」

 

辺りが薄暗いが故、瞳孔が開きクリクリ(まなこ)の愛猫が傍に居る事にほっと胸を撫で下ろし、玉之丞を抱き寄せる頭を撫でるとそれに応えるかの様に玉之丞はゴロゴロと喉を鳴らす。

 

「ゴロにゃ~ん」

 

(お前は可愛い奴だなぁ~ )

 

しかし斑目久太郎は元日からの夢を思い返す。

( むむっ、あれは一体何なのだ? 山深き寺の門番やらあの戦いは!? 剣を交えた相手も南蛮の者! 斬るべしっ! 斬るべしっ! 斬るべし~~ぃ処ではないぞ! (いな)! (まさ)に斬るべしだった! それに《ますたぁ》とは何だ! 確か伊丹とか云う輩を主殿と呼んでいたな………… )

 

斑目久太郎にゴロゴロと喉を鳴らしながら頭を擦り付ける玉之丞。

 

( しかしあの臨場感はただ事ではない! (いま)だあの剣の手応えがこの手に残っている………… )

 

生き生きと刀を振るう自分自身にも驚いてもいる。

 

( 拙者には未々(まだまだ)人相手に(やいば)を向け剣を振るえると云うお告げなのか………… )

 

辺りはまだ暗いのだが日の出前の朝焼けで徐々に明るくなりつつある。

( おおっ、これはいかんいかん! )

 

斑目久太郎は身支度を整え懐に玉之丞を忍ばせ長屋を出る。

 

 

 

 

 

雪の上を歩く事暫し、斑目久太郎は猫山の猫神の(やしろ)に着き、背負っていた七輪で秋刀魚を焼き賽銭箱に賽銭を投げ入れ昇った太陽に玉之丞と共に手を合わせる。

 

( 猫神様、拙者が視たあの現実感のある夢はなんだったのだ………… )

 

秋刀魚を焼く香ばしい香りに釣られ現れた猫神。

 

玉之丞は猫神が現れる気配を逸早く気が付く。

 

「にゃん!」

 

「おお、お主等か。久しいのう。何やら只為らぬ夢をお主は視たようじゃな」

 

( ぬっ! 猫神様、やはりお見通しか! )

 

「それは遠い来世での《ふぇいと》の話じゃて、気にするでない。ではさらばじゃ────」

 

「あっ! 待たれよ────」

( ちっ、行ってしまわれたか…………しかし来世の《ふぇいと》とはこれまた奇異な話だな………… )

 

初日の出を拝み猫神から納得はしないが答えを得た斑目久太郎は長屋に戻る。

 

正月と云う事も有り斑目久太郎は奮発をし雑煮と煮しめ、そして酒をあさげに用意し、玉之丞にも煮干し三匹と猫飯(にゃーはん)を用意をする。

 

( くっ、お節も用意出来ないとは武士として情けない………… )

 

しかし斑目久太郎は気持ちを入れ替え玉之丞を抱き上げる。

 

「新年おめでとう、玉之丞。今年も宜しく頼むぞ! さあ正月だし拙者も奮発したのだぞ! 玉之丞も新年を共に祝おう」

 

「にゃ~、んにゃ(早く仕事をみつけろよ! )」

 

( 国元に残したお静とはるが、ひもじい思いをしておらねば良いのだが…………今年こそは仕官をするぞ! )

 

 

 

 

 

国元に残されているお静とはるは料亭で作られた雑煮とお節を親子二人で美味しそうに摘まんでいるのを知らない斑目久太郎である…………。

 

 

 

 

 

                ──おわり──

 

 

 




最後まで読んで頂き有り難う御座います。

斑目久太郎としては夢として来世の自分を見てしまったと云う事ですかね。

ではでは…………


一匹の白猫とで独り寂しく正月を過ごす虚空屍
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