Fate/元自衛官 冬木にて、斯く戦えり   作:虚空屍

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アクセスして頂き有り難うございます。

話は1月31日(木)~2月1日(金)となります。

時系列的にもゲームやアニメでの初日になります。


08 嬉しゅう御座います。耀司様

 今日の朝一のニュースは各放送局が、新都のオフィス街での原因不明の昏睡事件を大々的に流している。

 

 伊丹の部屋のテレビにもそれは映し出されとおり、二人は朝食を摂りながらこのニュースを視る。

 

「大成功だね、キャスター」

 

「思いの外、上手くニュースになりましたわね」

 

 如何にも当然とばかりに胸を張るキャスター。

 

「この昏睡事件が一回切りで、しかも死者も出さなかったんだからね。流石だよ。大手柄だよ!」

 

「耀司様からお褒めに預かり光栄すわ!」

 

 この昏睡事件を他のマスターが知り、何らかの行動を起こして来ると伊丹は確信する。しかも勘の良いマスターならば、その矛先がキャスターに向けられる事も織り込み済みである。

 

 出勤の支度も済み、山門に向かう伊丹とキャスター。

 

「耀司様、行ってらっしゃいませ~!」

 

 今日も山門で、伊丹が見えなくなる迄ブンブンと手を振り送り出すキャスターに、伊丹は手を上げ軽く振り返す。

 

「ああ、行って来るよ。キャスター~~!」

 

 

 

 

 

 出勤途中の伊丹は昨日保護をしたバゼットの扱いに少々悩む。

 

(流石にもう零観さんには自分の知人ですから部屋を貸してくれとも言えないし、しかもこれまた異国の美人。妬まれそうだ…………仕方がない、仕事帰りに不動産屋で部屋を探すとするか)

 

 当面の措置として、伊丹はバゼットを同じ離れの空き部屋に移し、キャスターにバゼットが見付からないように結界を張らせる事を考える。

 

 あくまで新居が見付かるまでの事である。

 

 

 

 

 

 今日は珍しく遠坂凛が一時間も早く登校している。何やら家中の時計全てが一時間進んでいたらしい。

 

 休み時間中に学内を彷徨いてた伊丹はそれを知り、今夜半にアーチャーが召喚されると推測する。

 

(物語の流れで来たか!? うっか凛のお手並み拝見といかせて貰うよ…………)

 

 するとキャスターから念話が届く。

 

(耀司様。本日の学内は僅かにですが不穏な空気が御座いましてよ)

 

 このキャスターからの知らせに、伊丹は物語での学園内の出来事を思い出す。

 

(もしかしてライダーの結界とか?)

 

(恐らくはその通りかと)

 

 伊丹は間桐慎二の行動に舌打ちしつつも、恐らくは物語の通りに事が動き出すと確信する。

 

(ちっ、あのワカメがいよいよ動き出したか! 結界発動まではまだ時間が掛かるんだよね?)

 

(恐らくは一週間程かと…………)

 

(了解したよ。遠坂凛が気が付かない程度ならまだ結界絶賛作成中って事かな? まあ事が起きるまでは泳がせておくよ)

 

 とうとう学園でも動き出し始めた聖杯戦争。

 

 学内で暴れるのはルートは違えどランサー、アーチャー、ライダー、セイバー、キャスターの五騎である。

 

 恐らく明後日には起こるであろう衛宮士郎を巻き込んだ、ランサーとアーチャーの青と赤の戦いを待つ伊丹。遠坂凛がアーチャーを召喚すると二日後に戦いが始まるからである。

 

(キャスター、各陣営に放った使い魔からの監視を厳にしてくれ)

 

(畏まりました、耀司様)

 

 

 

 

 

 使い魔からの報告の映像は直接キャスターに伝わるが、その映像は水晶玉でも視る事も可能でもある。しかし水晶玉で視る事が出来る映像は、一匹の使い魔から一つの映像しか視る事が出来ない。

 そこでキャスターはテレビに水晶玉を乗せ、どういう魔術でかモニターを九分割して一度に九匹の使い魔の映像を効率的に監視しているのである。

 

(こんな便利な使い方があったなんて、私でも驚きです! まるでセキュリティーサービスの監視映像パネルの様ですわ! 褒めて、そして私を強く抱き締めて下さいまし、耀司様!!)

 

 

 

 

 

 最近、新都で女性が殺された事もあり学園では下校時刻を早める事も検討されている。

 

 伊丹は殺人犯が間桐慎二に使役されているライダーか間桐臓硯であると、物語を思い出す。

 

 間桐慎二ならライダーへの魔力供給、臓硯なら自らの身体の維持の為の殺人である。

 

 今回は使い魔の追跡によりライダーによる犯行だと判明する。

 

(しかし間桐慎二も遠慮無しだな。一度銃床で殴り付けないといかんな! 駄目だ、死んでしまうか?)

 

 間桐慎二も、義妹の間桐桜が間桐魔術の後継者と知る迄は然程ひねくれてはおらず、そして若かりし間桐臓硯も、純粋に根源を目指していたのだが、数百年もの時の流れの内に思考が歪んでしまった様である。

 

「はぁ~、歪んでるよなぁ~…………」

 

 其々の家庭事情を考え深い溜め息をつき呟く伊丹であるが、その声に突然生徒会室から顔を出す柳洞一成。

 

「何が歪んでいるのですか、伊丹先生? なんなら衛宮に放課後にでも直して貰っては如何ですか?」

 

 不味い事を聞かれたと思った伊丹だが、大したことは口にしてはいない。

 

「いやね、物ではなくて心かな~、時の流れの所為かなぁ~ってね」

 

 不思議顔の柳洞一成が尋ねる。

 

「伊丹先生、それはそもさんですか?」

 

 いやいやと頭を横に振る伊丹。

 

「せっぱでもないぞ!」

 

 

 

 

 

 放課後の伊丹は学園内を巡回と称して彷徨く。

 

 学園での戦闘等を考慮し徹底的に学園内の構造を頭に、と云うよりは身体に憶えさせる為である。

 

 学園に赴任した時からこの行為を行っていた為、目を瞑っても学園内を移動出来る程に成っていた。

 

 彷徨きながら考えていると、数日後には衛宮士郎が倒れるであろう廊下に来ていた。

 

(そうだよな、恐らく明後日に衛宮士郎はここで一度死に懸ける、と云うよりマジで死にます5秒前って感じだったよな。いや、死ぬんだよ!

 しかしそれにどう絡むかだよな?

 本当に居残りは衛宮士郎一人なのか?

 他の生徒が居ては不味いから下校時間を早めるよう強く進言でもしてみるか。

 話の流れでは間桐慎二が衛宮士郎に居残りをさせる筈なんだけど、一応衛宮士郎が帰らない様な段取りは必要だな…………何だか策を弄する殺られ役の悪役みたいで嫌だなぁ…………はぁ~、帰ったら玉ちゃんと遊びたい…………)

 

 何時の間にか歩みを止め、窓枠に腕を乗せ頬杖を付き真っ赤な夕焼けを眺め、歪んだ戦いに身を投じる生徒を想い深い溜め息をつく伊丹である。

 

(嗚呼…………富士の裾野が懐かしい────)

 

 

 

 

 帰宅した伊丹はキャスターと明後日の学内での出来事とそれの対処行動を確認する。

 

「キャスター、申し訳ない! こんな分の悪い賭けに付き合わせてしまって…………」

 

 伊丹はアーチャーの行動の予想が難しい事から、キャスターに土下座をして謝る。

 

「遠坂凛に、キャスターが衛宮士郎を助けたと云うのを見せ付けておきたいんだ。何せ妹の桜の想い人であることを知っているし、凛自身も気に掛かっている人物でもある訳だしね」

 

「耀司様、謝らないで下さいませ。私の行動を見れば遠坂凛も少しは此方を信じてくれるとは思いますし」

 

「そうなってくれれば良いのだけれど…………でも本当に俺も行かなくていいの?」

 

 一抹の不安を抱え、キャスターに訴える伊丹。

 

「カードゲームと同じだと言ったのは耀司様ではありませんか。耀司様と云うカードはまだまだ手元に残して置かないといけません!

 寧ろ、居て頂いたら足手纏いになりましてよ!」

 

「そうだよな。俺が居たらキャスターのスベスベ生足を足引っ張るよな、ムフッ!」

 

 善からぬ妄想を膨らます伊丹。

 

「あらっ? 耀司様、鼻血が…………」

 

「へっ?」

 

「耀司様~、何やら厭らしい事でもお考えになっていたので~?」

 

 キャスターは伊丹の鼻の穴にティシュペーパーをズボッと詰め込む。

 

「どうもすんません。寝る前に少し玉ちゃんと遊ばないか?」

 

 善からぬ妄想から話を切り替える伊丹に、玉之丞と遊ぶのなら仕方がないとキャスターは席を起つ

 

「そうですわね。玉ちゃんと戯れましょうか」

 

 二人で山門に出向くとアサシンと玉之丞が既に戯れている。

 

「アサシン、ちょっと宜しくって」

 

 キャスターは声を掛けるや否や、素早くアサシンから玉之丞を取り上げてしまう。

 

 キャスターに捕らわれた玉之丞は、伊丹とキャスターに揉みくしゃにされアサシンから呆れられてしまうが、心が癒され満足した二人は一日のストレスから解放され寝床に就く。

 

 

 

 

 

 深夜、キャスターが放っていた使い魔が、遠坂邸とライダーの新たな動きを見付ける。

 

 伊丹が朝に目覚めるとキャスターから、遠坂邸とライダーに夜中に動きがあったと報告を受ける。

 

 遠坂邸のアーチャーの召喚の事と学校近くの住宅街で一家四人の内、三人がライダーによって刺殺されたとの事だった。

 

 知っていた事件とは云え、キャスターから報告を受けた伊丹は、一般人の被害をこれで最後にしたいと思い悩んでいた。

 

 結果、この一家惨殺事件により学園での部活以外の生徒は、夕方迄居残る事が禁止される。

 

 

 

 

 

 今日も何事も無く仕事を終えた伊丹は、退勤前の日課となった学園内の巡回と云う名の彷徨きをしながら頭の中でも明日の行動をシミュレートしていく。

 

(いよいよ明日から剣戟が始まるんだよな。本当に抜かりはないのか? 油断や隙は命取りだ。何せ相手は人間じゃ無いんだからな)

 

 気を引き締める伊丹である。

 

 

 

 

 退勤し学園を後にした伊丹は、新都に有る不動産屋を数件回り、バゼットに移り住んで貰う為に目欲しい物件案内のコピーを貰い、ホームセンターで買い物をしてから帰宅した。

 

 そんな伊丹を柳洞寺の山門守護のアサシンと玉之丞が出迎えてくれる。

 

「これはこれは主殿、本日は少々遅めのご帰宅で御座るな?」

 

「ああ、新都で不動産屋回りと買い物だよ。後でお土産を持って遊びに来るからな」

 

 伊丹はアサシンから玉之丞を受け取ると頭をワサワサと撫でる。

 

「ほう、《ふどうさんまわり》とはいかがな物で御座るか? お伊勢さん参りの様な事で御座るか?」

 

「う~ん、かなり的外れだぞ、アサシン。不動産回りとは長屋の部屋探しみたいなもんだよ」

 

「そうで御座ったか。お助けしたマスターの部屋探しまでされるとは主殿もなかなか骨が折れますな。後程のお土産の件、是非、お待ち申しておりますぞ」

 

「ああ、楽しみにしていてくれ」

 

 境内を歩き進み、一日のお務めを果たした修行僧達と挨拶を交わしながら部屋に着く。

 

「ただいまだ、キャスター」

 

「お帰りなさいませ、耀司様。今日も一日お疲れ様でした。直ぐにご飯の用意を致しますわ」

 

 キャスターは伊丹の背広をハンガーに掛け、味噌汁を温めたり、おかずの盛り付けなど夕食の支度をし出す。

 

「キャスターも色々としてくれてお疲れ様。後で皆が寝静まったら玉ちゃんと一緒に遊ぼうか?」

 

「はい、是非お供させて頂きますわ」

 

「夜に玉ちゃんと遊ぶのが日課になっちまったなぁ~」

 

「そうですわね。でも何と云いますか、一日の疲れが癒され明日への気力が湧いて来ますわ」

 

「確かに、だな」

 

 

 

 

 晩飯の後、明日の戦いに向け伊丹とキャスターは最終確認をする。

 

「明日からは、今迄みたいに準備をして終わりと云う訳じゃないよ。一歩間違うと命を落とす事になるからね」

 

「いよいよ各陣営のマスターとサーヴァントが直接対決致しますわね」

 

「ああ、戦いの幕が切って落とされる訳だよ、と云うか既に色々仕掛けている他のマスターも居るみたいだけどね」

 

 伊丹は腹を括りキャスターに言う。

 

「しかし明日の段取りに付いてはいくら考えても切りが無いのでもう考えるのは止めよう。

 逆に迷いが生じて隙を作る恐れがあるからね」

 

「そうですわ。今日はもうあれやこれやと考えるのは止めましょう。既に決めました事ですから」

 

 果たして此方が望む展開に持って行けるのか、初めてのサーヴァント同士の戦いとその後に起こるであろう事柄に介入する事への期待と不安が入り交じる。

 

 そんな時でも伊丹はいつでもこう思う。

 

 《なんとかなるさっ!!》

 

 

 

 

 

 夜も更け皆が寝静まった頃、伊丹は徐に鞄から取り出した、飾りが付いた三本の棒をキャスターにみせる。勿論伊丹、キャスターそしてアサシンの分である。

 

 その棒が何なのか解らないキャスターを連れ山門まで行くと早速アサシンが現れる。

 

「おお、やっとのお出ましで御座るな、主殿よ。些か待ち疲れ申したぞ。さあ土産を! 早よ、早よ!」

 

 勿体振りながらいかにも何処ぞの四次元ポケットから出すような伊丹。

 

「チャラララッチャラ~、猫じゃらしぃ~」

 

 伊丹のお土産は猫じゃらしである。伊丹はキャスターとアサシンにも棒を渡すと玉之丞の前で振り始める。

 

 するとそれに飛び掛かり、じゃれ合う玉之丞に皆が微笑み、キャスターとアサシンも猫じゃらしを同じ様に振り出す。

 

「おお、これは中々面白き物でござるな。ほぅ~れ玉之丞、ほらほら~」

 

「萌えますわっ! これは全く以て萌えますわ~。玉ちゃ~ん、こっち、こっち!」

 

 こんなにも皆が楽しげに笑える微笑ましい光景が何時まで続くのか、そしてキャスターからこの様な眩しい程に美しい笑みを無くさないと誓う伊丹である。

 

 

 

 

 寝床を準備した伊丹とキャスター。

 

「お願いが御座います。今宵、耀司様と肌を重ねとう御座います。どうかお情けを下さいまし…………」

 

 顔を朱らめながら三つ指を着き頭を下げるキャスター。

 

「…………解ってるよ…………明日からお互いに命を削るんだもんね…………実は俺も同じ気持ちだったんだよ」

 

 伊丹も顔を朱らめキャスターへの想いを口にする。

 

「嬉しゅう御座います、耀司様」

 

「ああ、俺もキャスターとこうしている事が出来て、とても嬉しいんだ…………」

 

 キャスターの頭を撫でながら手を取る伊丹。

 

「嗚呼…………耀司様…………」

 

「メデイア…………」

 

 こうして二人は抱き合い、初めて身体を交わした。

 

 




最後まで読んで頂き有り難うございます。

物語の流れを意識しつつ、そうならないように行動しなければならない伊丹とキャスター。

話を知っている二人の行動次第で全てが変わりますし、予想もしなかった事も起きると思います。

伊丹たちは最悪の結果を迎えずに済むのでしょうか?


ではでは…………

虚空屍

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