東方空闘犬 〜 元エースパイロット、幻想郷の旅 作:メビウスノカケラ
2015/11/29 リメイクしました。
終わりなき変化の無い日々。
視界に映り続ける白い天井、事務的な態度の看護婦、毎日やってくる一人の見舞い人・・・
「・・・ウェッジショット、今日の調子はどうだ」
「・・・・・・」
私はドーラ・ウェッジショット。かつては空軍のパイロットとして、この見舞い人アレク・モーリス中佐の下で軍務をこなしていた。
「・・・3年。あれからもうちょうど3年だな」
「・・・・・・」
3年・・・あの任務からもうそんなに経っていたのか。
「・・・くそ、何が記念式典だ。当の本人はこうして苦しんでるというのに」
2年前のこの日から、私の住む国では記念式典が開かれているという。なんでも、この私を賞賛するための式典だそうだ。
「あの日・・・あの任務、君達を引き止めていれば・・・」
「・・・・・・」
まただ。モーリス中佐は自分を責め立て始める。モーリス中佐は何も悪く無いというのに。こうなったのは自分が選んだ結果・・・
私の国は隣国に戦争を仕掛けられた。経済的に限界が到来し、頭の堅い大臣たちの他の方法に手を伸ばさないという単一政策もあわさった結果、戦争を起こし、国土を広げ、生産性を上げるしか無いというのが発端で、私の国に攻め入った・・・というのが今時会の戦争の理由。私達の勝利で早々に終わるという予測であった戦争は、始まってみるとそうじゃなかった。相手は『切り札』を隠していたのだ。
その切り札は『超巨大レールガン』。大きさは航空機の2倍はあろうと言うとこだろうか。人工衛星さえも外れなく撃ち落とせるほどの精密な照準、強力かつ豊富な弾頭の種類、更には他の侵攻を寄せ付けないほどのレールガンその物に対する防衛設備・・・
考えてみれば当然のことではあった。戦争が少なくなってきた現代に不釣り合いな軍需産業のみで経済を支えてきた相手の国は、兵器を作る技術水準が非常に高かったのだ。相手の技術力を甘く見たがために、戦争初期に陸海空軍の全3割がそのレールガンに葬られ、絶対的な戦力を持っていた私の国も相手に国土の4割を明け渡すことを許してしまうくらい戦力が落ち込み、戦争は長期化。終戦の日には1月で収束すると思われたこの戦争も、最終的に1年以上かかってしまった。
その戦争が終わる少し前、今からちょうど3年前だ。私・・・私達スワロー隊の5人はそのレールガンの少数での破壊という特殊任務を任され、それを引き受けた。成功確率は10%ほどだと聞かされていたが、他に方法もなく、孤児だった私には軍以外に帰る場所もない。私はモーリス中佐の反対を押し切り、その任務を引き受けたのだ。他のメンバーも家族の安心のため、自分たちのチームの誇りのためと、任務を引き受け、途中で辞めるということはなかった。
「あの日、レールガンは確かに破壊され、我が国は一転攻勢。終戦まで持ち込むことができた・・・だが、破壊した本人が一番苦しんでいる。それを知っている私には・・・とても・・・ぐっ・・・」
「・・・・・・」
泣かないでくれ、中佐は何も悪く無い・・・そう言いたいが声が出ない。レールガン破壊任務の際、私は首から下を動かすことができず、声も出せない体になってしまった。
あの日、レールガンの破壊を試みた私達スワロー隊は地上のSAM(地対空ミサイル)やAAガン(対空機銃)、そのレールガンの防衛を目的とした戦闘機の特殊部隊、そしてレールガンその物の空中で炸裂する特殊弾頭により蹂躙された。チームメイトは次々と落とされていく。私だけがレールガンに到達できたが、片方の翼はもがれ機体は穴だらけだった上に、本来レールガンに使う爆弾でさえも地上の防衛施設の阻害のために使ってしまっている状態だった。
満身創痍。まさにその言葉がふさわしい状況。そんな中、私がレールガンを破壊するために取れた行動は1つ・・・特攻であった。仲間たちは散った、私もレールガンを道連れに爆散してやろう、そういう考えで私は機首をレールガンの方向に向けた。
・・・だが、残っていたAAガンの弾丸が機体に命中。ベイルアウト(脱出)の機能が誤作動、私はシートごと宙に放り出され、機体レールガンもろとも爆発した時の爆風に吹き飛ばされる。パラシュートを開いたがもう遅い。落下速度が落ちきらず、私はそのまま地面にたたきつけられ・・・気が付くと首から下の感覚を失ったこの体でこの病室にいた。
レールガンは無事に破壊され、戦争は終結に向かう。そして終戦後、その日は記念日となったそうだ。それが今日。開かれている式典はそれを記念してのものなのである。
「・・・ウェッジショット、せめて私だけはお前のもとに最後までいよう・・・償いきれるとは思えないが」
「・・・・・・」
・・・側にいるのはもうやめて、そう言いたいが言えない。最後まで側にいるなんて言葉、もう聞きたくない。あなたは何も悪くないのよ、モーリス中佐。あなたは自分の人生を私なんかで棒に振ったりしてはいけない、あなたは幸せに生きるべき・・・最後の時をひたすら待つ翼を失った鳥なんか相手にしても幸せになれないわ・・・
・・・ああ、なんだか眠くなってきた。いつにもまして考えこんでしまっているようだ・・・まぶたが・・・落ちてくる・・・
「・・・ウェッジショット?」
「・・・え?」
そこは、木漏れ日が綺麗な森の中だった。
第一話「解放」
「・・・夢か」
私は夢だと思い、地面に手を着き、身体を起こす。
「・・・!」
その時にふと気がつく。地面の感覚が鮮明に手のひらから伝わるのだ。夢のなかに居るようなぼんやりした感覚ではなく、3年前から久しく感じていない手のひらの感覚。
それだけじゃない。なぜ全裸なのかはともかく、座っている感覚もわかる。小さな小石混じりな土に触れていること、ちょっと冷たいこと、湿り気が有ること。
「・・・クンクン」
臭いもわかる。土の匂い、青臭い雑草の匂い、ジメジメしたかび臭いにおいが混ざっている。
(ザザザザ・・・バサバサ・・・)
周りの音も。木の葉が風でゆらぎ、鳥が羽ばたく音。
「・・・・・・」
そして、更に私は手のひらを私の視界の前に持ってきて確認する。
「・・・動く」
小指から順番に手を閉じもう一度開く。手首も動かせる、肘も、肩も動くことを確認する。
次は足を動かす。膝が曲がり、股関節も足首も問題なく動かせる。
「・・・ぃよいしょ」
そして、地面に両足をつき、私は立ち上がる。
「・・・嘘でしょ?普通に立てるわ」
両足で自分の体の重みを感じる。小石が足の裏にあたって少し痛い感覚も有る。
「ゆ、夢・・・じゃない?」
右足を上げ片足立ち、反対もする。屈伸運動もできる。どの動作も確かに自分がやっていると実感できる。
「・・・夢じゃないなら」
私は右手を頬に伸ばし、軽くつねる。ありきたりだが、痛みがあれば夢じゃない・・・のかも。
「・・・痛い」
頬に痛みを感じる。そういえば、声も出せる。
「ゆ、夢じゃない、のね・・・!」
急に嬉しさがこみ上げてくる。ここがどこかは分からないが、3年も動かなかった身体が何故か動くのだ。それも何の不自由もなく。
その感情に流されるまま、私は足を動かす。一歩、また一歩と足を交互に前に出す。私は今、歩いているのだ。
歩いていることの感動が私を高ぶらせ、私を足早にさせる。だんだんと歩く速さが上がっていき、ついに私は走りだす。
風。走ることでまた私は風を感じている。顔を横切るこの風、地面を素足で走るこの痛みは間違いなく生きている私が感じているもの。生の実感を噛み締めながら、私は思うがままに走り続けた。
「ほっほっほっ・・・ん?」
しばらく森の中の獣道を走りつでけると開けた場所を見つける。そこには木々が鬱蒼と生い茂る森に見合わぬ建物が存在していた。
「家・・・?しかも、こんな森にしては随分と小洒落た感じ・・・」
洋風の立派な家が建っているのだ。まるで、ドールハウスのような家。
「花壇に綺麗な花が咲いているし、この家自体も綺麗・・・洗濯物は女性物だけ」
生活の痕跡があるので誰かが住んでいるのだろうか。もし誰かがいるのなら、走ったせいで足がボロボロなのを手当したいし、何より服を借りたい。だが、
「・・・誰もいない?」
人の気配は感じられない。静かなのだ。
「・・・とりあえず」
(コンコン)
「・・・・・・」
ノックをするが返事はかえってこない。
「すみませーん!!」
今度は声で呼んでみる。
「・・・・・・」
それでも返事がない。留守なのか?
「・・・留守?ならちょっと申し訳ないけど、急を要するから・・・」
と、私は独り言をつぶやきながらドアノブに手を伸ばそうとすると、
《待ちなさい》
「!!」
突如、後ろから女性の声が聞こえる。その声にびっくりして私はサッと振り向く。
「誰・・・!?」
しかし、人はいなかった。人はいなかったが、
《とんだ変態女ね。全裸で他人の家に上がり込もうだなんて》
『人形』が私の目線ぐらいの高さで宙に浮いていたのだ。
「なな、なんだ?人形??何で人形が喋って・・・??」
《何なの?》
その人形はまるで意識を持っているかのように表情を変え、体を使って仕草をし、まるで人間のようだった。
「お、お伽話じゃあるまいし・・・やっぱり、私は夢を見ているってこと・・・?だけど、それじゃあこの体の感覚は一体・・・」
私は今直面していることに対して戸惑いを隠せない。人形が言葉を発して、可愛く動いて、しかも宙に浮いている・・・まるで夢の世界のようだ。
《なんか訳のわからない人ね、あなた・・・あら?あなたの足、ボロボロじゃない。それに、身体もかなり汚れているわ・・・そこまでして私に会いに?》
人形は私に質問を投げかける。
「あ、いや、どうしてといわれても・・・」
私は質問の返答に迷う。この目が覚めたら見知らぬ地にいて、走っていたらここに行き着いたと行ってもわけがわからないだろうし。
《・・・何か言えないようなことでも有るのね。わかったわ、特別に上げてあげる。妖怪とかそういうのでもなさそうだし》
「ええと・・・え?いいの?」
上げてくれるという言葉が聞き間違いじゃないかを確認する。
《ええ。ただし・・・》
(バァーン)
「!?!?!?!?!?!?」
ドアが勢い良く開き、家の中からすぐには数えきれないくらいの人形が飛び出してくる。
「なな、何を!?」
大量の人形たちは私を取り囲み、身体を拘束する。
《これからあなたの足の手当て、それから汚れた身体を洗い流させてもらうわ。抵抗しないように・・・》
「くそっ、離せ!!何をする気!!」
人形たちはがっしりと私を掴んで離さない。
《・・・人の話は聞く。それっ》
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!?」
人形たちは私の腋、太腿、首筋をやさしく撫でてくる。
《ここは私達のお家。そして、あなたは全裸でやってきた不審者兼変質者。そんな立場なのに『特別に』上げてあげるって言ってるんだから、話をちゃんと聞いておとなしくなさい》
「ひゃひゃひゃは、わひゃ、わひゃったかひゃひゃ、やめ、ひゃひゃひゃ!!」
《他人の話はちゃんと聞くことね。さ、行きましょ》
抵抗をやめると人形たちはくすぐるのを止めて、私を家の中に運びこむ。
「ハア゛ー、ハア゛ー・・・し ん ど い・・・」
くすぐられて体力を奪われた私は、されるがまま人形たちに運ばれていった。
だけど、ここは一体何なの?夢、死後の世界、幻覚・・・色々思いつくが、どうも大変な場所な気がする。人形がしゃべるのは無線だと言えても、動力らしきものも無いのに動いたり宙に浮くというのがまずわけがわからん。
ああ、私はこれからどうなってしまうのだろう・・・しかし、この身体・・・鮮明に感じ取ることのできる動く身体は手放したくないものだ。
・・・何が起ころうと乗り切る。それしかなさそうね。まあ、あの寝たきり生活に比べりゃ天国だろう。本当は帰らなきゃいけないとしても、この身体だけは元の世界に持ち帰ってやる。・・・無理なら死んでやる。
生きねば、前に進まなければ、何も勝ち取れない・・・それを忘れちゃいけない。頑張ろう。
・・・と思ったが、
「いだだだだだだだだっ!?!?!?」
《暴れない。これくらい我慢なさい》
「ほほ、本当に大丈夫なの、これ!?尋常じゃないくらいし染み・・・あだだだだだぁっ!!!!」
・・・早くも難関である。この先くじけずにやっていけるかちょっと不安になってきた。
「あひゃはははひゃひゃ、くひゃ、くすぐ、ひゃひゃひゃのもやひゃ、やめひゃはひゃはは!!!!」
《暴れるあなたが悪いのよ。おとなしくしてりゃいいのに》
「いだだひゃだひゃははだだだひゃははは・・・ひゃだーーーーっ!!!!」
・・・もう、成るように成ってちょうだい。
第1話・完
簡単な主人公の設定。
【挿絵表示】
ドーラ・ウェッジショット
年齢:24
身長:172cm
性別:女
胸:控えめ
種族:人間/元エースパイロット
コールサイン:スワロー1
好きなもの:空、オムレツ
嫌いなもの:ネズミ、アルコール
備考:黒人の元エースパイロットで、彼女の右に出るものはそうそういない。
2015/11/29 リメイクするにあたって、台本形式をやめて見ました。