東方空闘犬 〜 元エースパイロット、幻想郷の旅 作:メビウスノカケラ
そんなテンションで書き上げた第11話です。
「こう、視界にあなた達の位置とか名前とか、あと私自身の状態とか、そういうのが目に映る用になったわ」
「それがドーラの能力ということなのかしら?」
紅魔郷へつ続く道。昨日は頼めなかった事をサクヤに頼みに行くことと、パチュリーに呼ばれたため、私はレイムとアリスと共に紅魔館へと歩を進める。昨日は散々な目にあったが、今日は二人も付き添いが居るんだ、大丈夫だろう。そしてその道中、私は自分に起こった変化についてを話していた。
「ぱっとしないわねぇ」
「私が選んだわけじゃあないし、これが有るのと無いのとじゃ飛行機にのる時の安心感が違うのよ?」
「でもそれ飛行機の時のことじゃない」
「う・・・」
霊夢の苦言に私は反論するが、的確な言葉で黙らされてしまう。
「それで?私は紅魔館に用事があったし、ドーラのことも気になったからついてきたけど、なんで霊夢も一緒に?」
アリスはレイムがついてくる理由を聞いてくる。
「確かパチュリーが私に来いって言ってるんだっけ?あと、外来人放ったらかしにするのも巫女として駄目だし」
「ええ。なんでもあなたがいたら私の正体がわかるとか・・・」
パチュリーは私を霊力の塊であると言った。霊力の専門家はレイムだから、レイムに手伝ってもらえばわかるらしいけど・・・
「そういうものなのかねぇ?まあ私が見たところ、あんたの今の状態は『神霊』に近いわね」
「し、神霊・・・?」
聞き慣れない上に、自分が信じていない『神』と『霊』2つのものが入っている単語に少々戸惑う。幻想郷じゃどちらも存在するのだろうか?
「神霊は神霊よ」
「霊夢、それじゃわからないわよ」
「向こうでまとめて説明するから良いのよ」
アリスに説明をするように促されるが、レイムは面倒臭がる。
「本当に面倒くさがりなんだから・・・えっと、確か神霊っていうのは亡霊が神様になった存在・・・であってるわよね?」
「うん、大体あってるわそれで」
アリスは簡単に神霊について説明をする・・・って、え?亡霊?
「亡霊って・・・私は死んでしまったってこと?」
なんだかさらっと血の気の引くことを言われたような気がしてたまらなかった。
「近いってだけよ。後で話すけど、多分違うわ。性質が似てるってだけ」
「・・・なんだか嫌な感じだわ」
「別に良いじゃない。これであなたの正体も無事わかってめでたしめでたし、ってなるかもしれないし」
なんとまあ脳天気な。私が死んでしまったかもしれないっていうのに。いや、ここで生きてるけど。
「それより・・・アリス、まだつかないの?こいつ抱えて飛んでいけばいいじゃない」
レイムはアリスに聞く。としかに、飛んでいったほうが速いし、私も空を飛びたいと少し思う。
「それだとすぐ着いちゃって、ドーラとお話できないでしょ?せっかくだし、お話しながらのほうが移動も楽しいじゃない」
アリスは私と話がしたいらしい。
「まあ別にいいけど、歩いてあそこまで行くことはあんまり無いから変な感じなのよね~」
「だけど、私が話すことなんて有るのかしら?」
「その辺は私達が聞くから大丈夫よ。ええっと、それじゃあまずは何を聞こうかしら・・・」
アリスは少し考えるような仕草をする。その時である。
(ピチューン)
第11話「狂気」
「あだあっ!?」
「ドーラ!?」
突如、私の額に硬いものが激突し、私は痛みでうずくまる。
「たたたた・・・」
「大丈夫!?」
「あっちからなにか飛んできたけど・・・これは氷?」
レイムは私の額に当たった氷の塊を拾う。
「氷ってことはあの子ね。けど、弾幕の流れ弾が当たるほどの距離じゃないはず・・・」
「お灸をすえて溶かしてやるわ!もしあいつが近くにいたら危ないから、アリスはドーラをお願い!」
そういうと、レイムは宙に舞い上がり、氷が飛んできた方向へと向かう。
「いたたた・・・何なのよ、急に」
「大丈夫?ドーラ?」
アリスは私に心配そうな眼差しを向けてくる。
「ええ、大丈夫・・・当たりどころが良かったみたい。かなり痛かったけど」
私は飛んで来た氷が当たった所を押えながら立ち上がる。
「弾幕ごっこの弾は当たっても死なないから大丈夫だけど、痛いものは痛いのよね・・・」
「死なないって・・・血がちょっと出てるぞ?」
私は抑えていた手の平についた微量の血を見せる。
「あら、ほんと。この距離からでも血が出てしまうほどの弾幕なんて・・・あの子はついに妖怪にでもなってしまったのかしら」
アリスは少し考えこむ。
「あの子?」
「この氷を作った張本人、氷の妖精チルノよ」
アリスはどこからか人形に救急箱を持ってこさせて、私の額の手当てを始める。
「氷の妖精、そんなのもいるのね・・・あいてて染みる」
「こら、動かない。妖精は自然の具現なのよ。氷という自然現象から生まれたのがその子・・・よし、消毒完了」
アリスが染みる薬で消毒してくれた。
「ありがとう。ということは、あの喫茶店にいた妖精も何らかの自然から生まれたのかしら?」
「ええ。だけど、大抵はその場の環境その物から生まれるっていうのが多いから、その氷の妖精みたいに特定の現象から生まれた妖精は特別な力を持つことが多いの。妖精だからたかが知れてるけどね」
「たかが知れてるって、アリスさっきなんか言ってなかった?妖怪になってしまったとかなんとか」
「幻想郷じゃ、力を持ちすぎてしまうと人間だろうが妖精だろうが動物だろうが妖怪になるの。妖怪は人の恐怖心から生まれる、力を持つことで恐れられて妖怪になる、ってことね。あの子が新たに力を持ってしまった・・・ということもありえるわね」
アリスは冷静に分析と説明をする。
「それじゃレイムが危ないんじゃ・・・」
「それは大丈夫よ。霊夢だし」
アリスは妙に安心しきっている。レイムだからって・・・意外と薄情なのか?
「あなたも霊夢の事をもっと知るようになったらわかるわ」
「何が何だか・・・」
レイムって一体何者なんだ?そんなことを考えるが、レイムのことはろくに知らないので考えようがない。
「とにかく、レイムが向かった方向に行きましょ。あっちは霧の湖。氷精の本拠地ね。紅魔館もその湖の先にあるわ」
「そ、そうね、急ぎましょう」
私は考えるのをやめ、アリスについて行った。
「くぅ・・・寒・・・」
霧の湖につくと、私はその寒さで凍える。
「氷の妖精のしわざなの、これも・・・?」
「なんだかいつにも増して寒いわね・・・うぅ、お腹が冷えちゃうわ」
アリスはこの異常な状況に疑問を感じているようだ。
「その影響か、いつもより数倍霧が濃いし・・・やっぱりあの子暴走してるの?」
霧。数メートル先が見えないほどの霧が湖を覆い尽くしているのである。もはや、雲と言ってもいいくらいだ。
「ああもう、髪が湿気ちゃう。人形の髪も痛んじゃうわ・・・」
「・・・ん?あれは?」
私は霧の中に浮かぶ2つの影を見つける。
(ダダダダダッ)
「うわわぁっ!?」
私の足元につららが飛んできて地面に刺さる。
「ぎゃーーーっ!!」
(ピチューン)
その直後、その影の方向から悲鳴が聞こえ、一つの影は湖があるであろう場所に落ちる。
(ザッパーン)
「なな、何よ一体?」
そして、残った影はだんだんと近づいてくる。段々と鮮明になっていき、赤い色が見えてくる。
「れ、レイムか」
「何よその顔、情けないわね」
レイムが2つの影のうちの一人だったらしい。ということは、もう一つの方は・・・
「さっき氷を飛ばしてきた犯人は私が今懲らしめたわ」
つまり、チルノという氷の妖精がレイムに退治されたということらしい。
「しかし、いつにもまして激しい弾幕だったわ。視界も悪いし。あーあ、1回だけスペルカードを使ってしまったわ」
「あの子がレイムにスペルカードを使わせる・・・一体何が起こっているの?」
話が飲み込めないが、どうやらチルノはアリスの予想通り、何故か暴走していたようだ。
「二人共、気をつけなさい。ちょっと危ない状況かもしれないわ」
レイムは私たちに注意を促す。
「どういうこと?氷の妖精はもう倒したんじゃないの?」
「そうよ、霊夢。なにがなんだかわからないわ」
私とアリスは状況を判断しかねている。チルノを倒せば終わりなんじゃないのか?現に、寒さもなくなってきているし、霧も薄くなってきている。
「あいつが暴走した理由に心あたりがあるのよ。結構面倒なやつよ」
レイムは紅白の球体を自分の周りで来る来るさせながら、臨戦態勢になる。
「私がこの前月で出会った妖精がいてね、そいつは相手を狂気に陥れて、たがを外してしまう能力の持ち主。氷精があの状況だったってことは、もしかしたらこの辺りの妖精は皆凶暴化されているかもしれないし、その元凶もいるに違いない」
「・・・霊夢がそう言うなら間違いないわね」
アリスも、妖精を散開させ、全方位に注意を配る。
「わ、私もなんだかわからないけど・・・」
私も格闘技を軍で受けていたので、その構えを取り警戒する。
【ENGAGE】
すると、HUDに『交戦』するというサインが現れ、妙な表示が現れる。
【BULLETS 0800】
【MISSILE ●●】
【ALT 00000】
・・・弾丸にミサイル?それに高度まで・・・これは一体どういうこと?私はこの表示に戸惑う。
(バババババッ)
「跳んでドーラ!」
「え?うわっ!?」
弾幕ごっこの弾が大量に私に向かって飛んで来る。何やら刃物のような形をしている。私は横っ飛びに回避する。しかし、
「ドーラ!そっちじゃないわ!!」
「しまったわ!」
アリスとレイムが回避した方向とは別の方向に避けてしまった。
「あはははは!!今ならチルノちゃんにも勝てそうだわーーッ!!」
【FAIRY】
そこに、横で縛った緑色の髪の妖精が現れ、高笑いをしながら弾をばらまく。ばらまいた弾はレイムやアリスを遮るようになってしまう。
「まずはあなたよーーッ!!」
そして、その弾幕は逃げ場を無くすかのように外側の弾幕の軌道はそのままに、内側だけが私の方向に方向転換して向かってくる。
【WARNING】
【EVADE】
「まずい、あの量を食らったらいくら弾幕ごっこでも怪我は必須だわ!」
「ドーラ!!」
「くっ・・・!!」
私は真っ赤になったHUD表示に従い、妖精がいる方とは反対に走る。空中から撃ってきているのだから、離れていけばやがて地面で途切れ、逃げきれるだろうと判断したからだ。だが・・・
(ザクザクザクッ)
すぐ後で妖精の弾が地面に刺さる音が聞こえる。
「間に、あわ、ないっ・・・!!!」
(ザクザクザクザクザク)
妖精の弾は私に数の暴力を与えてくる
「あははははは!!!爽快ね!!!」
妖精は高笑いしながら、今度はレイムとアリスの方向に同じ弾幕を張る。レイムとアリスは妖精とほぼ同じ高度
「ドーラぁ!!!」
「このぉ、よくもやったわねーっ!!!」
アリスは私の名を叫び、レイムは妖精に向かってお札を投げようとする。二人が危ない、助けなきゃ。そう思ったその時だった。
【SHOOT】
(ダララララララッ)
「あいだだだだだだだっ!?!?」
「!?!?」
【HIT】
突如、妖精が弾丸型の弾幕に当たって怯み、それを目撃したレイムとアリスは驚いたような表情をする。
「・・・あ、あそこ!!!」
アリスは指をさす。
「・・・え?あれ??」
二人が同じ高さに見える。そう、私は宙に浮き、右腕から弾幕を発射して攻撃していたのだ。
「わわわ、わーっ!?」
それに気づいた私はバランスを崩し、重力に逆らうことが出来ずに落ちていく。
「ドーラ!?」
地面に向かって回転しながら落ちていく。この感じ、どこかで見たような・・・
『ストール(失速)を起こしても焦るんじゃあ無いぞ。まずはエンジンを再度噴かせて、機体の向きを安定させるんだ。それが間に合わなければ・・・』
昔見た軍での講義が脳裏を駆け巡る。
「・・・!」
私は回転しながら落ちる自分の体を足を動かすことによって立て直し、地面に足を向ける。
「おわっとっとと・・・で、できた・・・!」
理由は分からないが、私の両足からは揚力が発生し、それによって私は今浮いている状態のようだ。
「ほっ・・・」
「何よ、あんた飛べたの?」
アリスとレイムは声を張って私に聞いてくる。
「はらひれはれほろ・・・はっ!?私を無視しないでよーーっ!!!」
(バババババッ)
クルクル止めを回していた妖精が我に返る、再度レイムとアリスの方に弾幕を放つ。
「くそ、鬱陶しいわね!!」
まずい!私はそう思うと、また思い出す。
『いいか、ミサイルを打つときにはできるだけ必ず言うんだぞ。ミサイルを打ったっていう合図になるからな』
戦闘機乗りはミサイルを打った時にある言葉を言う。さっきはなんかわからないけど弾丸が出たんだ。幸い相手は私にまだ気づいていないみたいだし、やってみるっきゃ無い!
(ピーーーー)
そう思うと、HUD表示の妖精に合わせられた四角いマークが赤くなる。ロックオンしたということか?ええい、成るように成れ!
「ふぉ、FOX2!FOX2!!」
とにかく、私は両手を妖精の方向にかざして叫ぶ。
(シュシュッゴオッ)
すると、両腕の側面から2発のミサイル型の弾幕が出現し妖精に向かって飛んで行く。
「え?」
妖精はその発射音でこちらに気づき、こちらを見るがもう遅い。
「おぶっ」
「あっ」
妖精の顔面にミサイルが命中。そして、
(チュドーン)
「きゃあああああっ!?」
(ザッパーン)
【NEUTRALIZE】
爆発。妖精は湖に落ちる。HUDには無力化したという表示。
「や、やった・・・けどなんか後味悪い」
顔面に当ててしまった。爆発する直前のあの顔、なんか罪悪感が湧くなぁ・・・
「・・・だけど、一体何がおこったの?」
地面から離れている足元を見て思う。
【ENERGY 65%】
【VITARITY 91%】
【BULLETS 0772】
【MISSILE ○○】
【ALT 00032】
そして、その視界にあるHUD表示の数値も変わっている。特に、エネルギーの数値は今も減り続けている。これは、私自身が空をとぶのに使うエネルギーということだろうか?
「ドーラ!」
アリスが呼ぶ声の方向を見ると、二人がこちらによってくるのを確認する。
「あなた、飛んでるじゃない!いったいどうしたの?」
「いや、私にもわからない・・・なんか、逃げてる時に跳ねたら空を飛んでて・・・」
思えば、私が警戒する態勢に入ってから何かおかしい。HUDの表示が急に変わってから、空を飛べたり、弾丸やミサイルのような弾を発射できるようになったり・・・
「とにかく!今はこの状況を何とかしないと。こんな凶暴化した妖精が里に出てきたらたまったもんじゃないわ。霧が晴れてきたし今度はこっちの番!アリス、手伝いなさいよ!」
「わかったわ。ドーラはまだ不慣れだろうからどこかに隠れ・・・」
(シュィーン)
「!!!」
レーザーがレイムのすぐ後ろをかすめ取り、全員レーザーが飛んできた方向を向く。
「うわっとと」
私だけは方向転換するのに苦労する。
「あ~あ、あの二人やられちゃったか~つまんな~い」
「やっぱりあんたか・・・」
苦労して振り向いた先にいたのはまた別の妖精。ピエロのような奇抜な格好をし、手には松明を持っている金髪の妖精。
「きゃはは!何その顔?このクラウンピース様が地獄が暇だったので遊びに来てやってるんだよ!もっと歓迎してくれたっていいじゃな~い!」
【CROWNPIECE】
その妖精はクラウンピースと名乗った。
「別に来るのは勝手だけど、もうちょっとマシな遊び方しなさいよ!危なっかしいわ!」
「だって~、ご友人様にせっかく純化してもらったのにこれを使わないなんてもったいないし~」
「そういうのは地獄で勝手にやってなさいっての!」
「ぶーぶー」
レイムは結構普通に会話している。危険な相手じゃないのか?
「本当に危険な妖精なの、あれ?レイムは普通に話してるけど」
私はアリスに聞いてみる。
「霊夢はいっつもああよ。誰が相手だろうと態度を変えないところとかね」
「裏表がない性格っていうのかなんというか・・・」
レイムという人間が少しわかったような気がする。マイペースだからこそ幻想郷の管理人として何にも流されずにやっていけるのじゃあないだろうか?
「ん?まてよ?この状況って、もしかしてリベンジのチャンスかも?」
クラウンピースは何かを思いつく。
「そうだ!月であんたにボッコボコにされたのを思い出したわ!」
「だから何よ」
「こんどこそあたいがあんたを泣かせてあげるってことよ!きゃはははは!」
クラウンピースが松明を振り上げ、何かを撃とうとする。
「ああもう、結局こうなるのね!」
レイムはまた構える。
「ドーラ、こっちで避難しておきましょ・・・!?」
アリスは何かに気づき、まずいような顔をする。
「ど、どうしたの?アリス?」
「う、後ろ」
「後ろ?」
そう言われて、私はクラウンピースの後ろを見る。
「いくよー!獄符「スターアンドストラ・・・」
(ガシィッ)
「うげぇっ!?」
「な!?」
「ふふふ・・・!」
クラウンピースの後ろで、額に私が倒した妖精の弾が突き刺さった緑髪の女性が笑顔でクラウンピースの頭を握りこぶしで挟んでいた。
「あら霊夢、それにアリスまで。ごきげんよう」
「ゆ、幽香?何であんたが?」
【YUKA】
笑顔が怖いその女性の名はユーカというらしい。
「うう・・・」
「あ、アリス?」
アリスは私の服の裾を掴んでくる。
「苦手なのよ、あいつだけはどうも」
珍しく少し怯えているように見えるアリス。
「たまにお茶しに来るのよ。ここの門番さんと馬が合ってね。お花が好きな人と仲良くしてて何が悪いのかしら?ねぇ、アリス?」
「え、ええ・・・そうよね」
アリスは冷静さを取り繕ってはいるが、裾は離さない。過去に何かあったのだろうか?
「それで、今日もお茶してたんだけど・・・急にこのおでこのこれが飛んできて、しかもやんちゃな妖精が雪崩れ込んでくるもんだからせっかくのティータイムが台無し。ふふ、こいつが元凶みたいね」
(グリグリグリ)
「いたいいたいいたいいたい!!!」
ユーカは挟んだ拳をグリグリと回転させてクラウンピースに苦痛を与える。口元は笑っているものの、目が笑っていない。なるほど、アリスが怖がるのもなんだか分かるような気がする。
「・・・霊夢、このおバカさんを引き取らせてもらってもいいかしら?」
「私は別にいいけど・・・そいつ、地獄の神に仕える妖精よ?何を言われたものか・・・」
「関係ない。そいつがでしゃばってきたらそいつも一緒にお仕置きしてあげるだけだわ・・・久しぶりに頭にきてるの」
落ち着いた口調ではあるが、鋭い目つきでレイムにクラウンピースを寄越せと訴えるユーカ。
「ひ・・・」
「・・・アリス、痛い」
それに恐怖したアリスは今度は涙目で腕を掴んでくる。結構力強いな。
「ああもう、好きになさい!私の仕事だけは増やさないようにね!」
「ありがとう。さ、おバカさん?私の家でお茶するとしましょうか・・・フフフ!」
(グリグリグリ)
これから行うお仕置きを楽しみにするかのように、更にグリグリするユーカ。
「いたいいたいいたいってばぁ!!!やめてよクソ女ぁ!!!」
「・・・口の聞き方がなって無いわね」
そういうとユーカはクラウンピースから手を離す。
「それはこっちの・・・」
その瞬間、クラウンピースはユーカの方に向いて何らかの攻撃を加えようとする。しかし、
(コキャッ)
「あうっ」
そこにユーカの姿はなく、いつの間にかクラウンピースの背後に周り、首を回してクラウンピースを気絶させた。
「ひぃっ・・・!」
「痛い痛い痛い」
アリスは更に強く腕を握ってくる。華奢な見た目なのにかなり力が強いぞ。
「ふぅ、手間がかかるクソ虫だこと・・・アリカ!これを持ちなさい!」
ユーカは誰かを呼ぶ。
「あ、はーい!幽香様~!」
すると、上空から声が聞こえる。
「なんでしょうか~幽香様~?」
一人の羽衣を身に着けた女性が天から舞い降りてくる。赤紫の真直ぐなロングヘアーに、触覚のようなリボンの付いた帽子を被っている。
「聞こえなかったの?このクソ虫を家まで運んで、身ぐるみ全部剥がしてガッチガチに縛ってやりなさい。私は美鈴とお茶の続きをしてくるわ」
「幽香様のご命令とあれば、この
【ARIKA】
平然とひどいことを口にするユーカとそのひどいことに平然と受け答えするアリカという女性。なんと恐ろしい二人だ。
「へましたら今度は吊り下げてムチだからね。じゃあ私は行くわ」
「楽しんでらっしゃいませ~♥」
ユーカは紅魔館の方向に向かう。
「こ・・・怖かったぁ~・・・」
ユーカが去り、アリスはやっと私の手を離す。跡が付いてるんじゃないのか、これ?
「ごめんね~、幽香様、ちょっと乱暴なところがあるから~」
「知ってる、っていうか乱暴よりも更に上を行ってるんだけど・・・それより、あんただれよ。幽香の奴隷?」
レイムはアリカに聞く。
「まあ、そんなところかな?私は
「竜宮の使い?ああ、あのやかましい天人のお付の」
「衣玖の事ね。あいつとは同僚よ~。いいわよね~あいつはお偉いさんの娘さんのお付で出世して・・・ま、仕事は楽だから良いけど」
愚痴混じりにアリカは自分の素性を話す。だがわからないことだらけだ。
「ねえアリス?リューグーノツカイって?」
「・・・竜宮の使いは雲に住む龍神様の伝聞役。人々に龍神様の言葉を伝えるのが仕事なんだけど、普通は地上に降りてくることなんて無いレアモンスターよ」
「そこのお人形使いさん、サラッとひどいこと言わなかった?レアモンスターって」
「幽香はこんな奴まで配下に入れるなんて・・・」
アリカはアリスにツッコむが、アリスはそれに構わず続ける。
「・・・まあ、他人行儀のぶりっ子でいられるよか全然いいけどね。それより、この子を早く幽香様のうちに連れて行って縛らないといけないから、私は行かせてもらうわね。博麗の巫女さん、衣玖に会ったらよろしくね~」
そう言うと、アリカはクラウンピースを抱えてふわふわと空を飛んで行く。
「・・・うへへ、この子の体キレイそうだわ・・・早く裸にしてやりたい。ジュルリ」
・・・恐ろしいつぶやきが聞こえたことはなかったことにしよう。
「な、なんか、変な人だったわね」
「この幻想郷に変じゃない奴探すほうが難しいわよ」
確かに・・・レイムの言葉に納得してしまう。
「それで・・・やっぱり紅魔館に行くのよね?」
アリスは怯えた様子で私に聞いてくる。
「あんた昔っから幽香のこと苦手だったもんね~」
「だってだって!私の魔道書は盗られそうになるし、取り返そうと思ったら子供だった私に、ああ、あんなこと・・・しかもよく家にきてはお茶を飲んでいくし・・・」
アリスは過去のトラウマを想起してしまう。
「アリス、無理しなくてもいいわ。私とレイムだけでも・・・」
「いえ、だ、大丈夫よ。私にも用事があるし・・・ゆゆ、幽香がいるのにドーラは放っておけない・・・わ」
明らかに無理をしている。本当に何があったというのだ。だけど、ここまで言っているのに止めるのもなんだか申し訳ない。
「・・・わかったわ。だけど、無理はしないでね」
「ご、ごめんなさいね、ドーラ」
「それじゃあ、コウマカンに・・・」
コウマカンに向かおうと言おうと思ったが、
【ENERGY EMPTY】
「ん?」
突如、私の視界にエネルギーがないという表示が現れる。
【ENERGY 010%】
「どうしたの?」
「ごめんなさい、地面に降りましょ。私の視界にこれ以上飛べないっていう情報が出たわ」
エネルギーが切れると多分私は地面にキスしてしまう。ここは降りて歩いて行ったほうが良いだろう。
「飛んでられる時間が短くて不便ね」
「数分と飛んでられないのは自分でも燃費が悪いと思うわ」
「それじゃ、降りましょうか」
アリスとレイムは地上に向かって高度を落とす。だが、
「・・・あれ?」
「ドーラ?どうしたの?」
「えーっと・・・どうやって降りれば良いのかわからないわ」
「・・・・・・」
レイムとアリスはなんとも言えない表情でこちらをみる。
「あ、あはは・・・」
「・・・ふふ、仕方ないわね。レイム、手伝ってあげましょ」
「たく。あんた、さっき落ちかけてたのを制御して身体戻すのは出来たのに、そんな簡単なことは出来ないのね」
「ま、また練習しておくわ。」
私はレイムとアリスのアシストでなんとか着陸に成功した。
だけど、なぜかはわからないけど、空が飛べるようになるなんて・・・すごく嬉しいわ。燃費がすごく悪いとはいえ、練習次第ではなんとかなるかもしれない。これから練習有るのみね。
パチュリーに会えばそのことに関してもまた何かわかるかもしれない、そんな淡い期待を抱きながら私たちはコウマカンへと足を向けた。
第11話・完