東方空闘犬 〜 元エースパイロット、幻想郷の旅   作:メビウスノカケラ

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ほぼ一ヶ月ぶりの投稿。幻想人形演舞アペンドや実家で手伝いをしてて遅れました(言い訳)


第12話「不明」

「アリス、大丈夫?」

「ええ、ええ、大丈夫。大丈夫よ私は。幽香のいる場所はもう通り過ぎたもの」

 紅魔館の廊下。図書館へと向かう道。口では大丈夫と言いながら、顔面蒼白なアリスを私は気にかける。

「いっつも思うけど、ほんとにあんた幽香に何されたっていうのよ」

「言いたくないわ。うん。そんなことはどうだって良いじゃない」

 早口でレイムの質問を却下するアリス。私も気になるが、聞かないであげたほうが良さそうだ。

「・・・ん?」

 私たちは角を曲がった。レイムは曲がった先にいる何かに気づき立ち止まる。

 

第12話「不明」

 

「どうしたの、レイム・・・あ」

 私もその存在に気づく。その正体は、

「チッ・・・なぜ我々がこんなことを・・・あのメイドは一体何者なのだ。抵抗するにも何をしても受け流されてしまう」

【DORA NERVOUS】

「な、なんで、もう一人の私が・・・」

 分裂して紅魔館で保護観察されているもう一人の私。何故かメイド服を着て、窓を拭いている。

「ほら、ブツブツ言っちゃダメよ。窓を拭かないと、お嬢様が綺麗な景色が見られないでしょう」

【SAKUYA】

「貴様のお嬢様は外の景色を見れないだろうが!!月だってこっちの方角では見づらい!!」

 すぐそばに居るサクヤの言葉に反抗するもう一人の私。かなりイライラしているようだ。

「メイドたるもの・・・あら、あなた達。そんなところで立ち尽くして、今日はどうしましたか?」

 サクヤは私達に気づく。

「なんだ・・・き、貴様っ!!!」

【DORA ANGRY】

 そして、もう一人の私もそれに続くように私に鬼気迫る表情を向ける。

「ここであったが百ね、うぐえぇっ!!??」

「!?」

 一瞬である。サクヤが音もなく動きもなく、飛びかかろうとするもう一人の私の後ろに周り、首を締めていた。

「アドラ、お客様にお痛はダメよ。お客様はもてなし、侵入者は排除する。それがメイドの基本ですわ」

「なら・・・こいつらはしんにゅ、うげぇっ!!」

 口答えしようとするもう一人の私に、表情を変えずに笑顔で手の力を強くするサクヤ。怖い。

「今日はちょっとメイドの仕事をするには難しそうね。メイドの仕事はこの辺にして、妹様の相手をしてもらいましょう」

「なななな、何ぃっ!?!?やめろ、離せぇーーっ!!!」

 もう一人の私は「妹様」という単語に尋常じゃない反応を見せる。

「えいっ」

(コキャ)

「うっ」

【DORA SLEEP】

 そして、暴れるもう一人の私にサクヤは躊躇なく少しひねりを入れて気絶させた。

「ごめんなさいね、うちのアドラが粗相をしでかして」

「いや、うちのって、こいつの片割れでしょうが」

 レイムは私を指してサクヤに言う。

「ええと、何が何だか頭がこんがらがってるけど・・・まずその、もう一人の私はアドラって名前なの?」

 そして、私はサクヤがもう一人の私に対して呼び名として使っていた「アドラ」という名前について聞く。

「いえ、これは妹様に付けていただいた名前よ。妹様に会われた時に感謝しておきなさい」

「いや、それは私であって私ではないから」

 というか、妹様って誰だ?

「妹様、っていうとフランドールね。そういや、そこで伸びてるのをフランドールの相手にさせるって言ってたけど、やめておいたほうが良いんじゃない?」

「大丈夫みたいよ。アドラはとてもタフみたいだし」

「タフって・・・あの娘には関係ない話でしょ、それは」

 どうやら、妹様と呼ばれるフランドールという人物は非常に危険な人物らしい。私はアリスにそのフランドールのことについて聞いてみることにした。

「ねえ、アリス。フランドールって?」

「ええっと、フランドールはレミリアの妹ね。無条件で相手を破壊してしまう能力を持つ危険な娘ね」

「無条件でね・・・え!?」

 無条件で相手を破壊する能力!?なんだその末恐ろしい能力は!?

「ああ、大丈夫よ。ちょっと前まではすぐに癇癪起こして大変だったみたいだけど、今は魔法の勉強をしていたり、本を読んだり、レミリアと姉妹喧嘩をしたりで精神的に安定してきているから。出会っても問題ない・・・はず」

「だ、だけど・・・、もう一人の私、わかりやすいようにこれからはアドラって呼ぶけど、アドラはあんなに抵抗して・・・」

「ああ、そのことでしたら心配はありませんわ。アドラは魔力で身体が元にもどる上に、昨日、あの後の始末を見に来られた妹様に気に入られましたから。なんでも、壊れない人間で色々やってみたいのだとか。名前までつけて、さぞお気に入りになられたのでしょう」

「危ないことには変わりないんじゃ・・・」

「コピーはとっていますわ」

「何を言っているのかしら、あなたは」

 サクヤの訳の分からない言い分にさらに状況がつかめなくなる。アドラと名付けられたもう一人の私の身に何が起こったというのだ。

「さて、図書館に向かうならこのまま真っすぐ行って突き当りの階段を降りてくださればすぐですわ。パチュリー様は私が昨日見つけたものとアドラにお熱なので、留守ということはないでしょう」

「留守じゃないのはいつものことでしょうが」

 レイムはパチュリーはいつもいるだろうと突っ込む。

「それより、ドーラはサクヤに用事があるんじゃなかったの?」

「私にですか?」

 アリスは私がサクヤに用事があったことを言う。だが、アドラとサクヤのやり取りを見て、私は少し予定を変更。

「あ、ううん、後で良いわ。パチュリーに会うことの方から済ませるわ・・・」

「なんだかわかりませんが、とにかく私はアドラを妹様の下へ連れて行きますわ。それでは、ごきげんよう」

 そして、音もなくサクヤはアドラと共に姿を消した。時間を止めて移動したということだろう。

「よかったの?」

 アリスは不思議そうな顔で聞いてくる。

「いや・・・なんかあのアドラの様子を見て、なんか同じように扱われる気がしてね」

「・・・なるほど。でも大丈夫だと思うわよ」

「ホントかなぁ」

 いまいちアリスの言葉が信じられないが、今は考えても仕方がない。

「あんた達、ボサッとしてないでさっさと用を済ませるわよ」

 先に歩を進めていたレイムに続くように、私達はパチュリーのいる図書館へと向かう。

 

「・・・またなにがなんだかわからない事が起きているわね」

 私たちはパチュリーの居る図書館の開けた場所にたどり着いた。しかし、また予想だにもしないことが起きている。

「スー・・・スー・・・」

【DORA? SLEEP】

「なんでまた違う私がまた居るのよ・・・」

 何やら四肢と頭部、胸部に宝石のような石を取り付けられた私と瓜二つの私が床に貼り付けにされて眠っている。

「あら、簡単な話よ」

「これのどこが簡単だというのよ、パチュリー」

 何も変わったことはないという表情のパチュリーに私は疑問をぶつける。

「だってこれって・・・3人目ってことよね、私の」

「正確にはあなたの片割れであるアドラの複製(コピー)よ」

「こ、コピー?」

 そういや、さっきサクヤもそんなことを言っていたような・・・

「なるほどね。それでもう一人のドーラ、アドラ無しでも実験ができてるってことね」

「そういうこと」

 アリスは納得しているようだったが、私にはちんぷんかんぷんだ。

「私もおんなじ気持ちだわ、ドーラ。どういうことか説明しなさい、魔法使いども。できるだけ魔法使いじゃなくてもわかりやすく」

 レイムは私の表情を読み取って、そして自分の気持も合わせて、アリスとパチュリーに説明を求める。

「簡単な話よ。魔力を使って、アドラの身体を複製したのよ」

「だから、その複製っていうのがわからないのよ!」

 説明になっていないパチュリーの回答に、レイムは苛立ってくる。レイムじゃなくても、頭がこんがらがる話だ。

「落ち着いて二人共。パチュリーも端折り過ぎよ」

 そして、話にならないパチュリーに変わってアリスが説明を始める。

「昨日、パチュリーのがアドラを調べた時に、アドラは魔力の塊みたいなものだっていうのは覚えてる?」

「え、ええ。魔力そのものなのよね、アドラは。そして、私は霊力の塊で・・・」

 私は昨日読んだパチュリーのレポートの内容を思い出す。

「私はあの場に居合わせなかったから魔理沙から少し聞いた程度だけど・・・それと何か関係があるの?」

「そのアドラの魔力のパターンをパチュリーが再現して、アドラの身体をコピーしたのよ。魔力を流し込んで傷が直せるというのなら、1から作ることも不可能ではないわ」

「そ、そんなめちゃくちゃな・・・」

 つまり、アリスが言うには、魔力の塊であるアドラの魔力の形を再現してアドラのクローンを生み出したということになる。

「まあ、魂の入っていない入れ物だけだけどね。そうそう、霊力をコントロールできるならあなたの方もコピーできるわよ。四肢と頭部についた魔石と胸部の魔力供給用の賢者の石に代わる物もいるけれど」

 パチュリーは軽く恐ろしいことを口に出す。魂が入ってないからって、人間の姿をしたものを実験台にするっていうのは・・・

「ドーラ、こいつらはもともとそういうやつよ。アリスも魔法に関してはそういう所あるから、注意しなさいよ」

「あら、このコピーとドーラとアドラは完全に別の存在よ。ちゃんとそこは理解しているわ」

「と、とりあえず、そこの私がどういった存在なのかがわかったからもう良いわ。これ以上はなされても理解できるか怪しいし」

 私は話を切り上げ、本題にはいろうとする。

「それより、昨日の今日だけど、ほかに何かわかったことがあるのかしら?」

「そうよ!あんたが呼んだんじゃないのよ!さっさとそれを話しなさい!」

 レイムは声を荒げて、パチュリーを急かす。

「ちょっと待ちなさい。今から実演してみせるわ」

 そう言うと、パチュリーは床で寝ているアドラのクローンに手をかざし、光る。すると、

(バチバチバチィッ)

「!!!」

 アドラのクローンから電気が走る。毛は逆立っているものの、アドラは眠ったままピクリとも動かない。

「こ、これは・・・」

 アドラに襲いかかられた時を思い起こす。彼女が腕をふっ飛ばしてくるときに起こっていたのと同じだ。

「昨日、アドラは電磁砲の原理を使い、自らの腕を高速で吹き飛ばして攻撃してきたわ。そこからまず調べたのは、アドラの魔力の動き方。さっきの電気は私がこのコピーの魔力を動かしたがために発生したわ」

「つまり、アドラの体質のメカニズムが一つわかったということね」

 アリスは感心するように理解する。

「そういうこと。あの魔力のパターンを応用してみたらすぐに再現できたわ」

「またわからない話をしてる・・・」

「つまり、魔法で電気を生み出す方法をこのコピーの中で使ってみたら、アドラと同じ状況ができた、ということよ」

 アリスが間に入ってパチュリーの言っていることを翻訳する。アリスがいてくれて助かった。

「だけど・・・フフ、もっと面白いことがあったわ」

 パチュリーは不敵な笑みを浮かべる。

「な、何かしら」

 あの微笑みにいい思い出がない。私は身構えてしまう。

「ほんとに今日気づいたことだけれど、どうも吊り合わないのよ」

「吊り合わないって、何が?お金?」

 レイムはよくわからない話にうんざりというように、話に茶々を入れる。

「際立っていたのは魔力の処理の速さ。本来、電気を生み出すためにはそこそこ詠唱もいるし、魔法陣で作るにしてもデリケートで繊細な模様を書かないといけない。けれど、こいつの身体の中ではそれの10倍以上の時間で電気を生み出すことができている。同じ魔力のパターンを使っているというのによ」

「・・・熟練の魔法使いは詠唱も必要なく魔法を使えるけれど、それと同じなのかしら」

 アリスは私たちにはピンと来ない質問をパチュリーに投げかける。

「それもどうも違うみたい。そして、更にここからが面白いところ。どうやら、彼女はどんな魔力も電気に変換してしまうみたいだわ」

「それって、炎の魔法だろうが水の魔法だろうが電気に変えてしまうってこと?」

「そうよ。電気のパターンで最初っからできてしまったものだから気が付かなかったけれど、試しにあなた達が来る前に水の魔法のパターンをこのコピーの中で再現してみたの。そしたら案の定、同じように電気に変わったわ」

「・・・へぇ、それは不思議ね。特殊な魔法障壁みたいだわ。昔、本で読んだ『変換障壁』みたいね。エネルギーを水とか炎に変えてしまう高度な魔法の」

 アリスとパチュリーの難解な会話が続く。

「それで、一体何が言いたいのよ?」

 レイムが理解不能な二人の会話を止めるかのように要点を聞く。

「あら、あなた達には難しかったわね。まあ、知ってたけど」

 パチュリーめ、鼻につく言葉だな。

「まあ、何が言いたいかというと、アドラの存在の根源について少し手がかりを得たということよ」

「ど、どういうこと?」

 手がかり、という言葉に少し私の心は焦りを感じる。自分が何者なのかよくわからなくなってしまった今、知る手がかりは少しでも欲しい。

「アドラはどうあがいても魔法を電気に変えてしまう体質、そしてあの電磁砲、本能的に電気を扱うことに長けていると思われる」

「ということは・・・ドーラと一緒に幻想入りする以前は電気に深く関係していたかもしれない、ということかしら」

「・・・それを先に言いなさいっての、たくっ」

 私以外の三人は理解しているようだ。

「・・・ということは」

 私も完全とはいえないが、理解できた。しかし、それと同時にあることが気がかりになる。

「ドーラ?」

「・・・どうやら、私が聞きたかったことはちゃんと聞けるみたいね。なにか思い当たるフシがあるのでしょう?アドラの正体について」

 パチュリーは私が思っていることを読み取る。

「・・・私が壊したはずのレールガン。今、私が思い浮かべているのはそれよ」

 レールガンとは電磁気の力で超高速で弾丸を打ち出す兵器。私の国は巨大なレールガンの前に戦争の長期化を余儀なくされた。・・・忌まわしい記憶だ。

「そのレールガンに携わっている者、それがアドラの正体かもしれない・・・ってわけね」

 アリスは私の気持ちを代弁してくれる。

「・・・ええ。それなら私に対して敵対心を持っていてもおかしくはないわね。だけど、わからないわ。なぜ私の姿をしている?」

「本人が自分は何者なのかを話そうとしないからね。なにか不都合なことでもあるのか、それとも覚えてないだけで強がっているのか・・・やっぱり生き別れの双子?」

「・・・双子ね。絶対に違うと思うけど」

 パチュリーは私の正体について考察する。だが、双子は無いだろう・・・無いよね?

「あー、あー、良いかしら?」

 少し、真剣な雰囲気になっている私たちにレイムがメスを入れる。

「あんたが一体どういう存在なのか、あっちのが何者なのか、今考えても仕方ないわ!考えたところであんたにその記憶が無いし、向こうも喋らないんだったらいくら考えたってわからないわよ」

「た、確かにそれはそうだけど」

「だったら、この話はとりあえず終わり!そのうちわかることよ。そんなことで頭悩ませたって損なだけよ」

 レイムは辛気臭い空気と魔法使い二人の難しい話についにしびれを切らしたようだ。

「まあそうね。今はまだ判断材料が少なくて、結論までには達せないわね。私も色々このコピーで調べてみるわ・・・フフ、感謝しなさい」

 パチュリーも、レイムの提案に納得し、話を中断する。上がる広角が不気味である。

「それじゃあ、次に行きましょうか」

「まだあるのね」

 そして、次の話題へと移行する。

「ここからはアドラではなく、あなたのことよ、ドーラ」

「私?」

 こんどは私のことだという。

「といっても、調べた結果ではなく、これから調べるのだけれどね。そのために霊夢も呼んだのよ」

「あー?」

 レイムはまた面倒くさいことが、という感じで返事をする。

「霊夢、ドーラの性質について教えてちょうだい。あなたから見たドーラの性質、わかることでいいから」

 私の性質?そういや、ここに来る途中、神霊に近い何かだと霊夢は言っていたような・・・

「ああ、そうだわ。それは言っておかないとね。ドーラも気になってるでしょうし」

「ええと、私は神霊とかいうのに近いんだっけ?」

 私がレイムから聞いたことを確認すると、レイムの説明が始まる。

「それはちょっと前に話したわね。だけど、ちょっと神霊とは違うわね。私にもよくわからないけど、違うものだわ」

「それはなぜかしら?」

 パチュリーは側にいた司書、小悪魔にメモを取らせながらレイムの話を掘り下げる。

「本来、神霊というものは死者の魂が神格化され、神やそれに近い存在になったもののことを言うのよ。けれど、ドーラの場合は霊力の形が死人のそれじゃないのよ、どう見ても」

「ということは、あなたの同業者、早苗さんと同じように、現人神みたいなものかしら?」

 アリスからサナエという人物と、アラヒトガミというよくわからない単語が出てくる。

「サナエ、アラヒトガミ・・・とにかく、私は死んでいないってこと?」

「早苗と同じかどうかはわからないわね。それと、あんたが死んだのか生きているのかもわからないわ。肉体はあるものの、人間のようなものではない。その証拠じゃあないけど、アドラは魔力をもらうことで肉体を治す事ができる。人間じゃこうは行かない。多分、あんたも私が霊力を分け与えれば、怪我なんてあっという間に治っちゃうわね」

「ドーラが幽体離脱して、魂だけが幻想入りしたとか?」

「幽体離脱は死んだのと同じようなものだから違うはず。あとは生霊であるということね。だけど、それも違うと思う。分霊ではここまで完全な肉体を作れるとは思えないわ。それに、元はアドラが中にいる状態で幻想入りしてきた。2つの魂が同時に同じ肉体で幻想入り、普通はありえないわ。勘だけど、二重人格ってわけでもなさそうだし」

「う、うーん、何が何やら・・・」

幽霊がどうとか、ぱっとしない言葉ばかりで頭を抱えてしまう。

「なるほど。説明ご苦労様、霊夢」

「ふぅ、後でお茶くらい出しなさいよ。あんたらがいっつも食べてる洋菓子と一緒にね」

「どう、ドーラ?なにか気づいたことはある?」

 アリスが私に聞いてくる。気づいたこと・・・うーん、どうだろう?

「・・・とりあえず、私が今もよくわからない存在だったっていうことは理解できたわね」

「ええ、分からないこと、不明なことがわかったわね。それでも大きな前進よ」

「そうね・・・わからないことさえわからないのとじゃ、大違いだわ。前向きに考えるわ」

 まあ、とりあえず何も進まなかったわけじゃないしね。私やあのアドラのこと、やるべきことが曖昧ではあるけれど、少しは分かった。ここからね。

「あ、そうだ。霊夢、もう一つ聞いておきたいことがあったんだわ」

 パチュリーは思い出したかのようにまたレイムに何かを聞こうとする。

「何よ」

「これはドーラとは関係ないのだけれど、昨日のことで」

「だから何よ」

「あなた、レミィを止めてたでしょ?あのときレミィ何で怒ってたのかしら?」

 パチュリーは昨日のレミリアの大暴れの理由をレイムに問う。

「あー、あれね。くだらないことよ。ホントおこちゃまなんだから」

「それを教えてちょうだい。レミィを黙らせる一つの手段にできるわ」

 どうやら、パチュリーはレミリアの弱みを握って、何かしようとしているようだ。

「ほんといい趣味してるわよねぇ。まあいいわ、ほんとにくだらないことよ」

 そして、レイムは状況を説明する。

 

「ごきげんよう、誰かのもう一人さん」

 レミリアはまず、左腕を抑えているアドラにアイサツをしたわね。

「・・・・・・」

 けれど、アドラはレミリアを睨んだまま黙ってる。

「しかし、すごいわねぇ、本当にそのまんまじゃないの。ねえ、すごくない?霊夢!」

「ほんとに。ドーラと完全に同一人物ね、見た目は」

 全く瓜二つなアドラの外見に、私たちは驚いたわ。

「ねえ、あなたの名前、教えなさいよ」

 次に、レミリアはアドラに名前を聞いたわ。

「・・・・・・」

 だけど、アイサツの時と同じ反応。レミリアを睨むだけ。

「・・・じゃあ、年齢は?」

「・・・・・・」

「もう一人の方とはどういう関係?」

「・・・・・・」

「ねぇ、喧嘩売ってるの?」

「・・・・・・」

 どんな質問を投げかけても同じ反応。レミリアはだんだん苛立ってくるわ。

「・・・あー、もういいわ。つまんないやつね、あんた。戻りましょ、霊夢」

 レミリアは飽きて、部屋を後にしようとするわ。

「・・・つまらないのは貴様の方だ、悪魔の子供め」

 その時、口の重かったアドラから初めて言葉が発せられたわ。声は小さかったけれど、部屋が小さかったからちゃんと聞き取れたわ。

「・・・なんだって?」

「・・・・・・」

 そして、また黙る。

「この私が『つまらない』?はっ、私は500年生きているんだぞ。お前なんぞ赤子みたいなもの。どこがつまらないと?」

「レミリア、やめときなさい」

 馬鹿なことに挑発に乗ってしまったレミリアは、ペラペラと自分がすごいと思っていることを口に出すわ。

「・・・500年も生きてきて自分語りか。やはり子供だな」

「・・・は?」

 今度はアドラが話しだすわ。あれも馬鹿ね、ほっておけばいいものを。

「見た目は子供、おまけに頭脳も子供、これのどこを子供じゃないと言うんだ?」

「・・・お前、口には気をつけろよ」

「あんたら、ちょっとやめなさいよ」

 二人の間の空気はますます悪化していくわ。私の言葉はもう届かなかったくらい。

「はん、これだから子供は。すぐ挑発に乗って。500年間今まで何をしてきたっていうんだ?」

「・・・!!!」

「ちょっと、レミリア!!」

 自分のプライドを築けられたレミリアはついにキレたみたいで、手を振りあげていたわ。だけど、

(バァァアンッ)

 ものすごい音が鳴り響く。

「ぐああああああっ、ああっ、くっ・・・」

「・・・!」

 そして、アドラがうずくまっていたわ。見たら右腕が無くなっていた。右腕を高速でレミリアに向かって撃ち出したみたい

「・・・くぅっ」

 レミリアはアドラのいる方向とは反対方向に少しだけ動いていたわ。鼻血を垂れ流して、その手にはアドラのものと思われる右手があった。多分、顔面にアドラの右腕が命中したんでしょう。

「・・・・・・」

 レミリアはすぐに自分の鼻から流れている血に気づく。そして、アドラの右腕から流れた血で自分の服が汚れていることも。

「・・・下郎めぇっ!!!」

(ドッグォン)

 そして、レミリアの怒りは最高潮。妖力を開放、壁が崩れて大穴が空く。そして、持っていたアドラの右腕を、アドラに返すかのように投げつける動作を始める。

「やめなさい!!」

(ババババッ)

 間一髪、私は妖力を抑えこむお札をレミリアに向かって投げつけ命中させた。けれど、

「てりゃあああああっ!!!!」

 そんなものは関係ないと、レミリアは強引にそのままの勢いでアドラの右腕を投げた。

「うごおおっ!?!?」

(ガッゴォーン)

 アドラは右脇腹に突き刺さり、その突き刺さった勢いで壁にたたきつけられる。

「レミリア!!!」

 そして、私は急いでレミリアを羽交い締めにしたわ。

「ちょっと、何してんのよ・・・!この馬鹿力め・・・!!」

「このクソッタレ!!私に傷を負わせたな下郎風情が!!!」

 

「・・・で、あんたたちが来たの。これが事の全容ね」

 そして、レイムの説明が終わる。あの惨劇はどうやら、ものすごくどうでもいい理由で起こったものらしい。

「・・・たく、レミィも初めてあった時から短気が抜けないんだから。困ったものね」

「ほんと、もうちょっと強いお札を貼っておくべきだったわ。怒りっぽい奴は大変ね」

 しかし、あれほどのことが起きた話なのに、レイムとパチュリーはさも世間話でもするかのようなテンションである。

「・・・ねぇ、アリス?あの二人は本当に昨日の事を話してるのよね?」

「ええ、そうよ」

「なんていうか、落ち着き過ぎじゃない?あんなことが起きたっていうのに」

「うーん・・・でもアドラは魔力で回復したし、レミリアもお仕置きを受けていたし、そこまで深刻なことじゃないんじゃないかしら?いつも通りよ」

「ええっと、全然わからないわ。いつも通り?あんなことがあって?」

 私は幻想郷の住民の感覚に戸惑いを隠せない。

「ああ、そうか。人間の感覚見たら、あんなことがあったら後にも響く大惨事のもなるからね」

「そ、それだったら、レイムはどうなのよ!アリスだって元は人間なんでしょう!?」

「私は慣れちゃったからね。レイムは・・・色々とぶっ飛んでるところがあるから。博麗の巫女だからね。とはいえ、ちゃんと人間だけれど」

 ・・・果たして私は幻想郷に馴染めるのだろうか。これでまた不安が増えてしまった。

「でもこれで、レミィの醜態を記録できたわ。お礼にお茶はちゃんと出してあげる。あなた達もね」

「洋菓子も忘れるんじゃないわよ」

 そして、なお平然とパチュリーにお茶にお菓子を要求するレイム。

「・・・はぁ、慣れるしか無いのかなぁ」

「そうそう。ドーラ、あなたに渡しておくものがあるわ」

 急に私に話しかけてくるパチュリー。渡しておくもの?

「わ、私に?」

「ええ。アドラと見分けがつくようにね」

 そういうと、パチュリーは不思議な宝石がついたヘアピンを差し出す。

「それを付けておきなさい。昨日、咲夜に探してもらった霊石から作ったものよ」

「あ、ありがとう・・・」

「パチュリー、あなたまた何か良からぬことを・・・」

 アリスがパチュリーに詮索をかける。

「あら、バレてたわね。そのヘアピンは霊力に反応するように出来てるわ。見分けをつけるだけでなく、それくらいのことがないと面白く無いでしょう?」

「なんだかすごく不安なんだけど」

「大丈夫よ。私にも何が起こるかはわからないし。あなた次第よ」

「・・・私を実験台にするつもりね」

「そうよ。遠くから観察させてもらうわ。そのヘアピンを通じてね」

 パチュリーの口角が上がる。その笑顔は怖いからやめてほしい。

「こんなにタイミングよく霊力の研究ができるなんて、付いてるわ・・・フフフ」

 とりあえず、そのパチュリーの笑顔を忘れるために、私はヘアピンを付けてみる。

「・・・どうかしら?」

「あら、良いじゃない!似合ってるわ!」

 アリスがヘアピンが似合っているとほめてくれる。

「出来る限り、そのヘアピンは外さないように。簡易的だけど、緊急時用のリミッターも兼ねているから。不安要素の多いあなたが、もし暴走した時のためのね」

 パチュリーはヘアピンを肌身離さずに身につけるように指示する。

「あんた、それほんとなの?」

 リミッターのことをレイムはパチュリーに確かめる。

「あら、人の厚意は素直に受け取るものよ」

「大丈夫よ、レイム。私もちょっと気になるし」

「・・・まあ、何かあったら私が退治してやるからいいか」

 レイムは自分がなんとかするから大丈夫と納得した。しかし、こっちにも視線が向けられているのはなぜだ?

「さ、とりあえず、確かめたいこととやりたいことは終わったわ。お茶にしましょうか」

「お待ちかねね。一番美味しい洋菓子を持ってくるのよ」

 レイムはお茶菓子の要求を忘れない。

「それは咲夜次第ね。小悪魔、厨房に言って、咲夜にお茶の用意を頼んでらっしゃい」

「かしこまりました!パチュリー様!」

 小悪魔はパチュリーに指示されると、一目散に図書館を飛び出した。

「お茶が終わったらどうするの?」

 アリスはパチュリーにその後の事を聞く。

「そうね、ドーラ自信に変化があったのなら、それを教えてもらおうかしら。昨日の今日で殆ど無いだろうけど」

「変化はあったわ」

「ほんとに?」

「ええ。ついさっき、空が飛べるようになったり、ミサイルが撃てるようになったり・・・」

「ちょっとゴタゴタがあってね。パチュリーはわからないかもだけど、妖精が暴れてたのよ」

 アリスはパチュリーに何があったのかを簡単に説明する。

「ドーラ含めて私達が暴れてた妖精に襲われて、そこでドーラの才能が開花した、というわけよ」

「・・・なるほど、火事場の馬鹿力、みたいなものかしらね。興味深いわ」

 パチュリーの探究心は止まらない。私の背筋に寒気が走る。

「そんなことより、まずはお茶よ!話しをしてて疲れちゃったわ!」

 レイムはお茶を急かす。固っ苦しい話で疲れたのだろう。

「私もお茶が良いわ!うん、お茶にしましょう!」

 私もそれに便乗して、お茶を急かす。パチュリーの視線が怖いのだ。

「・・・そうね。それからでも遅くはないか」

「そ、そうよ。それに、私のことはあなたが最初にお茶の後って言ったんだから!」

「フフフ、ほんとに色んな意味で面白いわねあなたは」

 パチュリーの興味は私から離れることはないらしい・・・心なしか、アリスからも視線が感じるのは気のせいかしら?

 そんなやり取りをしていると、小悪魔が戻るよりも先にサクヤがやってくる。私は安堵の溜息を付き、紅茶とサクヤお手製のプリンを皆で楽しんだ。

 ・・・そういや、もう一人の私、アドラはどうなったのだろう?そんなことを気にしながら、私はサクヤのプリンに頬が蕩けそうになっていた。

 

第12話・完




いやぁ、久々に書くと、元からない文章力からさらに落ちる落ちる。
書き続けないとダメですね~まあ、自分のペースで行くけど。
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