東方空闘犬 〜 元エースパイロット、幻想郷の旅   作:メビウスノカケラ

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 第13話です。エスコン2やオリキャラのイメージイラスト(あんまりうまくない)を描いていたら遅くりました。
 描いたものはこちら↓

【挿絵表示】

ドーラ・ウェッジショット


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アドラ


【挿絵表示】

龍宮アリカ

 あと、エースコンバット2めっちゃたのしい!Z.O.E.とのドッグファイトは熱かった。

 今回は動きに関する描写が多めなので、わかりにくいかもしれません。
 それではどうぞ~


第13話「実力」

 陽の光が届かぬ紅魔館の大図書館。そこで私たちはお茶会を開いている。テーブルにはサクヤのお手製のプリンと綺麗なティーカップにはいった紅茶が座っている人それぞれの前に置かれている。皆、美味しそうにプリンと紅茶を楽しんでいる。

 私はというと頬が蕩けそうになるほど美味しいプリンを食べ終えて、ティーカップに手を伸ばすが、

「う・・・」

 出されたティーカップに口をつけようとした瞬間に手が止まってしまった。

【WARNING】

 

第13話「実力」

 

 HUDの表示に危険だと出ている。

「・・・ん?あなた、どうしたの?」

 手が止まった私に気づいたパチュリーは私の様子をうかがう。

「その・・・なんだかアルコールの臭いがするのだけれど、この紅茶」

 私が手を止めた原因、それは紅茶の臭いに交じるアルコールのむせ返りそうな臭い。私はアルコールが飲めないのだ。

「あら、よくお気づきで。今回の紅茶には香りを引き立てるためにブランデーを少々加えてみましたわ」

 サクヤは今日の紅茶の趣向を説明する。なるほど、それでアルコールが入っていたのか。

「そういえば、ドーラはお酒がダメだったわね」

「お酒が飲めないなんてもったいないわね~ズズ・・・いいわね、これ。こんどお茶にお酒入れてみようかしら」

 アリスとレイムはそれぞれ紅茶を楽しむ。アリスは啜る音を立てずに優雅にたしなみ、レイムはまるで湯のみで飲むかのように紅茶を飲む。

「あむ・・・これも美味しいわね!咲夜、後で作り方教えてくれないかしら・・・ズズ」

 そして、レイムはプリンも口に放り込み、紅茶とプリンを交互に楽しむ。

「企業秘密ですわ。あと、緑茶とお酒は別段美味しいとは思えませんわ」

「ね、ねえ、サクヤ。悪いんだけど、このブランデー入りの紅茶は下げてもらえるかしら・・・アルコールはどうしてもダメなの」

 私はサクヤにブランデー入りの紅茶を下げてもらえるか頼んでみる。

「あら、ブランデーは少ししか入っていませ・・・ああ、なるほど。そういうことね」

「な、何かしら」

 サクヤは急に納得したような素振りをする。

「妹様の部屋に連れていく途中でアドラが目が覚めたもので、せっかくだから紅茶の入れ方を教えようと厨房でこの紅茶を振る舞ったのですが・・・全部飲み干した後、急に具合が悪くなって倒れてしまったのですわ。なるほど、お酒が飲めないからあんなふうになったのですね」

 どうやら、アドラにこの紅茶の入れ方を教えていたようだが、アドラの体質も私と同じところがあるということか。可哀想に。

「今、アドラは妹様が看病してらっしゃいますわ。あんなに張り切って、なついてらして、とても喜ばしいことですわ。お礼申し上げます、ドーラさん」

「いや、私に言われても困るのだけど」

「あら、だってあなたはアドラのお姉さんなのでしょう?双子の・・・」

「だから違うわよ」

 サクヤはどうしても私とアドラを双子にしたいようだ。それはさておき、ちょうどいいので私はサクヤにあることを頼み込むことにする。

「双子の話はとりあえず置いといて、サクヤ。貴方に少しお願いがあるのだけれど・・・」

「謹んでお断りしますわ」

「・・・まだ何も言ってないわよ」

 サクヤは私が言う前に頼み事を断る。

「私の時間は私のものですわ。お嬢様方のご意向でアドラの教育をしているのであってね。楽しいですけれど、二人も部下は要りませんわ」

「部下になりたいわけじゃなくて、料理を教えてほしいだけなのだけれど・・・」

「あら、料理とメイドはセットですわよ。あとナイフさばきも」

 なぜサクヤの配下に置かれる前提なのだ。

「交渉決裂ね。紅茶、呑まないなら私が飲むわよ」

「悔やむことはないわ、ドーラ。料理なら時間があるときに私が教えるわよ」

 レイムは私に紅茶を渡すように催促し、アリスは今度料理を教えると気を使ってくれる。

「紅茶ならはい。アリスもいつもいつも気にかけてもらって申し訳ない」

「良いのよ、別に。私も好きでやっていることだし」

 アリスは微笑み返す。優しさがにじみ出てくる顔だ。

「まあ、残念とは思ってはいないけれど・・・」

 私はアドラがサクヤに首を絞められ、意識を落とされている瞬間を思い起こす。表情も変えずに淡白にアドラを気絶させたあの光景に恐怖しか感じない。

「・・・ああはなりたくないしね」

「??」

 サクヤの方を見るが、何を考えているかわからない笑顔で返される。その笑顔で、私はアドラに同情してしまう。

「ところであなた、それを付けてみて何か変化があるかしら?」

 パチュリーは私に渡した、霊石の付いたヘアピンの感想を聞く。

「いや、特に変化はないけれど・・・」

「ちょっと何でも良いからやってみなさい。私の推論では、自分の霊力を制御しやすくなるはず・・・」

「何でもって・・・」

 急な無茶振りに私は戸惑う。とりあえずできそうなことを思い巡らす。

「ええと、何かできそうなことできそうなこと・・・お!?」

 すると、私に変化が起こる。

「何か起こったの?」

「ええ、視界に映ってたHUDを切り替えることができるわ!着けたり消したり!」

 私は今までちょっと邪魔くさいと感じていた自分の視界に映る情報を出したり消せたりできるようになっていたのだ。有事の時以外は邪魔にしかならないものもあるしね。これは嬉しい。

「・・・ぱっとしないわねぇ、やっぱり」

「ええ、ぱっとしないわね。私たちには見えないし」

 しかし、レイムとパチュリーはつまらないと一蹴り。そりゃあ、あなた方には見えんだろうて。

「そっちから振っておいて何よその反応」

「これからよ、これから。落ち込むことはないわ」

 パチュリーは何故か私を励ます。

「私は喜んでいるわよ」

「あ、そう。まあいいわ。とにかく、なにか変化があったらレポートを書いて私に提出するように」

「そんなことやれなんて聞いてないわ。そっちから見えるんじゃないの?」

「こちらから観察する情報だけじゃわからないことも多いわ。それに、あなた自身も自分を理解するのに役立つと思うわよ。はいこれ、レポート用のノート」

 パチュリーはテーブル越しにノートを私に受け渡す。少し面倒だが仕方がない。私自身を知ることにも繋がるだろう。

「そうだ。そのことで少し相談があるのだけれど、いいかしら?」

 私のことを知る、というので思い出したパチュリーに聞きたいことを私は話す。

「何かしら?」

「私が空を飛んだりできるようになったっていうのは言ったわよね?だけど、ものすごく燃費が悪いのよ。5分も飛んでられないわ」

 私は妖精の暴走に巻き込まれ、とっさに空を飛び、戦ったことを思い出す。足から揚力が発生して身体が浮いていたみたいだが、制御が難しく、あまり動けなかった。

 それは練習するからいいとしても、それよりも問題なのは燃費だ。その場で浮いているだけでHUD表示のエネルギーの表示は急激に減っていく。

「あの時は急噴射させたりした時もあったからかもしれないけれど、それにしても早過ぎるわ」

「あなた、別に戦うわけじゃないから良いんじゃないの?」

「飛びたいのよ。戦わずとも、風を感じて空を飛べるってすごいことよ」

 私はマリサの後ろに乗せてもらった時を思い起こす。風が頬を横切りながら飛ぶあの感じは、風防で守られた戦闘機のコックピット内じゃ味わえないものだ。スピードは戦闘機のほうが段違いだけど。

「ふーん、そんなものなのね。まあいいわ。どんなふうにエネルギーを使うのか少し気になるし、そのヘアピンの効果も知りたいから少し見てあげるわ」

 パチュリーは研究のために承諾してくれた。

「ありがとう。助かるわ」

「私も見学させてもらおうかしらね。霊夢も手伝ったらどうかしら?」

 アリスはレイムに手伝うことを提案する。

「え、嫌よ。めんどくさい」

 しかし、レイムはそれを面倒だと断る。

「ドーラのエネルギー源は霊力なんでしょ?霊夢が見てあげたほうが良いんじゃない?」

「確かにそうね。じゃあ貴方も手伝ってちょうだい」

 魔法使いの二人はレイムを手伝わせようと説得する。

「私はもうやることは済んだし、お茶飲んだら帰るわよ」

「そのお茶を二杯も飲んでるのは誰なのかしら?」

「これはドーラがくれたのよ。ズズ・・・」

 けれどもレイムはぶれない。そこでサクヤが口を開く。

「あらよかった。それならおゆはんは一人分浮きますわね」

「さ、みんな。さっさとお茶終わらせて、ドーラのことを調べるわよ」

 そして、おゆはんという単語でレイムは手のひらを見事に返す。

「現金ねぇ」

「うっさい。ここのご飯は美味しいのよ。仕方ないわ」

 面倒くさがりだが、食い意地の張った性格もあるようだ。覚えておこう。

「話もまとまったところで、ドーラさん、新しい紅茶ですわ」

「え?ああ、ありがとう・・・いつの間に?」

 一段落ついて、サクヤはさも用意してあったかのように紅茶を差し出す。

「先ほど言いましたわ。私の時間は私のもの。時間はいくらでもあるのですわ」

「あ、ああ、なるほど・・・ズズ」

 サクヤは時間を操れるのであった。こんなに美味しい紅茶を入れることであろうと、時間はいらないのであろう。

「ああ、そうだ。サクヤ、ドーラの検証のために部屋を用意しておいてくれないかしら?とびきり大きいのをね」

 パチュリーはサクヤに妙な頼みごとをする。

「かしこまりましたわ」

 そして、サクヤはその場から姿を消す(おそらく時間を止めて出て行った)。

「外でやるんじゃないの?部屋の中でやっても狭いんじゃ・・・」

「大丈夫よ。咲夜がいるから。外は日差しがきつくて嫌になるし」

「??」

 サクヤがいるからっていうのが全然わからない。どういうことなんだ?

「さ、お茶の残りを楽しんで待ちましょう。ちょうど飲み終わった頃に戻ってくると思うわ。」

「え、ええ」

 なんだか腑に落ちないが、私は言われるがまま紅茶を味わった。

 

 紅茶を飲み干すと同時にサクヤは本当に戻ってきた。そして、サクヤが用意したという部屋に私は案内されたが、

「おお・・・」

 広い。入る前から広そうに見えていたが、明らかに見た目の数倍はでかい。もしかしたらサッカーコートくらいはあるのではないか?

「後はこれをこうやって・・・§〓∬♭」

 パチュリーは壁に向かって本を向け、何かを唱えている。

「咲夜が部屋を広げているのよ」

「え?」

 私が目の前で起こっている状況に戸惑っていると、アリスが説明をしてくれる。

「なんでも、時間を操るってことは空間を扱う事にもなるってことらしいわ。そうよね、咲夜?」

「ええ、アリスの言うとおりですわ」

 サクヤもアリスの言うことを肯定する。

「時間を操ることで空間を広げるって・・・訳がわからないのだけれど」

「あら、簡単な話ですわ。時間の進み方をいじればちょちょいのちょいですわよ」

「・・・確かに簡単ね。私に分かるはずがなかったわ」

 あと、その説明でわかる人間がいるわけがない。

「仕方ないですわ。私と貴方の時間は違いますもの」

「ドーラ、咲夜の説明はいつもこんな感じだから、大事な部分だけわかればいいのよ」

「大事なことさえわかれば後はどうにでもなりますわ」

「本人がそれを言うか」

 素でボケてくるサクヤに突っ込まざるをえない。

「咲夜はそういう性格なのよ。で、パチュリーが今やっているのは部屋の補強」

「補強?私が飛ぶだけでしょ?」

 なんだか不穏な空気を感じながら、私はアリスに聞き直す。

「あなたの実力も測ろうと思ってね」

「え?それって、私のできることを洗いざらい調べるっていうこと?」

「そういうこと。理由はあるわ」

 アリスは私が飛ぶだけでなく実力まで調べる理由を話す。

「暴走した妖精と戦った時にあなたは空を飛んだ。そして、それだけではなく妖精に遠距離からの攻撃を当てて、見事に退治したわ」

「かなりとっさの行動だったけれどね。あなた達がやられると思ったから」

「舐められたものね。あんな妖精ごときに負けるわけないじゃない」

 レイムは強気に言い返してくる。

「あんたがいたからあの時は必要以上に警戒していただけよ。よわっちいし、あんた」

「はっきりと言うわね」

「けれど、そんな幻想郷ではひ弱な人間と大差なかったあなたが、戦闘のための手段を得た」

「アリスも引っかかる言い方ね、まあそうなんだけど。もう一度できるかはわからないわよ」

 あの時は必死だったから、どうやってあのミサイルと弾丸を出したのかは覚えてない。

「それを調べるのよ。この幻想郷で、あなたが自衛できるかどうかを調べるためにね」

「な、なるほど。そういうことね」

 アリスやケーネ先生から幻想郷の恐ろしさは聞いている。私が外を出歩くときは信頼できる人に護衛を頼めと言われているが、有事の際や非常時には私が単独で動かなければならない時も出てくるだろう。そんな時に、自衛できる能力があればどれだけ心強いか。

「だから、場合によってはこの中の誰かと『弾幕ごっこ』をしてもらうかもしれないから、その心づもりはしておいてね」

「・・・え?」

 弾幕ごっこ?レイム、アリス、パチュリー、サクヤ、あとパチュリーの司書の小悪魔の中の誰かと?

「・・・さ、準備ができたわ。ドーラは部屋の真ん中に立って」

 そして、パチュリーは魔法を唱えるのを終えて、焦る私に声をかける。

「ちょ、ちょっとまって!心の整理が!」

「あなたの都合なんて知らないわ。早くしないと、また拘束してモルモットよ」

「う・・・」

 それは怖い。アドラと分かれた時みたいなあんな苦しい思いはもうしたくない。

「そんなこと私がさせないけれど、あいつは間違いなくやるわよ。それと、夕食の時間も押してきてるからさっさとした方がいいわね」

 レイムも私に脅しを入れる。半分は私欲だが。

「わ、わかったわよ・・・こうなったらなるようになれよ!」

 私は自分に喝を入れるために、声を張ってから部屋の中心に歩み寄っていった。

 

【ENERGY 100%】(エネルギー)

【ALT 00010】(高度、ALTITUDE)

【SPEED 0000】(速度)

【VITALITY 100%】(体力)

 視界に映るHUD表示をさっき覚えた感覚で切り替える。飛行に役立つ角度表示、私のエネルギー残量と思われる表示、速度・高度計、そういったものを視界に表示させる。体力の表示は消せない。エネルギーはレイムに分けてもらって満タンだ。

「じゃあまずはその場で浮いてみて」

「わ、わかったわ」

【TAKE OFF】(離陸)

 パチュリーに指示され、私は念じる。浮け、浮いてくれ。

「・・・!」

 すると、私の足元がほんのり温かくなり、ゆっくりと身体が直立姿勢のまま浮いていく。

「わ、わ、わ」

【ENERGY 099%】

【ALT 00010】

【SPEED 0001】

「そこで止まってみて」

 段々と私の身体は高くなっていき、高度は10フィート(約3メートル)に差し掛かったところでパチュリーの指示が飛ぶ。

「ほっ・・・」

 足から発する揚力を調節して、私はその場にとどまる。

【ENERGY 098%】

【ALT 00011】

【SPEED 0000】

「おおお・・・」

 地上から離れている床を見て、私は改めて自分が宙に浮いていることを実感する。このあり得ない感覚、本当に現実か?

「ふむ、なるほど・・・ちゃんと記録はできてる?」

「はい、パチュリー様。ばっちりです」

 小悪魔が私の情報をノートに記録していく。

「ドーラ、次はそのまま前進してみて」

「う、ウィルコ」

 緊張でついウィルコ(了解)という言葉が出てしまう。そして、私は前進しようとするが、

「な、ならこう・・・うわわっ!?」

【PULL UP】

 とりあえず重心を前に傾けてみると、バランスを崩しそうになる。身体を起こせという表示が出て、私はすぐさま体制を立て直す。

「大丈夫!?」

「だ、大丈夫。慣れない感覚ね、これ」

「気をつけてね」

 よろめく私を心配するアリス。早くこの感覚に慣れなければ。

「それじゃあこうすれば・・・」

 今度は重心は前に向けると同時に揚力が発生している足も推力偏向ノズルのように動かし、後ろ向きにしてバランスをとる。

「おおお?」

【ENERGY 096%】

【ALT 00010】

【SPEED 0009】

 すると、前に進む。安定感は悪いものの、手でなんとかバランスをとる。

「ま、前に進んだわ!」

「足から出る揚力の向きを変えることで、安定感はないものの前には進んだ・・・足からしか揚力が発生しないなんて珍しいタイプね」

 ブツクサとパチュリーはひとりごとを言う。

「次は停止させてみて」

「え、ええ・・・よっとと」

 足と重心を元に戻し、慣性で動く身体のふらつきを抑え、ゆっくりと停止する。

【ENERGY 095%】

【ALT 0009】

【SPEED 0000】

「次は後退。さっきと同じようにやってみて」

「さっきとは逆だから・・・よっと」

 重心と足の向きを逆に動かし、後退する。更に同時に、出力を上げて落ち込んできた高度も調整する。少し感覚がつかめてきた。

【ENERGY 093%】

【ALT 0011】

【SPEED 0009】

「そして、こう・・・よし」

【ENERGY 092%】

【ALT 0011】

【SPEED 0000】

 部屋の中心で再び静止する。

「飲み込みが早いようね」

「そ、それだけが取り柄でね。体を動かすときはとにかくやってみるとだいたい分かる・・・と思うわ」

 勉強はそうでもないけれど。

「それじゃ次は左右に移動して見せて」

「OK。やってみるわ」

 私はまず、前進後進と同じように重心と足の向きを変えて左右に平行移動する。

【SPEED 0005】

 しかし、進むことには進むものの、足が曲げ辛かったり、バランスが取りづらくなるので左右の平行移動は速度が遅くなる。

「ととととと・・・横の移動は難しいわね。足からの揚力を強くすれば無理やり速くすることはできるけど、燃費が悪くなると思うし」

「中々に不便ね」

【ENERGY 090%】

 そうじゃなくても燃費は悪い。霊石のヘアピンのおかげか妖精に襲われた時よりかは減りが遅いように感じるが、1~2分程度浮いてゆっくり動くだけですでにエネルギーの1割を消費している。これでは彼女らのように移動に使えそうにはない。

「そうね・・・横への移動は別の方法でアプローチしてみる」

「やってみなさい」

 別の方法を試す。私は足をクロスさせ、

「ととと」

 身体を左回転させる。90度ピッタシに回転させようと思ったが、慣性で少し過ぎてしまう。HUDで確認した所、110度位左に回転してしまった。

「こうやって身体を軸回転させてから前進することで左右に移動するわ」

 そして、私はそこから前後進を行う。

「となると、平行移動は緊急回避に使ったほうが良いわね」

「ええ、そうなるわね」

 アリスはパチュリーとは違い、自衛の観点で分析をしているようだ。

「霊夢はどう思う?」

「ふぁあ・・・ん?ああ、そうね。自分のやり方でいいんじゃないかしら?強いて言うなら、霊力のコントロールが大事ね」

 そして、レイムは眠そうにしている。

「ほいっと」

 次は逆に足をクロスして右回転。さっきよりゆっくりと回転して慣性を抑える。今度は元の位置と近くに戻せた。

【ENERGY 87%】

「それじゃあ、こんどは部屋の端に移動して」

「ウィルコ。だんだんノッてきたわ」

 少し宙に浮いているのにも慣れてきて、気分が上がってくる。

「調子に乗り過ぎたら落ちるわよ」

「わかっているわ、アリス。そのへんは自分でもわきまえている」

 気分は上がっても、空では自分の状況をしっかり把握することが大事。それは幻想郷に来る前からしっかり身体に叩きこまれている。

「それで、次はどうすれば良いのかしら?」

 それを心に踏まえたうえで、私はパチュリーに次の指示をこう。

「次は少し速度をだして前身してみなさい。全速力はまだ危険だろうから程々にね」

「ええ、わかったわ。ふぅ~・・・」

 視界に映る速度表示と向こうの壁に意識を集中させる。目視と数値が重要だ。

「・・・よし!」

 私は出力を上昇させる。

【SPEED 0010】

【SPEED 0017】

【SPEED 0024】

【SPEED 0036】

 スピードも上がっていき、壁が近くなっていく。

【SPEED 0049】

 6割程度の感覚で加速したが、部屋の中心に差し掛かった時には速度は49ノット(約90km/h)に到達した。そこで私は加速するために前に傾けた身体を、重心を後ろに傾け、さらに足を前方に向けて出力を上昇させる。そうすることで減速をかける。

「ふっ・・・」

【SPEED 0024】

【SPEED 0010】

 減速する際に軽く身体にGがかかる。戦闘機に乗った時とは比べ物にならないとはいえ、このGがかかる感覚を自分自身の飛行で感じるのは久しぶりだ。

【ENERGY 076%】

【ALT 00017】

【SPEED 0000】

 端から端までの3/4程度の距離で完全に身体が止まる。およそここの端から端までを100メートルとしたなら、75メートル程を進んだことになる。

「ちょっと加速しただけでこれか・・・」

 思ったよりもだいぶ加速がつくようだが、エネルギーの減った量は減速時のブレーキで減った量も合わせて11%。最初に前進した時と同じ速度(10ノット程度・約18km/h)で同じ距離を進むとしたら減る量はおよそ4~6%というところだろう。

 ということは、最長でも一回の航続時間はだいたい6~8分で、1.5km程度飛行するのが限界ってところか・・・近場なら大丈夫だが、やはりこれでは移動手段として空をとぶのは厳しいようだ。1500メートル走を私が走ったほうが早いかもしれない。

 いやでも、航法を編み出せば・・・と、最初に速度と高度を稼いで、慣性で移動する方法が頭に浮かぶ。しかし、もっと開けた場所でないと試せないな・・・

「ボサッとしてないで、次よ」

 考えていると、パチュリーから次だと指示される。

「次は前に移動している途中で旋回してみなさい。そこからこっちに戻ってくる感じでね」

「やってみるわ」

 私は再び意識を集中させる。今度はさっきよりも抑えめにスピードをだしてみよう。

「となると、右の壁をすれすれで曲がって、ちょうどあの位置にという感じか・・・」

 旋回するイメージをまとめ、進行方向を右の壁に斜めからアプローチできる角度にして、私は身体を前へと傾ける。

【SPEED 0035】

 先程よりも遅い35ノット(約65km/h)程度に抑え、その速度に達した瞬間に出力を最小限に落として慣性で直進。

「はっ・・・」

 そして、壁に差し掛かる。私はそこで足をクロスさせ、右に身体を軸回転。壁に腹を向ける。

「ふぅぅっ・・・」

 少し角度がずれてしまった。それを修正しながら、慣性力を打ち消すために身体を反らせて足を壁の方向に向けるが、曲がるタイミングが少しずれていたのかなかなか壁に向かっていく速度が減速してくれない。仕方なく出力を更に上げ、先ほど停止した時よりも少し強めのGが体にかかる。

「場所は?」

 ギリギリ壁との接触は免れ、足を背中側に少し曲げると私の身体は旋回していく。パチュリー達は・・・そこね。位置をレーダーを表示して確認。そちらに体が向かせるためには小回りを利かせなければならない。

「ほいっと・・・」

 小回りを利かせるために、出力を一時的に抑えながら腕を広げて空気抵抗を増やす。F-14(トム・クルーズ主演のトップガンで有名な機体。愛称はTomcat[どら猫])などの可変翼機が低速域で翼を広げるのとおなじ感覚だ。

「・・・よし」

 皆を目視。無事、パチュリー達のいるの方向に進行方向を向けられた。私はまた出力を元に戻し、足をクロスさせて左に身体をロールさせる。身体が床と平行になるように戻す。

「ほっ・・・」

 そこからこんどは足を進行方向とは逆、皆のいる方向に向けて減速をかける。

「・・・ふぅ、こんな感じね」

 無事に、皆のいる直上に停止できた。

【ENERGY 062%】

【ALT 00012】

【SPEED 0000】

「む・・・」

 エネルギーは14%の消費。先程よりも速度は落としたものの、旋回の際の出力の急激な変化でかなり消費したのだろう。急旋回は最小限にしなければすぐにガス欠だな、これは。

「す、すごいわね、ドーラ。見てるこっちがハラハラするわ。あなたほんとに今日はじめて飛んだの?」

【ALT 00000】

【LANDING】(着地)

 出力を弱めていき地上に降り立つと、アリスが驚いたと私に話しかけてくる。

「生身で飛んだのは初めてだけど、戦闘機乗りだったから飛行の感覚がつかめたらなんとなくできちゃったわ」

「なんとなくって・・・霊夢みたいなことを言うのね」

「私が何も考えてないってこと?」

 余計なお世話だとレイムはアリスに言う。

「けど問題は燃費ね・・・私の視界に映る情報からは、もうすでに4割近くエネルギーを消費しているわ」

「まだ2分前後しか経っていないのにそんなに?なかなかに厳しいわね・・・」

「大事なのはエネルギーの使い方ね。今はずっと揚力を発生させ続けてる状態だったけど、断片的に出力して、あとは慣性や空力も活かして飛ぶことができればまだマシになるとは思うのだけれど・・・」

 私は自分の考えている方法を皆に口頭で伝えるが、皆の顔がきょとんとしている。

「・・・あんたってそんな奴だったっけ?」

「へ?」

 レイムは妙な質問をしてくる。

「ええ、そうね。なんか人が変わったみたいに話し出すし」

 アリスも私がなんか別人みたいだと言う。

「そ、そう?」

「そうよ。なんだか賢くなったみたい」

「・・・それは暗に私が馬鹿だと言っているのか」

「あ、そういう意味じゃないわよ。いつもなら結構周りに流されやすい質だもの、ドーラは。こんな風に私達が押されるほど話をする人でもない感じだし」

 アリスは弁解する。つまりは自分がいつも見ている私っぽくなかったということか。

「なるほど、そういうことね・・・」

「その、せんとうき?に乗っていたって言ってたわよね?そのせいで空を飛ぶと性格が変わるとか?」

 レイムは私の性格に関して推測をする。確かにそれはあるかもしれない。なんだかこうやって自由に空を飛んでいると、気分がハイになる。

「さて、それは置いておいて、飛行に関することはだいたい分かったし、次はあなたの能力について見ていくわよ」

 その話を遮って、パチュリーは次の検証に移ろうと言い出す。

「私の戦闘能力についてね」

「簡単にいえばそうなるわね。それ以外にもできることがあるならば検証するけれど。検証中に気づいたことがあったら言いなさいよ」

 パチュリーは検証の趣旨を簡単に説明する。

「それじゃあまた真ん中に行けば良いのかしら?」

「ええ、お願い。あとアリスと咲夜はちょっとこっち来て」

「何かしら?」

「次はあなた達にも手伝ってもらうわ。それと、霊夢はドーラの補給を」

「はいはい」

 パチュリーの指示で、みんなが各々の役割で動き出した。

「回復にはお賽銭がいるわよ」

「え」

「冗談よ」

 レイムは冗談を交わしながら私に手をかざす。

「ん・・・」

 レイムの手から温かい何かが私の中に広がり、

【ENERGY 100%】

 エネルギーが満タンになる。

「OKよ、レイム。ありがとう」

「感謝しなさいよ」

 レイムからの補給が終わり、私は部屋の中心に立つ。そして、HUDの表示を切り替える。

【ENERGY 100%】

【ALT 00000】

【SPEED 0000】

【VITALITY 100%】

【BULLETS 0800】(弾丸)

【MISSILE ●●】(ミサイル)

 さっきまでの表示に加えて、弾数、ミサイルの数、レーダーなどなど、フルで情報を表示させる。

「ドーラ、準備はいい?」

 パチュリーは私の準備を聞いてくる。

「大丈夫、いつでも行けるわ!」

「とりあえず、まずは飛ばずに色々試してみるわ。アリス、ターゲットを」

「わかったわ」

 パチュリーが合図を送ると、アリスは両手を前に出して構える。

「!!」

【DOLL】【DOLL】【DOLL】【DOLL】【DOLL】【DOLL】

【BOOK】【BOOK】【BOOK】【BOOK】【BOOK】【BOOK】【BOOK】【BOOK】【BOOK】【BOOK】【BOOK】【BOOK】

 すると、四方八方、360度全方位に本が宙に浮いて現れ、アリスの人形もそれに混じって取り囲んでいる。レーダーを見ても緑の点が多数表示される。

「あなたの周りにターゲットを用意したわ。簡易魔道書は動かないけど、人形はアリスが操作して動く標的となっている。魔道書は12冊、人形は6体、計18の標的が存在するわ。今から私の支持に従って、この標的相手に色々やってもらうわ」

 つまり、状況によっては間接的ではあるがアリスとパチュリーを相手に戦わなければならないという状態である。気が引き締まる

「う、ウィルコ!」

 人形と本がターゲットだとわかると、レーダーの緑色の点がすべて赤に変わる。これは私が敵と判断した時に赤に変わるということだろう。

「さあ、検証を始めましょう。本気でやるようにね」

「ドーラ、無理はしないでね!」

 二人の言葉を聞き、私は周囲のターゲットに集中する。生半可ではこちらがしんどい思いをすることになるかもしれない。気合を入れるために私は一言発した。

「・・・スワロー1、交戦(エンゲージ)!」

【ENGAGE】

 

第13話・完





【挿絵表示】

ドーラの動きのイメージです。(咲夜さんは代理モデル)

 しかし、この小説で書きたいことのふたつ目はこの空中での動きだったりするんですが、やっぱり難しいですね。自己満足のために精進せねば。
 ちなみに、ひとつ目は自分の中の東方を表現することです。
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