東方空闘犬 〜 元エースパイロット、幻想郷の旅   作:メビウスノカケラ

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第2話です。大勢の人形に連行されたドーラ(主人公)の命運やいかに・・・
2015/12/16 リメイクしました。


第2話「確信」

「ここ?」

《そうよ。どうぞ、入って》

 人形に案内された部屋のドアの前。私はドアノブを握る。

(ガチャリ)

「・・・あら、よかった。思ったよりもぴったりね」

「・・・そりゃどうも」

 ドアを隔てたその先にいたのはこの人形屋敷の主、本人も人形のような出で立ちをした女性だった。

 

第2話(Re)「確信」

 

「はじめまして。私はアリス・マーガトロイドよ。この子たちとこの家で暮らしているわ」

 ・・・この声、聞き覚えが有る。

「あら?どうしたのかしら?服が合わなかった?ちゃんと測ったのだけれど」

 服のことを聞いてくるこのアリスという女性の声はそう、さっきまで聞いていたんだ。

「服はピッタリよ。びっくりするくらい・・・それより、この人形の声の主ね、あなた」

 さっきまで私と普通に話していた人形の声と同じ声だ。

「あら、バレちゃった?その通りよ。この機械で・・・」

 アリスはおもむろに無線機のマイクを取り、

《こんにちは!私は上海人形!さっきはごめんね、アリスに言われたから仕方なくあなたをお風呂に入れさせてもらったよ!》

「・・・とまあ、こんな感じに。口だけではなく、動かしてるのも私よ」

「・・・・・・」

 ああ、騙された。本当に人形が意思を持っていると思い込んでしまった。悔しさと恥ずかしさが入り混じった変な気持ちだぞ。

「なんだか不満そうな顔ね。私が演じていたもんで気を悪くしたかしら?」

 アリスは私の機嫌を察知して聞いてくる。その答えはYESだ。

「わかってるなら何でこんなことを」

「ごめんなさいね。騙すつもりじゃなかったのだけど、あなたの素性がわからなかったから、人形経由で色々やらせてもらったわ」

「む・・・それはそうだけど」

 アリスの言い分は正しいと思ったので、返す言葉が思い浮かばない。

「あ、その感じはもしかして、あなた外来人なのかしら?」

「外来人?私は母国から離れたことはないわよ。あ、でもここが知らない土地だから・・・」

「うーん、まあそれはおいおい話すとして・・・とにかく、この辺りは危険なのがいっぱいうろついているの。だから、相手のことがわかるまでは知らない相手から自分のことを隠すためにこうしているの」

「そ、そうなのね・・・」

 アリスの言い分におかしい所はなく、私は納得してしまう。

「そうよ。全裸で、私の家のドアにたむろっていた人が怪しいと思わない人はいないわ」

「いや、でも、それには理由があって・・・」

 アリスは少し意地悪に私の状況を口に出す。じゃあ何で中に入れてくれたっていうんだ。

「ふふ、ごめんなさい。そんな顔しないで。ちょっと意地悪だったわね」

「・・・むぅ」

 顔を変えているつもりはないが、アリスに顔で感情を読まれてしまう。なんだか心を見透かされてるみたいで気分が悪い。

「あなたの言う訳はこれから聞くわ。さ、そのソファに座って。お話しましょう」

 人形が手招きしてソファに誘導する。うん、やっぱり生きてるみたいに見える。

「それじゃあ、失礼して・・・んよいしょっと」

 私はソファに腰掛ける。

「・・・オヤジじゃないんだから、そのよいしょっていうのはやめたほうが良いわよ」

「?」

 何を言っているんだ?別に普通じゃないのか?

「せっかく綺麗なルックスしてるのに・・・まあいいわ。今はあなたのことを聞かないとね」

「え、ええ。なんだかわからないけれど、よろしく。じゃあ何から・・・」

 私は何から話そうかと切り出そうとする。だけど、アリスはそれを遮って、

「その前に!あなたはコーヒーと紅茶、どちらがお好き?」

 妙な質問をしてくる。

「え?こ、コーヒーよ」

 コーヒーは頭がすっきりするし、香りも好きだが・・・いきなりアリスは何を聞いてくるんだ?もしかしてコーヒーを淹れてくれるのだろうか?

「あら、私もコーヒーが好きよ。ここじゃ高くてなかなか飲めないけれどね」

「・・・?」

 聞いておいて何だその答えは。アリスは私をからかっているのか?

「・・・ふふふ、やっぱり。あなた顔に出やすいわね。そんな顔しなくっても、ごちそうしてあげるわよ」

「・・・そんな顔はしてないわ」

「お菓子もあるわよ」

「え」

「あ、口角が上がったわ」

「・・・・・・」

 アリス・・・意地悪な人だ。

「第一印象はちょっとクールでとっつきにくそうと思ったけど、全然そうでもないみたいね。すごく顔に出やすい人」

「く、口に出さなくても良い!」

 つい声を荒げて叫んでしまう。すごく恥ずかしい。

「それじゃ、準備してくるわね。少し待っててちょうだい」

(ガチャリ)

 そして、そんな私を相手せずアリスは部屋を出て行ってしまう。勝ち逃げだ。

「・・・はあ。しかし・・・」

 アリスが出て行ったあと、私はこの部屋を見回す。レースのカーテン、綺麗な花、柄物のテーブルクロス、カーペット・・・綺麗で優雅な部屋だ。そして、私が借りたアリスと同じこの服。こういうのを「女の子らしい」というのだろう。

 ・・・子供時代には孤児、拾われてからは軍に身を置いた私にはほとんど無縁のものだな。なんというか、やっぱり夢の世界か何かか、ここは?でも、私自身こういう「女の子らしい」イメージが出てくる夢なんか見たこと無いし・・・

 しかし、ほんとにこの服ぴったりだな。アリスと同じ服なのに、不思議だ。アリスは多分160cm前後で、私の身長は172cm・・・サイズを間違えてしまったものを取っておいてあったのだろうか。

(ガチャリ)

「おまたせ」

 いろいろ考えていると、アリスがコーヒーのいい香りとともに戻ってくる。

「コーヒーと、昨日焼いたあまりものだけどクッキーを持ってきたわ。あと、ミルクと角砂糖もお好みでね」

 アリスは人形に持たせたコーヒーとクッキーを私の前のテーブルに置かせる。

「あ、ありがとう・・・」

「いいのよ。私が飲みたいだけだから」

 アリスは砂糖を2つ、それからミルクも自分のコーヒーに注いでカフェオレにしていく。

「あなたはいいの?」

「・・・それじゃ、お言葉に甘えて」

 私も角砂糖を1つだけコーヒーに入れる。

「ミルクは良いのね」

「ええ。それじゃ、いただきます・・・」

 お互いにコーヒーカップを手に持ち、口をつける。

「ズ・・・」

 おいしい。口の中から鼻にかけてコーヒーの匂いが広がる。コーヒー飲むのなんていつぶりだ。ちょうど3年前か?あの任務の前に飲んだようなそうでないような・・・

「・・・・・・」

 アリスはすする音を立てずにコーヒーを嗜む。こんな飲み方をする人は見たことが無い。こういうのを「おしとやか」というのだろうか。

(カチャリ)

 そして、アリスはティーカップを置き、人形から何かを受け取る。

「・・・?」

 そして、アリスは私に差し出す。人形から受け取ったものはハンカチだった。

「・・・一体何?」

 差し出されたハンカチを受け取って見たアリスの眼差しはふざけている様子はなく、どこか気を使っているようだった。

「私はあなたのことをまだ何も知らないけれど、あなたがとてもつらいことを経験してきたことはわかったわ」

「・・・涙」

 私の頬には涙が一筋流れていた。

「・・・!」

 それに気づくとタガが外れたようにポロポロと涙が溢れてくる。

「ううっ・・・くっ・・・」

 コーヒーを飲んで身体が反応したのか。コーヒーの香り、味・・・久々に口の中に入れた美味しい物。体が喜んでいるようだった。

「うぁっ・・・ああっ・・・ぇぐっ・・・!!」

 これで確信した。この身体、この命は間違いなく私のものだ。私が迷い込んだこの地が夢の世界とかおとぎ話の世界だろうとこの私は確かに本物だ。

 今ここにいる私が新しい自分なんだ!

「・・・・・・」

 アリスは涙を流して生を噛みしめる私を、コーヒーを飲みながら静かに見つめていた。

 

「・・・ごめんなさい」

 ようやく落ち着いた。アリスのティーカップは空になり、私のカップではコーヒーが冷めていた。

「いいのよ。感傷にひたる気持ちは私にもわかるわ。私も元は人間だったから」

 アリスは気遣ってくれる。意地悪な人だと思っていたが、どうやらいい人のようだ。

「ありがとう・・・ん?」

 そして、今のアリスの言葉に不可解な単語が入っていることに気づく。

「元は・・・?あなた、人間よね?」

 私はアリスに質問する。どう見ても人間の彼女。まさか、とは思ったが、

「いいえ、魔法使いよ。見てくれは人間だけれどね」

「・・・え?」

「え?」

 アリスの口から信じられない言葉が飛び出す。魔法使い?頭おかしいの?

「何よその顔、頭おかしいのか?って顔ね」

「あ、いや・・・」

 やはり、顔から感情が読み取られる・・・っていうか、心の声まで読まれてる?そんなに顔に出てるのか?

「でも、魔法使いってそんな非現実的な・・・」

「ほら、こうやってよく見ると、指から光の糸のようなものが見えるでしょ?これは魔力の糸。これで人形を操っているの」

《シャンハーイ》

 アリスが指を動かすと人形が動く。そして、その人形にはアリスの指の先から出ている光の糸と繋がっている。

「本当だ・・・人形だけでなく、あなたまでがそんなファンタジーな人だったなんてね。あはは、私は頭がどうかしてしまったのか?それとも、ここは本当に死後の世界とか空想の世界だとかそういう場所なの?」

「まあ、似たようなところね」

 ここで私は自分の存在の次にもう一つ確信する。私が迷い込んだこの場所は私が知っている『現実』ではなく『夢』とか『空想』とか、そういったものがまかり通る世界だということだ。

「・・・ねぇ、アリス」

「何かしら、ドーラ?」

「もう気づいているかもしれないが、私は今の状況に戸惑っている。私の常識とは大きく外れたことが目の前で起こり続けていてわけがわからないわ」

「そのようね」

 内心焦っている私とは対照的に、アリスは落ち着いた様子。何を聞いてもちゃんと答えてくれそうだ。

「それで、聞きたいことがあるのだけれど・・・ここは一体何なの?」

「ここは現世から忘れ去られた者達の楽園、私たちはここをこう呼んでいるわ」

 アリスの口から、この場所、私がこれから生きていく場所の名が発せられる。

 

「その名も・・・『幻想郷』よ」

 

第2話(Re)・完




幻想入りでは主人公が最初に誰に合うかが一番重要だと思います。
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