東方空闘犬 〜 元エースパイロット、幻想郷の旅 作:メビウスノカケラ
2016/03/14 リメイクしました。
なぜかは分からないが、にとりは私の『F-16』を発見した。そしてどうやら、にとりはそれを使って展示会を開き、里の人間や他の妖怪から私の機体を調べるための研究資金を集金しようと企んでいたようだ。
チラシで『外の世界の技術を解明!』などと、あの出来損ないのプロペラ程度しか作れない技術でよく言ったものだ。あのチラシを見て子どもたちが外の世界に興味を持ってしまっては危険だと、ケーネ先生は今朝にとりといがみ合っていたらしい。
その最中に私が来たもので、にとりは急遽予定を変更。研究資金を集めるよりも、私に聞いたほうが早いとなったのだろう。彼女は私達を河童のアジトに招待した。
滝の裏の洞窟を抜け、河童のアジトにたどり着いた私は、今、かつての愛機との再会を果たしていた。
「・・・本当に私の機体みたいね」
空色の迷彩塗装、機首と垂直尾翼にプリントされたツバメのエンブレム・・・間違いない、これは私の、ドーラ・ウェッジショットこと『スワロー1』の愛機だ。
「見つけた時は驚いたよ。無縁塚にこんなデカブツ、しかもかなり現代的な物が落ちているなんてね。しかも状態もいい。運ぶのにかなり苦労したよ」
「は~・・・外の世界にはこんなものがあるのだな」
「ドーラが乗っていた戦闘機という乗り物・・・チラシでも見たけれど、まるで鳥みたいね」
みんな、このF-16についての感想を言っている。だが、私はそんなことなど耳に入らず、機首から機体の周りを時計回りに見て回る。
「・・・ありえないわ」
しかし、見たところどこにも異常はない。状態はかなりいいように見える。そうなると、コックピット周辺のことも気になってくる。
「・・・にとり、梯子とか脚立とかはあるかしら?」
「梯子ならそこに立てかけてある。取ってくるよ」
にとりは気分が上がって上がっているのか、急ぎ足で梯子を私に受け渡す。そして、私はその梯子でコックピットのキャノピー(風防。ガラスのカバー)のあたりに登り、
ウィーーン
キャノピーを開けるように操作する。キャノピーが動くということは、電気も通っているということか。
「おおお!すごいぞ!!自動なのか、それ!?こじ開けて壊さなくてよかった~!」
にとりの物騒な言葉が聞こえるが、今は気にしない。私はそのままコクピットに座り、計器と電子機器を立ち上げる。
「・・・やっぱりちゃんと動くわね」
しっかりと動く計器と電子機器。やはり電気系統は生きている。
そして、それらを確認して更に驚く。燃料は満タン、レーダーも完全に動作する。
「もしかして・・・」
私は操縦桿を握り、動かしてみる。
ウィィーン
翼のエルロンが動く。水平尾翼も、ラダーも、全部動く。確認はできないが、エンジンもおそらく動く。
「嘘でしょ・・・?これ、今にも飛べる状態じゃない・・・!」
機体は万全の状態であった。滑走路さえあれば空を飛べる状態だった。レールガンもろとも爆散したはずの私の機体がなぜ、このように整備された状態でこの幻想郷に・・・
「おいおいおい!ちょっとすごいじゃないか!!滅茶苦茶動くじゃん、これ!!」
「うわっ!?び、びっくりするじゃない!」
真横のにとりが大声をだして私に話しかけてくるので驚いてしまう。
「なあなあなあ!これ、この後変形するのか?そうだよね!そうに決まってる!!」
「お、落ち着いて。変形はしないわ」
私はにとりに落ち着くように指示する。だが、にとりの興奮は収まらない。
「じゃあ何!?この形通り、空を飛んだりするのか!!鳥みたいに!!」
「そ、そうよ。飛べる状態にあるわ」
「うおお!まじでか!!すごいぞ!!なら今すぐ飛ぼう!!」
にとりはさらに顔を近づけて私に詰め寄る。フンスフンスと鼻息が荒い。そんなにとりに、私は引き気味に説明する。
「いや、その、飛ばせる状態ではあるんだけど・・・加速するための滑走路がないから飛べないっていうか・・・」
「え?なんだ、こうフワーって受けるんじゃないのか??」
「VTOL(垂直離着陸機)なら可能だけれど・・・そうね、どこから説明しようかな」
「教えて教えて!!」
興奮するにとりは押せ押せムードだ。多分断ることはできないので、私は飛行機の飛ぶ原理について簡単な説明を始める。
「あいつらは何を話しているんだ?」
「先生、私達が聞いたってわからないことだと思うわ、多分」
私とにとりは、アリスとケーネ先生を置いてけぼりにして話を続ける。
飛行機は翼から発生する揚力(上に上がる力)が重力に打ち勝つために空気を利用する。その揚力は空気や風が強く翼に当たることによって発生するため、飛ぶためにはものすごい加速が必要なのである。確かそうだったはず。
「だから、飛行機を加速させるための場所が必要なの。長い長い整備された滑走路や、カタパルトとか・・・」
「おいおい、それじゃあこの幻想郷じゃ飛べないってこと?」
「それらがなきゃどうにも」
「なーんだ・・・ちょっとがっかりだな。あのスマホとか言うのと同じで、幻想郷じゃ全く使えない、ってわけか」
幻想郷では私の愛機は飛べないと説明すると、にとりは明らかに気分が落ち込んでしまう。
「VTOLやSTOL(短距離離着陸機)とかなら短い距離や、そのまま浮き上がることで飛行できたりするのだけどね」
「でも、この機体はそうじゃないんだろう?」
「残念ながら。そういった機体にする実験計画はあったらしいけれどね」
「その気になれば、そういう機体にもできる、ということか・・・けど、私達河童の技術じゃどうにもなりそうにないしなぁ・・・」
にとりはVTOLとSTOLについての話を聞くと、腕を組んで悩み始める。
「・・・いや、でもなぁ」
にとりはボソリと何かをつぶやく。なにか思いついたのだろうか?
「どうかし・・・」
どうかしたのかと聞こうとした時だった。
パシャリ!
「!」
閃光がアジトに広がり、すぐに晴れる。カメラのフラッシュみたいな光だ。
「な、何!?」
私はあたりを見回し、何が怒っているのかを把握しようとする。すると、先生とアリスの背後から人影が、コツコツとこちらに近づいてくる。
「へ~、外の人間はこんなものに乗って空を飛ぶのね~」
「げ・・・この声は」
女性の声。にとりはその声を聞き、すこし嫌そうな顔をする。あの人物はにとりの知っている人物なのか。
「にとり?」
「ちっ、着けられてたみたいだね。このメカの保管場所だけはあいつらに知られたくなかったんだが・・・」
にとりは明らかに面倒事が起こったという感じである。
「あいつら?」
「ドーラ、あれは私達河童の上司、『天狗』の一人さ。あいつは私が対応するから、お前はあんまり余計なことはしゃべるなよ、いいな?」
人影は次第に光が当たる場所に出、その姿を表す。黒髪に赤い小さな帽子、手には手帳を持った白黒の女性。彼女もまた『天狗』という人外だという。
「けれど、ただの上司ならどれだけ良かったことか。あいつは余計にたちが悪い。あいつ・・・射命丸文は烏天狗の『パパラッチ』だ。何を言いふらされるか分かったもんじゃない」
「~♪」
アヤとにとりが呼んだあの女性は小気味よく鼻歌を歌いながら近づいてくる。記者としてネタができたことからの嬉しさからだろうか。
「こんにちは、にとりさん!毎度おなじみ、清く正しい射命丸です!」
「やれやれ、そういうことだから、ドーラはここでじっとしていてくれ、頼むよ」
仕方がないと、にとりは梯子を下りアヤの元へと対応しに行く。にとりのあの様子を見ると、結構厄介な奴のようだ。
「・・・ふぅ」
とりあえず、私はコックピットのシートにもたれかかり、目をつむる。そして思い出す。この機体とこなした数々の任務、死んでいった仲間達、破壊した巨大レールガン・・・
わからないことも頭に廻る。なぜ幻想郷にこの機体が?そしてなぜ完全な状態で?私は一体・・・わけのわからないことばかりだ。アリスと先生が言っていたように、それらをあばくことが私の幻想郷での大きな目的となりそうだ。
そして、実際にこのF-16と再会したことや、アリスとケーネ先生に運ばれて空を飛んだことで、私は空への思いが強まったことも実感する。またあの空をとぶことができるのだろうかと、広い空の映像を思い浮かべていた。
・・・ああ、もう一度飛びたいなぁ。
第4話(Re)・完
今回、射命丸文が出てきましたが、彼女は私が東方Projectで最も好きなキャラクター、いわゆる嫁キャラです。とはいっても過度なえこひいきはしませんがね。
はてさて、文の登場で今後どう展開していくのか、といったところです。