そして、彼は落ちていく。
その先に待つのは絶望か希望か。
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今日こそ私は成功しなければならない。
いつだって失敗ばかりだったけれど、今度こそ。
一人前のメイジとして認められるためにも、私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは最高の使い魔を召喚してみせるのだ。
周りから野次が飛び交う。「また爆発するぞ」、「どうせ無理」等の言葉が。
私のストレスを僅かばかり増やすその行為だが、何故かその時はまるで頭に入ってこなかった。
詠唱を唱えてる今でもとにかく自分が冴えているのが解る。
「…ッ!来た!」
思わず叫んだ。それほどまでにこの召喚、サモン・サーヴァントには手応えがあったのだ。
ズドオオオオオオン!
天を割る勢いの轟音とともに空間に亀裂が入ると雷がそこから落ちたかのように閃光が駆け抜け、落ちる。
地面にはクレーターが出来ており、まるで隕石でも落ちたかのよう。
そこには、見なれない服装の人間が片膝をついていた。
ん?よく見るとマントをつけていない。
「平民じゃないか?」
そう呟いた誰かの言葉に私は額に手を当て自らの失態を自覚したのだった。
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転生なのか転移なのか、どちらともわからないが多分は後者なのだろう。
以前との違いなど調べるために鏡など欲しいところだが着地した衝撃で片膝をついたまま立つことが出来ない。
オイオイ、サーヴァント並みの身体じゃないのか?俺は神とやらに騙されたのだろうか?
幾つもの疑問が浮かんでは消える中、目の前のピンク髪の女の子に気付く。
彼女が自分を召喚した。かは解らないが、ひとまず何らかのつながりを感じたのでお約束かつ定番の台詞を問うことにしよう。
なんたって自分も、もう物語の一員なのだから。
「問おう。貴方が私の、マスターか?」
足が衝撃で立ち上がれない。これはこれで騎士っぽいかもしれないポーズだが、このまま動いたら間違いなく俺の両足は生まれたての子鹿のようにプルプル震えだすことだろう。
「そ、そうよ!私がアンタのご主人様よ!」
ピンク髪の子が緊張した面持ちで近づいてくる。地面が俺が着地した衝撃で凹んでるから気をつけてゆっくり来て欲しい。あ、躓いた。がセーフ。なんとか持ち直し、俺の前まで到達する。
「認めたくはないけど…しょうがないわよね」
俺の顎を掴んでそのままくちづけを交わした。
あ、慣れてなかったのか歯がぶつかった。地味に痛い。
「ふ、ふん。やっぱりゼロのルイズじゃないか。凄い衝撃だったけど、やっぱり使い魔はただの平民だ!」
周りのモブっぽいのが言った言葉に違和感を覚える俺。
ん?ゼロのルイズ?もしやあの有名なツンデレヒロインの出る世界なのかここ。と言うより彼女がそのルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールなのか。なんでフルネーム言えるんだ俺。さすが設定厨。
脳内で自画自賛していると左手に焼き印を押されたかのような凄まじい熱と痛みを感じる。いやまあ、実際そんなもの押された事ないけどさ。
「グアアア!?なんっ…だよコレ!?」
見ると何やら紋章が浮かび上がってくるではないか。それと同時にピンク髪の彼女。ルイズへの忠誠のようなものを感じ始める。
コレは不味い。と言うほどのものではないのかもしれないが、自分というものに上書きされているような感じがする。
嫌だ。自分の意志を変えられるのなんて怖すぎる。自分ではあってもその時点で自分によく似たナニカになってしまう。そんな危機感を覚えるのだ。
何か手はないのか!
そして自身の内から知らない知識が溢れ出る。
そう、呪文だ。いや!始動するためのキーだ!言霊だ!
「チェンジセイバー!アルトリア!」
見た目の肉体は変わらないが身体の内側から違うものになっていくのを感じる。服装の上から、かの騎士王の鎧が自らの身体に合わせるようにチューンされて装着されていく。
それと同時に剥がれ落ちるかのように左手の紋章が消えていく。
そう、セイバーアルトリアのもつクラススキル、対魔力の効力に違いない。この紋章の魔力は令呪よりは弱かったようで助かった。
対魔力のみで行ったら黒のライダーや、ルーラーの方が良かったのかもしれないが、結果が良かったから良しとしよう。
ひとまずは、
「な、な、何なのよアンター!?」
目の前のピンクの子をどうするかねえ。