神父と聖杯戦争   作:サイトー

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 アポ、サイコー!
 最終決戦は面白くて良いですね。


殺し屋の契

 元より、この加護は自分のモノではなかった。ただの貰い物だった。第六次聖杯戦争後、聖堂教会に所属する事となり、その能力を認められ、自分の聖典を与えられたことで縁が生まれただけに過ぎなかった。

 これは死徒ソロモンの遺産が一つ。

 メレムが集めた概念武装を改造した天使の楽器。

 あの人が持つ聖典のように、生贄にされた人間の魂を精霊に加工して憑いている訳ではなかった。しかし、遥か昔に行われた天使光臨の儀によって祝福され、確かにこの楽器にはエデンより降り注ぐ主の遣いの洗礼を受けた。その楽器に心惹かれ、自分用の聖典に選び、銃火器の改造を趣味とするあの人の強力もあり、代行者の武器として新生した。

 

「お願いです、助けて下さい助けて下さい………!」

 

「……――――――」

 

「死にたくない! 死にたくない! 死にたくない! 仕方が無いことだったんです!! 私だって好きで吸血鬼なんて化け物になったんじゃない!!?」

 

「―――そうか」

 

「何がいけないの!? 人間を食べないと生きていけないのに、なんで人間を食べただけで殺されなきゃいけないの!?」

 

「さぁ、知らねぇよ。けどさ、人を襲う害獣は撃って殺すのが当たり前だ。害獣駆除は誰かがしないといけない役目だろう。

 お前が死ぬのは社会にとって得にしかならない時点で、その生死を問う価値もないな」

 

「ふざけるな……ふざけるなふざけるなぁ……!!

 だったら何で私は吸血鬼なんて怪物になったんですか!? 私は、私は……!!?」

 

「まぁ、アレだぜ。お前の殺害を願った依頼主を強いて言えば、この人間社会そのものだ。命を啜る化け物に人権など有り得ず、血で穢れた魂に人の尊厳は宿らない。

 だから―――死に給えよ。

 お前ら邪悪に許される救いは唯一つ。最後の走馬燈に苦しみ悶え、身の内に溜めた咎を洗い流して死ぬことだけだ」

 

「いや……いや。いや、いやいやいやいやい――――」

 

 ―――パン、と乾いた音が鳴る。

 殺し屋の前で両脚を撃たれ、跪いていた少女の頭部が吹き飛んだ。さらりさらり、と死体は一瞬で灰となり、少女が生きていた痕跡は衣服と持ち物だけだった。その残り物さえダンは魔術を使って抹消し、彼女が生きていたと言う証拠品をこの世から消し去った。

 

「全く、これだから死徒は達成感が余りない。つまらないぜ。人間を殺したのと違い、死体が残らないからな」

 

 彼が手に持つは、金色の大型自動拳銃。それを元の形のトランペットへ戻し、背中の楽器入れに仕舞った。ついで懐から煙草とライターを取り出し、口に咥えて火を付ける。すぅと深呼吸をした後に、はぁと溜め息と一緒に煙を吐いた。やはり一仕事(人を殺)した後の一服は格別だ。これで教会の方に経費も請求すれば、かなり良い額の金が銀行口座に貯まっていることだろう。久方ぶりに高い酒でも買うのも良いかもしれない。

 ……ここは裏路地。ポイ捨てされたゴミが溜まり、腐臭が漂う都市のデッドスペース。

 三分もせずに煙草を吸い終わったダンは、その吸殻を死徒が死んで出来た死灰の山の中へ放り投げた。その後、死骸の灰ごと吸殻を踏み潰し、燻ったままの火を完全に消した。

 

「おうおうおう、うははは!

 オレっちの見立て通り糞雑魚蛞蝓(クソザコナメクジ)だったな、吸血鬼のかわい子ちゃん。雌人の良い匂いと怪物の生臭さのブレンド具合からして、強いっちゃ強いけど、何かビミョーだったしな。

 やっぱありゃ、報告通りの急造死徒ですぜ、ご主人様よぉ。

 身体能力だったり、魔術に使う魔力量だったり、その運用術式自体はそりゃ数百数千年レベルだったけど、全体的にぎこちねぇ。人喰い化け物特有の狂った在り方っつーよりかは、人間の狂人の延長線上にある雰囲気?」

 

 そして、今まで隠れて見ていた魔術師アデルバード・ダンの使い魔が顔を出した。姿としては子犬であるが、雰囲気がセクハラ好きの中年オヤジでしかない異様な魔獣だった。

 

「そうだな、フレディ。どうもこの雑魚、無理矢理死徒にさせられ、無理矢理人間を喰わせられ、無理矢理狂気を宿らされていた様だ。

 ただの死徒化じゃねぇなぁ……これは、何と言えば良いか分からんけど。うぅむ、そうだな、強いていば洗脳か。お前の言う通り、吸血鬼として持つ残虐性と言うよりもだ、気が狂った精神病患者だ。哀れだぜ」

 

「となるとだ、ご主人よ、あの報告は正解なんじゃね?」

 

「だな。惨いぜ……ったく。新規参加した二十七祖の尖兵か」

 

「おっ()んだ殺人貴にやられて空番になってた位に入った奴だったな。確か、怪物王女とか全知全能なんとかだったか」

 

「色々と呼ばれ方は色々とあるみたいだ。とは言え、今はただ―――全能、とだけ呼ばれている。

 まぁ実際のところ、正体は不老不死の吸血種と言うだけで、あれは死徒でもなければ吸血鬼でもないらしいのだが」

 

「へぇ、まぁ、子犬のオレっちからすれば、人喰い化け物は人間しか喰わんし、如何でも良いや。自分、犬ですので。

 つーかぁ犬喰い文化の国だとぶっちゃけ、人間も吸血鬼もオレっちからすりゃ同類の捕食者よ!

 アンタら人間、マジ何でも食べるからな。犬の立場から見れば、吸血鬼とか自分と同種族の人型生き物を食べちゃうのが好きなだけのヒューマンだもの。そこに違いなんてあーりませんぜぇ。

 しかも、結構な国で保健所なんて屠殺施設まで在る始末だよ。犬殺し大好き人間文明は怖いね」

 

 フレディは思い浮かべるのは、同族が人間共の手で屠殺される風景。犬を惨たらしく殺し、いらないからと無機質に処分する連中でありながら、奴らは何故か吸血鬼を化け物と罵る。自分達が吸血鬼の手で犬のように殺される時、自分達も動物で在りながら特別な別の何かと勘違いし、この星が作った自然の摂理を呪うのだ。

 その矛盾が面白いのだと、小犬は楽しそうに嗤っていた。

 

「ああ。そして公共衛生、都市管理の為―――殺す為にただ殺す!

 犬だけどオレっち、人間が作ったネットとか好きだから良く動画やら何やら見るけどよ、まぁ、可哀想。世界中どこもかしくも、人間の手でオレっちの同族のお犬さん達がヒデェ目にあって死んでるぜ。特に革製品とか食肉とかね。

 だから、人間も吸血鬼も変わらんってこと。まぁ、如何でもいんだけど」

 

「お前、ネットしてるのは知ってたけど、動画なんて趣味があったのか。まぁ、遠い場所で生きてる他者に無関心な部分は、オレら人間とそう感性が変わらないのな」

 

「おう! アンタら人間も、自分達と同じ姿をした動物が無残に死ぬ動画見ても、何も思わんだろ。基本それとおんなじですぜ。

 それに動画以外も楽しんでるぜ。ネトゲとか、掲示板とか。特に意味も無く炎上させるの大好きです。あいつら自分が犬以下の知性体の癖して、野生動物以上に自分に価値あるって勘違いしてるからな!」

 

「はぁ、全く。お前も存外、人間に染まったな。そこまで文明を愉しんでいるとは、驚いたぜ」

 

「えぇえぇぇえ、そうかぁ……?

 けどよ、アンタらの知性のカタチは面白いよ。オレっち犬だけど、人間は犬殺しの動物種だけど、人間は他の動物と違って感情が面白い!」

 

「面白いと思うのは大事な感情だ。楽しみがないと髄から本気になれんからな。オレも銃が趣味であり、生き甲斐であり、人生一番の娯楽だ。特に強い獲物を射殺すのはガンマン冥利に尽きる」

 

「おうともさ。オレっちも楽しくなければ種族問わず交尾はしないぜ。腰振ってわんわんおってな!」

 

「はは。何、人間の男もまた雄だ。犬のお前以上に脳内が交尾一色に染まった腰振りマニアも少なくない」

 

「知ってるぜ。性交を文明に取り込んでいる知性体は地上で唯一、アンタら霊長類だけだ……だがよぉ、無駄話をするのもいい加減良いんじゃね。

 尖兵殺したけど、親玉は見付からねぇ。死徒共の井戸端会議で流れてる噂話を頼りによ、何匹もご主人様の葬浄弾典(コンスタンティン)と聖典ラッパで銃殺刑に処して来たけど、当たりはまだなしですぜ。

 全能なんて祖、本当にいるのかどうか……」

 

「……さぁて。それはオレの知ったことじゃない。何より、今のオレは雇われのサラリーマン。大事なのは同僚の仕事ぶりを信じ、上司の命令を完遂すること。

 あの女がいるか、いないかなど、実際どうで―――」

 

「―――あら。やっぱり貴方だったのね、アデルバート・ダン」

 

 そして、フレディは瞬く間に平伏し、可愛らしい鳴声を上げた。

 

「ワンワンワン。クゥン……クゥン、ワンワン、ワンワンオ!」

 

「それに、殺し屋に似合わず可愛らしい子犬さんも連れているのね」

 

 一秒にも満たない早技だった。使い魔のフレディはプライドも見栄も全く見せず、一瞬でただの子犬に成り果てていた。

 死徒、全能―――根源接続者。

 一目見ただけでフレディは彼我の戦力差、そして存在の規格が違うことを鋭過ぎる嗅覚と第六感で嗅ぎ取っていた。魂からして次元が違う。感じ取れる魔力の波動をフレディは身に受け、夜空の宇宙の如き広大さを錯覚していた。吸血鬼だから、魔術師だから、と言った話ではなかった。

 

「お前、本当にある意味で潔いな。プライドとかないの?」

 

「―――ない! ……あ、じゃなかった。

 わんわん、わんわんわん! オレっち悪い小犬さんじゃないですぜ、ワン!」

 

「えぇ、悪い小犬じゃないわね。やっぱり如何見ても、極悪そうな狂犬ですもの。私が言える事じゃないけれど、精神が邪悪だわ。それに何処か(よこしま)な、好色そうな雰囲気。

 ふふ。黒く澱んで、おいしそうな魂ね」

 

「そんな、吸血鬼様―――ッ!

 で、でで、でしたら……でしたら何卒(なにとぞ)、どうかオレっちの代わりにご主人を食べて下さい!?

 ぶっちゃけご主人は殺しても良いんで、はい! 何卒自分だけは殺さないで下さい、めっちゃ助けて下さいお願い致します!!」

 

「飼い甲斐のない薄情な使い魔だ。生き残れてもお前、明日から飯ずっと半分な」

 

「そんな殺生な、ご主人様ッ!」

 

 何故か殺し屋は、この場に突如として顕現した少女と同じ呆れた目付きで、自分が飼い主をしている使い魔を見る破目になった。

 

「しかし、やはりお前だったか。特徴を聞いて直ぐ分かった。祖に選ばれるとは、随分と暴れ回ったらしい」

 

「私はそこまで暴れたつもりはなかったのだけれども。うん、でも、そうなのかもしれないわ。

 それにしても、あの協会で執行者をしていた貴方が封印指定にされたと聞いて驚いたわ。協会の魔術師を何人も撃ち殺して指名手配されたのもそうだけど、貴方があんな魔術礼装を作ってた方にびっくりよ。容量に上限はあるみたいだけど、永劫に劣化せずエネルギーを維持する特殊な魔力炉心だったかしら?」

 

「詳しいな。協会員を殺した時に、その礼装の情報が流出してしまってな。それで手配序でに封印指定に選ばれた。

 全く協会の奴らは本当、調子の良い狸共だ」

 

「そう。けれど、その驚きも、埋葬機関員になったと聞いた時の驚愕で塗り潰されたけど」

 

「自営業の殺し屋では限界が来ていてな。これで中々、雇い主がいるリーマン生活も楽しいぜ。だがまぁ、世間話はこの辺にしてビジネスの話をしようか?」

 

「ええ、良いわよ。なにかしら?」

 

「ここで暴れていた死徒。あれはお前の手駒か?」

 

「そうよ。素質のある人間に私の因子を植え付け、更に死徒化させたの。私を通じて根源へ擬似的に繋げて……―――って、あ、ここまで言う必要はないわね。

 幾ら知人の貴方でも、研究は秘匿しないといけないわ。で、親玉の私を見付けて、これからどうする?」

 

 もう十年以上前になるのかしら、と彼女は思い返していた。沙条は妹が引っ越しした冬木を襲撃し、そこに住む神父の手で返り討ちにあった。一度はまだ少年だった神父を捕え、甚振り、監禁して玩具にしたが、隙を突かれ死に掛けた。弄りものにした応報を受けたものの何とか死なずに生き延び、それ以来言峰士人とは何だかんだで長い付き合いとなる。

 沙条の分岐点はそこなのだ。気侭に世界中を巡る様になったのもその所為なのだろう。アデルバート・ダンと知り合ったのも、そんな縁故に必然だったのかもしれない。

 

「ご主人よぉ、オレっちは逃げたいんだけど。この吸血鬼って言うよりも、臭う概念からして精霊種……いや、神様か?

 ……まぁ、どっちも理解出来ないから良いんだけど。この女、何の気配も生じさせずに空間からヌルリと飛び出て来たんだぞ。姿を消してた訳でも無く、空間転移なんて膨大な魔力を使う魔術を発動させながら、その魔力を一切漏らさずに使いやがった!!

 神霊魔術が正体だぞ、こいつの神秘は!?」

 

「ふふ。賢い子犬ね。でも、なにも不思議な話ではないでしょう。神様と同じ場所から生まれた私が、神様と同じ力が使えるのは」

 

「……根源接続者―――!」

 

「そう震えるな、フレディ。殺せない相手と真正面から殺し合わない」

 

「―――ふぅん……?

 変ね、殺し屋の貴方らしくないわ。もしかしてアレかしら……初めて会った時、撃たれた弾丸全部素手で掴み取ったのがショックだったの?」

 

「何を言うかと思えば、はぁ……ったく――当然だろうが。

 未だオレは、お前を殺せる腕前ではない。鍛えているこの銃技、魂が零に至ったお前を殺す為には、同じく空の境界を越えて向こう側の領域へ到達しないとならない」

 

「頑張っているのね。そう言うのは大事よ。私もほら、また新しい魔術体系を極めて完全習得しましたし。あの神父は、努力は得難い快楽を生むと言ってたけど、根源接続者の私でもあの男のおかげで中々生きるのが面白くなったから。

 勿論、コミュニケーションも大事だって言われたわ。魂は、他の魂を理解することで深化するの。それは精神同士でも……ええ、この肉体同士でも同じこと。

 お友達も増えましたし、話が合う沢山の同類とも巡り合えました」

 

「お前の同類って奴、聞くだけで怖そうだぜ」

 

「そうでもないわよ。変な人が多いのも事実だけど。モンジーちゃんとかは精神面では私以上に「 」( カラ )へ近い破戒僧でしたし、キアラっちなんて要らない知識を一々艶やかな仕草で言ってくるしね」

 

「あー……マジか。ガトーとセッショウインとも知り合いかよ。あの神父、お前をあいつらと会わせる何て、本気で碌な事してないな。

 と言うよりも、あの時以上にお前はまだ強くなってるのか?」

 

「もう魔術体系は殆んど会得したの。なので今は、呪術や仙術の方面を御勉強中ね。インドの神代マントラとか良かったわ、創造神の力とか便利ですし。それに大陸の神仙道とかも良いわね、仙術とか道術とか妖術とかとても種類があるの。

 特に今は生まれ故郷の神秘を学んでるわね。

 陰陽道は勿論、神道に伝わる呪術、鬼道は中々に面白い学問だったわ。あの国で生まれた神霊を祭神にしてる神秘でね、神道の頂点に立つ最高司祭の、その始まりの人類に寄り添った神様が広めた技術なの。一番古き大和の王が、神代から人代に移し替えたのがそもそもの始まり。つまりは今まで神様が独占していた力を、人間にも宗教と学問して分け与えた。そして神から生まれた身でありながら、神と人を決別させ、自らの手で人間を支配する荒神達を討伐し尽くした。数多の神から蜻蛉の島を征服し、初めて日ノ本と言う国を具現した。

 魔術の研鑽の根本にあるモノは、古き時代の記されない歴史の旅でもあるから。魔法なんて技術もあるにはあるけど、あれはまた神代から今の人代にずっと伝わり続けた概念って訳でもないしね」

 

「饒舌だな。実に楽しそうだぜ?」

 

「当然よ。生まれて来て良かったって、今はちゃんと実感して生きてるの。この瞳で“視”えた筈の王子様には中々会えないけど、面白い人間は探せば沢山いて、つまらなかった魔術も愉しもうとすれば良い学問になったの」

 

「そうか。それは何よりだ」

 

 殺せる隙が全く無い。ダンは師匠から奪い取った愛用拳銃で早撃ちを試そうと狙うが、殺せるビジョンが浮かばない。会話を続けていても、撃ち殺せる呼吸の間が存在しない。

 

「……それにそうね。この手駒の出来具合も見れたし、もう良いかしら。貴方とても良い実験相手だったし、なので私、もう帰るわね」

 

「見逃して貰えるのは有り難い。雇い主に命を賭ける程、ビジネスにオレは熱心じゃねぇからな。死なないのなら良い事だ」

 

「そこの子犬さんと同じく、貴方もまた潔いわね」

 

「使い魔と主人は自然と似るものだ。オレも自分が生き残る為ならば、フレディを生贄に捧げるしな」

 

「―――エ”……ご主人、嘘っすよね?」

 

 沙条愛歌は楽し気に、殺し屋と魔獣に微笑んだ。人間を殺すのも楽しいが、やはり生きている方が面白い。昔なら目的の為にさっくり殺していたのだろうが、一人の人間として業を深め、随分と内面が様変わりしていた。

 

「そうなの。けれど、撃ち殺す気満々みたいね」

 

「出来ればな。出来ないからしないが」

 

「正直ね……まぁ、良いかしら。手駒の実験相手として貴方の協力はとても有意義だったから、ここは見逃しましょう」

 

「有り難いな。雇い主に命を捧げる程、オレはビジネスに熱心じゃねぇからな。生き延びるならそれで構わねぇぜ」

 

「ふぅん、良く言うわね。

 ―――さようなら、殺し屋さん」

 

 そう一方的に別れを告げ、気侭に怪物は一人と一匹の前から過ぎ去った。顕現した時と同じく、一切の気配を洩らさず、まるで蜃気楼がふわりと消えたみたいにこの場から転移した。

 

 

◆◆◆

 

 

 埋葬機関副機関長シスター・シエルより勧誘を受け、既に数カ月。アデルバート・ダンは聖堂教会所属の埋葬機関のメンバーとなり、死徒を討ち殺し、魔術師を狩り殺し、悪魔を射殺し続けた。そして、直ぐ死に殉職する予備員生活を何とか過ごし、やがて正規の位を任命された。預かった洗礼名は砲のトラン。とは言え、そのような殺伐した生活も変化していった。

 冬木の愛すべき遺産―――大聖杯(ヘヴンズフィール)の魔術式。

 漏洩の元凶は―――第四位(トーサカ)

 そして、その情報を手に入れた魔術師の中に、根源接続者(サジョウ)真性悪魔(セッショウイン)がいた。

 原因は唯一人、言峰士人のみ。あの男が、二人の女を惹き会わせた。

 神父は自分の衝動を楽しむがまま、この世に地獄が生まれ出る原因を一つ一つ、丁寧に、誰も阻めない様、幾つも、何個も、滅びの元凶を作り上げていた。

 では何故、奴が接続者と悪魔を会わせたのか―――無論、求道の為である。

 そんな事の為だけに、神父は世界中に種を撒いて、育て、守り、綺麗に花開くのを見守っていた。冬木で起きた第五次聖杯戦争も、第六次聖杯戦争も、神父が人生と賭して求めた娯楽の一つだった。

 ……第六次聖杯戦争後、聖杯戦争は世界中で乱造されたが、あの吸血鬼と悪魔が画策した戦争は真に地獄そのものだった。

 原因は解らないが、沙条は聖杯戦争を始める太源を何処からか収集した。

 理屈は知らないが、殺生院は全てのマスターを始める前から手中にした。

 起きたのは聖杯戦争だが、もはや英霊同士で殺し合う戦争ではなかった。

 奴らはただただ地獄を作って、その中の生活を楽しんでいただけなのだ。

 結論として、都市一つが二人の玩具となった。神秘の秘匿は守られていたが、その都市の霊脈が支配され、惑星の最深部へ自分達が作った聖杯を送り込む侵食基地となっていた。

 目的は根源でも、魔法でもない―――魔人のまま神になること。自分の欲望を愉しむ為には、神になるのが効率的だった。

 沙条愛歌――――全知全能。

 殺生院祈荒―――随喜自在第三外法快楽天。

 召喚されたサーヴァントは聖杯を目的に互いに殺し合う為ではなく、既に具現した聖杯を守ることで聖杯を得る為に戦う防衛機構(ガーディアン)だった。つまるところ、英霊の座にいる本体を騙す為、何も知らぬマスターに英霊を普通の聖杯戦争だと錯覚させた状態で召喚させた後、祈荒の洗脳を再稼働。聖杯戦争のサーヴァントとなった英霊をマスターから令呪ごと奪い取り、マスターを殺し、その使い魔を支配した。

 埋め込まれしは快楽天と全知全能が作った呪詛。

 それは魔人の業―――全能天。

 例外無く全能天により魔人化したサーヴァントは、二柱の魔人(メガミ)と大聖杯を守るガーディアンに失墜した。

 となれば必然、サーヴァントではガーディアンに勝てる道理はない。結論を言えば、人間程度の規模で殺せる七騎のガーディアンではなく、二柱の魔人でもなく、魔術協会も聖堂教会も手が出せなかった。一騎さえ殺せず、自分達が殺されるだけの虐殺だった。アデルバートの同僚も悉くが死に果て、参戦したもう一人の埋葬機関の人間でさえ殺害された。

 無双天(セイバー)―――ベオウルフ。

 武功天(アーチャー)―――ラーマ。

 梟雄天(ランサー)―――呂布奉先。

 不滅天(ライダー)―――ダレイオス三世。

 無明天(アサシン)―――沖田総司。

 推論天(キャスター)―――シャーロック・ホームズ。

 螺旋天(バーサーカー)―――フェルグス・マック・ロイ。

 より強く、より巧く、より猛く、より多く、より鋭く、より賢く、より荒く。

 倒すべき七騎の魔人。全知全能と快楽天が作り上げた呪詛は英霊の本質をより浮き彫りにし、属性を抽出させ、現世における存在を偏らせた。成長をしない英霊の技を進化させ、死して止まった己が業を深化させ、霊核に全能天を植え付けた。奴ら全てを殺さねば聖杯には辿り着けず、全知全能にも快楽天にも届かない。

 殺し屋(エクスキューター)―――アデルバート・ダンは、自分一人で全てのガーディアンを殺し尽くさねばならなかった。

 熾烈を極める、などと生易しい表現ではない殺し合い。

 魔人の一体一体が国家軍隊に類する戦闘能力。

 だが、殺し屋は皆殺しを成し遂げた。足りぬモノを補う為に、自分の全てを文字通り世界に捧げた。

 そこまでして、ダンはサジョウとセッショインを殺し切れなかった。あの女達は、契約までして自分らを殺し損ねた殺し屋の男を嘲笑いながら、星の聖杯が作り上げられなくて残念だったと嗤いながら去って行った。

 殺し屋のその後の人生も波乱に満ち、幾度か乱造された聖杯戦争にまた巻き込まれもした。死徒二十七祖が引き起こした騒乱も経験した。全知全能や快楽天とも再び遭遇し、それからどうなったかは今はもう彼にしか知らぬことだった。

 

「これがオレの人生だ。かなりはしょったダイジェスト形式だけどな」

 

 ……そんな思い出も、遥か昔。生前の記録に過ぎない。

 

「ふぅん、そうなのですか」

 

「実に淡白。驚愕だぜ」

 

「でも別に、ヘラクレスを倒すには余り参考にならないね」

 

「おい、マスター。気分転換がしたいからと、オレに無理矢理恥ずかしい自分語りをさせておいて、それか。酷いぜ」

 

「まぁ、ねぇ。でも、夢で見たまんまでしたし。それはそれとして、あれをセイバーで召喚するとか、一体何を考えているのでしょうか。

 やっぱ弱点は毒ですか? 有名なヒュドラの毒なら倒せそうではあるけど」

 

「あのよ、勘違いしてる奴は多いけど、ヘラクレスはヒュドラの毒でも死なずに、自害を選んで焼死した大英雄だぞ。元より数居る半神の中でも、優れた五体と魂を持つ者だ。ヒュドラ並の猛毒でやっと苦痛を与えられる程の耐毒性を持っており、それで漸くステータスを弱体化させられる。しかもだ、死ぬまで意識を保って自殺した逸話を考えるに、神竜の猛毒に犯されても戦闘はそのまま続行可能だ。まぁ、弱点は弱点なので有効ではあるけどな。

 よしんばヒュドラの毒を精製しても、それだけで殺せる訳がない。毒で奴は絶対に死なん。ヘラクレスは毒で死ねないから自害した訳だからな。むしろ逆に、やったヘラクレスを毒状態にしたぞ、と油断してる所を不意打ち射殺す百頭(ナインライヴス)だ」

 

「え。勝ち目零ですか?」

 

「いや、あるぞ。毒にした後、火で焼く。死の逸話を再現すれば、神話最強の大英雄だろうとある程度は霊核に響く。だがまぁ、それだけでは死なないだろうから、追い込んだ所をオレが宝具で討つ。

 ヒュドラを用意すれば十二の試練(ゴッド・ハンド)の弱体化か、あるいは封印することも出来るだろうが、無い物強請りだろうな。せめて奴の不死性の根源である防御宝具に匹敵する物、Bランク程度の神秘が毒には必要だ。毒ならばAランクに届かなくとも、体内にさえ入れば完全に無効化は出来ない筈。出来ればAランクがいいが、そこまで良い毒となるとそれこそヒュドラクラスだろう。

 後は弾丸に猛毒に漬け込み、直接奴の体内へ埋め込むだけ。大英雄を焼くためにも、上等な薪が必要だろう」

 

「だったら、まず毒から用意しないとね。でも毒を作るとなると技術もいるし、材料探しは大変だ。本物のヒュドラの毒は製薬できないとしても、なるべくそれに近い激毒を準備しないといけないです」

 

「ああ、すまないな。オレがより優れた英霊ならば、正攻法でヘラクレスを十一回殺し、不死性を突破し、最後の命も奪えただろう。だがな、十一回蘇生する命を持ち、最後の十二回目もBランク以下の宝具を無効化する守護は機能している筈だ。

 なのではっきり言おう―――勝てるか!?」

 

「ですよね」

 

「セイバーのクラスで召喚されたから鍛冶神ヘパイストスが作った神造兵装(マルミアドワーズ)を持ってるのは分かるが、何故射殺す百頭(ナインライブズ)の大弓を持っているのか。流石にあの毒矢までは弓兵での召喚じゃないから持って来ていないようだが。いやむしろ、ヒュドラの毒を持って来てくれていた方が、地面に落ちてる矢から毒素を解析できたかもしれないけどな。

 しかし……まぁ、アレだ。アーチャーはレンジャーの特性もあるけどよ、セイバーにはないだろうが。アーチャークラス以上に強い弓使いの剣士って訳が分からないぜ」

 

「うん、そうですね。しかも宝具の神剣を、更に宝具化した剣技で真名解放する合わせ技までしてくるから。並のマスターなら射殺す百頭(ナインライブズ)の大弓、鍛冶神の剣、不死の肉体を常時戦闘中に発動させるなんて出来ない筈ですけど、レオなら普通に出来ますし」

 

「ああ。あれは召喚者が行った反則だろうな。ギリシャならば魔獣狩りの弓も持って来れたかもしれないが、此処は月だ。クラスによる制限はより厳密な筈。

 だからよ、オレらもずるをしないと勝ち目はないってな」

 

「アサシン、私はまだ何も分からない。何も分からないまま死ぬ気はない。例え相手がレオとヘラクレスだとしても―――死にたくない。

 絶対に―――私は諦めない」

 

「無論だ。勝つぜ、岸波白野(マスター)

 

 第一戦目。ライダー、ゲオルギウス。

 第二戦目。アーチャー、トリスタン。

 第三戦目。キャスター、チャールズ・バベッジ。

 第四戦目。バーサーカー、坂田金時。

 第五戦目。ランサー、ヘクトール。

 第六戦目。アサシン、李書文。

 最終戦目。セイバー、ヘラクレス。

 何処か狂った月の聖杯戦争において、岸波白野が召喚したのはアサシンだった。アサシンは彼女へ英霊としての真名である黙示録のラッパ吹き(トランペッター)と名乗り、人間としての名は告げなかったが、それでもその信頼は強かった。

 そして、アサシンはふと自分の人生と、この度得た短い再度の人生を思い返す。

 第六次聖杯戦争なんて物に関わって以来、自分は英霊や、召喚されたサーヴァントを殺してばかりだと考えた。あの神父に誘われて参戦し、生き残った後に分かった事だが、そもそもあの第六次聖杯戦争は神父が元凶の一人となって行った魔術儀式であったのをアサシンは知った。聖杯戦争以外にも、封印指定に選ばれた賢者の暴走や、死徒二十七祖と呼称される吸血鬼共の企みや、真性悪魔が支配する異界常識での地獄の具現や、根源とはまた違う外側から来た神霊の脅威やらと、魔術世界は表側の人類史と関係なく血生臭いままだった。

 死後は抑止の守護者(カウンター・ガーディアン)として、人類繁栄の為、文明維持の為、人理補完の為、邪魔者を虐殺する永劫を味わうだけの時間。守護者(ガーディアン)としてアラヤに召喚されなくとも、魔術師に使い魔(サーヴァント)として召喚されたとしても、やることは抑止と根本的に変わらない。敵を銃で撃ち殺すだけだった。

 そんな中、彼が岸波白野に召喚されたのは本当に偶然だった。

 月の聖杯戦争では召喚に触媒はなく、相性によって相棒であるサーヴァントが選ばれる。そもそも電脳世界の中で英霊召喚の触媒など準備出来ず、外側から来る前に反則でもしなければ狙った英霊をサーヴァントに選ぶことは出来なかった。

 だからこれは本当に、偶然の中で偶然は起きたような異変だった。

 彼女は記憶がないことを自覚し、自分を認識するのが参加を選定するより早かった。その命をマスターとして不要と剪定されるよりも早く聖杯戦争を理解し、何故か偶々データ内に残っていた礼装を手に入れていた。記憶ない自分がこの術式を保有していることを彼女は分かたなかったが、これが自分の手の内に残った武器であることは悟れた。

 それは天使のラッパと言う、コードキャストを使う礼装の一つに過ぎなかった。

 彼女は礼装を装備したまま選定の場へ赴き、アサシンを召喚したことでマスターに選ばれた。

 

「まぁ、快楽天のヤツは殺せたからな。あの女が好きな男にときめいてる何て爆笑シーンも見れ、本体への良い土産も記録出来た。アンデルセン、正にメルヘン文化の頂きに位置する童話作家だった。

 ……後は、沙条と言峰と衛宮か。

 取り残した生前の獲物を撃ち殺す事こそ、死後のオレが望める唯一の悦びだ」

 

 裏側での出来事は、アサシンにとって非常に有意義な時間だった。

 

「あら。あらあら、あら。トランペッターってそう言うカラクリなのね。七人いる天使の候補者からランダムで選出される架空の反英霊とでも言えばいいのかしら」

 

「ほぅ、面白いのぅ。我輩(ワシ)も此処を侵略し、占領してから長いが、これまたムーンセルまで面白いマスターとサーヴァントが来たぞ。

 我がマスターよ、あれは中々だ。

 全知全能のお主さえ殺し得る因果を持つ魔術師……否、己が業に目覚めた元藁人形(NPC)の強き人間よ」

 

「ふふ、知ってる」

 

「―――ならば、良い。

 諦めぬ心こそ最も強き人の業。この身は復讐も我欲も何もかもを諦めず草原を走り死んだが、あの女も同じ事が出来る人間の強さがある。諦めが信念を殺し、尊厳を犯すが、あやつにはそれが一欠片も存在せん。諦めて良いと感情では認めているのに、精神も、魂も、肉体も、諦観を逆らい続ける。

 我輩は同類故、その手合いの厄介さは骨身に染みておるわ。あの者はお主の殺害を決して諦めんだろうよ」

 

「全く以って、その通り。だって見てたもの」

 

 ヘラクレスとレオを倒し、ムーンセルまで辿り着き会ったのは―――全知全能(沙条愛歌)と、略奪王(チンギス・カン)

 

「そこを退いて貰います―――全力で」

 

「良い眼ね、貴女。まるで不屈の王子様みたいで好きよ」

 

「あの、わたし……一応、女なんですけど」

 

「ええ。それが? 女でも男でも、カッコいい人は大好きなの。でも、安心しなさい。同性に恋愛感情を向ける趣味はないから。

 ……独占欲はあるけど」

 

「気をつけろ、マスター。あれ、人類最悪レベルで恋愛観が病んでる女だ。全く、奥さんを部下に寝取られたって言うんなら、ちゃんとコレを引き取れよ、あいつ」

 

「わたしの王子様を愚弄して良いのはわたしだけよ! 愚弄なんて絶対しないけど!!」

 

「これだよ、怖いぜ。そこのところ、お前はどう思っている、ライダー?」

 

「あっひゃひゃははははは!! そりゃお主、我輩(ワシ)も普通に怖いが。男と言う生き物は、愛に狂う女を理解出来んからの。

 正直な話、最初はチェンジしたかったからのぅ。今となっては、これはこれで良い人間性じゃがな。からかうと中々に良く響くぞ」

 

「分かる。自分の愛に疑念を持たない人間ほど、おぞましい動物はいない。男も女も、そこは変わらない。面白いのも変わらない」

 

「その通りだの。女の愛は男と違い、男の愛も女とは別物よ。だが、愛に狂ってしまえば同類よ」

 

「―――アサシン」

 

「―――ライダー」

 

「オーケー。ちゃんとやる」

 

「そう睨むで無い。どちらが死ぬが分からぬ故、冥土の土産は殺し合いに必要なのだぞ」

 

 そして、ライダーは遂に宝具を展開。あらゆる召喚地で彼が持つ唯一の宝具ではなく、知名度によって限定的に保有できる第二宝具を具現した。

 四頭の巨大騎馬と四匹の巨大青狼。

 その八体の魔獣が率いる移動要塞。

 真名を「邪獣要塞(ドルベン・クルウド)四駿四狗(ドルベン・ノガス)」と言う、大蒙古国(モンゴル)初代皇帝(カン)のみが所持する戦地移動用皇帝要塞。つまるところ、大陸を蹂躙する為に生み出されたチンギス・カンの自宅であった。

 

「これは邪獣要塞(ドルベン・クルウド)四駿四狗(ドルベン・ノガス)と言う宝具での。月で召喚された我輩の宝具は本来、固有結界“大蒙古国(イェケ・モンゴル・ウルス)”しか持って来れぬのだが、そこは我が召喚者の渦によって容易くこの宝具を保有出来たぞ。

 能力は説明せぬが……ふむ、見た目通りとだけ言くかのぅ」

 

 略奪王(ライダー)はこの場所で、聖杯戦争に優勝した数多のマスターとサーヴァントを殺してきた。淡々と殺し尽くした。最強を証明した英霊を自らの手で殺害し、その信念を略奪した。

 つまり、今のチンギス・カンは数多の究極の一を略奪した宝具を持つ。

 スキル「皇帝特権」と宝具「獣帝の蝕」により、宝具「反逆封印(デバステイター)暴虐戦場(クリルタイ)」で己が魂に奪い取った技能と宝具を完全に支配する初代皇帝は、自分と同等のサーヴァントの神秘を既に幾つも装備した状態であった。

 

「あー……―――成る程。つまり、あれか、宝具の神獣を使っていても、要塞に入れといた兵士は使えるってことか。あれと融合した状態であろうと、総司令官として帝国軍を支配できる訳だ」

 

「げっひゃっひゃっひゃひゃはははははははは―――」

 

 ライダーは自分の力を哂いながら、相手の鋭い眼力を笑いながら、固有結界を神獣に作り変えた。戦場にて余りに巨大な蒼色の大狼が生み出され、そのまま獣は皇帝を―――喰った。チンギス・カンは自分と同一視される神獣の蒼狼と融合する宝具「獣帝の蝕(エセゲ・マラン・テンゲリ)」を発動させ、あらゆる戦闘準備を完了させた。

 現れるのは、人獣の皇帝。

 対峙するは、災厄の使徒。

 草原の国を作り上げた建国神話そのものと、世界を終わらせる為に捧げられた人身御供が殺し合う。

 

「―――その通りぞ!

 さぁ、災厄を告げる天使の成れの果てよ。命を賭し、我らの戦争を始めよう!!」

 

「―――受けて立つ!

 大いなる人災の具現こそ貴様の力。死力を尽くし、全てを撃ち殺してやろう!!」

 

 









 とのことで、殺し屋アデルバート・ダンのその後でした。神父さんが残した遺産は世界中で火種として燻ってありまして、実は全知全能と魔性菩薩は神父さんの手で、あらあらうふふとお友達になってました。殺し屋はその後始末として闘争の渦に飛び込み、気付けば守護者に成っていたと言う人身御供。
 月の平行世界で召喚されたのも、実はあの聖杯戦争は繰り返し起こされてまして、岸波白野は記録はないですが前の聖杯戦争で負けて、しかし次の聖杯戦争で復活して自我をまた得ました。その前の聖杯戦争の時に天使のラッパと言う礼装を手に入れ、自分に装備していたので、それを縁にトランペッパーの真名を刻まれた殺し屋が召喚されたと言う裏話でした。チンギス・カンとの戦いの結果は、何とか殺し屋がハクノンの根性で勝ちますが、全知全能はムーンセルの消去に平然と抵抗できるのでまだ死んでません。



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