1.戦争前の日常
この世界の基本となる節理は弱肉強食だ。
例えるなら、正義が分かりやすいだろう。正義にはそれを想い実行する人間が必要だ。そして、同じ正義を持つ人々は団結し、定義が異なる正義を持つ人間は互いに争い奪い合う。
勝つのは単純に力が勝っていた人間の正義であり、敗れた者の正義はより強い正義に悪と定義され食われてしまう。
力自体はもちろんのこと、善と悪、幸福と不幸、常識と非常識でさえ同じなのだろう。互いが違う善と善同士であるのなら潰し合うことも少なくなく、日常でもよくある出来事だ。それが悪と悪同士なら、妥協がなければより巨大な悪が勝つだろう。ついでに善と悪の意味が異なるもの同士ならば、互いに争うのか、認めるか、無視するか、無視仕切れずに反発するかだ。
力がある方で、より優れたモノが残っていく。
これらは個人同士の争いや集団同士の数の争いということもあるが、基本は力の優劣だ。もっとも、力と一口に言っても、暴力、知力、運、数、精神力などなどと、力にも多くの種別があり、分かりやすい個人の力でいうのなら、不断の努力とか天賦の才能があれば強い力を得られるだろう。
それに人の望みは他の望みを潰し、人の願いは他の願いを犠牲にする。さらに、自身の望みのために他の自身の願いを捨てなければならないこともある。逆もまた然り。
このような喰っては喰われ喰っては喰われ続ける循環が、現代まで続けられた人の歴史の流れでもあるのだろう。これは魔術師も代行者も化け物も変わらないことであり、神と悪魔でさえ大差はないかもしれない。
故に何処を目指すにも力が必要だ。
――――――だから私は、己を極めることにした。
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「―――――――(こんな時期だからか、昔の記憶を夢としてみたのは。……いい朝とは言えんな)」
朝の清々しさをぶち壊しにする思考をしているのは、この教会の神父である言峰士人である。
今は朝の5時少し前であり、寝起きが良いのか目覚めはハッキリしている。こんな朝早くから起きてこの神父が何をするかといえば、学校前に行う習慣と化した鍛錬と礼拝堂でのお祈りだ。朝の時間は家事もあるのでとても短く、鍛錬をする時間を作るには早起きしか無い。
―――時は朝食。
料理(この男の特技かつ趣味)を済ませた士人は、通常の家の朝食より多めのご飯を机に用意している。鍛錬に使ったエネルギーはしっかり補充しなければ日々のバランスに悪い。ついでに、学校の弁当も準備万端であった。
「飯はできあがっているようだな、士人」
「……いやに早いな、ギル」
食卓に現れたのは、金髪赤眼の青年であり名をギルガメッシュと言う。この教会の居候で今は元サーヴァントである英霊だ。
「なに、我(オレ)にも用というものがあってな、本格的に始まるまでにやっておくことがあるのだ」
「そうか。俺も聖杯戦争の前哨戦の片づけは面倒だからほどほどにな。………まぁ、七騎揃うともっと派手なことになりそうだが」
「ハハ、だがしかしな、この我が本気を出せば派手だけでは済まんぞ」
そんな感じにギルガメッシュが笑っていると、この少年神父はため息を吐いた。
「……まったく。なんでこんな時期に死んだのだ、オヤジは。こんな大変なモノを遺して」
そこでギルガメッシュはいつものニヤリ笑いで―――
「士人よ。貴様はただの雑種ではなく、我の最後の民であり臣下なのだ。たかだか監督役程度、軽くこなすが良い」
―――と言い放ち、
「……………大変なのはそれだけではないのだよ、ギル(ぼそっ)」
と士人はとても小さく嘆息する。そこで、ギルガメッシュも小さい声が聞こえたのか聞き返した。
「どうした、何か言ったか?」
「いや、何でも。それより飯が冷える、食べよう」
神父は話を逸らすことにした。
「ふむ? …まぁ、良いか。では、いただくぞ」
「はいはい、いただきます」
綺礼が死んでしまった後、教会の割とよくある朝の風景である。朝食のあと、士人は平日のため学校へと登校し、ギルガメッシュは士人より早く街へと出かけて行った。
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いつものように、朝は静かに独りで登校する。学校に近づくと、いつものように着席時間十分前に来ているので生徒で混雑してきた。
混雑の中に入り教室を目指す。校門を過ぎ歩いていると、ちょうど朝練の帰りなのか知り合いに出会った。言峰はその人物の背後から、なんとなく気配を殺して声をかけることにした。……ようは、イタズラ程度の嫌がらせである。
「おはよう美綴!」
唐突に声を真後ろからかけられた知り合い―――美綴綾子は、声を上げながら後ろに振り向いた。
「うひゃあ!? ――――って、驚かせるな馬鹿神父! まったく朝から心臓に悪影響だ……」
「クックック、それはすまないな。それはともかく、朝から御苦労だな。相も変わらず熱心な事だ」
まったく誠意が籠ってない、ある意味言峰らしい返事をする。
この男は空気も読めるし、何事も本気で取り組み、真剣に活動をするかなり真面目な男だ。それなのに、こういった日常ではよく遊んでいる態度や相手をからかったりする。そんな捻くれまくった生真面目さを持っているのが、中々に厄介だと綾子は思った。
「それはともかくって…………話をそらすな。こっちは日々重なるお前のイタズラで精神が疲労困憊だよ」
「イタズラとは一体何が? 俺はただ朝に出会った友人に挨拶をしただけではないか。まったく、人聞きが悪いことだ」
「だから、その挨拶を、背後から、気配を消してしたことだ!」
美綴綾子、突っ込む。
朝の空気を読んで小声であったが、それは確かに絶叫だった。そんな美綴を見て言峰はさらに追い打ちを仕掛ける……愉しそうな笑顔で。
「もう一度言うがな、朝から御苦労だな、美綴」
ニコ、と神父として完璧な笑顔を浮かべる。
「御苦労になってるのはお前のせいだ、ど腐れ神父!」
そして美綴は、ついつい言峰のペースに嵌まってしまう。
「ダメだぞ美綴。女の子が、お前だとか、ど腐れだとか、そんな言葉を使っては。そんな言葉使いでは女の子というよりもなんだ…………姐さんだぜ」
言峰は本当に心の底から悲痛そうな悲しい表情で、可哀想なモノを見る視線を向けて言い放った。……もちろん、さらなる追い打ちのためである。
「言峰、朝から弓で射られたい? ……それと、姐さん言うな」
ニコッ、と言う擬音が似合う笑顔。美綴の表情は笑っているのに目が真剣だった。真剣と書いてマジだった。そんな魔術の師匠兼幼馴染にそっくりな“殺しちゃうぞ♪”的な笑顔。言峰は長年に鍛えて、今も極めている観察眼で美綴の心情を分析して悟る。
―――ここが限界だと。
「すまん。揶揄にも程が過ぎた、許せ。途中までだが教室に向かおうか」
「おい、話はまだおわっ、……ちょっと待て、今日こそは反省させてやる!」
「急がないと遅刻になってしまうぞ。それにこれはいつものコミュニケーションだろう?」
「だから反省させるのよ。それにいつものって、……お前は私を何だと思ってる?」
「姐さん」
「矯正してやる!」
「ハッハッハ、一気に反省の概念を超えたな。後、本当に遅刻になるから俺は急ごう!」
「あ、ホントだ…………って、遅刻になったら恨むからな!」
二人は慌ただしく教室に向かっていった。
その後言峰士人は美綴と別れ、自分のクラスの教室にある自分の席に座る。
時間はそこそこ余裕を持って間に合ったが、あのトラが担任のクラスだ。遅刻をすればどんな愉快な刑罰が下るか分かったものではない…………見る分にはなかなか愉快な見世物の時もあるのだが。このクラスの担任について感慨に耽っていると後ろから声を掛けられた。
「言峰殿、言峰殿。朝に遠坂女史からの伝言を受けてるでござる」
「また口調が変わっているな後藤。それで何だ、伝言とは?」
サムライ(?)口調のクラスメイトの名前は後藤。前にみたドラマに影響されて口調が変化するツワモノである。
何故かいつも廊下側の一番後ろに席替えをするたびに選ばれるので、今ではクラスの中でボランティアの伝言係になっていた男。何気にクラスでの知名度はかなり高い。
「では、伝える故に短いがしっかりと聞きなされ。
“昼休みに話がある”、以上じゃ。…………それで、拙者はその話とやらに興味があるのでござるが? やはりの男女的なのが拙者の期待なのじゃがのう」
「あ~~、後藤の期待に答えられるような色恋話じゃないな。というか、あの遠坂凛が俺に恋心を持つような異常事態、日本が海に沈没してもならない。
………それにそういうのは、隣にいる坊主の方がとてもとても怪しい」
言峰の遊び心が聞き耳を立てていた生徒会長へ、ついつい向かってしまった。
「戯けが! 女狐に恋心を抱いているとでも言うか神父!」
寺の和尚の息子である柳洞一成が神父に吠える。それと言峰は柳洞のことを坊主と呼び、柳洞は言峰のことを神父と呼んでいる。商売敵同士、何か思う事があるのだろう。
「いやいや、満更でもないだろう。お前はなかなか、その女狐を意識している会話をしてるではないか。衛宮もよくそういう会話を聞くだろう?」
「……まぁ、ある意味意識はしているかな、うん」
この男は衛宮士郎。かなり色々と、“言峰”に因縁ができる男であるのだが、現時点では中学から続く友人である。
もちろん、かの有名な
「おい、衛宮。友を裏切るのか?」
「一成、顔がマジで恐いぞ」
………そんな中、朝の時間は過ぎていく。
その後、担任の藤村先生が教室にきたのはいいのだが、ホームルームの前に恒例のタイガー劇場が行われた。見ていて飽きないとはこのような人物のことであろう。さすがに常人ならあの角度の頭部への激突はやばそうであったが、トラは強いのだ、何も問題無い。
そんな中、普段の日常に差異が一つ。朝の時間から間桐慎二の様子はおかしかった。明らかに言峰士人の方に注意が向かっていた。気になる事があるなら、知り合いであろうとズバッと言ってくる男が注意を向けてくるだけ。しかし、この時期なら大概の予想はついていた。結局のところ、間桐の家はいろいろありすぎるし、家族関係も複雑でトラブルもあるだろう。それに時期が時期だ、聖杯戦争がらみだろうと結論をつけた。
もっとも、この結論自体は合っているのだが、後に間桐慎二は予想外な顛末を迎えることとなる。
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授業も消化されて時間は昼休み。
いつもの言峰ならクラスの友人らと弁当や、食堂に行ったり生徒会室の二人とかと飯を食べるのであるが、今日は遠坂からの伝言もあるので会いに行くことにした。学校内での気配を探り、遠坂の巨大な魔力(それこそ自分が持つ3~5倍の量)もあり一瞬で見つける。
彼女は何故か、この寒い時期に屋上にいた。
人がいないということではいい場所だが屋上では寒くないかと思い、自分が学んだ常識が世間一般では正しいか間違っているのかほんの少しだけ気にした。だがしかし、「まぁ、遠坂だからな」ということにして気にしない言峰。
………それに話の内容は察しおり、この学校では確かに一番適している場所なのは理解していたので、気にせず屋上へ向かった。
――ビュゥゥゥウ~~――
階段を上り屋上につく。扉を開けて外にでるが、やはり寒かった。この寒い中で待たされれば機嫌が悪いだろうなと予想できたので、彼はすぐ遠坂が座っている場所へ向かうことにした。
「遅いわ士人。寒いのだから急ぎなさいよ」
遠坂凛の第一声。これは理不尽のでは、とそんな事を士人は思った。
「いやいや、では何故こんな時期に屋上なのだ?」
「人に聞かれると面倒だからに決まっているじゃない。
……後はね、た・ま・た・ま、なんだけど。久々に士人のご飯が食べたいな~、なんて思ったからよ」
言峰も弁当を強請られるとは思わなかった。よく見れば、弁当も購買のパンも持っていない。しかし、そうであるのならば何故なのであろうか、昼休み前に買っておきここで食べ終えた事が予想できる空になった焼きそばのパックと、それについてくる割り箸をもっているのは。割り箸だけここにあるのは、いささか不自然だ。
……それは決して弁当が欲しいから朝の伝言が昼時指定で、居た場所が人目を気にすることのない屋上だった訳ではないからだよねと、遠坂に聞けなかったのはただ場の雰囲気を読んだに過ぎないのだと、言峰はそういうことにした。
それに結局は身内みたいな人物だ。別に不快感がある訳でも無く、彼は凛に弁当を分けることにした。
「しかし、相変わらず真剣(マジ)で美味しいわね、士人の料理は。………真っ赤な麻婆豆腐以外はだけど。
あの“激辛”の概念武装みたいな一品を弁当に入れてなくてホントよかったわ」
遠坂凛は安心したように話した。しかし、言峰の目が真剣なものになっていく。
「………ふう。いいか、俺にとってマーボーの定義とはな、アツアツでこの世で最高の辛味である存在のことを言う。その中華料理の最高峰のマーボーを弁当に入れる?
――――――そんなこと、俺にはできん。その様なこともわからないから、泰山の麻婆豆腐の中辛クラスを破れない甘口レベルなのだ。
……俺はね、己の師匠の不甲斐無さが少しだけ無念だぞ」
そんな一般の定義から外れた主張を神父は一息で言った。うんうん、と自信有り気に頷く言峰を呆れた目で見ていた遠坂は話をつなげる。
「………ほんと、料理とマーボーにはうるさい男ね。それと、今は師匠って呼ばないでくれる」
「まぁな、俺の趣味と好物だし。…それに凛は何時であろうと俺の師匠であるのだから、師匠と呼んで悪くはないだろう」
「はぁ~、それもそうなんでしょうけど。
なんていうのかしら、魔術の修行中に師匠って呼ばれるのは違和感ないのよ。……なんかそれ以外の時だと、違和感がなんていうか…………こう、ねぇ」
彼女が感じる違和感は、魔術師をしていない一般社会に混ざっているとき、魔術師としての呼称を言峰にかけられているための違和感である。
しかし、それを言葉にすると「なんだ、普通の女の子したいのか?」なんて、弟子の士人からかわれるのは目に見えている。士人もそんな自分の心情が分かっているかどうかは微妙であったし、言えば確実に悟られてしまうだろう。それは、遠坂凛が持つツンデレじみた典型的な負けず嫌いであるからこその思考だった。
……そして当然のことだが、言峰士人は師の心情を悟っている。マジでタチが悪い弟子だった。
「違和感があるとは非道い話だ。それに師を敬うの弟子としての愛ではないか」
クク、とそんな雰囲気の笑みを顔に作る。
「(分かって言ってるのでしょうかね? 判断しづらいわ、ホントに。そんなところも綺礼にそっくりじゃなくていいんだから。)
―――………だったら少しくらい言葉に誠意を込めなさいよ、似非神父二世」
「それは失礼だった」
遠坂の言葉も捌いていく言峰士人。お弁当を食べ合っている師弟の、そんなほのぼの(?)としたお昼の会話だった。
雑談もそこそこ。
時間もある程度経ったあと、話の本題に入るのか遠坂の目が魔術師のモノになっている。食事も終わり、昼休みもチャイムが鳴ってそろそろ次の授業を迎えるだろう。
それに合わせて言峰も裏側の世界の顔、今なら聖杯戦争監督役としてのモノへと変えていく。魔術師・遠坂凛は、監督役・言峰士人と話を始める。
「監督役・言峰。私、遠坂凛は聖杯戦争に参戦することをここで告げます」
「確かに聞き受けた。では魔術師よ、己が目的を果たすため死力を尽くし聖杯を目指すが良い」
魔術師の言霊を監督役はそう受け取った。
二人は雰囲気を日常のモノに戻す。遠坂凛は何処か気の抜けた目で言峰士人を見る。
「なんというか、呆気ないわね。……………あと、シリアスに成りきれてない」
「まぁ、仕方ないだろうな。ただの学校の屋上でシリアスになろうとしてなれるものでもない。
……それに呆気ないと言われても困る。マスター申告は正直な話、形式になっている。そもそも監督役の仕事自体、事後の後始末位だからな。
そして、戦争の勝敗を決めるのは監督役ではなく聖杯だ。なんせ監督するものを聖杯戦争って呼ぶ訳だからな。それ故に、監督役の俺は参加者の“魔術師”にとやかく言うつもりもないし、言うこともない。言葉を掛けたところで、その行為は大した意味が生まれない。
後はそうだな、戦争中に外道に走った参加者に対しては代行者としての役目が出てくるくらいか。……もっとも、戦争に挑む魔術師に違反行為の禁止を注意したところで、如何なる訳でもない」
言峰はそんな風に自身の役目を語る。所詮、裏方の仕事。大変であるが、大変なだけだ。
「ふ~ん、そんなモノなの。それと、何か情報ないの?」
遠坂凛は監督役の仕事をしている人間にとんでもないこと聞いてきた。
言峰も少しだけ呆気に取られてしまうが、「やはりこの女、遠坂凛」ということで納得してしまった。言峰士人の中の遠坂凛はきっととんでもない扱いをされているのだろう。
「――……正気か? 中立の立場だからこその監督役だぞ。俺の師匠といえど、今は参加者と監督役の立場だ」
神父は魔術師に返答するが、魔術師は妥協案を考える。それは、魔術師はこの神父が養父に似て生真面目であり、何事も本気で真剣であったことは知っていたからであるが、しかし、頑固者ではあり、自分がこのように在ろうと決めた事はともかく、それ以外の妥協しても問題がない事はしっかりと妥協を考えてくれるのだ。
「それじゃ、召喚されたサーヴァントを教えてくれない。これなら監督役としても大して問題じゃないでしょ?」
よって、凛は士人が許せる範囲で情報をもらうことにした。
「………まぁ、サーヴァントを召喚していないみたいだ、クラスくらいであれば教えてもいいぞ」
それなら質問の範囲ないか、と監督役の責任にならない程度には甘い言峰士人。
「そうだな。召喚されたのは一番目がバーサーカー。二番手がキャスター。その後の召喚の差に大差はない。……そして、呼び出されたサーヴァントのクラスに教会の礼装では不明だったイレギュラーのサーヴァントが一体含まれている。
……で、今残っているのは、セイバー、アーチャー、ランサー。都合良く三騎士が残っているからな。師匠が呼び出すのなら、この三騎士の内の一体だろう」
言峰は遠坂にとって予想外な答えを言った。
「そうなの。残りはセイバーかアーチャー、もしくはランサーね。やっぱりセイバーが狙い目かしら。……それと、イレギュラーって何か予想ぐらいはついているのでしょう?」
魔術師の顔で、鋭い声で問いかける。
「予想はついてる、あくまで予想だが」
「その予想って教えてもらえる?」
「何、師匠の家の資料を見直せばすぐに予想できることだ、別に構わん。
……この度で五回目の聖杯戦争になるがな、三回目の時に七騎士以外のイレギュラークラスが確認されている。そのサーヴァントのクラスはアヴェンジャーという名前だったそうだ。イレギュラーのクラスならば、このアヴェンジャーの確率が一番高い」
言峰は自身の予想を答えた。それを聞いた凛は、その情報を脳内で吟味するような表情を浮かべた。
「ありがと、士人。助かったわ」
「それはどうも。
……さすがにここにいてが体が冷えるし、時間もない。そろそろ戻るか」
そうして、魔術師と監督役の会合は終わった。