神父と聖杯戦争   作:サイトー

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 最近、就活での面接が怖い。夏が終わる前に内定が欲しいなぁ、とそんな気分で書き上げました。


42.魔術師と三騎士の召喚

 この度で六回目となる聖杯戦争。およそ二百年前から続く魔術儀式であるが、まだ成功には至らず。

 第五次聖杯戦争では器となる小聖杯―――イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを失い、孔を開いた反応はあったにも関わらず、第三法たる魂の物質化は失敗。大聖杯と現世が連結し、極大の魔力反応があったが、儀式自体は最後の最後まで来て終わってしまったと彼らは理解した。前回と同じく儀式自体は最後まで進むも何故、最後の一歩を前に根源へ至り、魔法を得られぬのか。

 ―――アインツベルンは、もはや手段を選ぶ余裕は皆無。

 そこまで追い詰められては、魔術師としての誇りさえ既に重み。錬金術大家なんてものは、勝てなければ無価値な唯の称号で、侮蔑でさえあった。新たにまた第三法を目指そうとも、果たして何百年経過した未来となるのか。念の為、アインツベルンは新たに大聖杯のコピーたる設計図は写して置いたが、それをまた大聖杯に仕立てるには極大の労力が必要となるであろう。

 

「エルナスフィールよ。サーヴァントとのパスの具合はどうだ?」

 

 ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルン。それが老人の名。白い髪に白い髭、そして白い礼服。皺が刻まれた顔は苦悩に塗れ、苦しみの中で呼吸をし続けねばならない罪人の様を成す。

 

「そこそこ万全です。キャスターはキャスターで、アインツベルンの工房にて色々と好奇心を発散していますけどね」

 

「―――ほう。まぁ、奴も高名な魔術学者だ。異郷の神秘に心躍るのは分からなくも無い」

 

 今回、アインツベルンはキャスターのサーヴァントを選んだ。聖杯にまで介入し、かなりの反則を行ったものの、召喚は無事に成功。本来の聖杯戦争の規律ならば呼ばれない英霊であるも、アインツベルンは強引な手段で以って成した。

 そして、二人の人物が会話をしているのは豪華に装飾された城の一室。窓から見える外の風景は白一色の雪景色。城の中は暖かさを保っているが、一度外に出れば人間の彫像の出来上がりとなる。白い湯気が上がり、丁度良い熱さの紅茶もまた、城の煌びやかさに合っていた。

 

「ええ、そうですね。随分と楽しそうに茶々を入れています。工房を管理しているホムンクルスは、それはもうかなりイラついているでしょう」

 

「……程々にしておけよ。あのサーヴァント、聡過ぎて胆が冷える。此方としても、あの手合との会話は好ましいが、要らぬ部分まで見通してくる」

 

「分かっております。貴方は私の造り主たるお爺様なのですから、言う事はしっかりと聞かねば為りません」

 

「どうであろうな。その気になればキャスターと貴様の従者と協力し、このアインツベルン程度ならば滅ぼす事も可能であろう。

 ……もっとも、その程度の事が出来ねば創った甲斐も無いと言える」

 

「嫌ですね。反逆出来るとは言え、反逆するほどアインツベルンの血に飢えてはいません。また、恨んでもいませんし、逆に私を作って下さったことは深く感謝しております」

 

 女の名はエルナスフィール・フォン・アインツベルンと言った。格好はまるで戦闘服のように無骨な姿であるが、その貌は完璧で神秘的な美を体現している。しかし、肌は透き通る様に色白だが年齢不詳で無国籍な風貌であり、アインツベルンのホムンクルスの面影はあるのだが、その顔は造形美を体現するホムンクルスらしさが無い。彼女にはホムンクルスには無い生々しさがあり、それが人間の美的感覚を狂わせる異様な美しさを持ち、綺麗過ぎて逆に畏怖を見る者に覚えさせた。男も女も関係無く、彼女を初めて見れば造形の深淵を感じられるだろう。

 そして、身長は180cm近くある長身であり、アインツベルンのホムンクルスの特徴から大きく外れた濃過ぎる黒髪。左腕が肩から失くしており、長袖の中身は何も無い空っぽ。眼の色も真紅とは違い、血の色が少し濁った様な爛々とした赤褐色。そんな彼女は、肩に届くか届かないか程度に短い髪を揺らし、楽し気に忍び笑いを上げる。肩の震えから、目の前に居る老人のホムンクルスに笑みを隠す気が無いのも分かる。

 

「貴様は我らアインツベルンが誇る最高傑作だ。そして、それと同時に貴様はホムンクルスとしては欠落品であるが故に、アインツベルンの“人造人間”ではない最高峰の魔術師である。

 ―――これの価値が分からぬ程、貴様は馬鹿になれぬ。

 時に不必要な聡明さは危機を感じさせたが、こうも貴様が我らの命を全うするとは思わなかったぞ」

 

 ―――それは、畏怖から来る期待。

 エルナスフィールはアインツベルンが完全無欠を求める余り、完璧から外れたホムンクルスとして究極に至った個体。想定した設計図を越えた異端の徒。

 

「―――私が個人主義になったのは、そも、其方の責任にあるかと。思想操作を受け付けられぬまで強めたのも、良い意味で適性故の障害でありましょう」

 

 少しだけ、皮肉気に笑みを浮かべる。この女は拙い敬語で取り敢えずの敬意を当主に見せるも、それは全て偽りだ。喋り方も本来は汚い言葉使いであり、アインツベルンのホムンクルスから乖離した精神性と人間性と、そして魔術師らしからぬ合理的で現実的な性格を持つ。ユーブスタクハイトはその事を理解した上で、自分達が生み出した怪物を前に祝福せずにはいられない。

 

「……ほう。そうか、成る程。エルナスフィール、貴様―――この度の聖杯戦争を勝ち抜ける事が出来れば、アインツベルンの当主になってみるかの?」

 

 ユーブスタクハイトは初めて、このホムンクルスもどきが驚愕する表情を見た。それが面白く、自分達が創作した傑作個体とは言え中々に気分が良い。

 

「私に魔法使いになれと……そう言うのですか?」

 

「是非にな。そも、アインツベルンのマスターが聖杯戦争に勝ち抜くとは本来、そう言う意味である」

 

「…………」

 

 アインツベルン家とは、つまるところ魔法使いの家系。ユーブスタクハイトが生存しながらも他の者が当主になるとは、そのホムンクルスが第三法を得る事に他ならない。

 彼らが再度、魔法使いに至る為に開始した魔術儀式。それが聖杯戦争。

 忘れた訳ではない。その為に勝利を得なくては為らぬが、到達せなばならないモノを見失った訳では無い。忘我し、執着し、摩耗し、苦悩し、それでも本質的には何も変わらない。

 

「器と礼装の管理は貴様の従者が完璧に行っておる。故に、貴様はただ一つの事に集中し、特化した怪物と成れば良い。

 魔術師とは、そういう生き物だ。それも、アインツベルンの者であれば猶の事」

 

 この男は―――アインツベルンは所詮、何処まで行っても理想主義者。この家に生まれた筈のエルナスフィールとは相反する思想を持つ。

 

「この度の戦争、我々が魔法に至らねば全ての過程が徒労に還る。

 ―――無駄にはさせん。

 断じて、それだけは決して許されん」

 

 魔法と聖杯。この二つは絶対にアインツベルンが手に入れる。ユーブスタクハイトにとって、第三法に比べてしまえば当主の地位など塵屑と同じ。

 ―――この翁はただ単純に、それだけでしかないのだ。

 成せるのであれば誰でも良い。アインツベルンが至る為に、こんなことを何百年と只管に続けている。

 

「―――了解しました。必ずや、聖杯で以って至りましょう」

 

「うむ。期待しておるぞ」

 

 紅茶を飲み切り、彼は席を立った。ここで呑む紅茶は実に美味であり、エルナスフィールの従者の腕前がアインツベルンの給仕の中でも最高峰に位置している事が肥えた舌で直ぐに分かった。ユーブスタクハイトは自分の所の給仕の指導にエルナスフィールの従者を使おうかと悩みながらも、真っ直ぐに扉へと向かった。

 

「――――――」

 

 バタン、と扉が閉まった。それをしっかりと確認し、扉が閉まったと同時に彼女はダラリとテーブルに突っ伏した。

 

「あー、マジ肩凝る。ダリィぜ、ほんと」

 

 エルナにとって、あの男は重要な人物。その気になればアインツベルン程度ならば滅ぼす事は可能であり、そういう生命体として錬金術の秘技で作られた。だが、第六次聖杯戦争を挑むにはアインツベルンの加護はとても便利だ。戦争中も彼らの援助は実に有り難い。そして、彼女がこうやって作り主に従がっている理由はその一つしかない。異端の中の異端であるが、ホムンクルスとして家に対する忠誠など生まれた時から皆無なのだ。

 

「―――ん?」

 

 テーブルに頭部を付けていたエルナが扉の方を向く。気配と魔力と足音の反応からして、この場所に来る人物が誰なのか察した。なので、部屋の扉が開こうとも、彼女はずっとテーブルに突っ伏したままであった。

 

「エルナ様、だらしないです。少しは貴人としての自覚を持って下さい」

 

「構わんだろ、別に。時と場合を選べばさ、それで十分だ」

 

「構います。お綺麗な主をさらに磨く事こそ、我が人生の陽光ですので」

 

 ドアを開けて部屋に入って来たメイドの苦言。それを適当に返すが、凄く真っ直ぐな目で却下された。

 

「まぁ、それは良いから座れ座れ、ツェリ」

 

「…………いえ、メイドですので」

 

「だから、そんな下らないこと気にすんなって」

 

「――――――――はぁ……」

 

 溜め息を着くメイドは特徴的だ。赤い瞳に銀髪なのは他のホムンクルスと同様だが、長い髪の毛を編み込んで一つに纏めていた。その顔はホムンクルスらしい造形美よって凄まじい美貌であるが、前回の聖杯であるイリヤスフィールを知る者であれば彼女と瓜二つだと気が付くだろう。外見年齢は大凡で十代後半から二十代前半と言った雰囲気。

 そして彼女は、肘をテーブルに置いて手の平の上に顎を置く主人の対面に座った。だらしない生涯の主のそんな姿を見れば従者として、溜め息の一つや二つ、つきたくなると言うもの。

 ……そも、このメイドの主人には貴族としての自覚は無い。

 人付き合いは魔術師とは思えないほど堪能で、マナーも上流階級を越えた大貴族に相応しい姿で行えるが、全て真似事の演技。貴族としての体面は幾らでも出来るのであるが、本音を言えば面倒な上に気色悪いとさえ感じている。

 

「そんなだと気苦労ばっかり溜まるぜ。キャスターのアインツベルンでの面倒だって、ツェリが見てんじゃないか。あんな奴、あっちが構って来た時だけ反応してれば良いんだよ」

 

「あの……御自分のサーヴァントですよね?」

 

「ああ、そうだけど……それが?」

 

「……何でも有りません。

 ワタシ、少しだけ目眩がしただけですので」

 

「そうか。無理すんなよ」

 

「――――――……はぁ」

 

 思いっ切り重い溜め息を吐くメイド―――ツェツィーリエが、まだかなりの高温の紅茶を一口で呑み乾した。自分でこの部屋に入って来た時に持ち込み、先程素早く入れた一杯であるが、味はそれなりに良質なモノが出来上がった。でも熱い。そして、その熱湯加減が主の醜態で冷え込む脳味噌を、とても熱く灼熱としてくれた。

 そんな自分の従者を見て、エルナはニタつく笑みを浮かべた。本当に性格が最悪なホムンクルスであった。

 二人は城の中、戦争を目前にしてまったりと時を寛ぐ。サーヴァントも召喚し終わり、後は冬木へと旅立つだけと旅支度を十分に終えている。日程となれば準備した装備で直ぐにでも戦争を開始出来る。

 

「ふむ。エルナ殿とツェリ殿、二人ともどうかしましたか?」

 

 ―――突然、そんな声が部屋に響く。

 確か、この一室に居たのは主人と従者の二名のみ。有り得ない音源は、エルナの真後ろから響いていた。

 

「……そう言うお前こそどうしたんだ、キャスター。もうアインツベルンに飽きたんか?」

 

「まさか。ここのホムンクルス造りは素晴しいですよ。そして小聖杯と大聖杯に使われている魔術理論に、この私が召喚されたサーヴァントシステム。

 ―――まるで、子供の頃に戻ったように楽しいです。

 ええ、それはもう、これだけで現世に戻って来た甲斐が有ると言うもの。ここの魔術は実に素敵です」

 

 勉学に励む事を娯楽とする。キャスターにとって見知らぬ神秘を運営する理論なんて代物は、宝石以上に輝く人生の楽しみとなる。

 

「へぇ、そう、ふ~ん。そいつは良かったな」

 

「……キャスター。アナタもエルナ様の従者であるのでしたら、少しはそれらしくして下さい。常識が無い野蛮な猿ではないのですから、蓄えた学を有効に活用してくれませんか。

 それにアナタはサーヴァントと言えども、この家に居座る客人でもあるのですよ?」

 

「これは失礼致しました、ツェリ殿。確かに、貴女と私は共にエルナ殿に仕える身。全く以ってその通りかと。

 ……あ、エルナ殿。飲まないのでしたら、その紅茶貰いますね?」

 

「おう、飲んじまいな」

 

「忝い。……ふーむ、そして美味い。ツェリ殿が入れる茶は最高ですね。

 まこと、貴女達に呼ばれて良かったです。サーヴァント冥利に尽きますなぁ……―――」

 

 しみじみと紅茶の味を堪能する。キャスターの時代では楽しめなかった異文化を、彼は楽しそうに味わっていた。

 食の文化もそうであるが、それ以外の様々な異国の文化は彼を飽きさせない。アインツベルンに残っていた一昔前の機械製品も興味深く、自国とは違う人の文明はやはり楽しいのだ。

 

「ははは。お前、マジでサーヴァントらしくないぜ」

 

「なんと。一欠片も魔術師らしくないエルナ殿に、そのような事を言われるとは。私は今とても驚いてます。

 ―――我が主よ、鏡と言う人類の発明品を知っていますか?」

 

「……信じらんねぇ。

 マスターに対する信頼が一つも感じられん」

 

「酷い事を言いますね。これでも私なりに友好を示しているのですけど。それを分かって頂けないとは、サーヴァント冥利も底に行き着きました」

 

「いや、そりゃ底に落ちんの速過ぎだろーが。

 せめてよ、実戦で二、三回は共闘してから愛想が尽きるか否か、きっちり決めようじゃないか」

 

「…………―――」

 

 ツェリは平常心を何とか保ちながらも、目の前のサーヴァントを睨んだ。

 エルナスフィールが、正確に言えばアインツベルンが触媒を準備して現世に召喚したのは、キャスターのサーヴァント。性別は男性であり、切れ長な細目をした綺麗な風貌。着込んでいる服装はサーヴァントとして召喚された時の物では無く、まるで家の中で寛ぐような軽い服になっている。

 

「――――――もう、嫌です」

 

 皮肉の嵐。自分の主人もこのサーヴァントを召喚してから、嫌味の応酬が出来る相手が出来て生き生きと口が悪くなっていく。段々と態度も悪くなっていく。

 るーるー、と泣きたくなる自分を抑え込む。涙をこらえるツェツィーリエはまるで従者の鏡。エルナスフィールは元々かなり乱暴で奔放な放蕩者であったが、最近はそれが顕著になっている。

 

「……ああ。それとですね、エルナ殿。少々聞きたい事があるのですが?」

 

「ん? 別に何でも構わないから、聞いてやる」

 

 気まずい顔をする自分のサーヴァント。嫌味を吐く様が似合うこの男からすれば、実に不自然な態度。故に彼女は、ほんの少しでけ気遣ってキャスターの言葉に気安い声で聞いて上げた。

 

「―――聖杯の召喚に必要になるのは、英霊の魂で宜しいのですよね?」

 

 有り得ない事であるが、聖杯戦争の序盤も始まっていない現段階で、キャスターは大凡の魔術儀式の全容を把握している。

 圧倒的な理解力と、神秘に対する知識の深さ。それはエルナスフィールが考えた通りの眼力。此方が出した情報だけで、こうも把握されるとは期待以上かもしれないと、そんな感想も浮かんでしまう。

 

「流石キャスター、まさにその通り!

 神様に願いを届けるには、それが一番手っ取り早いんだ。英霊なんて上等な生贄を捧げれば、相応の対価が頂けるって話さ」

 

 人が世界そのものへ願いを届ける方法などこの世には無い。しかし、太古から対価に応じて神に等しき存在が人に利益を与える昔話は数多い。

 聖杯戦争とは、アインツベルンによる伝承を模倣した儀式。

 実際に利用しているラインの黄金による釜はまた別の過程による願望成就であるものの、こんな仕掛けが裏にあっても可笑しくは無い。そもそも魔術師の家系が英霊の願望を叶える事自体道理に合わない事であり、それが他の魔術師の家系にまで機会を与えるなど有り得ないのだ。

 

「また、魔法に至る為には、勝ち残った最後の一体も殺す必要があるのでしょう?」

 

「そりゃ当然。きっちり殺さなきゃ第三法の基盤へは至れん」

 

 キャスターにとって、魂関連の神秘は詳しかった。生前から学んでいる学問の一つだ。その手の術はお手の物。故に、聖杯戦争のカラクリをアインツベルンに召喚された事で、簡単に見抜いてしまった。聖杯の実物もその“眼”で視界に一度でも入れてしまえば、儀式の運営理論も見抜いて仕舞える。

 ……それを敢えて、キャスターは隠さなかった。

 アインツベルンからすれば、賢し過ぎる従者など問題以前に不審の澱と化す。その事を分からぬキャスターでは無い。むしろ化かし合いは大得意。

 

「貴女……やはり、隠す気が無いですね?」

 

 とは言え、その化かし合いの能力も、相手が隠し事をしてこそ発揮される。もし、相手が自分の能力を分かった上で、それを計算に入れて対応されてしまえばそれまでだ。暴かれても良い裏側であるのならば、露見したところで焦る理由が無い。

 

「必要ない。これほど早いと思わんかったが、何時かは気が付くと想定してた」

 

「―――まぁ、そんなコトだとは思っていました」

 

 故に、彼は全てを自然体で世界を悟る。物事を底まで見抜き、流れを理解した。キャスターは事細かに聖杯を観察し、アインツベルンからの情報を脳内で纏め上げ、矛盾点と相違点を思考する。マスターへ教えた自分の能力と性能を現状に照らし合わせ、キャスターはそれを如何に聖杯戦争でエルナが利用しようとするか想定する。自分自身の戦術と戦略を、契約したマスターの能力と性質に組み合わせて戦争を空想する。現世に召喚されてからマスターに頼まれていた戦争の前準備である仕事内容も吟味し、そこから何を彼女が求めているのか想像する。

 ―――そして、キャスターは自分に求められている本当の役割を自分で見出した。

 先の先を読み、相手の心理を読み、この度の聖杯戦争の末路を読み切った。この男は、至極アッサリと真実に到達した。

 

「恐らくは、その為の私なのでしょう―――?」

 

 聖杯戦争のシステム、そこに潜む悪魔の存在。座から召喚される七体のサーヴァントに、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、バーサーカー、そしてキャスターの七クラスに加えられたアヴェンジャーのイレギュラークラス。悪神の呪詛は聖杯とリンクする自分自身を調べる序であったが、サーヴァントと言う現象の秘密を探る事で簡単に見付けることが出来た。

 

「嬉しいねぇ、キャスター。

 ―――初めて見た時に感じた印象を、お前は本当に裏切らんな」

 

 アインツベルンの総意としてサーヴァントには隠したい事実を、エルナは隠すつもりはなかった。サーヴァントが生贄であり、魔法の為には七体の英霊の魂が必要な事を自分のサーヴァントに悟らせた。教えたのではなく、矛盾のある情報を与え、真実を化かす様に推察させて遠回しに答えに到達させた。

 それが分からぬキャスターではなかった。相手の心情が分からぬキャスターではなかった。だからか、この男は悪辣な仕掛けも面白いカラクリの一つとして処置してしまった。

 

「……それは此方も同じですよ。

 実に良い怪物に私は幸運にも召喚されたと、一目で理解出来ましたから」

 

 邪悪に笑う魔術師とキャスター。互いに互いを試していたが、それこそ戦争に挑む前の戯れのような計り合い。エルナにとって気が付かれなければそれでよく、キャスターにとって気が付けることが普通であった。これは、それだけの事実。

 

「お二人の会話は聞いているだけで苦労します。ワタシは少し、化かし合いは苦手です」

 

 そばで話をただ聞いているのみで、メイドは精神が擦り減っていく。どうもこの二人、互いに緊張感を求めて楽しむ気概のある間柄らしい。最初の数日でその事は分かったが、エルナの従者として辛いモノは辛い。折角出来たある意味で同僚とも言えるキャスターも、腹黒で自分とは趣味が合わない。

 

「おいおい。こんなんは化かし合いでも何でもないぞ、ツェリ。私もこいつも、相手を嵌め殺そうなんて最初から考えてねえし」

 

「全くです。貴女のそれは勘違いですよ、ツェリ殿。私はエルナ殿と共に聖杯の獲得を目指します。それは絶対に違えない契約ですので」

 

 そして、この相性の良さ。イラっとしたツェツィーリエは人として何も間違っていない。

 

「ゲハハハハ! オマエラ、ホント面白イナ!」

 

 金切り声。まるで鉄と鉄を擦り合せた様な不協和音が鳴り響く。

 

「クノッヘン……アナタは何故、そうも知性が無い笑い声を上げるのですか?」

 

「無論、本性サ!

 自分デハ動ケナイ不自由ナ身ユエ、コンナ風ニ笑ッテイナイト楽シク生キラレナイヨ」

 

 部屋の壁に掛けている剣が鳴る。ふるふると微妙に刀身が震動しているのが、眼を凝らせば見ることが出来た。

 そして、その剣はまるで分厚い鉄板のように荘厳。刀身は4尺から5尺の間と大きく、人間を容易く両断するのが見て分かる。刃は真っ白く、白骨の如き妖しさを纏う色合いを成す。

 

「お前はよ、声聞き取り辛い上にうるせぇんだよ」

 

「うるさいですね。これほどまでに神経に来る声は中々ありません。私が生きていた時代においても、貴方程面妖で奇怪なモノは中々に……―――いや、結構居ましたね」

 

 遠慮の無い手痛い突っ込みが炸裂する。高い知性を持ち、五月蠅く喋るこの魔剣―――ホムンクルス・クノッヘンは、水を得た魚のように言葉を話し続ける。お喋り好きなのが簡単に伝わり、剣の声が金属を擦り合せたように音響する。

 

「ギィアハハハハ! ……居ンノカヨ、キャスター。

 オ前ノ生前ガドンナノカ、興味ガ湧クゼ」

 

「そうですか。いやはや、自分で言うのもあれなのですが、中々に波乱万丈な人生でしたよ」

 

「ソウカソウカ! 何時カ暇ナ時ニデモ、聞カセテクレヤ!」

 

「黙れ魔剣! お前の声は鼓膜に響いて痛ぇんだよ!」

 

「ヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」

 

「あぁ、もう! なんなの本当、さっきまでみたいに眠ってろよ!」

 

「モウ眠気ハ無ェヨ、エルナ!」

 

 この魔剣は先程まで眠っていたらしい。剣が寝るとはどういう事なのか今一不明な現象ではあるが、大人しくしていたのはその為らしい。

 

「すみません。ワタシの製造で何かしらの原因不明な不手際がありまして、このような破綻した仮人格になってしまいました。製作者として誠に遺憾です」

 

「―――寂シイ事言ウジャネェカ、マイマザー」

 

 剣は何が面白いのか、楽しい雰囲気を崩すことなく喋り続ける。

 

「ワタシを母と呼ばないで下さい」

 

「何ヲ言ウンダカ。オ前ガソノ手デ俺ヲ生ミ出シンダローガ」

 

「不覚です。誠に迂闊です……。何故ここまで破綻人格の剣になってしまったのでしょうか。魔術の本質の一つは歪曲でありますけど、ここまで歪んだ性格になる事は無いと思います」

 

 ツェツィーリエの担当はエルナスフィールの補助。武装の作成から始まり、身の回りの世話や現地活動における情報収集も彼女が行っている。その中でも、エルナの主力武器となる魔剣の製造と点検もツェリがしており、剣に擬似人格を付けたのも彼女となる。

 

「お前はほんとに苦労性にも程がある。これがこんなんになったのは……もうあれだよ、色々と諦めた方が楽になれるぜ」

 

 不器用に労わるも、実際エルナからすればツェリの苦労なんて実感出来ない。自分の従者の難解な性格はからかい甲斐があるものの、冗談を冗談で流そうとしても内心では色々と考えてしまう生真面目さが厄介だった。

 

「……あ、そうだキャスター。

 そろそろ日本に行って向こうでの戦争態勢を整えたいから、今してる準備は早めに終えてくれよ」

 

 キャスターのクラスは、戦いを始める前段階で既に決着をつける戦法が一番有効。アインツベルンの潤沢な資金と豊富な神秘関連の材料は、キャスターにとって宝の山であった。それを利用しない手は無く、彼はこのアインツベルンの工房で様々な術的実験や道具作成を行い、準備を整えていた。

 

「ええ、良いですよ。此処ですべき事柄は全て終えていますし、後は向こうに着いてからの作業です」

 

「―――手際が良いね、相変わらず。

 言わなくても、こっちの思考を先読みしてくれんのが有り難い」

 

 キャスターは有能にも程があった。基本的に出来ない事が殆んど無い。エルナが頼んでいた仕事も終わらせ、ある程度の前準備も完了させている。後は実際に冬木に赴き、戦争用の対策を講じるだけで良い。

 

「―――ふむ。では、念入りに対策と準備を練りつつも、私は私で好きに生活していれば良いのですね?」

 

「……まぁ、それまでは現世を楽しんでいてくれ。アインツベルンの中でなら、戦争まで好きに遊んでな」

 

「それは良い。まだ少しだけ、試してみたい事がありましてね」

 

 キャスターは笑みを浮かべた。召喚に応じて聖杯戦争に参加したが、今回の契約はかなりの当たりであったと実感した。このマスターは中々に自分好みであり、実際に彼女の相棒役は楽しめる上に面白い。その内心を隠す事無く男は表情に出し、契約相手である女もキャスターの笑顔に対して同じ笑みで応えた。

 

 

◇◇◇

 

 

 義理の姉が住んでいる実家に帰って来た男はその晩、迷わず土蔵に籠もった。下準備は姉にも手伝って貰い、魔法陣は綻び無く完成している。召喚に必要な詠唱も、専用呪文を用意して万全である。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する」

 

 七人の魔術師と七人の英霊。再びこの冬木の地で殺し合いが始まるらしい。その情報を掴んだのは、今では剣製の魔術師と呼ばれる衛宮士郎であった。

 魔術協会や聖堂教会での認識において、彼は言わば殺し屋だ。

 それも関わると録な目に合わない特級の戦争屋。また、全体の為に少数を切り捨てる正義を実践している真性の異常者であると、今現在では関わってきた結構な人物達に知れ渡っていた。その強さは勿論、行動の原理も理解されずとも知られている。そして、魔術の秘匿は出来る限り行っているも、ここぞと言う場面では問答無用な異端の魔術使い。しかし、実際に彼がいなければ大災害が広がり、魔術の秘匿も何も無い地獄が生み出されている事も理解していた。

 

「――――――――告げる」

 

 故に協会や教会が取った対策としては、好きに放って置く事。それが最善になった。

 最初の方は率先して関わって来たのだが、執行者も代行者も、邪魔者は全て返り討ちにされてしまった。彼の殺害を企てた組織の幹部が正体不明の暗殺者に殺害されたなんて事件も結構あった。死徒の場合は更に問答無用で、邪魔になるなら一族郎党全て殺された。そして、そもそもな話、此方が何もしなければ害は無いのもその過程で事実だと分かってきた。それに、もはや消耗した今の協会も教会も、そして死徒の派閥であったとしても、衛宮士郎などと言う本物の英雄、あるいは怪物を確実に討ち取るには人員が不足しているのも事実。

 協会の方も様々な事件の影響で封印指定は取り下げており、教会の方も魔術師だからと言って狙って殺す様な事もしなくなった。

 

「――――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るベに従い、この意、この理に従うならば応

えよ」

 

 それらのことは彼にとっては有り難い事であった。裏から友人や恋人だった魔術師が動いていた事は知っていたが、こうも動き易くなるとは思わなかった。戦場で知り合った友人に処刑台送りにされ掛っても、その男を昔の友が影から殺していた事なんで事もあった。

 そして、やはりアイズベリ事変での協会と教会が負った損害の大きさや、死徒連中の派閥崩壊も影響が存在しているのも有り、行動し始めた頃よりは理想の為に動くのが簡単になっていた。

 今となって衛宮士郎と言う人物は、魔術師、代行者、吸血鬼、そして神秘に生きる者全てが戦うのを避けたい災厄と化していた。何せ、何処までも強力な力を持つ者でさえ、更に個人ではあらがえない筈の組織で在ろうとも、その存在が社会や人命に害を与えているのであれば、絶対的に素早く殺害し尽くしてきたのだから。

 故に、今回の出来事もいつも通りの日常であった。もはや、今の衛宮士郎にとって殺し合いの中で生きることが当然の生活になってしまった。

 ―――第六次聖杯戦争の開幕。

 右手に嘗て見た令呪が再び出現したのを見て、士郎は導かれるままに故郷へと帰った。召喚に必要な触媒は既に体の中にある。召喚の為の魔法陣も故郷にある。

 

「誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 そして、魔法陣が閃光を放った。煌めく魔力の光子は儚く、直ぐさま夜の闇に溶けて消える。幻想的な光景は、膨大に高まる魔力によって吹き荒れた風が舞い、暗闇が視界に戻って行く。

 ―――衛宮士郎が例え地獄に堕ちたとしても、忘れることはないだろう。

 そう彼が確信したあの時の出来事が再度、目の前で起きていた。もう二度と見る事は無いと思っていながらも、九年前に今生の別れをした彼女との再開。

 

「―――問おう。貴方が、私のマスターか?」

 

 懐かしい。胸が裂ける様に過去が彼へ来訪する。懐古するべきでは無いと分かっているのに、有らん限りの感情を込めて士郎は笑みをセイバーのサーヴァント―――アルトリア・ペンドラゴンに向けた。

 

「ああ。私が君のマスターだ」

 

 士郎には一つの懸念があった。目当ての英霊を触媒を使って引き当てたところで、その英霊には果たして過去の記憶があるのかどうかと言う点だ。第五次聖杯戦争の時のセイバーは座からの分身ではない生前の時にした契約によって召喚されたが、このセイバーがそうであるとは限らない。前回と、そして前々回の記憶があるのかどうか、衛宮士郎は彼女から直接聞く以外に知る術がない。

 

「……それで、君の真名はアルトリアで合っているのかね?」

 

 何処か此方を窺う視線。それに対してセイバーは、自分を召喚したマスターが考えている事を簡単に看破した。

 

「ご心配無く、シロウ。私は貴方を知っております。ですから、貴方がアーサーでは無く女のとしての名であるアルトリアを知っている訳も把握しています。安心して下さい」

 

 士郎が笑みを浮かべてしまったのも無理はない。彼女は彼女として召喚されていた。自分を知っているセイバーとして、アルトリアは召喚されていた。

 

「久しぶりだな、セイバー。オレの召喚に応じてくれて、ありがとう」

 

「ええ。お久しぶりです、シロウ。

 ……貴方にもう一度会えて、私も嬉しいです」

 

 衛宮士郎にとってサーヴァントとはセイバーであった。彼女以外に英霊と結ばれる触媒が無かったのもあるが、それでも契約するのであらば彼女が一番の相棒だ。信頼関係が初めから構築出来ているのであらば、互いの能力を聖杯戦争で如何に生かすのかも簡単である。

 

「―――シロウ」

 

「……どうした、セイバー。もしかして、何か不具合でもあったのか?」

 

「―――……いえ。

 こうして再会するとは思いませんでしたので……ただ、そうですね。言ってしまえば、思った以上に懐かしいのです」

 

 それにどれ程の万感の思いが詰められているのか、彼には分からなかった。理想を追い求め続けた日々において、過去とは思い出すモノでは無く、胸の内に仕舞いこむだけのモノ。苦しいと感じる心さえ封じ込めて、この世界で只管に戦い続けた。

 あの人に、あの夜に―――誓った正義の見方。

 セイバーも知る様に衛宮士郎は、理想を目指して進み続けたのだ。終わりも無く、足を休められるゴールを定める事も無く、今こうして戦いに挑んでいる。だからこそ、この第六次聖杯戦争に参加していた。

 

「そうか。オレも、聖杯戦争に参加するとは考えてもいなかった。

 ―――だが、こうして再会出来た。

 マスターとして不謹慎だと思うが、それでもオレは嬉しいよ」

 

 セイバーは自分のマスターである魔術師―――衛宮士郎を確認する。

 彼は前回と比べて随分と様変わりしていた。髪の色は脱色したように白髪となり、肌の色も焦げた褐色になっていた。身長も大分伸び、180cmを越えた190cm近い長身だ。服装も魔術的な加護を受け、防弾性と防刃性に優れた物。

 

「――――――……」

 

 セイバーにとって、その姿は衛宮士郎と言うよりも、もう一人のエミヤシロウであるアーチャーの印象が強かった。

 赤い外套は纏っておらず、髪型も前髪を下ろした落ち着いた雰囲気。

 だが、見た目と気配は完全に彼と殆んど同一のものだ。戦場で心身が強靭に磨き抜かれ、同時に理想が段々と磨り減ってしまったような、矛盾を孕んだ二つのイメージがとても強い。錬鉄されて堅過ぎる剣が柔らかさを失い、最後の最期で脆くも折れてしまいそうな危うさが既に在る。

 ……この男には、自らの最後に何が残るのだろうか。

 ただ、自分が彼の内に残留出来る思い出になれるのであれば、それで良いと思えた。出来るのであれば、思い返せる人に成れるのなら、思い返してくれるのならば、セイバーはそれだけで彼のサーヴァントとして戦い抜けると希った。

 

「確か君は、霊体化が不可能であったな?」

 

「いいえ。現在の私は霊体が可能です」

 

「――――――なに」

 

 士郎はセイバーが聖杯を生前の最後に願ったが故に、この聖杯戦争に召喚されていたの第五次聖杯戦争の終盤に知った。聖杯を求め、死ぬ前の生者として前回の聖杯戦争では召喚された。彼はその事実から、まだ座に居ない英霊だからと言う理由で霊体化が不可能だと分かっていた。

 故に―――霊体化が可能なのは道理に合っていない。だが、可能であると言う事実から、士郎はセイバーが嘗てのセイバーと違うと言う事が分かってしまった。果たして、彼女は彼女であるが、自分が知るセイバーであるのか。そして、自分自身はセイバーが知る衛宮士郎であるのか、今の彼では何も分からない。

 

「シロウ。今の私は正規の英霊として召喚されています。守護者でも無く、通常の英霊と同じく座に登録された存在です。

 今の私は生者では無く、英霊の座に住まう死者。

 この身も前回とは違って本体では無く、座に存在する私の複製ですので、霊体化も可能となっています。

 ―――だから、全部理解しています。

 何故貴方が嘗てのアーチャーの姿に似ているのか、何故私がまたもや召喚されたのかも」

 

「……そうか、そうなのだな」

 

 彼女は死人。もう、生きてはいない。通常の英霊と同じく、座に組み込められた純英霊。それが士郎にとって衝撃的だった。聖杯を求めて召喚に応じてくれた彼女は果たしてあの後、救われたのか、否か。聖杯戦争の後、セイバーに何があったのか。しかし、それは今聞くべき事では無い。士郎は内に疑問を仕舞い込み、セイバーの次に言葉を待った。

 

「故に、最初の内に聞いておきます

 衛宮士郎―――貴方は殺し合いの果て、聖杯に何を求めますか?」

 

 それは確かに大事な事。利益で結ばれる殺伐な一時的主従関係であるとしても、互いの願望を知るのはサーヴァントとしても、マスターとしても重要な事柄だ。

 

「―――聖杯戦争を終わらせる。

 アレは呪われている。壊さなくては人が死ぬ。世界が滅ぶかもしれない」

 

 召喚されたサーヴァントとしては、許容するには有り得ない願望だ。この聖杯戦争に呼ばれる英霊には願いがあり、召喚者はそれを破壊すると言っている。そのような事を言えば、その場で殺されたとしても仕様が無い。いや、殺して次のマスターを自力で捜す方が建設的。

 しかし、サーヴァントの中にも例外はいる。例えばそう、英霊の座に送られる前に知り合っていた人物が召喚者であり、その英霊と親しいのであれば、最初から二人の間には信頼関係がある。そして、共有の知識が備わっているのであれば、説明する必要すら存在しない。

 

「―――良いでしょう。

 これからよろしくお願いします、私のマスター。必ずや聖杯を壊しましょう」

 

 答えは既に昔に決まっていた。そもそも、今の彼女にとって自分の願望は聖杯で叶えるモノでは無くなっていた。聖杯戦争の過程で成す事が出来るのであれば、聖杯は手に入らなくとも別に構わない。

 

「……セイバー。もう一度君にこのような事をさせるのは気に病むが、それでもオレには君しかいなかった。君以外のサーヴァントを呼べなかった。

 ―――すまない。

 オレはまた、君に重荷を背負わせる事になる」

 

「構いません。今の私はシロウ―――貴方の剣なのですから」

 

 交差する視線は鋭くも、何処か虚しい再会の余韻があった。二人は決定的に変わってしまっていて、その事に二人は気が付いているにも関わらず、契約を静かに了承した。分かっているのは、セイバーは士郎が知るセイバーでは無く、また士郎はセイバーが知る士郎では無いと言う事実。

 年月は人を変え、時間は在り様を歪ませる。士郎が理想に段々と変貌していった様に、死んだ事で王の役目から解放された彼女もまた、嘗てのアルトリアとは違う存在と化していた。

 

「―――で、召喚は無事終わった様ね」

 

 その時、土蔵の扉が開いた。セイバーと士郎がいる土蔵の中の様子を窺っていた彼女は、話し合いが終わったと気配で分かった為、中に入って来たのであった。

 銀色の髪に赤色の瞳。夜空に輝く月光が差し込み、幻想的な姿を二人に見せる。

 セイバーを召喚した魔術師である衛宮士郎の姉―――イリヤスフィールが土蔵の扉から二人の無事を確認する。士郎が目論んだ通りにセイバーのサーヴァントが召喚され、契約も問題無く結ばれた様だ。

 

「成功だ。イリヤのおかげでパスも万全だよ」

 

「そう、良かったわ。ここまでやって失敗しましたでは、魔術師としてとんだ笑い者だもの」

 

「イリヤスフィール……ですか?」

 

 セイバーは覚えていた。銀髪に紅眼の風貌はイリヤスフィールの特徴であり、アインツベルンのホムンクルスの特徴であり―――アイリスフィールを思い浮かばせるものであった。

 

「ええ、そうよ。久しぶりね、セイバー。貴女にとってどの位時間が経ったのか分からないけど、私にとっては九年ぶりの再会になるわ」

 

「……そうですか。

 では此方も、お久しぶりと言っておきましょう」

 

 斯くして衛宮邸にて役者が揃う。出会うべくして騎士王と錬鉄の英霊は再会する。最優のサーヴァントは必然として、剣製の魔術師に召喚されて契約を結んだ。

 この度の聖杯戦争において、考えられる限り最強の組み。封印指定に選ばれた魔術師屈指の強さを持つ衛宮士郎と、聖剣エクスカリバーの担い手であるアーサー・ペンドラゴン。この二人に敵は無いが、もし彼と彼女に勝てる者がいるとすれば、そのマスターとサーヴァントも同じく最強に値する一組。

 ―――今此処に、嘗ての主従が復活した。

 再会する二人。再開された戦争。第五次聖杯戦争を経て、彼と彼女の第六次聖杯戦争が始まろうとしていた。

 

 

◇◇◇

 

 

 セイバーのサーヴァントが召喚される少し前。衛宮士郎と同じく遠坂凛もまた、サーヴァントの召喚をするべく冬木の地に戻っていた。

 今の凛は既に第二魔法の魔術基盤を限定的であるが習得している。

 まだ魔法使いと呼べる程ではないが、魔法を構成している魔術理論を使用する事が可能なほど己を鍛え上げていた。勿論それは純粋に魔術師としての執念から来るものでもあったが、それ以外にも理由が彼女にはある。

 その理由は簡単な内容であるが困難な条件であり、それは衛宮士郎と同格の能力を得る為。

 彼女の恋人で“あった”衛宮士郎の強さはもはや英霊に匹敵し、大多数の死徒二十七祖を殺害可能な領域。数を減らした二十七祖どもからすれば、あの殺人貴と同様に命を狙われれば死を覚悟するまでの処刑人と化している。つまり、衛宮士郎を自分の元に再び連れ戻すには、自分自身も更に強くならなくてはならない。聖杯戦争を通して学べた戦闘の基本となる体術も更に磨かれているモノの、バゼット・フラガ・マクレミッツのような生粋の怪物と比べれば劣っているのも確か。無論、更なる成長を遂げた似非神父二世にも及ばないだろう。多分だが、強化ありの純粋な殴り合いなら正義の味方には僅差で勝てる可能性はあるものの、それには大した意味も無い。戦術眼も生来の頭の良さと直感から既に怪物クラスであるのだが、衛宮士郎と言った怪物連中ほど極まっていない。奴をぶん殴ってでも連れ戻して幸せにしてやる為にも、自分は今よりも更に強い存在にならなくてはならない。

 時計塔で一緒に学び、正義の味方として飛び出したあいつに自分も一緒に付いて行って、色々な人物と巡り合って、世界に拡散し続ける地獄を共に歩んで―――なのに、あの馬鹿野郎は私を置いていきやがった。置いて行かれてブチ切れて、時計塔に戻って手の先に掛かっていた第二魔法を反則技まで使って習得し、そしたら今回の第六次聖杯戦争の知らせが届いた。ふざけるな……本当にふざけんなこんちくしょう!

“良いじゃない。

 ……本当に良い度胸じゃない、衛宮君―――!”

 と、十分に気合いは入れたは良いが、はっきり言ってサーヴァント召喚に必要な触媒が無かった。うっかりとまでは言わないが、突如として令呪を宿してしまった為、彼女では準備を万全にする時間が無かった。ならば、絶対に避けなければならないのは、サーヴァントを召喚する前に敵対者に遭遇する事。これだけは何が何でも回避必須となるうっかりだ。

 遠坂家地下の工房にて、彼女は早々にサーヴァントの召喚には成功した。

 本当に今度の今度はきっちりと巧く召喚を成した。嘗てのようなアクシデントも無く、うっかりで失敗する要素も無く、自分の魔術回路が最高潮になる時間帯でサーヴァントを呼び出したのだ。

 

「―――んで、マスター。

 もうこれで良いじゃないかって、私は思うんだけど?」

 

「……アーチャー。話は全然まだまだ、これっぽっちだって終了していないわ。

 私が聞きたいのはね、何であんたがそんななのかってことなの」

 

「そう言われてもねぇ……」

 

 場所は新都にあるビルの屋上だった。二人の美女が街の並びを観察している。

 一人は魔術師であるマスター。

 一人は英霊であるサーヴァント。

 マスターの方は実に綺麗な仕立てがされた真っ赤なコートに、防護が施された独特な服装を着込んでいる。コートの方も念入りに加工がされており、対魔術と対物理の保護に加えて物理的にも頑丈だ。着込んでいる服と相まって、防弾性と防刃性もかなり高い。

 

「んー……ま、こればっかりは仕様が無いからなぁ……」

 

 遠坂凛にアーチャーと呼ばれた女性は、熱い缶コーヒーをちびちびと飲んでいた。片手には何処で買ったのか分からないが、食べかけの惣菜パンが握られている。

 そして、アーチャーと呼ばれたサーヴァントの見て目は一言で表せば実に普通だった。帽子を深く被っている為、顔は影になっていてはっきりと見えないが服装が一般人のそれと変わらない。と言うよりも、サーヴァントとして着用する防具では無く、今彼女が着る服装は現代で買い揃えた物であった。

 

「……折角の現世何だし、サーヴァントだって楽しんでも良いじゃないか?」

 

「―――駄目よ。

 全く以って魔力の無駄なのよ、そんなの心の贅肉じゃない」

 

「えー」

 

 凛が怒るのも無理はない。アーチャーは霊体化もせず、常に姿を現して伸び伸びと生活していた。……そう、戦争なんてする気力も見せずにのんびりと日常を送っていやがった。

 

「全く。マスターは本当にケチだなぁ……もう」

 

「もう、じゃないわよ! ああ、ホントに何だかイライラするわね」

 

 アーチャーは良く空気に通る快活な笑い声を上げる。凛はさらに怒りが湧いてしまうが、それがまた彼女によっては愉快痛快と面白い。

 

「――――――……」

 

 彼女はマスターの言葉を話半分に流して再度、屋上から冬木を見下ろした。煌めく人々の営みの光。現代文明の極みとも言える浪費と消耗。建物の輝きと、人々の騒がしさと、響き渡る人工的な音楽が、夜から完全に静けさが失っていた。

 

「……人が多いな。

 こんな所で戦争をしようだなんて、魔術師って人種は捩子が全て頭から抜けてるとしか思えない」

 

「まぁ、私もそれは同感ね。文明が進んだ今だと隠蔽作業も一苦労だから。それに、被害の拡大も阻止する事が出来ないでしょうし」

 

 彼女の視力は人外の領域に達しており、遠く何処までも見渡せる。うっすらとなら隣町まで観察し、狙撃するだけなら新都全範囲が射殺圏内。言うなれば、アーチャーが見渡す限り、視界全てに人の営みが満ちていた。何かを失敗してしまえば、あっさりと冬木に住まう誰かが犠牲になるだろう。

 

「―――にしても、屋上で飲む缶コーヒーは良いね。

 冬が近いこの時期、外で飲むなら熱々の飲み物を飲んで体を暖かくするに限る」

 

「別にそれ、特別美味しいって訳じゃないでしょうよ」

 

 凛はアーチャーが持つコーヒーが、一缶100円で売られている安物だと知っている。実際にこれをアーチャーをコンビニで買っているのを見ていたので、何故そこまで美味そうに飲めるのかが不思議だった。

 

「だからこそ良い味なんだ。そこまで美味くなく不味くもない安物だから、良い味になってくれる」

 

 缶コーヒーは美味い。特別に煎った上質なモノはそれでそれで味わい深いが、安物にあるチープさがまたアーチャーにとっては“良い味”に感じた。飲み物として美味しいのではなく、コーヒーとして風味がある訳でもなく、ただその安物の缶コーヒーを飲む事そのものが娯楽になった。それはもう片手に持つ安い日本の何処にでも見つかる惣菜パンにも同じ事が言えた。

 

「ふ~ん、成る程ね。でも私なら、コーヒーよりも紅茶派かしら。出来れば、入れたてで熱々の香り高い逸品が一番美味しいわ」

 

 コーヒーと紅茶。遠坂の一族としてどちらが優雅と言えば紅茶だ。親の代から遠坂家は紅茶を好んで飲んでいる。

 

「マスターにゃ、この安っぽさは好ましくないか。実に残念」

 

「……あんたは私以上に図太いわ。うん、何だか少しだけ優越感を感じる」

 

「おいおい。今の台詞、本音だっただろ?」

 

「あら、わかるの。流石は私のサーヴァントね」

 

「つれないねぇ、本当。そんなんだから男に逃げられるんじゃないの?」

 

 笑顔が冷たく固まった。遠坂凛から絶対零度の殺意が漏れ始める。それもこの辺りにサーヴァントか、あるいは感覚の鋭いマスターが居れば一瞬で気が付いてしまう程の殺気であった。とは言え、今はそれこそが目的なので別に見つかっても構わないのだが。

 

「ふふふ―――次にそれ言ったら殺すからね、令呪使って」

 

「はいよ。サーヴァントとして気を付けます」

 

 似通った性格の為か、彼女達二人の会話はとんとん拍子で進んで行った。

 既に人数が揃い始めた英霊を連れ、マスターに選ばれた魔術師たちが冬木に集う。しかし。今はまだ英霊も魔術師も全員が揃っていない。故にまだ突発的な戦闘も無い。挑発的な行動を取ろうとも、戦闘を始めてくる組も出て来ていない。だが、それも時間の問題だろう。彼女と彼女の相棒は既に敵の気配を冬木の中から感じ取っており、後は淡々と戦争が本格的に始まる前に陣地を見付けだし、必要な戦略を練る準備を始めた。

 平穏な冬木も恐らくは、今日か明日が最後。

 遠坂凛はサーヴァントを連れて戦争が始まる街を見た。安寧からは程遠い気持ちで故郷を見守っていた。殺し合いに勝ち抜く覚悟を決め、誰であろうと敵を倒す戦意を抱き、彼女は新たな相棒を傍らに闇夜に消えて行った。

 

 

◇◇◇

 

 

 バゼット・フラガ・マクレミッツにとって、今回の第六次聖杯戦争は天啓にも等しい闘争であった。

 もはや、技という技を鍛え上げ、完成された業をさらに極めた戦闘技術は、数多の魔術師が在籍している魔術協会において最強の一つとして君臨している。それは外部の組織でさえ執行者と言えばフラガの名が最初に浮かぶ程、人間でありながら死徒にも並ぶ脅威として畏れられていた。

 ―――その証明として、嘗て地獄の惨劇であるアルズベリ事変での活躍も大いに影響していた。

 白翼公が画策した死徒二十七祖第二位の蘇生儀式。いや、蘇生と言うよりも再誕か。兎も角、トラフィム・オーテンロッゼによって勃発した戦争は惨劇を引き起こす。

 ……後はもう地獄だった。

 三つ巴になった互いの陣営を殲滅し合う。さらにフリーランスの者達も介入しているので、さらに場は混沌と化していく

 黒翼の鴉が落ち、白翼の王は没し、悪魔遣いも朽ちた。

 時の騎士は死神よって遂に滅ぶ事を許され、屍の船を率いる騎士も戦火の中で息絶えた。

 特に犬殺しを達成した災厄の神父もいたが、あれは例外の中の例外と言える。人間の身でありながらも星の触覚であり、さらに人類に対する殺害権利を持つ白い獣を殺すなど、規格外を越えた異端の司祭。二十七祖殺しを達成した人間は幾人かいるが、彼らは総じてヒトの理が狂っている。彼女も二十七祖殺しに協力をした魔術師であるので、それがどれ程の所業なのか理解していた。

 そして、最前線で戦い抜いて生き残ったフラガは、執行者として最強になる。何故ならば、もはや封印指定執行者の数少ない生き残りが彼女でもあるからだ。その身と鍛えた業を以って、魔術協会に自分の有能性を完膚なきまでに証明し尽くした。

 

「ランサーのサーヴァント―――クー・フーリン、召喚に応じて参上した。

 ……んで、魔術師。

 あんたが俺のマスターかい?」

 

 再び訪れた極東の土地。魔力を丁寧に込めて魔法陣を描き、サーヴァント召喚用の呪文を詠唱し、彼女は触媒よりこの度の戦争の相棒となる英霊を召喚した。

 ―――その晩、彼女は新しい相棒に出会った。

 ただ、契約が成された英霊は彼女が想像していた人物とは違った。真っ黒な法衣を着ている訳でも無く、生真面目さと皮肉さが合わさった口調でも無い。用意した触媒として考えれば正しい人物が呼ばれたのかもしれないが、前回は準備したこの触媒で彼が召喚されてしまった。しかし、今回はどうやら正常に魔法陣が機能したのかもしれなかった。

 

「………………―――」

 

「―――ん? どうした?」

 

「……あぁ、いえ。すみません。少々貴方に抱いていた私のイメージと違いまして」

 

「なんだ。もっと行儀がいい方が好みだったんか?」

 

 粗野と言うよりも野生的な印象が強い男であった。蒼い軽装の鎧に、何よりも目を引くのは赤い槍。軽快なノリで語られる言葉は、此方の警戒心を簡単に解いてしまう程力強い。

 

「―――まさか。

 その方が今の貴方らしい。実際に会ってみて、こうも分かり易いと逆に良い感じですね」

 

 失礼だったかもしれない。彼にもう一度会えるかも知れないと期待はしていたが、あの召喚は偶然が引き合わせただけの契約だったのだ。あの男は知っているのかもしれないが、自分は何故前回であの神父が呼べたのか知り得ていない。

 だから、気持ちを初期化した。感情をリセットする。バゼットはあっさりと自分の中に溜まっていた澱を捨て去った。

 

「……――――」

 

 自分のマスターはどうやら、ただの魔術師でも無いらしい。それもかなり特上なクラスの女でもあるのだと分かった。此方を見る笑顔は歴戦を貫いた猛者であるにも関わらず、女性らしい美しさが欠片も失われていない。格好は少々あれだが、中身と見た目の両方が上物とは、女運が最悪だった自分にしては実についている。

 

「―――は! どうやら今回、俺は女運の風向きが良いみたいだ」

 

 ランサーは一目でバゼットの技量を見切っていた。立ち振る舞い、呼吸方法、視線に気配。それら全てが余りにも力強い。

 ―――何より、とても良い女だ。

 それこそ自分が生きていた時代で出会っていれば、色々と一悶着が起きていたと確信出来るまで。

 

「そうですか。貴方の目に適うのであれば、それこそ赤枝の騎士の誉れです」

 

「―――俺の勘が外れて無けりゃ、アンタは最高のマスターさ」

 

「安心して下さい―――隙さえ見出せば、敵がサーヴァントであろうとも私が仕留めて見せましょう」

 

 壮絶な笑みであった。マスターとは思えない重みのある宣言だった。それには唯の魔術師では成し得ない言葉を、現実として本物にしてしまう程の実感が込められていた。

 

「……いいねぇ。

 こりゃあ、今回はたんまりと楽しめそうだ」

 

 素晴しい。何が良いって強い女は大好きだ。ランサーにとって、この手合いと契約出来たのは幸先がかなり好ましい。実際のところ、自分さえ殺害可能ではないかと言う戦士としての勘が、マスターである魔術師から感じ取れていた。そう思えてしまう程、この女は強いのだろう。

 

「それでは早速で悪いのですが、簡単な戦略を決めましょうか」

 

「ほう、実に気が早い。……マスターよ、敵の目星はついてんのかい?」

 

「ある程度は。まだ半分以下ですが、それなりの参加者は把握出来ています」

 

「―――結構。敵が分かってんなら話は早い。俺とアンタの能力を想定して、順番と戦法と対策位は考えておくか」

 

「まずはその様なところまでですね。

 ……まぁ、実際に取れる本格的な戦略はある程度、敵を知り得てからにしましょう。初戦で殺せてしまうのであれば、遠慮無く初めから仕留めまえばいい」

 

 新たなコンビが、こうして誕生した。七騎の内で余っているサーヴァントの枠は後三つ、ライダー、アサシン、バーサーカー。そして、今回は呼ばれるかどうか不明なイレギュラークラス、アヴェンジャーのサーヴァント。

 まだ早い。戦争にはまだ早いが、着々と殺し合いの開始は歩み寄っていた。




 アインツベルン勢は完全にオリキャラです。第四次も第五次もアインツベルンは四人組でしたので、この作品も四人組で聖杯戦争に参加させてみました。マスターとメイドとサーヴァントと、喋る剣です。
 後は士郎とセイバー、凛とアーチャー、バゼットとランサーです。
 そして、実際に戦争が始まるのは次々回ですかね。次の回に他のグループの紹介をしたら、本格的な開始をしていこうと計画しています。

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