神父と聖杯戦争   作:サイトー

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 お久しぶりです。更新が遅くなりました。リアルでの面倒事を無事完了させましたので、執筆を再開させていきたいです。
 後、余り関係無いのですが、らんま1/2のヒロインの中だとシャンプーが一番好きなのです。皆様はどうでしょうか?


49.パラディン

 ライダーのマスターは、顔面に亀裂が入ったと錯覚する笑みを浮かべた。

 ―――彼は始めると言った。

 何を始めるのかは、既に笑顔が全てを物語っている。そんな自分を召喚したマスターを見て、ライダーは心底面白い物を見た様に、笑みを浮かべた。そして、敵の異様さに楽しみを感じた。

 自分のマスター、デメトリオ・メランドリは強力な剣士だ。

 特にあの魔眼の異端さは、英霊たる己からしても気味が悪くなる。

 キャスターが纏っていた物理保護と魔術保護をあっさり無力化する魔眼を考えるに、この騎士はサーヴァントに匹敵する神秘を身に宿していると言う事。また、正確に言えば切れ味でキャスターの保護を切り裂いたのではなく、防御術式の自動察知が作用しない斬撃現象のみなので、実に厭らしい魔眼だった。実体の無い斬撃と言う事象が存在を切除すると言う事は、超能力染みた魔術理論外の現象そのもの故、術式で察知が不可能となる。物理法則からも逸脱した異能となれば、魔術で守る為には防御を常時発動させるか、その斬撃に対する任意のタイミングで使用が魔術師に求められる。

 ―――つまり、存在を直接切り裂く“切除”の魔眼。

 恐るべき能力の多様性に加え、殺傷能力の極まった高さ。更に死徒を簡単に殺す速攻作用。

 推測としてだが、デメトリオはキャスター達に対し、物は試しで魔眼を発動させたのだろう。が、敵が並の魔術師と英霊ならば簡単に勝負は決していた。無論、デメトリオの一人勝ちと言う形で。

 短絡的……いや、どちらかと言えば直感的か。

 この魔眼が通じるかどうかは正直な話、使わなければ分からない。そして、先程の使用タイミングはライダーから見てもベストであったし、まだ全てを使った訳では無い。何より、敵のある程度の強さを計れると言う点では、かなり有能な魔眼でもあった。

 

「白兵戦も行える魔術師の英霊とあらば……成る程、我輩(オレ)も油断は出来ぬようなだ」

 

 ライダーは刹那で武装化を完了させた。動物の皮と毛で作られたシンプルな衣装だが、隠しきれぬ尊大さと威容さに満ちている。王族が着るに相応しい服ではあり、それは戦場で装備する将を血に輝かせる鎧。ゆったりとした民族衣装の下には、身を守る為の装備が成されている事だろう。

 

「そうだろう、キャスター? 攻撃をされる前に避けられるとは、果たして如何なるカラクリによるものか。それも視覚外からの不意打ちにも完璧に反応する。

 ―――ああ、実に興味深い。

 宝具か、はたまた技能か。

 まぁ……どちらであろうとも、攻略させて貰う事は変わりないぞ」

 

 キャスターがデメトリオの魔眼をあっさり見抜いた様に、ライダーもキャスターが持つ能力を見抜きつつある。

 魔術師の英霊の内心にあるのは、称賛と驚愕。

 ギリギリまで引き付けて回避したつもりであったが、ライダーの観察眼の前では無駄であった。

 

「……不自然でしたか。

 それなりに演技は得意な方なのですが……やれやれ、儘為りませんねぇ。狐を逆に化かせる程と自負しているのですが、貴方の方が私より狸のようです」

 

 同時にキャスターもライダーに合わせて武装化を行っていた。此方もライダーと同じくゆったりとした服装であったが、戦闘服と言うよりかはまるで屋敷に住まう貴人。しかし、漂う気配は魔に満ちており、この場の誰よりも鬼気迫る魔力の圧迫感を発していた。

 

「―――ま、出来たら此処で死んで下さい、騎兵殿。

 貴方が生きていると戦場を掻きまわしそうで、どうも結構厄介なサーヴァントなので早々に殺したいのです」

 

 袖の中に両手を入れ、惨酷な言霊で敵を圧して笑みを作る。キャスターはそのまま、腰に下げていた鞘から刀を抜き、構える事無く無防備に武器を片手で握っていた。

 

「それは刀か。西洋の武具では無いな。中華のものにしては、刃の作りが少々鋭い。南の天竺の剣とも違う。いや、全体的に大陸の様相では無い。

 となればだ、作りからしてそれを倭の刀剣と推測し、且つその服装もかなり特徴的で独特な文化模様。ある程度の時代と国を考察すれば……ほう。何だ、お主―――この国の英霊か」

 

 持ち得る知識を合理的に思考し、現状に当て嵌め結論を出す現実主義者(リアリスト)

 

「―――フフ。良いですね、知恵比べは大好きです。

 そう言う貴方はどこぞの民族出の英霊ですね。その類の服装となれば、文化圏は十分に限られますので……成る程。ライダー、貴方は大陸出身の英霊ですか。

 それも、厭味なまで敵を追い詰める性格を考えますと、英霊として持つ傾向も分かってきます」

 

 キャスターを都に住む学者の類とすれば、ライダーは戦場を生きる戦略家。二人とも頭を使うのは得意な方であったが、方向性は両極端。

 ライダーは純粋に敵の装備から出身国を割り出し、真名を絞り上げ、キャスターのクラスに該当する英霊を推理する。逆にキャスターは敵の装備から伝承が伝わる文化圏を特定し、性格や人格からどういう人生を歩んで来た英霊なのか推測する。

 

「ライダー、もう良い。敵を殺せ。(オレ)はマスターとメイドの方を()る」

 

「しくじる事は許さんぞ、デメトリオ」

 

「―――ク……」

 

 騎士は直ぐ様にも斬り殺しに掛りたい。しかし、隣にキャスターも居るとなれば、自分一人で斬り合いに挑んでも囲まれて死ぬだけ。デメトリオは単純にライダーに対し、キャスターをマスターから離す事だけを望んでいた。

 

「……準備は良いか?」

 

「無論。直ぐにでも、あれを蹂躙してくれよう」

 

 瞬間―――斬撃の嵐が暴走する。エルナとメイドからキャスターを分断する為、無造作に乱雑が剣閃が道路に吹き荒れた。同時、ライダーは攻撃を回避したキャスターへ向かい疾走する。マスターはマスターへ、サーヴァントはサーヴァントへと戦場が一瞬で分断された。

 ……剣が降り落ちる。

 騎士が舞う剣戟は魔眼が放つ斬撃の比では無い。つまり、あの程度の不意打ちを打ち払える技量が無くば、そもデメトリオ・メランドリと殺し合う事は不可能であると言う事だ。

 

「……っち―――」

 

 ―――既にエルナの前に騎士が移動を済ませていた。

 ―――真上から綺麗な軌道で奔る刃を、剣を両手で握って防いだ。

 脳天をカチ割る剣閃を彼女は魔剣で受け止めた。刀身五尺以上の巨大な刃は、振るわれずとも存在が異様な程。よって―――エルナが居る場所を中心にコンクリートが蜘蛛の巣の様に罅割れた。舌打ちを思わずしてしまう程、柄から伝わる衝撃で両手が痺れた。

 

「はぁあ――――――!!」

 

 そして、デメトリオが凶悪な一呼吸と共に力を込めた。グァン、と馬鹿げた炸裂音が刀身の接触点と、エルナの足元から鳴った。この抑え込みは聖堂教会に伝わる徹甲作用に酷似した業。この騎士だけが身に修めた鍔迫り合いにおける最強の一手。

 全身が軋んだ。

 背骨が痺れ、筋肉が裂ける。

 一瞬の衝撃で体が麻痺したエルナが停止する。

 故に、その隙を狙って剣が振るわれる。モノを切除する魔眼の発動よりも尚、凄まじく迅い剣戟が彼女を襲った。相手が死んだと思うよりも早く敵を殺害する返し斬りが、エルナの胴体を両断せんと迫る。

 

「―――不覚」

 

 ……首筋から血が流れた。皮を一枚、裂かれたようだ。

 忌々しいと言う感情を隠すことなく、デメトリオは自身の至らなさを呟く。咄嗟の判断で回避したものの、敵が持つ武器の形状と長さ、何よりその敏捷性の高さによって回避が完全に行えなかった。

 

「……速いですね。それも恐ろしく」

 

 ―――それは白い大鎌だった。

 骨のように真っ白な死神の道具。柄も刃も骨で作り上げられた様な悪趣味な威容。刃の先端に僅かな血の痕が付いている。どうやら、鎌を持つ異様なメイドが主の危機を助けたようだ。

 主人を助けた従者、ツェツェーリエが敵を睨みつけていた。

 まるで、飢えた狼の如き苛烈な視線は、煮え滾った殺意と害意に満ち溢れている。

 

「魔眼に加え、教会製の聖剣ですか。成る程……更に剣技の程も十分に、我々を殺し得る鋭さを持つ様です」

 

 しゃらん、と鎌を一回し。ツェリが改めて、敵に武器を構えて相対した。

 

「けれど―――もう終わりです」

 

 メイドが靴で潰された蟻を見る眼で騎士を観察していた。何より、異常は直ぐに現れていた。その事はエルナも分かっていたのか、剣を構えつつも死んだ昆虫の死骸を見守る子供のように様子見に徹している。だが、これで終わるかどうか、見極めている様子でもある。

 

「……―――!」

 

 手が痺れて動かない。胃が暴れて吐き気が凄い。神経が死んでいて脳が巧く働かない。

 気が遠くなるとは正にこの事。

 視界が暗くなり、意識が混濁する。

 それは突然の異常事態であった。戦闘中であれば取り返しがつかぬ痛手。ここまで酷い悪状態と化せば手遅れだ。だが、騎士は慌てる事無く自身に全力で魔術を施した。

 

Dichiarazione(Start)―――Disintossicazione(Life circulation)……」

 

 ―――毒。それも即死効果を持つ致死性の猛毒。

 生物界には様々な毒素があり、一グラム単位で人を死に至らしめる物もある。ならば、それらを煮詰めて錬金術で更なる精製を加えれば、どれ程の毒素が作り上げられるのか。デメトリオが受けた毒とはそう言う、人間が受ければ決して生き長らえぬ類のモノ。僅かな延命さえも許さない。

 

「……ふむ。軽い」

 

 その毒を、彼はあっさりと乗り越えた。魔術刻印で治癒機能を持つ魔術師は勿論、吸血鬼さえ簡単に死滅させる毒素である筈が、顔色一つ変えずに解毒してしまった。

 

「――――――……っ」

 

 ツェリは敵の底知れぬ力に対し、静かに背中を震わせた。自分が錬成した毒素は、そんな簡単に解除出来る代物では無い。魔術だけでは決して癒せず、そも治し切る前に死に絶える凶悪な致死性がある。

 ならば、この騎士は毒に対して耐性がある。魔術を機能する前に毒殺する薬物を解毒する為には、ある程度の毒に対する生身の耐久力が重要だ。故に、この魔術師にとって毒物は、日常的に摂取して毒物に対する抵抗力を高めていると言う事だ。

 

「―――では」

 

 とても短い言葉を合図に、彼は奔った。刹那―――既に騎士は二人の視界から消失する。

 ……空気が凍った。

 エルナとツェリの体感時間が引き延ばされ、極限まで集中した意識の中でのみ、デメトリオの動きは確認されている。しかし、余りにも速過ぎる挙動は、もはや反応出来るか否かと言うレベルの範疇。騎士が持つ聖剣の先は、鎌を構えるメイドの胴体。斜め上から迫る軌道から、避けらぬなら断面から臓器を地面にブチ撒ける事となろう。

 散り煌めく剣戟の花火。

 瞬間、高鳴る刃の音色。

 されど一撃に終わらず、騎士の一閃を鎌の柄で防いだツェツェーリエに向かう。そして、空間を切り裂く横薙ぎが繰り出された……!

 

「―――はっはーー!」

 

 ―――故に、騎士の眼前には巨剣の影が迫っていた。

 しかし、デメトリオはエルナが攻撃してくるだろう事は予測していた。

 違う敵を攻撃する等と言う、ここまで大きい隙を見せる相手の死角を突かない手は無いのだから。よってメイドは、主の動きが分かっていたのか、強引に身を翻して剣戟範囲から去っている。次の瞬間には体勢が整わず斬り殺されてしまう回避行動であったが、逃げる事だけを考えるなら一番迅速な動きだった。何より、エルナの邪魔にもならず、敵を殺し得る最良のコンビネーションである。

 ―――エルナスフィールの魔剣クノッヘンは、掠っただけで人間の血肉が弾ける。

 彼女の凶悪な膂力を考えれば、人間の身など枯れた小枝の如き脆さ。加え、メランドリが瞬時に確認した事が確かで在れば、あの巨大な剣には電撃が込められている。魔術使いの剣士と言う、文字通りの魔剣士である言う訳だ。剣で受け止めれば、刀身を伝わって雷がデメトリオを簡単に焼き焦がす。

 ……回避しかない。

 だが、避ければ体勢が崩れる。

 無理矢理大きく離脱して仕切り直す事は出来ようが、それでは敵を攻め殺せない。ならば―――

 

Dichiarazione(Start)―――」

 

 ―――自身の剣にも魔術を込める。

 どうやら敵の方が魔術の威力が上回れている。神秘に生きる魔術師として無様だが、デメトリオは騎士である。その魔術も所詮は道具の一つであり、自分の道具は使い様によっては化ける物。

 

「―――La chiave di provvidenza(elimination)

 

 瞬間詠唱。それも一工程(ノーカウント)で行われた圧倒的スピード。既に常人では言葉として認識出来ず、意味を成す声とも思わないノタリコン染みた詠唱速度である。雷と化して迫る魔剣に対し、雷速で刃を彼は迎撃した。

 

「なぁ……っ―――」

 

 唐突だが、魔術を禁忌にしている聖堂教会にも、代々とある神秘は継承され続けている。騎士や代行者、あるいは悪魔祓い師が使用する洗礼詠唱が代表とされるその他様々な秘蹟。

 ―――教会には黒鍵と呼ばれる概念武装がある。

 正確に言えば、自然法則を叩き込み、もとの肉体に洗礼しなおして塵に還す摂理の鍵だ。この騎士が持つ人造の聖剣は黒鍵ではないが強力な浄化作用があり―――デメトリオはその秘蹟を行使した。

 

「―――っく、あ……!」

 

 エルナを断たんと凶刃が迫った。紫電は一瞬で洗礼浄化され、敵に伝播する事は無かった。魔剣の剣戟は受け流され、聖剣が魔を殺そうと彼女の命を啜りに掛る。 

 その攻撃を左腕の義手で受け止める。キン、と鳴った直後には既に再度刃を振っている。彼の剣の標的は右後ろから奇襲を仕掛けて来たメイドの鎌。彼は毒鎌を受け流すも、既にエルナは体勢を整えており、魔剣が振り被られた後。それも当然の如く回避され、続く連撃も対処された。

 ―――ここから先は、魔速の世界。

 嵐、嵐、嵐。たった一人の騎士を殺害せんと魔剣と毒鎌が舞うも、デメトリオ・メランドリには届かない。魔剣によって肉が削がれ、毒鎌に皮膚と神経を抉られるも、予め詠唱した魔術で肉体を無理矢理修復して酷使する。もはや、デメトリオがしていることは理性的に狂っていると言える。治癒と言える魔術では無く、直ぐ様戦闘が行えるように簡易的な修理をしているだけだ。

 だが、それはエルナとツェリも同じこと。

 自分達に隙が有ろうが無かろうが、騎士は回避不可能と錯覚してしまう程の鋭い剣戟を無造作に振う。エルナは剣を交える度に臨死を味わっている。連続する惨死の危機が感覚の疲労さえ忘れさせ、血の匂いで気分が昂ぶって来る。何度も何度も敵の剣が体を掠っていき、皮と肉が斬り裂かれるも骨までは何とか届いていない状態。神経は過剰な生態電流で焼きつきそうで、痛覚だけが自分が生きている事を実感させた。

 

「てめぇ……本当に人間か!?」

 

 アインツベルンのホムンクルス。それもその中でも最高傑作であるエルナスフィールの膂力は埒外の領域。並のサーヴァントを撲殺し、其処らの吸血鬼ならば素手で五体を引き千切る事が可能。更に銃弾が放たれてから射線から回避し、音速に対応する敏捷性もある。

 ならば、その人外の身体機能に追随する騎士は何者なのか? それも一対二の不利な状況で在るにも拘らず、此方を殺さんと圧倒的剣舞を見せる。エルナは純粋に敵の技量に慄いた。

 

「――――――……」

 

 主人に反し、従者は鉄面皮のまま。しかし、ある種の欲求に満ちて愉しんでいるエルナスフィールとは違い、ツェツェーリエは殺意を更に煮詰めていた。

 不甲斐無さと憤怒で意識が沸騰し、形を残さず蒸発しそうだ。

 自分が斬り刻まれるのは如何でも良い。今も、此方の攻撃とあちらの攻撃が交差して血肉が宙へ弾けている。白い骨の鎌を振う回転速度を肉体のカタチを維持する事も出来ぬ程、物理的に何処までも高速稼働さているにも関わらず騎士の首を処刑出来ない。だが、それも本質的には如何でも良い。肉が運動の負担で千切れ掛り、骨が自らの急激な動きで砕けそうになっても、構わなかった。其処までして敵を殺せなくても、関係無かった。

 ……しかし、己が主人であるエルナスフィールの負傷は看過出来ぬ。

 戦争で傷付く事も、自分達の戦略上そうなってしまう事も理解していても、ツェツェーリエは主人に凶刃が僅かでも届く度にどうかなりそうだった。

 

「……殺す――――――」

 

 鎌は更に速度を上げた。過ぎ去るモノ全てを切り裂く死神と化し、暴風を凌駕する大嵐となっていた。

 ―――だが、騎士の聖剣は全て斬り落とす。

 デメトリオは愛用する人造の聖剣を以って、彼女らの攻撃を無力化して捌き切っていた。彼は魔剣も毒鎌も魔術も関係無い。

 全て、自身の業で切り捨てられる。

 全て、自身の技に及ばぬ有象無象。

 故に、生き物として自分より性能が高い怪物二人を相手に出来た。  

 

「……Dichiarazione(Start)―――」

 

 英霊に比較しても遜色ない人造人間と、唯の人間が斬り合っている。ただの人間に過ぎない騎士は、千年続く錬金術大家の最高傑作を前に欠片も退かない。

 ―――強い。

 呼吸が強い。

 視線が強い。

 殺意が強い。

 剣気が強い。

 動作が強い。

 全てが強い――――――!

 

「―――Corroborante di corpo intero(Strength)

 

 繰り返される剣戟、乱れ続ける死線の応酬―――それら全てが加速する。騎士の速度は、騎士の膂力は、エルナとツェリの二人を置き去りにし始める。

 だが、そんな事は許しはしない。

 これから始まるのはチキンレースだ。

 エルナに躊躇いは無い。また、ツェリも同じ覚悟を持つ。

 保険は棄てた。死なぬ為に保身は余分。命を賭けて、死力と尽くし、それでも届かぬならば―――今よりも強くなるしか無い。限界を越え、その果てを目指し、進化しろ!

 

「――――――」

 

 聖杯もどきである彼女達二人に呪文は要らない。ただ純粋に思い、凶悪なまで強靭な精神でカタチを成せば良い。

 ―――命尽きそうな臨死状態。

 ―――増加し続ける身体機能。

 一対二の死闘は終わりを迎えず。サーヴァントも介入を躊躇うような戦場(いくさば)が形成された。

 




 今回は余り長くない回となりました。マスター陣営の異常な戦闘能力の表現が難しいですが、チートvsチートは書いて楽しいです。
 ライダーのマスターや、その他のオリキャラのマスター達はその内、何かしらの話で詳しい紹介が出来る様にしていきたいです。

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