神父と聖杯戦争   作:サイトー

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 更新しました。
 個人的な話でありますが、ついに薔薇のマリアが完結してしまった。第一巻から読み始めた身として、とても長い間楽しませて頂きました。私の青春時代から続くラノベも終わってしまい、何だか色々と悲しくもあり、けど主人公達の物語を読めて嬉しくもあり。あ、お勧め完結作品ですので、今ラノベ読むのがないと言う人になら、試しに読んで欲しいです。
 後、ちょっとした意見ですけど、プリズマ☆イリヤの漫画に出てくる王の財宝の武器を見てると、偶にダクソで視た事がある武器を発見します。なんだか面白いなぁ、と感じて武器の絵を一つ一つ見ています。個人的にですけど、竜狩りとか、アストラとか、混沌とか、黒騎士シリーズとか、ツヴァイとか、ちらほらと。勘違いかもしれないですけど。あの作品はとても描き込まれていて、絵も丁寧で読んでて楽しいです。


57.祭壇の銀城

 森から城までの道は死で満ちていた。つまり、此処は地獄であった。際限のない魔物と、悪辣な罠の群れ。

 

「神父、どうした? 余り良い顔色ではないな」

 

 その全ての隙間を縫う様に、黒い神父と暗殺者は城の前まで辿り着いていた。どうやら、自分達は最後の訪問客であるようだ。他の者共は城に突入し、アインツベルン狩りに本腰を入れているらしい。

 

「まぁ、悩み事だよ。監視をしていて偶然だが、俺は自分の本名を知ってしまった」

 

 監視の一つを衛宮士郎とセイバーに使っていた。その時に、彼はどうやら自分の生みの親となる亡霊から、本当の名前を偶然にも聞いてしまった。言峰と言う姓は言峰綺礼から受け貰った家名であり、士人と言う名も彼から与えられた名前。

 だが、今この時に成って、神父は自分の真実の名を再び手に入れた。

 一切の感慨もなければ、何一つ感動もなく、まるで噂話が耳に入るような気軽さで失った過去の一部が戻って来た。

 

「―――そう……なのか。私としては、羨ましい限りであるが」

 

 その亡霊は、衛宮切嗣らしき人物に殺されてしまった。今はもう事実を亡霊から問い質す事は出来ない。しかし、その亡霊を使役していたキャスター相手ならば話はまた違う。 

 

「羨ましいとは、また……いや。そうか、成る程。お前はハサンの一人であったな」

 

「そうだぞ。私に貌は無く、名も無い。本名などと言う贅沢は、暗殺者にとって余分な異物だ。既に生まれた時、呪術で剥奪されておる。

 つまり―――全てが虚偽に過ぎん。

 名と顔を求めて聖杯を欲する身として、自分の願望をあっさりと感慨もなく叶えられるのは―――」

 

「―――殺意が湧く、と?」

 

「……まさか。そこまでは思わん。だが、些か心の底に濁った澱が溜まるのは防げんな」

 

 彼女の真名はハサン・サッバーハ。しかし、ハサンになる前の彼女はハサンでは無い唯一人の個人であり、山の翁になった後は何者でも無くなった。

 

「成る程。それは確かに、穏やかな心持ちではいられないだろうな」

 

 士人は夢で彼女の過去を垣間見ている。アサシンの方も神父の過去を見ているのであろうが、士人は気にせず、アサシンも気にはしていなかった。過去を他人に見られても、何も感じないのだ。

 

「全くだ。私にとっての幸福の原点が、こうも簡単にお前へ転がり込むとは」

 

 元々彼女は呪術師の子であった。士人が見た過去の夢では、そう言う人生であった。しかし、父親が暗殺教団に仕える呪術師であったことが、彼女の人生が最初から狂っていた原因。

 ……母親も呪術師であったが、彼女が生まれた時に死んでいる。悪性の精霊・シャイターンに関する呪詛であり、地獄の悪魔の名を冠する呪術・ザバーニーヤが死因だった。母親は精霊を無理矢理に子宮へ宿らせれ、精霊の呪詛を憑依させた上で、好きでも無かったアサシンの父親の手で胎児を孕まされた。そして―――シャイターンの子宮の中で成長し、ザバーニーヤの呪術で生を受け、母親は彼女を生んで魂をすり減らして死んだ。当然と言えば当然で、アサシンである彼女を妊娠している間、女は常に命と魂を胎内の子に吸われていた。加えて、胎児の時から彼女には意識があり、呪術によって生まれる前から自意識を持たされていた。その時に、母親の人生を記録と言う情報として蓄えていた。彼女は人一人分の記憶を、知識にして取り込んでいた。つまり、母親の生まれ変わりでもあり、魂も半ば混ざっていた。呪術や暗殺の知識もある。自分の所為で母が死んだのだと、生まれた時から知っていた。全てが父親が元凶であると理解していた。その上で自分が望まれた子でない事も、誰にも祝福されずに生を受け、神にも見離された忌み子であるのだと理解していた。

 ……生まれた時から、名前が無かったのだ。

 最初から女は顔もシャイターンの呪詛によって、魂から奪い取られていた。

 その後の人生はただのハサン・サッバーハでしかなかった。生まれながらの呪術師であったが、彼女は鍛錬によって悪魔的な強さを誇る暗殺者となった。呪術師として父親を遥かに凌駕し、暗殺の腕前もハサンの名に相応しいほど極まった。そもそも彼女はシャイターンの呪術を暗殺者に教える教師の役目もあった。最初は兎も角、鍛錬と経験を積んでハサンになり、山の翁を首を斬らた後に蘇生して辞めた後は、呪術師として暗殺者を育成する立場にあった。勿論、暗殺術もより良く教え込んだが、呪術方面に偏っていたのは事実。

 女は唯の暗殺者ではない。初代の時代から暗殺の為の呪術を開発していた化け物。ハサンとして堕落した故に断罪されたが、それは人間としての命を殺されただけ。生前は翁の地位を譲った後は命が尽きるまで屍の化け物として生き、サーヴァントとして召喚された今の状態を遥かに超える不死の怪物だった。教団の暗殺者や数多のハサンに“呪術(ザバーニーヤ)”の極意を伝授し、宝具に並ぶ程の神秘を暗殺者達に植え付けた張本人なのだ。気に入った者には、自分の暗殺術を独自に教えた事もある。実に沢山の“アサシン”に様々な呪術や暗殺術を教授した。ハサンで無くなった後も、彼女は呪術に人生を捧げた暗殺者に過ぎなかった。以降は元ハサンとして、ハサンの名も捨て、名無しの暗殺者として、一人の呪術師として、生まれた暗殺教団に仕えた。

 そして……全て滅んだ。

 自分以外のハサン・ザッハーサは死に絶え、あの初代が創り上げた教団は消えて無くなった。教団の暗殺者は人を殺す必要を失った。アサシンでなくなった父親も、何もかも無くなりアサシンを終えた自分が最期に殺してやった。

 その時―――彼女は気が付いた。

 自分には何も無い。暗殺者として生まれたのに、暗殺者で無くなる前に死ねなかった。自分が生きている内に、仕えた教団が消えてしまった。

 

「ああ―――そうだとも。名が無いんだ、私には。貴様と違って、仮初の名さえ無い。ハサンなんてもの、所詮は役目に過ぎなかった。ただの暗殺者でしかない記号の一つだ。

 ―――どんなに他人から奪い取っても、自分は自分になれはしない。

 顔も名も、この声も腕も胴も脚も髪も全部、全て、何もかもが……奪い取って移した偽物だ」

 

 今まで気が付きもしなかった。暗殺者で在った日々の中では疑問にも感じなかった。呪術を愉しんでいた時には、思考する事さえ有り得なかった。最初に自分が本当に唯の『暗殺者』でしかないと実感したのは、そう絶望した瞬間は、名も忘れた父親を殺した時。あの男を暗殺した時、殺そうと決意したのと同時に心臓を無意識に抉っていた時、彼女は自分の全てに絶望した。

 無名無貌の暗殺者の致命的な間違い。それは暗殺教団の為に生まれたのに、教団が滅ぶ前に死ねなかった。

 ―――そこから先の人生は、自問の日々。

 呪術による延命処置を止めて、日々の鍛錬を止めて、人を殺す事を止めて、暗殺者で在る事を辞めた。それなのに―――彼女は人間にはなれなかった。生まれた時から暗殺者であり、暗殺者でなくなって、本当に何者でもなくなって……死んだ。彼女は寿命を迎え、まるで普通の人間みたいに人生を全うしてしまった。

 

「だがな、死んで気が付けたぞ。死ぬ前は自問を繰り返すだけの人形であったが、最期の瞬間に分かった事がある。

 ……求めれば良いのだ。

 名も貌も無いのであらば―――自分の手で得れば良い」

 

 寿命を迎えた時に、女は理解出来た。欲している物と、その手段が分かった。それだけで答えに満足して死ねたが、有り得ない事が起こった。

 

「その好機が、今なのだな。故にお前は、そんなにも楽しそうに殺害するのか?」

 

「そうだ、神父。この鍛えに究めた業を、自分の為に振えるのが喜ばしい。聖杯戦争に参加する事そのものが、私はどうしようも無く―――嬉しくて堪らないのだ。この瞬間だけ、自分を実感出来る。自分が如何なる者か理解出来る。

 ―――呪術で他人を殺すのが楽しい。

 ―――標的を暗殺する時が待ち遠しい。

 ―――血が吹き出るのを長く見ていたい。

 ……やっと得られる。

 私は嘗てのハサン・ザッハーサに戻り、名と貌を過去から奪い取るのだ」

 

 彼女はハサンである事に後悔はない。ただ自分が自分でなかった事に絶望しただけ。その喪失を埋めるために、聖杯によって名と貌を得たハサンとして、再びこの世に生を得る。

 

「ああ、成る程。確かにお前は、私に相応しいサーヴァントだ。聖杯はお前を尊び、欲する願いを与えてくれるだろう」

 

「当然だ。故に神父よ、私に失望だけはさせるな」

 

 ハサンを肯定する自分と否定する自己。矛盾した自我が、苦痛を苦痛と感じさせずに傷を深くさせた。本当の名と顔を得れば、無貌無名のハサン・サッバーハでは在り得ないのに、それでもアサシンはハサンで在りながら聖杯を求める。

 その業こそが、神父にとって最高の娯楽。

 アサシンは呪術師であり、暗殺者であり、今はハサンの一人だ。そんな彼女の足掻きを愉しんでいるのだから。

 

「まぁ、期待しておけ」

 

 笑みを浮かべた。神父は月明かりの下、静かに声もなく透明な笑顔を作った。

 

 

◇◇◇

 

 

「―――で、士郎。あんたは士人を……あのバカ弟子を、そのまま見逃したって訳?」

 

「すまない、凛。君が心配だったのもあるが、今はキャスター討伐が優先だ。あの男を後回しにするのは恐ろしいが、アインツベルンの方をまず対処したい」

 

「すみません、凛。私としても、あの者と関わるのは避けたいと考えています」

 

 らしくないセイバーの台詞だった。それを聞いたアーチャーが美貌に似あった男前な笑みを浮かべ、挑発的な視線を向けた。

 

「へぇ、騎士王様に似合わない弱気じゃない?」

 

「貴女はあの神父の事を知らないから、そんな事が言えるのです。アーチャー、あの手合いに対して人間や英霊などと甘く見ていますと、あっさり死にますよ」

 

「嫌だなぁ、知ってるさ。あの男の外道っぷりは、ちゃんと分かってる。けど、まぁ……今は兎も角、アインツベルンに集中しましょ」

 

 この場所は既にアインツベルン城敷地内。城は窓一つなく、隙の無い完全な“壁”で形が成されていた。実用一辺倒な城塞で、見た目は大きな匣。そんな大箱を要塞化しあた工房の、正確に言えば不自然に開けられていた城門区域に四人は佇んでいた。

 ……そして、門を潜り抜けた先は異界だった。

 進んだ先の城の中は捻られている。空間が歪んで破れ、壊れて崩れている。扉が不自然に乱立し、そもそも床に接しておらず、中途半端に高い位置の壁や、重力に逆らって天井に何故か机や椅子がある。

 

「―――マスター。ここ、固有結界に近いぞ」

 

「固有……結界―――?」

 

 アーチャーが最初にからくりに気が付いた。キャスターの工房要塞は既存の物理法則を越え、世界の摂理を歪曲させていた。空間の繋がりも、物体の存在の仕方も、全て外側とは異なっている。

 

「まぁ、それに限りなく近い大魔術って感じかな。何と言えば良いか……うん。簡単に例えるなら、魔力で空間を構築してるのかねぇ。異界法則で世界を侵食して塗り潰しているんじゃなく、世界に術式を精密に刻み込んで、異界法則を―――捏造してやがる」

 

「……悪魔か?」

 

 ふ、とそれを聞いた士郎が疑問を呟く。セイバーは魔術にそこまで詳しくはないが、彼が言いたい事は理解している。

 そもそも、死徒の能力としての知られている固有結界だが、元々は悪魔や妖精が持つ固有の能力だ。心象風景を具現化し、世界を侵食して自分の世界を創造する。彼女は生前に妖精とは関わりがあり、アヴァロンの鞘も妖精に関する宝具。死後は妖精郷に送られた伝承を持つ。それにマーリンからの教えもある。

 そんな経歴から、相手の異常性をこれでもかとセイバーは理解出来ており、それは他の三人も同様であった。

 

「どっちかって言うと、妖精の方に近いんじゃないか?」

 

「妖精……ですか」

 

「そうだよ、セイバー。そこんところは何となく分かるだろ?」

 

「ええ、まぁ。雰囲気だけではありますが、現世から隔離されたような違和感があります。それに、ここは悪魔が支配しているような邪悪な気配はない。敵意や殺意に溢れてますが、世界の造り手に怪物特有の邪悪さは感じられません」

 

「そうかしら? 性格は凄く悪いと思うけどね?」

 

 簡単な術式で結界内を検査していた凛は、セイバーの話に入り込んだ。彼女としても、確かに悪魔やらと言った魔物が創り上げたと考えてはいないが、人間として人格が修復不可能なほど歪んでいるとは考えていた。

 魔術師と言う視点から見ても、此処の結界は性質が悪いのだ。百戦錬磨の魔術師と英霊であっても、このキャスターの城は脅威に値する。皆にとってどの部分が怖いのかと言えば、どんな罠や術が仕掛けられているのか、予知も予測も出来ない摩訶不思議さにあった。

 何時、何処で、何が死因になるのか分からない。こんな出鱈目で奇抜なものを誰も過去に経験した事がなかた。

 

「ええ、確かに、私もそれには同意します。あのキャスターは最悪です」

 

「―――そんなに言う程でも無いと思うんですけどねぇ、実際。いやはや、ここまで嫌われてしまいましたか」

 

 空気が一瞬で破壊された。誰も動こうともしていなかった。そも、ここは敵の陣地であり、今の様な状況を誰もが予測していた。

 キャスターは、構えることも戦意を向けることもない。自然体のまま、彼は平然な態度で四人の前に唐突に出現した。

 

「おや。なにか気に触る事でも私、してしまいましたか?」

 

「―――……貴様」

 

 確実に此方側を侮っている。なめきっている。キャスターに敵意はないが、同時に敵を警戒する気配もないのだ。

 セイバーにとって、それは何よりも許し難い。自分のマスターをあれ程まで卑劣な策で追い詰めた末に、今はもう気にする事無く、何でも無いように現れる。戦場を荒らすだけ荒らし、敵を追い詰める事にだけ執心する。

 

「其処に直れ、などと悠長な事はもはや言わない。だが、我が剣から逃げられるとは思うな」

 

「ブリテンの騎士王様は言う事が違いますねぇ。まぁ……それを言うのでしたら―――私の城から生きて出られるとは思うわない事です」

 

 キャスターが作り上げた城は、正確に言えば固有結界ではない。それに限りなく近い大魔術。強いて言うのであれば、鬼種が住んでいた鬼が島か、あるいは玉手箱で有名な竜宮城。しかし、それらとは違って世界を侵食せず、世界の上から一個づつ異界法則を構築している。

 アーチャーの推測通りであり、ここはまた固有結界とは別種の異界法則で支配される魔術理論・世界卵の内側となる。キャスターが参考にした大元を考えれば、真性悪魔とは逆の、妖精種の方の固有結界創造に近かった。

 

「ほざけ、安倍晴明(あべのせいめい)。貴様は少々はしゃぎ過ぎだ」

 

 ぎりぎり、と透明な剣の柄を握るのに力が入った。キャスターは相手を小馬鹿にするのが好きな小悪党の真似をする極悪人で、加えて世の中を深く知り理解する賢者でもあった。セイバーの印象としてはそれが近い。他人の裏をかくのが異常なまで巧いのだ。

 

「はっはっは! 死した後の二度は無い余興ですよ。今をはしゃいで楽しまず、何時我々が悦を得られると言うのですか? もしかして、あの何も無い座ですか? あの何の面白味がない廃棄場で、一体何をすればいいでしょうか?

 ―――有り得ません。

 こんな最高な舞台で、全身全霊を出せる機会なんて今しかない訳です。

 ……まぁ、そんな訳ですよ。だからこそ、ほら、この城も手を抜かず渾身の出来栄えを得られるのです」

 

 確かに、小悪党な策略もキャスターらしいのかもしれない。しかし、それは側面にしか過ぎない。キャスターはただ単純に、戦争を攻略する為ならば最善の策謀で敵を討つ覚悟があるだけ。無関係な人間を巻き込み、他者を生贄にしない道徳観念を持つ一方で、彼は敵を倒す為なら外道に落ちないが非道に徹する思いがあった。

 ……それに根本的な部分で、キャスターは敵を倒すのが楽しかった。

 若い頃から陰陽師であったが、その役目は退魔だ。彼は退魔師でもあるのだ。その為にすべき事であるのであれば、奇襲、挟撃、人質、闇討ち、騙し討ち、精神攻撃、何でもござれだ。彼は自身が持ち得るモノ全てで、この戦争を生き残る闘志があった。

 

「―――空間転移か。ホント、キャスターらしい魔術師の魔技だね。日本最強の陰陽師は伊達じゃないってこと」

 

 唐突に現れたキャスターに対し、アーチャーに変化は何も無かった。凛は胡乱気に睨みつけているだけだが、逆に士郎は無言のまま隙を窺い続けている。殺せる機会があれば、躊躇わず消去するつもりだが、恐らくこれも先程と同じ偽物の分身だろうと考えていた。

 

「……うーむ。分からないんですよねぇ、貴女。何処出身の伝承の者で、どんな偉業を成した何者なのか、この私でも見抜けない。しかし、貴方は逆に私の事を直ぐに見抜けた雰囲気です。

 安倍晴明って真名はバレているようですけど、その警戒の仕方。もしかして―――知ってますか?」

 

「ハハ。怖いなぁ、ホント。未来が見える男に隠し事は出来ないか……」

 

「成る程。私の千里眼もバレてしまっているのですか」

 

 キャスターは陰陽術でアーチャーを殺そうと思考し、実行する寸前まで構えていた。しかし、その度に―――彼は自分が敵の迎撃を受けるのを幻視していた。

 強力な未来視によって、先の展開を予め知ることによって、キャスターは相手の攻撃を簡単に見切っている。全ての敵に対して、対峙した瞬間から先手を取る事が出来た。ありとあらゆる攻撃に対し、後手に回りながらも最善の手で迎撃可能な上、その攻撃を次の手に利用する。つまり―――この男には先手も後手も意味はなく、奇襲も戦術も効果が無い。敵がどんな事を考えて自分を殺そうとしているのかも、未来視によって殆んど暴いてしまうのだ。

 

「無駄ですよ、ムダムダ。サーヴァントらしくスキルで言うのでしたら、直感も心眼も私に意味はないですよ。それによる動作、思考、感覚、全部が丸見え。次の手も、その次の手も、そのまた次も……延々と幾つもの手段が見えるんです。

 ―――ほら。だから今言ったでしょ、アーチャー。

 首を斬ろうとしながらも、私を誘導し、セイバーの直感を頼りにこの身を殺そうとしている……まぁ、無駄ですけど。

 未来を越えなければ私は殺せませんし、そもそも今のこの身はただの式神ですしね」

 

 スキル・千里眼。キャスターが今まで敵の動きを簡単に見切っていた正体が、その能力。

 

「あっそう」

 

 アーチャーが吐き捨てるように呟く。敵は此方を殺せるが、此方は敵を殺せない。攻撃が通じない訳ではないが、殺しても無駄になる。

 なんてインチキなのかと、凛は取り敢えずイラっとした。結構イラついたので式神にガンドを撃っておいた。勿論、一工程で詠唱した呪い程度が分身の式神とは言え、このキャスターに通じる道理はない。

 

「……魔力の無駄ね。あんた、さっさと何処にいるか吐きなさい」

 

「此処に居ますよ、この城に。そんな事も分からないんですかねぇ?」

 

「ふふふ―――ブチ殺すわ。本気でムカついてきたわね」

 

 凄く良い笑顔でキャスターは煽りに煽る。相手を逆撫でし、怒りを誘発させる。自分もそうだから分かるが、特にプライドの高い魔術師に有効な、低俗なからかいであった。逆にセイバーのような騎士を相手にこれをすると、怒りよりもまず殺意を抱かれ、冷静になるとは違うが冷徹になる可能性がある。同じプライドが高い者でも、武闘派と研究屋では与える印象が中々ずれるのだ。

 

「良いですねぇ。雰囲気も暖まってきました―――ですので、ここからは宴会といきましょう」

 

 パチン、と指を鳴らした次の瞬間にはキャスターは消えていた。消えると同時に閃光を離し、視界を白く塗り潰した。音も大きく、耐性がなければ鼓膜が破れていた程。もっとも、この場にいる四人は危機を察して耳を瞬時に塞ぎ、第六感を研ぎ澄ませながらも視線を光源から外していた。

 

「……扉が閉まっている。閉じ込められたわね」

 

「ま、そんな事は予測済みでしょ。魔術師の工房として考えればさ、まだまだ生易しいぜ」

 

「アーチャー、君はどう考えている。あの男の能力に詳しいみたいだが?」

 

 士郎にとってアーチャーの博識さは看過出来なかった。確かに候補して真名は凛とアーチャーに教えていたものの、千里眼を考察出来る情報は与えていない。伝承を考えれば、あの安倍晴明に千里眼のスキルがある事に疑問もなければ、予想も簡単に出来たとはいえ、未来視まで可能な性能があるとは分からない。

 士郎もキャスターのスキルと宝具も段々と透けて見えて来たが、まだ程度は見えない。種別は予測出来なくもないが、どの位の強さかは見なくては分からないだろう。

 

「あぁ、そうか。アンタが疑問に感じるのも理解できるけどさ、実際特に理由はないよ。何となく、そう思っただけ。けれど、どう考えているのかは教えておくよ」

 

「……ほぉ?」

 

 彼女の言葉は何処か胡散臭い。士郎は相手に嘘はついていないと感じたが、全てを話してはいないと察した。理由はないとアーチャーは喋っているが、それも果たして信用出来るかどうか分かったものではない。

 

「―――今を逃せばキャスターの一人勝ちになる。

 アタシはそう考えているんだ。あのサーヴァントは危険である以前に、英霊にとって史上最悪の天敵になる怪物だ。

 多分、条件さえ整えれば、あっさりと神霊さえ手玉にとるぞ」

 

 セイバーには信じられなかった。神霊さえも、と言うことは英霊を倒すのも苦労しない強者となる。確かにキャスターは狂った技量を持つ魔術師の英霊であったが、そこまで突き抜けた怪物には感じなかった。あの英雄王ギルガメッシュのような絶対性も、大英雄ヘラクレスのような圧倒的性能差も無い。

 

「―――……まさか。神霊まで相手に可能な英霊だとでも、アレがそうとでも言うのですか?」

 

 会話をしながらも、四人は部屋からの抜け道を探していた。いざとなれば聖剣でも使って破壊すれば良いが、あのキャスターが対策していない訳がない。それに士郎は感覚的ではあるが、部屋の壁を境界にして空間が遮断されているのではないかと考察していた。そうであれば、この部屋の突破は強硬策に賭けるしかない。

 

「大昔の日本では鬼種って生き物はね、日常的に人間の生活を脅かしていた。それを陰陽師は日常的に退治していた。

 あの男は魔術師……まぁ、日本だと陰陽師だね。本物の彼らはその鬼を、自身の技だけで撃退していたんだ。サーヴァントに匹敵する魔である鬼や、様々な魔物を相手に単身で挑んでいた。人の身で人を超越する化け物を、日常的に狩って生活していたんだ。

 そんな怪物的集団の中で、更なる化け物になるのが―――安倍晴明(あべのせいめい)

 魔術師みたいに研究好きな奴らだけど、(みやこ)(みかど)に仕えてた者の役目は魔からの護国。特にキャスターみたいな朝廷で生活していたのは、歴史に残る多くの伝承を誇っている」

 

「しかし、それは英霊にとって当然の事では無いですか?

 魔物退治しかり、竜殺ししかり、巨人殺ししかり、様々な英霊達は多種多様な伝承を持っています。戦乱による活躍や、後世に残る数々のエピソードもあります」

 

 そんな伝承の中には、神殺しを行った英霊もいる。宝具の相性によっては、英霊の座に神霊を殺せる者もいるのは当然―――とは言え、それは珍しい事例。

 

「いやぁ、そう言うんじゃないんだ。サーヴァントみたいな霊的存在って時点で、あのキャスターは現世でだと結構なアドバンテージがあるんさ。

 そもそも、元々がお化け退治がうまい連中で、死人で在る時点で危ないんだよね」

 

「一体、それはどういう――――……!?」

 

 瞬間、異変が起きた。部屋の扉が開き、冷たく黒い空気が流れ込む。四人が毒かと警戒したが、そうでは無かった。この禍々しい風は毒の霧ではなく、呪詛に満ちた魔力の奔流に過ぎなかった。

 

「……やっば。これは凄くヤバい、地獄かよ。まさか、ここは―――」

 

 まだ密室空間に致死の猛毒を流し込まれた方が、これよりもまだマシ。アーチャーはありとあらゆる魔術師の工房への対策を練っていたが、ここまで狂っているとは考えてもいなかった。

 

「―――サーヴァントの情報を、英霊の座を模してるのか……!」

 

 空間の歪みから、良くない何かが出現した。黒い呪詛の如き魔力を纏いながら、明らかに危険な存在感を発する極上の魔物。

 ―――騎士だった。

 巨躯の戦士が幾人も存在し、身長は目視で2mを軽く超える。

 一体目は右手に巨大な直剣と左手に丸みのある大盾を持ち、二体目はまるで杭の如き剣を刃にしたような長槍を両手で掲げ、三体目は左右に双刃が付いた大弓を構えている。

 三体とも似た西洋の大鎧を着込み、それぞれの得物で武装していた。

 剣の騎士は鈍い白銀色の鎧で、まるでバケツみたいな兜を被り、視線を保つ為の隙間から赤い眼光を光らせる。槍の騎士は逆に黒鎧を着ており、蛇を模した様な兜から低い唸り声が漏れ出ている。弓の騎士は赤黒い死神にそっくりな全身鎧を身に纏い、冷酷な殺気を辺りに撒き散らす。

 

「……英霊、ではないな。鎧の中身はホムンクルス、いや……まさか―――人造の鬼?」

 

 投影した双剣を構え、士郎は冷静に判断を下す。わざわざ口にして言葉にしているのは、三人にも今の状況を分からせる為。

 

「あれと同じく英霊の式神ですか? シロウ」

 

「そのようだ。だが、これは先程とは少し造りが違うぞ」

 

「え、なに? どういうことよ、それ?」

 

「断定は出来んが、恐らくは―――鬼種の人造人間。それに英霊の情報を式神で憑依させている」

 

「はぁ!? なにそれ、反則もいいところじゃない!!」

 

 解析魔術によって、士郎は物体の構成程度ならば生物でも情報を読み取れる。刀剣や武器のように詳細は理解出来ぬも、大凡の形くらいは何となくわかるのだ。それで鎧の中身を見た所、人型の生き物だと言うのは分かった。気配は鬼種とは違うホムンクルスのもの。それだけなら、中身はアインツベルン製のホムンクルスだと予測するのは簡単だが、中身の者はさっきまで戦っていた鬼の如き人外の体躯。加えて、僅かであるものの、聖杯戦争のマスターに与えられるサーヴァントの能力に対する透視が働いていた。

 一目でそれらを見抜く士郎の眼力は、恐ろしい領域まで高められていた。そして、その情報を共有する他の三人もまた得られた情報から、今の状況が如何に危険か一瞬で察せられた。

 

「おいおい、マスター。集中してくれ、そろそろアイツら来るぜ」

 

「だー、分かってるーつーの! これでも全身全霊よ!?」

 

「凛。こんな時くらい、もっと余裕を持って優雅になってくれ。昔みたいに、とんでもないうっかりをしそうで怖いのだが?」

 

「うっさいわね、バカ士郎! わたしだって―――」

 

「―――来ます!」

 

 切込みはまず、剣士から。槍兵は重力を無視した動きで壁を蹴り走り、弓兵は飛び上がった一瞬で逆さまになって天上に降り立つ。

 もはや、それは―――ただの暴風であった。剣圧の嵐であった。

 魔力を宿した鬼兵が放つ剣は、既に斬撃そのものが魔力を纏っていた。蒼暗い黒光が照らし輝き、本来ならば見ること有り得ない剣圧を視覚化させた上、距離が離れた目標に刃を届かせた。

 それをセイバーは一振りで、上段から繰り出す渾身の一撃で粉砕。粉塵が舞いあがり、ある程度の広さがあるとは言え、英霊や魔物が殺し合うには狭い大部屋には土煙が充満し―――それを突き破るように剣の鬼兵が盾を前に出して突撃した!

 

「はぁ……っ―――!!」

 

 盾を押出すシールドバッシュ。セイバーと鬼兵の身長差と、筋力を考えれば鉄壁の城塞がそのまま迫って来たのと同じ。盾の衝撃を両手で構えた剣で抑え込むも、鬼兵の盾が刃を絡め取り、外側に弾くように受け流し―――直後、セイバーの眼前には大剣の刺突が迫っていた。

 死地を前にセイバーは、脳裏に痺れる直感に従う。鬼兵の大剣は喉元すれすれを通過。だが、紙一重で身を捻って刃を避けたと同時に、天井に立つ弓兵が砲台と変わらぬ大弓でセイバーを狙い、矢を絶妙なタイミングで放っていた。

 刹那―――バン、と響き渡る薬莢の炸裂音。

 セイバーを真上から串刺しに射ろうとする太矢を、一発の弾丸が空中で軌道を撃ち逸らす!

 

「成る程ね、そう言う場所か―――良し。まぁ、アタシはどっちでも良いや」

 

 直後、アーチャーは当然のように壁を駆け上がった。銃火器を装備しておいた腰のホルダーに仕舞い、左右の両手に刀を構えた。それは士郎と同じ双剣であったが、持っている武器は片刃の刀。中華刀ではない日本刀。それに若干ではあるが、右手の刀の方が長く、左手の刀の刀身はやや短め。

 弓の鬼兵は目標を変え、自分に迫り来るアーチャーに狙いを絞った。それにどうせ、他の者を狙ってもアーチャーに矢を迎撃されるのがオチだ。まずは目障りな障害から殺すと決め、鬼兵は排除に掛った。もっとも―――そのアーチャーを背後から槍の鬼兵が狙っていたが。槍使いはマスターの二人を狙ったと見せ掛け、急激に進路を反転させた。勢いそのまま、背を向けるアーチャーへ槍を構えて突進した。

 その攻撃を、アーチャーは逆に好機と判断する。なにせ、あのマスター二人組が“砲台”として機能する機会が生まれるなんて、これ程の必殺を繰り出すタイミングはそうは来ない。よって、アーチャーは躊躇わず左手の刀を半転して投げ放った。

 一直線に迫る刃を、槍使いは振り落とす。アーチャーは動きを止め、弓使いはここぞとばかりに矢を射るが……届かない。何故か分からないが、矢が当たらない。壁に立つアーチャーに届く前に何故か、矢は不自然に軌道を逸らして壁に突き刺さるばかり。そんな不自然を、しかし鬼兵は平然と受け止めた。聖杯戦争であれば、そんな超常現象で驚きはしない。仕組みを解析しつつ弓使いは天井を動くも、刹那―――狙撃手の冷たい視線で命を貫かれた。

 

「……―――」

 

 シロウ・エミヤ、衛宮士郎。鬼は主人から渡された情報として、あの男の能力を得ていた。投影魔術師であり、固有結界の持ち主。そして、リン・トオサカ、遠坂凛。魔術協会・時計塔に在籍していた冬木の宝石魔術師。加えて、衛宮士郎の師でもある。

 ―――戦闘考察。

 鬼の弓使いと衛宮の技量は考える必要は無し。重要なのは、何で狙われているかと言う点。まるで剣を無理矢理に矢へ変化させた宝具もどきと、寒気がするまで魔力が迸っている宝石の二つ。丁度、それらは弓使いと槍使いに狙いを付けている。

 

「そらそら……で―――次はどうするんだ?」

 

 アーチャーが笑みを浮かべ、槍の刺突を壁を地面にしながら捌く。槍使いの鬼も同じく、重力を無視して壁で戦っていたが、アーチャーの手元に先程投げた筈の刀が左手にクルクルと舞って戻って来た。次の間には、二刀流による連続的な剣戟が相手の間合いを侵略し、攻防一体の刃の群れが敵を襲う。

 自由に動けるのは弓使いの鬼のみ。剣使いと槍使いはサーヴァントを相手にして動かない。そして、マスターの魔術師がサーヴァントでさえ消滅させる攻撃を放とうとしていた。故に、判断など下すまでもなく、弓使いは天井を蹴って地面へ昇り落ちた。

 ―――秒間十射。

 雨霰と太矢が士郎と凛に降り落ちる。鬼は逆さまに墜落しながら射撃を敢行する。だが―――衛宮士郎はそれを狙っていた。鬼の一体を引き付け、凛と同じく標的を一体に絞り込む。勿論、攻撃対象は弓使いの鬼兵である。

 

「しゃらくさいわ―――!」

 

 宝石による爆炎防壁。凛が放った宝石は奇天烈な方向に火風を奔流させ、十矢全てを自分達に当たらぬ様に受け流す。

 ―――爆炎の裏側から、矢が鬼へ迫った。

 士郎が撃ち放った矢は直進し、何より反応が不可能なまで速い。それも煙幕を隠れ蓑にして、視覚した時には額に矢の先端が既に辿り着いており―――回避した。音速を遥かに超過した魔弾を、認識した直後に避け切った。

 

「成る程。確かに、これは―――英霊(サーヴァント)に並ぶ」

 

 士郎と凛の前に、弓の鬼兵が降り立った。キャスターに仕込まれたのか、陰陽術の使用も可能なのだろう……矢を腰に備えている術符から具現する。鬼種と言う観点から見れば、陰陽術と言うよりは日本太古から伝わる魔物の妖術かもしれないが、結果はどちらも同じ。幾らでも魔力から矢を物質化可能ならば、弾切れはないと言う事だ。

 

「……ったく。戦闘なんて宝石魔術師の本業じゃないって言うのに」

 

 愚痴を溢すも本音はおそらく、遠坂凛らしい獰猛な笑みの方だのだろう。それに魔術師と言う視点から見ても、キャスターの魔術は本気で参考になる高度な術理。正直な話、嫉妬を越えて見ているだけで、色々と脳味噌内でアイデアが弾けまくりだ。

 コートに隠れているが、腰のホルダーには自作の魔術礼装・宝石剣(ゼルレッチ)がある。今が使い時かと考えた。しかし、それは白兵戦で使い物にならない。あの殺し屋アデルバート・ダンが相手の時も使わなかったのは、今の自分では魔力供給程度にしか使いこなせないからだ。呪文詠唱による極大魔力斬撃を接近戦でするには隙が大き過ぎるし、攻撃を避けられて撃ち殺されるのが当然の道理。遠距離から森を焼き払う大魔術を放っても良かったが、そうなると敵に詳細な位置がバレて危険でもあった。そもそも確実に殺せないと意味がない。

 加えて、まだまだ序盤で秘蔵の奥義を出すのは早計。士郎にだって教えていない最終手段。

 それに武器として使っても棍棒代わりにしかならない。あっさりと砕かれてお終いで、わざわざ弟子やその他諸々と協力し、借金までして作った数十億の逸品が消えて無くなる。そうなると、聖杯戦争と関係なく死にたくなる。つまり、これは英霊の宝具と同じで、ここぞと言う時以外に使い物にならない品物。とは言え、常時ラインで礼装とは接続しているので、魔力不足など今の凛には有り得無く、魔術を回路の限り連発出来る訳で―――

 

「それじゃ、ま。派手に吹き飛ばしますか……っ!」

 

 ―――純粋な魔力塊による術式加工光弾が、鬼兵の視界を埋め尽くしていた。

 と、規格外の大魔術を平然と行う凛は、魔術を撒き散らしながら冷静に周囲の観察する。宝石専用袋のポケット内の宝石を確認し、いざと言う死手で狙いを定める。

 凛から見た状況判断として、剣使いとセイバーは接戦を演じてる。どうやら、西洋の英霊を憑依させているようで、装備品から剣と盾を愛用している伝承持ちだと予想出来る。槍使いの方は逆に壁と天井を縦横無尽に駆け回り、アーチャーと臨死のデッドレースの最中。槍の使い方を観察したところ、どうやら西洋の槍術に近いため、憑依元の出身を断定するには至らない。

 そして、自分と士郎の前に立ちはだかる弓使い。

 双剣で鬼兵に斬り込むも、敵は弓を盾に斬撃を受け流す。むしろ、合間合間で間合いが少しでも空けば矢を射出し、矢を短剣のように操って武器にもしていた。凛が魔術で背後から援護しても矢で迎撃し、むしろ士郎を肉壁にしようと狙って絶妙な位置に移動を繰り返す。

 

「……Anfang(セット)―――」

 

 よって、奥の手その一。もしもの為の緊急用のアゾット剣ではなく、隠し持つ鞘からそれとは異なる剣を引き抜く。見た目は刃渡り二~三尺程度のショートソード。序でに、左手は宝石魔術を何時でも使える様にフリーにしておく。

 その剣は凛にとって思い入れのある品で、彼女が持つ中で一番上質な刀剣類。弟子である剣製の魔術師に卒業試験として作らせた魔術礼装。巨大な宝石を柄頭にし、幾つもの宝石で飾られ、内蔵されている宝石が極悪なまで強力な術式を刻印している。

 そして、呪文詠唱ともに魔術礼装の剣が振るわれ―――魔力が敵へ容赦など欠片もなく降り落ちた!

 

「―――Klinge der(浄化、) blauen Flamme(大刃円舞)……!」

 

 ―――現れたのは、浄化の青い炎。

 光弾を隠れ蓑にし接近し、士郎の助力も得た凛は一呼吸で斬り掛った。士郎と入れ替わる様に位置を交換し、弓の鬼兵へ霊体を焼き滅ぼす炎剣が熱を発する。

 その凶悪な魔術を、鬼は自身の大弓で受け止めた。確かに、その攻撃を遮った筈なのに、魔力の刃は弓を素通りして敵を横薙ぎに斬り払った。

 

「―――ッ……!」

 

 肉が焼ける激痛を弓の鬼は感じ、そして自身が“魔術”で損傷した事実に驚いた。蒼炎の熱は対魔力を保有し、尚且つ鬼種の強靭な皮膚と筋肉を持ち、防壁と加護を与える強固な鎧を着込む己に十分なダメージを出す。それはもはや、宝具とも呼べる神秘の濃度を持つのではないか……と、弓の鬼兵は魔術師遠坂凛に最大限の評価を思考する。

 そして―――その隙を士郎が逃す道理は何処にも無い。

 

強化(トレース)完了(オフ)――――――!」

 

 強化した干将莫耶を鋏みたいな形で突き出す。首を狩る取る軌跡で、双刃が挟み込む形で斬りに入る……も、鬼兵は咄嗟にしゃがむ。そのまま弓を構えたのだが、背後に回っていた凛が魔術礼装から魔力炎斬を撃つ。しかし、鬼はその直剣さえ避け切る。鬼種と言う魔獣であり、あのキャスターが作成した使い魔だと考えても、異常なまで高い回避能力。

 化け物め、と凛は無言のまま睨んだ。

 例え相手を殺し切る武器を持とうが、当たらねば意味はない。人間を遥かに超越する身体機能の前に、遠坂凛の魔術が無効化させる。

 しかし、この直剣はサーヴァントのスキルや宝具対策として、対魔力を貫通するように設計されたもの。正確に言えば彼女の魔術が、であるが。その魔術の生成と相乗の術式が主な能力であり、効果は魔力自体の攻撃転換と属性の着色にある。言わば、概念の具現に等しい魔術だが、はっきり言って魔術をそのまま発露した方が効率は良い。魔力の無駄だ。魔力を使って魔術で魔力を炎にするよりも、魔力で魔術を使って炎を生み出す方が遥かに良質であり、本来なら魔力の炎など火の粉程度が限界。

 しかし、これならば―――対魔力や対魔術、あるいは魔術防壁や概念の加護を在る程度は無力化出来る。巧く嵌まれば無効化し、死徒二十七祖に並ぶサーヴァントへそのまま直接ダメージを与えられる。並の魔術師の数十倍の火力を持つ遠坂凛であれば、一撃で相手を魔力で存在ごと塗り潰す事も可能となり……

 

「燃え尽きろ―――!」

 

 ……極限まで魔力と酸素を燃料にし尽くす青色の火は、鬼種でさえ殺す武器と化す。

 三刃目の蒼炎発火。一呼吸で大魔術の連続行使。魔術の炎ではなく、魔力の火塊である蒼炎は、剣の神秘によって斬撃と浄化の概念も保有する。

 それに剣に内蔵する宝石の他にも、この魔術礼装はとある聖人の聖遺物が入っている。対死徒戦用魔術行使の概念補助の為であったが、聖杯戦争でも中々に有能な様だ。

 

「―――凛!」

 

「わかってるわよ、士郎……!」

 

 そして、鬼兵は不利を悟り―――飛んだ。士郎の双剣乱舞と凛の玉砕魔術は、鬼種の弓使いに後退を覚悟させ、弓を連続で掃射。その勢いのまま天井へ着地。士郎は双剣を精密機械よりも正確無比に振い、凛の盾となり彼女を守る。次の瞬間、凛は構成していた魔術を解き放ち、氷結の霧を竜巻のように天井に立つ鬼へ射出する!

 放たれた魔術の属性は水と風。この魔術の正体は氷の刃が渦を巻き、風の刃に乗った氷粒の群れが、巨大な槍と化す刺突の大貫通攻撃である。

 鬼兵は宝具と間違う程の魔力の嵐を前に―――限界まで絞った弓の弦を放す。むしろ、大弓から射られた太矢の方が竜巻じみた破壊の塊となり、氷の竜巻を一矢のみで木端微塵。そのまま、上空の地面に居る敵ニ体に矢を連続で射出し続ける。

 ―――物理法則が壊れた空間において、天井も地面と化す。

 士郎は強化した脚で一気に天井まで跳ね上がり、空中で自分を狙う矢を落としながら着地。また、投影した武装軍を背後に群れさせ、敵へ向けて一斉に撃ち落とす。

 その圧倒的剣軍群衆の突進を、くるりと左腕で双刃の大弓を回して鬼兵は捌いた。合間合間で弓から矢で敵を狙うが、士郎は慣れた動作で戦車砲をも超える矢から逃れる。先程までは対物理狙撃銃に匹敵する威力の矢の連射であったが、今度は一撃一撃に必殺の威力を込めていた。

 

Boden Burst(隆起、) hart zu sein(轟炎地雷)……―――!」

 

 その間に凛は士郎が生んだ隙を利用し、無事に天井へ着地し―――同時、呪文を詠唱しながら刃を地面へ突き立てる。

 ―――瞬間、瓦礫が溢れた。

 凛と士郎以外の地面が盛り上がり、まるで手榴弾の如き破壊を生み出す。天井の欠片が石飛礫となって辺りに弾けるも、士郎と凛には不自然な軌道で逸れて飛び―――出来上がった穴から、激風に乗った火炎が激流となって吹き出た。剣を振うと言う動作が呪文詠唱の代わりも果たす為か、唱えた工程以上の効果を凛は礼装から引き出している。

 正真正銘、回路を限界まで作った―――全力全壊の魔術行使!

 結果、天井の瓦礫が下で戦っているセイバーと剣の鬼兵、アーチャーと槍の鬼兵に降り注ぐ。

 それだけならば、まだ士郎や他の者を予想していた出来事。だが、魔術を使ったのがあの宝石魔術・遠坂凛であれば、果たしてそれだけで収まるかと言えば―――否。断じて否定するのが正しい選択。

 大火力で熱量を上げ過ぎ、加えて風の激流で常時大爆発しているかの破壊エネルギーは、城の内壁を粉々した挙げ句、溶岩のようにグツグツと溶かしてしまった。キャスターの居城である事が凛に手加減を忘れさせ、フル回転させた魔術回路の開放に、物理防壁と魔術防壁が耐え切れなかった。

 ……つまり、一瞬のみ活火山と化した天井は、空へ昇り崩れたのだ。キャスターの工房内とは言えたかだか天井に、果たして溶岩化してまで耐え切る建築的耐久性はない。

 

「―――やり過ぎだ!」

 

「えへへ……?」

 

「……笑って誤魔化せる破壊規模ではないぞ、凛。本気で」

 

 確かにうっかりでは無い。結界線に当たる境界部分を内部から大魔術で打ち破るのは、遠坂凛らしい賢明な英断だろう。戦闘中に敵の隙を見て、部屋の脱出を狙うのも流石だ。本来なら良くやったと言うべきなのだろうが―――戦場で生きる錬鉄の魔術師から見ても、これはやり過ぎだ。

 

「―――……!!」

 

 狙う。狙う狙う、狙う狙う狙う―――狙い撃つ!

 崩れた天井によって異界法則内の既存の物理法則が崩壊し、天井がまるで大穴になったように部屋内の全員が宙に墜落する。

 その好機を逃す意味はなく―――矢を幾重にも連続で射る。

 弓の鬼兵が空中で身動きが出来ない敵目掛け、容赦無く殺しに掛った。矢の雨が足元から降り落ちる。士郎は凛を抱き寄せて背中に回し、敵に向かって弓で矢を射る。そして、凛は念の為の防壁を自分と士郎の周辺に配置。落ちながら、弓使い同士が殺し合っていた。

 

「はっはーー!! その程度で当たるかっての!」

 

 アーチャーが両手で構える二挺拳銃を乱射。精密な動作で矢を一つ一つ狙い、自分と近場のセイバーを狙った矢を撃ち落とした。鬼兵は同時に指を限界まで使い、四本の矢を一発で撃つ。それを秒間に何度も行う事で、衛宮士郎とアーチャーニ体を敵に回して虚空での射撃戦を演じていられた。

 ―――落ち続ける穴は、まるで一本に連なった大部屋の連続。

 良く見れば、穴の内装は先程まで戦闘を行っていた部屋と同じであり、加えて一定距離落ちるとまた最初に戻ったような内装に逆戻り。どうやら、天井と地面が無くなった所為で、連続して部屋に落ちて出て、落ちて入ってを繰り返している模様だ。

 

「空間崩壊……? じゃなくて。まさか、これ―――空間を連結されたってこと!?」

 

 つまり―――最初から出口など無い。壁を壊そうが、床を壊そうが、閉じ込められた結界を破れなかったと言う事実。天井が壊れた瞬間に恐らくはキャスターが、結界内の空間連結を操作したのだ。

 

「来た来た、敵が来たわよ士郎!」

 

 壁を強引に蹴り抜き、槍の鬼兵が墜落突進を狂った速度で敢行。凛もろとも士郎を串刺しにせんと、弓を射る士郎の背後から心臓を狙った。

 だが、セイバーがマスターを守らない選択が有り得ない。横から彼女が槍の鬼兵に剣で体当たりし、相手を壁へ思いっ切り吹き飛ばす―――が、頭上に剣使いの鬼が出現!

 

「―――っ……ぶっ飛べ!!」

 

 士郎の背中に抱き付く凛が振り向き様に、宝石を最速で投擲。敵に直撃するも宝石は盾で防がれ、接触直後の爆発は完全に防御された。しかし、その御蔭で僅かばかりに行動が遅延した所為か、間に合った。遠坂凛が召喚したサーヴァント、アーチャーが剣使いの鬼を背後から強襲し―――弓使いの鬼が落下速度を術で緩めて士郎と凛に空中で並ぶ。

 瞬間―――全員の時間が停止する。

 余りにも圧縮した体感時間の流れが、まるで走馬燈の如き緩やかな時間を共有させた。

 中心に居るのは士郎、背中に凛、前方に弓使い、後ろ右上に剣使い、後ろ左上にアーチャー。そして、右下に剣使いがおり、左下にセイバーがいた。

 ここから先は正に一瞬、刹那の間。士郎が思考したことは、どうすれば良いかと言うこと。この場合のどうすればとは、敵を倒す事だけでなく、敵を排除した上にどうやって部屋を脱出すれば良いかと言うこと。

 

「――――――投影(トレース)開始(オン)

 

 彼は余りにも大きな刃を持つ両手剣、それも人を乗せられる程のだん平を投影する。数は四つ。場所は把握した見方全員の足元で―――つまり、虚空に一瞬だけ足場が生み出された。四人はそれに乗るも剣も一緒に墜落し続ける。

 しかし、三体の鬼と距離がかなり離れ―――

 

「セイバー! 聖剣の用意を――――」

 

「―――! わかりました……っ」

 

 ―――絶殺の好機を作り出した。

 そして、アーチャーが士郎と凛の腕を強引に掴み、壁を足場にセイバーの背後へ着地。

 

「――――――約束された(エクス)

 

 唱えられる宝具の真名。壁を地面にして踏み止まり、両手で聖なる刃を振り上げた。

 宝具の鞘から解放された絶対なる威光。この星に散って死んだ数多の戦士が、今際の最期に夢見た戦場の栄光。星に鍛えられた史上最強の聖剣。

 其の名は―――

 

勝利の剣(カリバー)――――――……ッッ!!」

 

 ―――聖剣エクスカリバー。

 騎士王アーサー・ペンドラゴンが保有する最強の宝具。

 極光の斬撃は眼下に落ち続ける三体の鬼を、一人残さず纏めて光の波の中に消し去った。そして、その光はそれでも止まらずに直進し、無限の矛盾を孕む墜落の大穴に“孔”を斬り開けた。

 

「……成る程、良い解決案ね。流石にキャスターでも、セイバーの一撃の前じゃ空間連結なんて精密な術式、維持なんて出来る訳もないわ」

 

「けど、これ……かなりの奥の手だよ。こうも景気良くぶっぱして、体力持つ程の魔力があるんかね?」

 

 聖剣で崩れた所為か、穴の底に地面が見える。空間が完全に歪み斬れて、ついに出口の到着地点を目視した。

 

「あー……うん。それは別に大丈夫。ほら、私なら魔力不足なんて有り得ないから、足りなくなってもどうとでもなるの」

 

「それは―――エロい意味でか?」

 

「ぶっ殺すわよ、アーチャー」

 

 そんな凛とアーチャーの話を複雑な心境で聞く士郎とセイバーは、何だか気まずい気分になる。落下中に視線があったが、互いに何故か視線を逸らしてしまった。そんな二人をニヤニヤとアーチャーは見つつ、漢前な仕草で凛をお姫様抱っこした。

 そこでふと、アーチャーをセイバーは胡乱気に見てしまった。凄く自然に女性を抱えるのを見て、このアーチャーの姐御っぷりと言うか、男っぷりに関心しつつ―――疑問に思った。

 

「――――――……」

 

「え? どうした、セイバー。アンタもほら、地面近いんだからマスターを助けてやれって」

 

「そうですか……? いえ、やはり、そうですよね。はい―――では、シロウ来て下さい。さぁさぁ、地面が近いですよ?」

 

 何に納得したのか分からないが、セイバーは凄く良い笑顔だった。とても綺麗な笑みで腕を広げて、士郎が寄るのを待ち構えていた。

 士郎は強化魔術と軽量化と重力操作で、危ういとは思うが、この速度でも目算であの地面に着地は出来ると考えていた。だが、最善を考えればセイバーの魔力放出で着地するのが、効率的で理想的。そうである筈なのだが……なんか違う。何かが間違っている。

 

「なんでさ」

 

 凄く怖い。地面に落ちながら危ない状況なのに、こっちを静かに笑顔で視てくる遠坂凛が―――本気で怖い。とても似合った美女の微笑みであるというのに、目から殺人光線(ガンドビーム)が出て、口から火の吐息(ドラゴンブレス)を放っている位には威圧感がある。

 まるで狂戦士(バーサーカー)のクラスで召喚されたクーフーリン並の迫力を出していた。そんなマスターと寸劇を繰り広げるセイバーと士郎をニコニコと見守るアーチャーは、例えるなら人の不幸をデザートにするメフィストフェレスか、邪悪をより良く尊ぶマザー・ハーロットだ。

 

「セイバー、そんな事をするのは衛宮に可哀想だ。特に男には酷だと思う。なので―――抱き付いてやれ、思いっ切りね!」

 

 早くしないと地面に着くぞ、とアーチャーはハハハハと高笑いを上げていた。凄くとても愉しんでいた。そのまま士郎とセイバーを置き去りにして落ちて行った。ギャグっぽく。

 

「―――了解しました」

 

「セ、セイバー……―――っ!?」

 

「どうかしましたか、シロウ? 全く、顔が赤いですよ」

 

 遠坂凛の叫び声を聞こえないふりをして、彼は色々と何かを失った気分のまま抱えられた。それはもう思いっ切りお姫様抱っこをされた。

 セイバーは体勢を整え、魔力放出を精密に操作し、段々と減速を行っていく。地面にはさらに近づいて行ったが、加速度は遥かに緩まっていた。アーチャーの方は単純に魔術を使ったのか、風の魔術で空気抵抗で減速をしつつ、着地時に備えて強化と軽量化を行う。

 ―――ストン、と軽い音に四人は無事に着地を成功させた。

 大部屋を突破した四人は次の部屋に着き、予想外の光景に驚愕する。この場所はもはや城の中とは呼べない空間であった。

 強いて言えば、白紙。何も無い世界。

 地平もなく、天井もなく、壁もない。

 聖剣で開けた穴も自分達が潜った後に緩やかに閉じ、締め切ってしまった。出口はまたもや存在しない。

 

「おやおや、生きていたか。こりゃ凄いじゃないか。あのセイバーの聖剣を不完全な解放とは言え、受けて良く生きていられたな」

 

 最初に気が付いたのはアーチャーで、次に他の三人も気が付いていた。剣使いの鬼が彼女の極光を受けたのか、かなり煤けて破損個所が目立つ盾を杖に立ちあがっていた。逆に槍使いと弓使いの鬼は守って貰ったのか、軽傷が見える程度で致命的なダメージは無かった。

 だが、静寂はそこまで。次の間には、闘争の気配が強烈に漂い始める。キャスター討伐はまだまだ始まったばかりで、ここからが本番の始まりであった。

 




 読んで頂きありがとうございました。
 この度の話としては、キャスターの狂いっぷりを表現出来れば良いなぁ、と考えています。あの城はキャスター個人の固有結界じゃありませんけど、荒耶みたいな結界魔術の果てに出来あがった固有結界に近いのでありますが、それでも固有結界じゃない固有結界もどきだと考えて下さい。イメージ的には黄金劇場の方に近いです。理論と術式としましては、大元になった神秘は妖精が生み出した固有結界みたいな、この世じゃない異界法則で括られた別の異相空間? そんな雰囲気です。アヴァロンの島とか、クーフーリンの師スカハサが居た影の国とか、原作だとそんな場所の法則を擬似的に再現した結界です。精霊とか、魔獣とかの陸続きになっていない住処ですかね。
 あの城の空間もぶっちゃけ、キャスターの脳味噌の中に落ちたような状況です。あれのイメージ像に従う理論的な異界模様で、工房は今も尚キャスターが式神を今も量産してる工場でもあったり。後、あの四人の前に出て来た三体の騎士鬼兵は、ドイツのアインツベルン城に居た時から作成してたトッテオキになります。
 長い解説ですみませんでした。次の更新目指して、書いていきます!

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