神父と聖杯戦争   作:サイトー

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 FGO初登場キャラで一番好きなキャラがアルテラでしたので、ちょっと書いてみた番外編です。


異伝.カルデアの日常

「暇だのぅ…」

 

「そうだな」

 

「そうだ、カリブに行くでござる」

 

「……――――――」

 

 ネロは思った、この炬燵ヤバいぞ……と。ついつい睡魔に負けて眠ってしまい起きると、この始末。カルデアは本当に地獄だぜ、と誰かが笑っていたのを彼女は思い出す。と言うよりも、ほろ酔い狐と深夜に愚痴り合った時に言われた事だった。

 

「戦争したいのぅ……略奪したいのぅ。ティーチよ、何か良い案でもないか?」

 

「そう言われも、拙者も暇を持て余し中。いっそのこと、拙者ら四人で共同戦線でも組んでみるのは如何かな。某はどう思うでおじゃる、アルテ裸氏?」

 

「私は構わんぞ。何より炬燵は良い文明。我ら炬燵戦線、世界を砕く破壊で以って世界を救う。

 ……そうは思わないか、ネロ?」

 

「いやいやいやいや……!? そもそもだ、貴様ら何を勝手に余のプレイベート炬燵に入り込んでおる!?」

 

「もぐもぐ。炬燵で蜜柑、良い文明。悪くないな、悪くない」

 

「あー! それ余のミカンだぞ!? 折角神祖ロムルス様が、たまには頑張っている子供らに褒美をって、ローマ産高級冬蜜柑を頂いたのだぞ!」

 

「もぐもぐ。美味し」

 

「もぐもぐ。美味い」

 

「略奪王に黒髭、食ってないでアルテラを止めぬか! 貴様ら何を呑気に―――って、それは!?」

 

「ほら、我輩って略奪王だしの。美味そうだったので、ついついその茶は飲んでしまったぞ。皇帝特権で茶道していたのだ。何より、この玉露は良い玉露だ。のう、ティーチ?」

 

「はっはっは、全く以ってその通りでござる、ワラワラ。他者から奪い取ったモノほど輝かしい財宝は、この世に存在せんですぞ、ワラワラ」

 

「うわぁあああーー! タマモから賭けで勝ち取った余の玉露が!」

 

 右隣に戦闘王アルテラ。左隣に略奪王チンギス・カン。正面に黒髭ティーチ。ネロが愛する癒し空間は極小特異点、強奪占領炬燵ドムス・アウレアと化していた……!

 

「そ、それはぁ……余が楽しみにしていたヤツであったのにぃ……」

 

「不憫だのぅ。可哀想に、何か言ってやると良い、アルテラ」

 

「ローマは良い文明。だからローマから略奪するのも良い文明」

 

 ただの歴史的事実である。

 

「ワラワラワラワラ、テラワロスwwwwwww 流石は神の鞭、拙者もビシバシ叩かれたいですぞ!」

 

「うぅ、許さん。許さんぞ! 黒髭、特に貴様は不認である」

 

「何故拙者だけ!?」

 

「怒るでない。ネロよ、私たちもただ食いを行い、おまえを憤怒させたい訳ではない」

 

「フンヌだけに、憤怒かの?」

 

「略奪王……ここでのオヤジギャグは、悪い文明だ」

 

「だと言っているが、薔薇の暴君よ。お主、少し笑っておったよの?」

 

「わ、笑っておらんぞ! 余はクスリともしておらんとも!」

 

「なに。我輩のカイザージョークは受けぬのか」

 

「どちらかと言うと、バカイザーでござるぞ」

 

 あぁん、命奪うぞと悪鬼の視線で黒髭を貫く略奪王。しかし、黒髭は普段通りにニタニタしているのみ。

 

「それは兎も角、黒髭。私はおまえに聞きたいことがある」

 

「なんでおじゃる、アルテ裸氏?」

 

「そう、それだ。何だか、私の名前の発音、可笑しくはないか?」

 

「見たまんまの姿に相応しい発音だと思いますぞ! アルテ裸氏、まじアルテ半裸王!」

 

「おまえ、私を半裸王と呼んだな。生前先に死した兄に、格好はエロいのに色気が致命的に足りないと揶揄された私を」

 

 アッティラ王には兄の王が居た。生前は共同で国を支配していた王だ。遺跡から発掘された自分と違いフン族に連なる王族であったが、それでも彼女にとっては自分をもう一人の王と認める良き兄であった。

 

「愚腐腐の腐。拙者、褐色半裸娘は大好きですが、少し萌えが足りませんな。イメージが命な訳ですな。まぁ、文明破壊大好き娘では、萌えられる部分も破壊されていまう訳ですぞ」

 

「萌えはそこまでだ。おまえの萌えは……悪い文明だ」

 

「我ら海賊、蒼い海と青い空に焦れ邪悪を成す悪党! 

 即ち―――萌えとは、オレにとって哲学である。生前知り得なかった未来の輝かしい文化の結晶こそ、死後のオレが見出した冒険と略奪に代わる新たな娯楽である故に」

 

「行き成り素に戻るな、黒髭。おまえは、あのおまえのままの方が、このカルデアではらしくなっている」

 

「えぇ~、それ本当ですかな。でもでも、偶には拙者も素に戻りたくなるそんな年頃」

 

「私たちは死人。若いも老いも一纏めに整理された亡霊だ」

 

「なんと冷たい塩対応ですぞ!」

 

「えぇえい! 貴様ら! 余を抜け者にして話をするでない!」

 

 やっと爆発したか、とニヤニヤと笑みを浮かべるチンギス・カン。カルデアでは飲み友達兼狩り友達のロムルスのお気に入りの一人でありあの暴君ネロだ、それなりに興味が昔はあった。今ではこうしてそんな玩具に対する興味だけではなく、普通に友人でもある訳だが。

 

「それで話は脱線しまくっておったが、アルテラよ。貴様は余に用事があるのだな?」

 

 第三特異点も攻略され、今は第四特異点の解析中。暇と言えば暇であり、カルデアを襲う突発的な厄介事(イベント)や、サーヴァントの霊基を鍛える為に幻想種や魔物を狩り殺し、素材集めをしている程度だ。そんな中で用事であるのでそこまで重要な事ではないが、相手はあのアルテラだ。何かの間違いで月での記録情報を得て、ネロもそれは同じであり、あの月の自分達と今の自分達は赤の他人だが、それでも平行世界の自分達は良き友人となれたのだ。このカルデアの自分達もまた良き友人になれたと思う。

 だから、その用事も悪いことではないだろう。そう思いたいネロだったが、同じ炬燵にいる男二人の所為で悪い予感しかしなかった。

 

「啓示の教えが広まった現代において、誕生日を祝うのは普通であるようだ。神の鞭と恐れられた私や、暴君と呼ばれたおまえがその風習を良しとするのは可笑しな話だが、このカルデアでは無粋なことだと私は思う」

 

「むぅ……む、む? む!?」

 

 最初は悩んだが、段々と気が付き、内心での喜びと一緒に疑問の唸り声を上げる。

 

「十二月十五日―――誕生日、おめでとう。これはおまえの為のお祝いだ」

 

 赤い装飾がされたプレゼント箱。

 

「ア、ア……―――アルテラぁぁああああ!!」

 

 ぱぁああ! と言う擬音が相応しい笑み。感動屋であるネロだが、それでも何時にも増して嬉しそうな表情だった。

 

「余は嬉しい! 感激だ! すごくすごく感激だぞ!?」

 

 炬燵から飛び出て、アルテラに感情のまま抱き付いた。ネロはグリグリと頭を押し当てながら、柔らかいアルテラの体を抱擁する。

 

「こら、くすぐったいぞ。それよりも、中身を確認してくれ」

 

「おお、そうであった、そうであったな! ふふん、贈り物は皇帝時代に沢山貰ったが、身分を気にせずに良い友人から誕生日プレゼントなぞ、生前も死後も含めて初めてだ!!

 素晴しいな、素晴し過ぎる。余、生き返って良かったぞ!」

 

 ふんふんふふん、と少し……いや、結構下手な鼻歌を歌いながらネロはプレゼントを開けた。

 

「―――これは……!」

 

「ふぉとんれいだ」

 

「え」

 

「だから、軍神の銃(フォトン・レイ)だ。神祖ロムルスが父、軍神マルスが持つ本物の神造兵器の改造品だ」

 

「え」

 

「握ってみろ」

 

「……うぉう! ビームが出たぞ!?」

 

 形は銃だが、何故か銃身の下部から三色ビームセイバーが飛び出た。

 

「それは魔力によって刀身を具現している。現代の魔術師で言う投影魔術に近い。それと天草が持っている黒鍵の刃にも近いな。それをロムルスに協力して貰い、ローマのマルス仕様にして貰った。材料はローマの隕鉄と大樹でな、それをダ・ヴィンチちゃんが銃型にし、私が軍神の神性因子を仕込んだ。無論、弾丸も撃てる。魔力を擬似的に投影加工し、三色に対応する弾丸を放つ。

 おまえは前に確か、遠距離の武器が欲しいと言っていただろう。私なりに、その悩みを解決する為に考えてみた」

 

 ネロの愛剣は主思いで、空気を読む。受け取った情念を素に炎を出したり、結婚式にさえ対応する。しかし、原理は本人も良く分からないが、遠距離攻撃となればネロが強くイメージすることで皇帝特権により何となく斬撃を飛ばす位しか出来ない。

 

「そうか、アルテラよ……」

 

「?」

 

「……いや、余は嬉しい。本当に嬉しいぞ!」

 

「ありがとう。おまえが嬉しいと言ってくれたなら、私も嬉しいぞ」

 

 友達から光線銃剣(バイヨネット)付き三色光線変形銃(ビームブラスター)を貰った時、一体どんな表情を浮かべれば良いかネロは分からなかった。無論人理修復後の未来、カルデアに召喚される反転したエミヤに羨ましそうな目で見られることも、この時のネロには分からなかった。

 

「では、拙者からはこれを」

 

 そして、怒涛のプレゼント攻撃は続く。

 

「お、お、おおお! これはまさか、小型化した余自慢の黄金劇場(ドムス・アウレア)!」

 

略奪王(バカイザー)から、贈り者とはそれを送られる相手だけでなく、送る側の自分も楽しめると尚のこと素晴しいぞ。と、拙者にアドバイスしてくれましてな。昔は違うでござるが、今の拙者にはこう言う趣味がある。なので、芸術を愛するアンタにならと拙者の力作をプレゼントってことですぞ」

 

 勿論、材質はほぼローマン・コンクリートと同じで、更に塗装に使われているのは本物の黄金。色彩も鮮やかで蓋の様に開閉する天井を開けて見ると、中もまた細部まで自分の宝具とそっくりだった。拘れる所は徹底して拘ってしまうその救われる趣味人の業、黒髭こそ正にオタク。とは言え、皇帝である前に芸術の徒であるネロ・クラウディウスもまた、同じ様な趣味人であるので共感出来てしまう訳であるが。

 

「黒髭……まさか、貴様がそこまで人間出来ているとは。余は感激だ! 何より、この黄金劇場は美しい!!」

 

「そうだな。私でもこれは美しいと思える。黒髭、何故おまえはこんなものを生み出せる?」

 

「ぐふふふ、それは拙者が―――……いや、オレはな、人間が持つ欲望とは元来美しい物だと思っているからだ。未知を求めて大海原を船一隻と仲間を信じて旅をした時、あの時の感動こそ数多ある欲望の本質だとオレは感じた。

 ……拙者は、悪。

 勿論、醜いですぞ。死ぬべき時に、醜い死体になって殺されて死んだでござるが、それはそれ、これはこれ。どんな趣味であれ、丹念に情熱を込めれば不思議と、人はその人間性の美しさに惹かれるのが同然でありますぞ」

 

 むしろ、属性:混沌・悪をここまで真人間らしく更生させてしまうあのマスターの少女の手腕こそ恐ろしい。そうチンギス・カンは考えており、それはアルテラやネロも同じ考えで、ティーチも召喚されたこの自分が変わりつつあることを驚きながらも、それはそれで悪くは無いと考えていた。と言うか、地味に今まで一番嬉しい贈り物かもしれないと、この黒髭なる海賊のセンスに驚愕するネロだった。

 

「うむ。サプライズとはこうでなくては。ではネロ、これは我輩(ワシ)からだの」

 

「……盾、であるか?」

 

「盾ぞ。妻に贈り物はしたことはあるが、女性の戦友に贈り物なぞしたことがなかったのでな。やはり、精神的な充足を得られる物はその手の異性か、あるいはマスターからの方が良い。故、我輩からは戦いを便利にする道具と思いこれにした」

 

「むぅー……おぉ! 腕に吸い付いたぞ! それに軽いな!?」

 

「お主の剣技の邪魔にならぬ様、軽量で且つ両手で剣を握れるようにな。加えて、その手甲へ扇の様に畳み仕舞えるぞ」

 

「ほう、ほうほうほう。素晴しいな。デザインも美しい!」

 

「我輩の皇帝特権(モンゴル)で以って、ロムルスの皇帝特権(ローマ)模倣(モンゴル)したぞ。あやつの皇帝特権(ローマ)はまた別種の機能(ローマ)を持つ故に、その皇帝特権(ローマ)皇帝特権(モンゴル)獲得(モンゴル)すれば良いだけの話であるからの。

 色々と面倒ではあったが、面倒事を楽しめなければ、人は王などと言う立場にはなるべきではない」

 

「成る程、何故か何を言っているのか不思議と分かるぞ」

 

「無論ぞ。我が皇帝特権により、あやつの羅馬語(ローマ)物真似(ローマ)しておるからの」

 

「まことか!? もしや、余も皇帝特権を使えば神祖様と同じ言葉が喋れるのか……?」

 

「出来るだろうの。我輩よりも巧く使えるだろう」

 

「なんと素晴しい。余も余のローマをローマして、ローマでローマとは」

 

「すまんな。お主は一体何を喋っているのだ?」

 

「出来ぬではないか! 余は今とても恥ずかしいぞ!?」

 

「テラワロス(ローマ)www」

 

「ネロ、羅馬語(ローマ)とは良い文明(ローマ)ではないのか?」

 

「なんで余に出来なくて、貴様らが神祖と同じローマをローマなのだ!?」

 

 理不尽だぞ、と憤慨するネロ。

 

「すまない、ネロ。マスターが良くロムルスと私を組ませ、宝具の合体奥義(ローマ)は女の浪漫(ローマ)なの、と言いつつ共に良く戦わせる。

 その所為か、何時の間にか私の中にも浪漫(ローマ)が芽生えていた」

 

 敵をローマの大樹で蹂躙した後、ローマが軍神マルスの神剣で以って敵軍を粉砕する宝具の合体奥義(ローマ)とでも言うべき羅馬浪漫(ローマ)

 

「なんだそれは、余は見たい。見たいぞ!」

 

「我輩もあやつと共に合体奥義(ローマ)をしたぞ」

 

「拙者も同じく滅茶苦茶合体奥義(ローマ)した」

 

「ずるいではないか!? 余もリスペクトしたいぞ!」

 

 そのまま英霊の四人は楽しそうに、この時間を大事そうに使いながら時間を過ごしていった。死後に訪れたこのカルデアと言う世界は、英霊にとってあの少女に召喚されたと言うだけで、夢に等しい時に身を任すことが出来た。

 素晴しいのだろう。

 喜ばしいのだろう。

 サーヴァント達にとって、召喚したのがあのマスターだからこそ、ここまで楽しめて、世界を救うことにここまで本気になれる。そんなカルデアにおけるこんな一幕は、別段珍しい物はでないのだから。

 

 

◇◇◇

 

 

「えぇ~、本当でござるか~?」

 

「本当ですよ、これが沖田さんの正装なのです!」

 

「えぇ~、本当に本当でござるか?」

 

「佐々木さん、なんでそんなに疑うんですか!?」

 

「何故も何も沖田殿、それはどう見ても袴を穿()き忘れているようにしか見えぬぞ。文明開化が進み私が生きた時代より先であろうとも、あの時代に西洋の“絶対領域(みにすかーと)”なぞ日本に無い筈なのだが」

 

 目の前のセイバー、沖田総司の太ももの出し具合は、佐々木小次郎が第五次聖杯戦争で見たマスターと良い勝負だ。アサシンとしてキャスターに召喚された時の知識を今も持ち、彼はその時の記録からミニスカートやら絶対領域やらと俗世な知識を覚えていた。

 

「違います、そう言う丈の短い着物なんですよ! 買った時も商人の仕立屋さんがそう言ってましたから!」

 

「騙されておるぞ、おぬし」

 

 後、内心でその仕立屋に「良き哉(ぐっど)」と賛辞を贈る佐々木小次郎。

 

「そんな! 土方さんも似合っていると言ってましたし……」

 

「なんと! 土方、エロいな。私と友になれそうだ」

 

「そりゃ、まぁ、土方さんはエロ好きでしたし……あれ? そう思えば、近藤さんと斎藤さんは苦笑いしていた様な。いえいえ、まさか……」

 

「三段突きを振う度に見えそうで見えない、そんな絶技をおぬしは披露しているからな。男からすれば、反応に困るは困るが、決してその光景は悪いことではない」

 

「そんな何ですって! そう言えば土方さん達も、私が三段突きをする度に見えそうで見えないって喋ってました。もしかしてあれ、私の三段突きの動きじゃなくて、こっちの方のことを言っていたんじゃ……―――」

 

「―――安心するが良い」

 

「え、佐々木さん……?」

 

「私は完全に見切っていたぞ。三段突きも、そっちの方もな」

 

「―――え゛?」

 

「実に素晴しいさーびす精神と言うものだな」

 

「このセクハラサムライ! もう恥ずかしくて、大正浪漫な格好しか出来なくなるじゃないですか!?」

 

「それは拙者大変困るでござる。それではもう二度と黒髭殿が言っていたチラリズムを堪能出来ないではござらんか!?」

 

「胡散臭いござる口調は辞めて下さい!」

 

「―――佐々木殿。沖田殿をいじめるのは程々にしませんか?」

 

「これはまた安倍殿。おぬしはおぬしで相変わらずな様だ」

 

「あ、安倍さん……っ」

 

 キャスター、安倍晴明。このカルデアにおいて、あのマスターに初めて召喚されたキャスタークラスのサーヴァント。段々とカルデアも賑やかになっていき、それを実は一番楽しんでいる世捨て人でもある。

 

「ほら、いじめ過ぎると私の分が足りなくなるではないですか。私も千里眼で以って、このチラリズムを楽しんでいるのですから」

 

 救世主の登場! と喜んだ相手からの手の平返し。絶望に沈む沖田。

 

「貴方まで! って言うよりも、千里眼をそんなどうしようもない事に悪用しないで下さい!」

 

「馬鹿なことを。男とは、歳を取る程にエロ爺に深化するのです。ソロモンも、マーリンも、ギルガメッシュも、何だかんだで全員がセクハラ好きです。無論、私もです。特にソロモンなんて私以上にムッツリ野郎です。だからこそチラリズムは千里眼持ちにとって愉悦なのです。彼の神王オジマンディアスも鏡のように磨かれた大理石の上で、ノットパンティな穿いてないミニスカ踊り子を躍らせまして、チラリズムを存分に楽しんだと言い伝えられてます。

 つまり―――チラリズムとは、宝具に等しき貴き幻想(ノーブル・ファンタズム)である訳です!」

 

 無論のこと光輝の大複合神殿(ラムセウム・テンティリス)の床はピカピカに磨かれた神性さえ感じ取れる大理石である。安倍晴明は地味に感動した、あの逸話は本当であったのだと。

 

「―――失望しました! 色々と!!」

 

「まぁ、それは兎も角として、おはようございます。お二人とも、昨日はよく眠れましたか?」

 

「うむ。良き夜であったぞ。まさか死後にこうして満腹まで食事をし、温かい寝床で睡眠を取るなどと言う幸福を存分に得られるとは思わなんだ。

 ……何より、このカルデアには美女が大勢いる。口説き落とせば、寂しい一人の夜も忽ち様変わりすること間違いなし」

 

「まこと、その通りでございますれば、それこそがサーヴァントとしての醍醐味とでも言えましょう」

 

「はっはっはっは」

 

「ふっふっふっふ」

 

「私を置き去りにしないでぇ! 沖田さんのことを忘れないで下さい!」

 

「すみませんね、沖田殿。可愛らしい女性を見ると、ついつい狐としての嗜虐心が出てしまいましてね」

 

「……いや、何を素で最低なことを告白してるんですか?」

 

 少し、いやかなりドン引きする沖田。涼しい笑みを浮かべながら、かなりエグイことを言うのが安倍晴明である。

 

「このカルデアには、生前の既知が沢山です。源氏一派の頼光殿に、坂田共。それにまさか、あの伊吹大明神が残した子である酒吞殿や、鬼種の原型から連なる茨木殿も在籍しています。それに何より―――九尾殿」

 

「あー、ああ」

 

「ほぉ、ほう」

 

 総司と小次郎からしても、玉藻と晴明の因縁は日本出身の英霊として良く分かっていた。

 

「私が嘗て仕えた帝に取り憑いた神狐、あの可憐な毒婦。まさか殺生石を玄翁和尚が槌でバラバラに粉砕した後の未来で、こうしてまた再会するとは実に僥倖なことでございます」

 

「嬉しそうだな、安倍殿。まぁ因縁として考えれば、アーサー王とモードレット卿、源頼光と酒吞童子、イスカンダルとダレイオス、ホームズとモリアーティに近しいだろうからな。私も生前に知り合ってはおらんが、新免殿とは言い表せぬ繋がりを感じることもあるし、それを考えればおぬしも色々と思う所もあるのだろう」

 

「新撰組と薩摩侍でもありますね」

 

「英霊とは座に保管させる伝承化した魂でもありますので、殺した殺された言う関係もまた、重要な我ら英霊の魂を構成する一部分でもあるのでしょう。

 とはいえ、元より座に記録される英霊になってしまえば、生前の出来事など転生した後の来世における前世のようなものです。態々死んだ後、何時までも引き摺れば魂もそれに合わせて歪んでしまいますしね」

 

「だろうな」

 

「ですね。私も薩長は憎いですが、それも新撰組と言う自負がまだ少しだけでも残っているからですし。カルデアに新政府の英霊が召喚されたとしても、憎みながらも戦友として共に戦う覚悟は出来てます」

 

「成る程、成る程です。良い心掛けですね」

 

「おーい、おき太! こんなところに居たのじゃな!?」

 

「はい。私に何か用なんですか、ノッブ?」

 

「なんと、晴明も一緒にいるのじゃな!」

 

「ええ、織田殿。少し沖田殿で遊んでいました」

 

「おき太は面白いからな、仕方がなかろう!」

 

「―――ノッブ」

 

「うぉおいい! 気配遮断からのワープで儂の背後を取るで無いわ! と言うよりも、おぬしはセイバーではなかったのか!?」

 

「安倍さんの宝具を使い、クラススキル気配遮断を霊基に付け加えて貰ったのです。アサシンクラスで召喚される時よりもランクは低いですが、擬似的な二重召喚(ダブルサモン)状態である訳です」

 

「え、なにそれズルい。儂も欲しい!」

 

「良いですよ、構いません。では―――陰陽五行星印(キキョウセイメイクジ)!」

 

「なんじゃそれはおぬし何でもかんでも突然過ぎるじゃろぉおおおおうぉおおおお!!

 ―――儂、今、輝いてる!!!」

 

「安倍殿、何をなさった?」

 

「何時も冷静ですね、佐々木殿は。空位に至る明鏡止水を体得した侍はやはり違いますね。とまぁ、賛辞はこの辺にしまして。

 ほら織田信長と呼ばれる英霊、戦国時代においてそこの彼女は第六天魔王を呼ばれ、それを自認しているみたいですので。まぁ、その―――実際に存在する他化自在天の波旬の霊基情報を式神に写し、それを加えてみました。面白そうでしたし。何より天人としてのこの魔王は弓を持つ姿で描かれますし、アーチャークラスの織田殿とも相性抜群です」

 

「それはそれは、また……」

 

「どうですか、佐々木殿。貴方も一符、霊基に付けてみますか? 日本神話最強の剣神とかも、その気になれば大丈夫ですし。

 特異点とこのカルデアならば私、結構自由自在ですので。ここでなら我らが日本、その原典である大和国朝廷の開祖にして、神殺しの神もまた神霊ではなく英霊として召喚される平行世界も千里眼で既に観測済みなので。その英霊が持つ剣神の分裂体である神殺しの雷剣もまぁ、霊基情報として座から()べない訳でもないですし」

 

「遠慮する。我が剣は、我が身だけの業故に」

 

「ははは、それはまた」

 

「ノッブゥゥウウーーー―――ッ!! 死んじゃ駄目ですよノッブ!!」

 

「ほぅうわわわわわぁああああああああ!!」

 

「まぁ―――冗談はこの位にしまして」

 

「そうじゃな。一芝居感謝じゃ、晴明」

 

「―――……ほぇ?」

 

「で、そちらは交渉の方はどうでしたか?」

 

「うーむ、ぼちぼちじゃなぁ。そっちはどうじゃ?」

 

「やっと私が知る最高の小説家をマスターに召喚させる事が出来ましたよ。いや、大変でしたね―――キャスター、紫式部」

 

「マジで! え、あやつが遂にカルデアへ来てくれたのか。日本最古の、実在の美男子を主人公のモデルにした、あの美少女ハーレム女流作家が!」

 

「その通りですよ、織田殿。これでついに我らが大願成就の時が、着々と迫りつつあります」

 

「ほー、へぇ~……そうかそうか。いやはや、実に長い一カ月じゃった」

 

「な、な、なんですかなんですか、それは!? 私を騙して驚かす為だけの芝居だったのですか!?」

 

「そうですが、なにか?」

 

「そうじゃが、なんぞ?」

 

「もう何も信じられない……助けて下さい、近藤さん!!」

 

 と、そこに膨大な魔力と共に一人の聖女が飛来する。

 

「―――天罰覿面! (しゅ)に仇なす悪魔はここにいるかぁ……!!」

 

「おや、どうした。マルタ殿? 聖女とは一欠片も、全く以って、微塵足りとも思えぬ怒声を上げて」

 

「あん、なんだ小次ろ……―――いえ、小次郎。先程あの魔神柱とは違う、本物の魔王クラスの悪魔の気配がしまして。カルデアの危機と思い、こうして急いでやって来たのです」

 

「そうであるか。しかし、心配ご無用。その問題は安倍殿が解決しなさった」

 

「あら、そうなのですか。晴明さん?」

 

「勿論ですよ、マルタ殿。私の秘術で以って既に魔王はこの場にいません。冥府の神を崇める我ら陰陽師、ウソツカナイネ」

 

「あらま。流石ですわね、晴明さんは。何処ぞのドラゴンスレイヤーのござる侍とは大違いです」

 

「ござる侍……? さてはて、そんなサーヴァント、このカルデアに召喚されたか、否か。ただの農民に過ぎない私では知り得ない情報であることは確かよな」

 

「―――アンタのことよ、佐々木小次郎」

 

「ふむ。休み続きで憂さが溜まっているのであれば、私がトレーニングルームでお相手致すが」

 

「は? 何を言ってるのかしら? 聖女足らんとする私に憂さなんて―――」

 

「―――えぇ~、本当でござるかぁー? 拙者信じられなぁ~いでござる」

 

「上等……―――!!」

 

 逃げる様に去る小次郎を追って、急に現われたマルタもまたそのまま過ぎ去った。

 

「相変わらず、嵐のような聖女さんですねぇ。女狐よりもアグレッシブで、鬼女よりもパワフルです」

 

「そうじゃな。女子(おなご)が元気な町は良い町の証じゃ。そう言う意味では、閉鎖されたこのカルデアも、ああ言う明るいのが居る方が健康的じゃろうよ」

 

「ですねぇ―――……まぁ、彼女はユダヤの使徒殺しの聖職者ヤコブから、あの力を受け継いでいますので。元気と勇気と鉄拳が取り得のバリバリ武闘波聖女ですし、あの大英雄ベオウルフと正面から殴り合える時点で私みたいな貧弱な天文学者では到底敵いません」

 

「え、貧弱? 馬鹿になったんですか、頭でも強く打ちましたか、安倍さん? 頼光(ライコー)さんがマジになって心配しますよ?」

 

「お、天文学者? 晴明よ、何時の時代から天文学者とは、死人を蘇生出来る職業(ジョブ)になったのじゃ?」

 

「良い性格してますよねぇ、貴女達……」

 

 カルデア。この星、この地球を、神代から現代まで観測する星見屋の末裔達。ああ、全く以ってこの場所は、この京の都より遠きこの天文台は、星を見続けて、夜空を思い続けた安倍晴明に相応しい。

 ……まこと、そう言った彼が持つ余韻をブチ壊す二人であった。

 

「……とは言え、織田殿。紫式部は召喚されましたし、後は絵画担当を揃えるだけですねぇ」

 

「う~む、素晴しいな。いよいよ、完成まで秒読みじゃ」

 

「そうです。そこの二人、一体なんの話をしているのですか!? 沖田さんにも教えて下さい!」

 

「え、何って、それはですね―――」

 

「む、何とは、それはじゃな―――」

 

 ついつい息が合い、二人揃って答えを言う。

 

「「―――カルデアのサーヴァントをモデルにした漫画製作ですよ/じゃよ」」

 

「なにそれ!」

 

「いやぁ、最初は史実では男の筈のブリテン王のペンドラゴンを見た黒髭がの、我らがマスターを美男子に性転換した18禁ハーレム小説を思い付いたのじゃ。

 歴史上の偉人の性転換エロゲー―――と言う黒髭が思い付いたもう一つの案も捨てがたいのじゃが、このカルデアでは普通なことだしの。あやつは異性にも同性にも英霊からモテまくるマスターじゃし、猿に匹敵する人たらしマスターじゃし、そっちの方が娯楽にも成るだろうし」

 

「それでまぁ、日本のハーレム小説の源流と言えば源氏物語であり、これはもう古き平安時代から未来に生きてた紫式部を召喚するかないでしょうとね」

 

「アンデルセンやシェイクスピアも素晴しい物書きじゃが、十八禁要素を取り入れたハーレム主人公小説を頼むのは、儂でも少しだけ勇気が必要じゃったし」

 

「ですので、後は絵描き担当と言う訳です。原案紫式部の十八禁有りの漫画を、我らカルデア漫画クラブは今のところ第一目標にしています」

 

「あの、その、もしかして、それって私も―――」

 

「―――勿論じゃとも。おぬしもヒロインじゃ」

 

「後々には、カメラ担当のゲオルギウスと、演劇と振り付けなどの監督担当のシェイクスピアを使い、色んな作家サーヴァントを脚本家にして実写ドラマ化も計画中です。芸術家のネロとも交渉は成立しましたし、黄金劇場改め、宝具『演じ撮る舞台劇場(ドラマーティック・ドムス・アウレア)』の開発にも成功しました」

 

「勿論(ピー)さんも使って、立香を性転換させる魔術薬品の開発も同時進行中じゃ!」

 

「私の陰陽術ならば魂から彼女を陽性の男性人格に出来ますが、それで演じるとなれば面白くありませんしね」

 

「おぬしも悪よのうぅ、星読みの鬼殺し殿」

 

「そちらこそ素晴しき悪党ですとも、僧侶狩りの魔王殿」

 

「「あーはっはっはっはっはっは!!」」

 

「ヤバいです、マスター。沖田さんストレスの余り持病で死にそうです……―――コフッ」

 























 神父と聖杯戦争における次元の、人理焼却が起きてしまった平行世界におけるカルデアはだいたいこんな感じです。
 最初の冬木で小次郎が召喚され、その後のカルデアでエミヤとアルトリアとクー・フーリン。オルレアンの開始直前で何故かチンギス・カンが召喚され、オルレアン後に安倍晴明が来ました。
 まぁこの平行世界ですと全ての特異点の難易度がルナティック且つぐた子マストダイな雰囲気なので、その反動で凶悪なサーヴァントが抑止アシストで序盤に召喚されました。
 勿論、神父さんのサーヴァントもカルデアに召喚されてます。マシュの妹に憑依した実験兵器のデミですけど。やっぱ士郎の兄弟物のオリ主ですので、同じく主人公のマシュの姉妹をオリ主にして、書くなら書きたいですね。




 後、更新停止します。すみません。話を更新する心が完全に折れました。前の話で感想が全く無く、この度の話でも無反応でしたので、自分でも驚きましたがこの「神父と聖杯戦争」を更新するのに、少し怖くなり、尻ごみしています。メンタルは強くないと思っていましたが、ここまで弱いとは。再開は今のところ未定です。早ければ数週間で更新できるかもしれませんが。
 理由は情けない限りですが、それでも少しの間であろうと執筆作業を完全に止めようと決めましたので、その報告をさせて頂きます。すみませんでした。

 今までこの趣味を続けられたのは、勿論感想を下さり、評価を下さり、この物語を楽しんで頂けた人達全員のおかげです。

 本当に、本当にありがとうございました


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