しのぶ☆ゴット 【神物語】   作:TAINZ

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しのぶ☆ゴット -03-

 

 

最愛なる彼女により無条件降伏(むじょうけんこうふく)余儀(よぎ)なくさせられた僕は、抗議(こうぎ)ならぬ講義(こうぎ)の後そそくさと寮へと帰った。

 

その際、僕にとっては(めずら)しく出来た男友達との、本当に些細(ささい)ないざこざが有ったが、それは割愛(かつあい)させてもらおう、語るにはあまりにもお粗末(そまつ)であるから。

 

 

 

 

『なー忍、寝ているところ悪いが女性物の服を作ってくれないかー』

 

僕は自室に入ると自らの影に向かって話し掛ける。

 

『………』

 

無視された…。

 

『なー聞こえてんだろー、のぶエモンってばさー』

 

搾りかすとはいえ、元々が夜行性である吸血鬼の忍は昼間はほとんど寝ているのだが、ペアリングである僕の声が聞こえない筈は無い、たぬき寝入りである。

 

『おーい忍ちゃーん、ゴールデンチョコレートが君を待っているぞー』

 

僕は右手に持っていた「ミスド」の箱を、自身の影の上で左右に()さぶりながら呼び掛けた…。

 

『ぱっないのー!!』

 

『グエっ』

 

意味不明な口癖は、僕の影の中からウルトラマンよろしく、右手を突き上げた(シュワッチ)姿で登場した金髪幼女の第一声であり、そして蛙がつぶされたかのえずきは、自身の影に聞き耳を立てるべく(かが)んだところに、しのブルトラマンのシュワッチが僕の鳩尾(みぞおち)を撃ちぬいた時に発せられたモノである。

 

『ゴールデンチョコレートは何処(いずこ)じゃえ、(わし)をこんな明るい時間に起こしておいて(うそ)でしたーなんぞとほざこうもんなら、地球がどうなっても儂は責任もてんぞ』

 

元怪異の王様はゴールデンチョコレートひとつで地球を壊す気でいるらしい…、

 

『まて忍、ゴールデンチョコレートなら此処(ここ)にある、食べていいからまずは僕の話を聞くんだ』

 

『んをーー、さすがは我が主様じゃー、何個入っておるのじゃ、ポンデリングは外しておらんじゃろなー、はようその宝箱をこっちにー』

 

よだれを垂らしながら、満面の笑みで両手を突き出してくる金髪幼女はそれはそれは可愛らしいのだが、その中身は600歳の伝説の吸血鬼である油断する訳にはいかない。

 

『いいだろう、僕の頼みを聞いてくれたらこの箱は忍に渡す』

 

僕は「ミスド」の箱を忍に見せつけた後に箱をテーブルの上へと置き、テーブルと忍との間で両手を広げた。

 

『頼み事じゃと…、さっさと(もう)せばよい、儂はドーナツ食ってからでなきゃなんもせんぞー』

 

言葉こそ返しているが忍の視線はテーブルに置かれた箱から一切離れない、前傾姿勢を取りつつ僕の(すき)を付いて箱を奪う気なのがバレバレだ。

 

『僕の体型にあった女性物の服を作ってくれ!!』

 

『な…ん…じゃとー…』

 

忍にとって僕の頼みがあまりにも意外だったのだろう、目覚めてから一度も僕に向けられなかった視線が、ようやく此方(こちら)に向けられた。

 

『僕は女物の服にあまり(くわ)しくないからデザインは忍に(まか)せる、そして出来るだけ露出度(ろしゅつど)の少ない物で(たの)むぜ』

 

『ゆうてることの意味が分からんぞ、なーお前様・服を作ることはよい・じゃがその服を着るのは誰じゃあ、まさかとは思うが…』

 

『その・まさかだ、ひたぎを怒らせちゃってさ、これから女装をしてひたぎの部屋に行くことになった』

 

『か・かかか…かーかっかっかー、それはなんというかのー、お前様のことじゃからさぞかし似合うと思うぞー』

 

金髪幼女は可哀想(かわいそう)なモノを見る目で引き()った笑いを()らした。

 

『余計な同情はしなくていい、かえって(みじ)めな気分になるからな』

 

『かかか・よし分かった、お前様にぴったりの服を作ってやろうではないか、その代わり(わし)がよいと言うまで目を開けるでないぞ、よいかえ…くっくっくっくっ』

 

『なんだかとっても楽しそうだな、忍さんよーお前のセンスにすべて掛かってるんだからな、ちゃんとした物を頼むぜー』

 

先ほどとは違い、目尻を(ゆる)ませながら楽しそうな笑みを浮かべるのぶエモンである、若干(じゃっかん)の不安は残るがここは頼らざるえない。

 

『分かっておる・みなまで言うでないわ、ほれ・そのセンスの欠片もない服をさっさと脱いで目を(つむ)っておれ』

 

僕の服装とはそんなにもセンスの無い物なのだろうか、まージーンズにポロシャツって似たり寄ったりだから、特別にセンスがあるファッションでは無いけど…、僕は忍に言われた通りに服を脱ぎながら、改めて自分のセンスについて考えてみたが、はっきり言って個性なんてものは欠片(かけら)もないことが判明(はんめい)した。

 

『なんじゃあお前様、へこんでおるのかえ、そう気に病むことでもなかろう、確かにお前様は物語の主人公としては、背が低く・顔もパッとせんし・服装に(いた)っては個性の欠片もない、髪も中途半端なロン毛で片目しか見えぬでは、ゲゲゲの鬼太郎かと突っ込みたくなるがなー、だが・お前様にはお前様にしかない取り()があるではないか、金髪幼女愛者という取り柄がな』

 

『そんなの取り柄じゃねー、単なるロリコンじゃねーか、服装にセンスがないのは(みと)めるが、僕の容姿(ようし)にまでダメ出しをするんじゃねー、僕の両親やご先祖(せんぞ)様たちに失礼だろ』

 

『そうでもないぞ、人間なんぞは20代も(さかのぼ)れば、(ほとん)どの者が血縁(けつえん)となってしまうからのう、お前様の先祖にだって背の高い者も()ったろうし、個性的な歌舞伎(かぶき)者が追っても不思議(ふしぎ)はない、遺伝(いでん)なんぞという物に重きを置いて言い訳しとる(やから)は、単なる無い物強請(ねだ)りじゃわい、背の高い者が背の低い者を(うらや)むことだって有るということじゃな、つまり儂が言いたいのは・肉体的な個性は遺伝によって決まるところが大きいが、中身に対しての個性といったものは・万人(ばんにん)に等しく受け継がれているということじゃよ、ようは・本人が望みさえすれば如何様(いかよう)にも変えられるという事なんじゃよ』

 

『忍にしては随分(ずいぶん)(ため)になることを言うじゃないか、ちょっと見直したぜー、僕のセンスはこれからいくらでも良くなるってことだよな』

 

『まーそういう事じゃが、今は儂に任せて居ればよい、お前様によく似合う服をコーディネートしてやるから安心して目を瞑っておれ』

 

『悪いな、(おん)()るよ』

 

僕は忍の言うとおりに、パンツ一枚の姿で鏡の前に立ち、静かに目を瞑った。

 

『うーむ・まずこのすね毛はよくないのー、それにお前様の場合は線は細いが無駄に筋肉質じゃからなー、あまり体のラインが分かる服はダメじゃな、顔の印象(いんしょう)根暗(ねくら)そうじゃのう…、うーむ…よし・決めた! そうじゃな・アレが良い、うむうむ・アレでいこう』

 

目を瞑ったままパンツ一枚で立っている僕を、金髪幼女がいろいろな角度からつぶさに観察(かんさつ)をしていると思うと、何とも言えない高揚(こうよう)・いや羞恥心(しゅうちしん)()くものである、なかなか平常心(へいじょうしん)を保つのも容易(ようい)じゃないな。

 

『よし出来た! もう目を開けても良いぞ・お前様』

 

おっ、もう出来たのか、流石に忍の能力はチートだな、本当に一瞬だぜ。

 

『あ…あー…あーあーあー…、誰だコレ…』

 

『どうじゃー、気に入ったであろう』

 

超可愛(ちょうかわい)いんですけどー!!』

 

目の前にある鏡に映ったのは間違い無く僕である、因みに僕はナルシストという訳ではない、では何故(なぜ)僕は鏡に映った僕を見て、超可愛いなんていう言葉を発したか、

 

『そうじゃろ・そうじゃろ、お前様のゴツゴツした体と・その根暗そうな顔では、儂の折角(せっけく)のコーディネートが台無しじゃからなー、お前様の身体ごと女にしてやったわい、どうじゃー可愛かろう』

 

後日譚(ごじつだん)というか今回のオチ、僕は【ひたぎ】を怒らせた為に女装をすることになった、仕方が無く忍に女装をする為の服を作ってもらうのだが、女性物の服と共に僕も女の子に作り替えられた、ちゃんちゃん。

 

冗談(じょうだん)だよな…、なんか鏡に細工(さいく)とかしてんだろう』

 

『何を慌てておるのじゃ、儂がそんな半端なことをする訳がなかろう、見縊(みくび)るでないぞ、儂はお前様と(ちが)い美的センスには妥協(だきょう)せんわい、いま鏡に映っておるのは正真正銘(しょうしんしょうめい)のお前様で間違いない、ただほんの少し男の部分を女に変えただけよ、それよりどうじゃーこの服はー、ゴスロリって言うらしいぞー、いやーぱないのー、ロリータなのに黒を貴重(きちょう)するとは、デザインが()びておるのに・黒をベースとしたことでまったく印象が変わるとはのう、うーむ・儂ももう少し成長した姿であったら絶対にコレを着るのになー』

 

『いや忍、お前のセンスの良さはよくわかった、正直自分でもビックリするぐらいの可愛さだよ、だがな・僕はこれからひたぎの部屋に行かなくてはならないんだ、女装をして行くとは言ったが性転換(せいてんかん)をして行くとは言っていない、すまないが身体は元に戻してくれ』

 

『嫌じゃ!』

 

『な…、おいおい忍さん、嫌ってどういう意味ですかー』

 

『お前様を男に戻すのが、嫌じゃと言うておる』

 

『ふ…っふっふっふっふっふぅー、なるほどー僕を男に戻すのが嫌だとねー、取り()えずは理由を聞こうか』

 

『そんなの決まっておる、ブサイクじゃからじゃ、儂のデザインしたゴスロリが可哀想(かわいそう)だとは思わんのか、こんなにも可愛い服を着る(やから)がブサイクで有ってみー、服が泣いておるぞー』

 

『お前さっき人の個性に対して結構(けっこう)いいこと言ってなかったかー』

 

『ふん! 儂は儂の美意識(びいしき)(したが)うまでじゃ、ブサイクなのは嫌なんじゃー』

 

『ふざけんな~、いいから早く元に戻しやがれ~』

 

『嫌じゃ、嫌じゃ・嫌じゃ・嫌じゃー』

 

やはり後日譚というか今回のオチ、忍と僕はその後壮絶(そうぜつ)なバトルを()り広げるも、【ひたぎ】との待ち合わせ時間に遅れることを恐れた僕は、結論として女装ならぬ女子となって【ひたぎ】の部屋へと向かう事となった。

 




ちょっとしたフリから、そこに至るまでの経緯を簡単に書こうと思っていたんですが…。

書き始めたらなかなか終わりません、申し訳ありませんがあと少しのお付合いを、よろしくお願いします。
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