東方幻想記   作:雪兎 銀杏

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お腹がすいても、力は出る。


弐 青の夢

 

 香霖堂には、妖怪や人間など、様々な客が来た。

 僕はなんにもせず、奥から見ていたが、霖之助さんは道具屋だけじゃなく、修理屋もしているらしい。

 主に服の修理をしているようだ。

 棚の中に、裁縫道具やリボンやボタン、布など、色々な物がはいっている。

 

 妖怪としての術や空を飛ぶことを覚え、僕は少しずつ、幻想郷に慣れていった。

 幻想郷に、受け入れられていただけかもしれないけれど。

 

「ヒトミ、ちょっと出るから、店番よろしく」

「あ、はいっ!」

 

 最近与えられた仕事は、店番をすることだった。

 なんでも頼りきりだから、できればなにか手伝いたいのだけれど、僕はきっとドジばかりして、逆に迷惑だろう。

 

 店内は薄暗かった。

 物が多すぎるせいで、窓が半分ほどふさがれているせいだ。

 それだからか、今は明るいということを忘れてしまいそうになる。

 

 店内には時計の針が鳴る音だけが鳴り響いていた。

 僕は霖之助さんの勧めてくれた絵本を読みながら、お茶を啜っていた。

 

 少しすると何人か客が来たが、昼頃になるとぱったりと客足が途絶えた。

 

 暇になった僕は、なにか考えてみることにした。

 浮かんできたのは、

 

「夢と現を操る程度の能力」についてだった。

 

 紫さんには言われたけれど、未だ扱い方がよくわからない。

 

『夢と現の境界をなくして、幻想を見せる能力。自分の見た夢、他人の見た夢、それを現実と交じあわせる力』

 

 夢…夢とは、幻想のことをさすんじゃないだろうか。

 

 …例えば、僕がここにお団子があると想像したとする。

 それは僕の見た夢…つまり幻想であり、現実じゃない。

 だけど僕の能力は、それを出すことができるということだ。

 

 団子の味はどうなのか。

 もしかしたら、味は感じるかもしれない。

 だが、胃にはいかないだろう。

 

 もしかしたら、意図的に自分以外触れないようにもできるかもしれない。

 

 人が思い出す記憶も幻想なのだから、出すことができるのでは?

 

 

 

 そこまで考えて気がついた。

 どうやったら幻想を現実と交じ合わせることができるのか、わからない。

 

 ためしに頭の中にリンゴを想像しながら、念じてみる。

 しかし、なにも出てこない。

 リンゴの食感や形を具体的に考えてみても、できなかった。

 

 なにが発動条件なのか。

 それはこの瞳にヒントがあるんじゃないだろうか。

 

 そこまで考えると、僕は立ち上がって道具屋に置いてあるレトロな鏡を覗き込んだ。

 相変わらず、不気味な瞳だ。

 

「リンゴ…」

 

 また念じたり、考えたりしてみる。

 

 結果、無理だった。

 

 もしかしたら能力の解釈を間違えているのかもしれない。

 

 

 そう考えていると、ドアの開いた音がした。

 

「あ、いらっしゃいませ」

 

 しかし、店先に立っていたのは、霖之助さんだった。

 

「お帰りなさい。随分遅かったんですね。大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だよ。遅いがお昼にしよう」

「はーい」

 

 

 

「能力の使い方?」

「霖之助さん、わかりませんか?」

「うーん、そうだな…。能力の名前にヒントがあると思うよ。夢と現を操る程度の能力…紫の言葉を借りるのならば、あくまで夢と現を交えるというだけであって、思い浮かべたものを具現化するわけじゃない。どちらかというと、具現ではなく、見えるように見せる…つまり、見えないものが見える幻覚といった感じだろう。交えるだけで、在るわけじゃない」

「見えるように見せる…」

 

 りんごを想像する。

 しかし、今度は念じているんじゃない。

 

 目で、映し出しているのだ。

 

「出た…りんご…」

 

 僕はそれを持ち上げて、一口かじってみる。

 味や匂いを感じるし、本物のように感じる。

 

 だけど、喉を通り抜けていったりんごは、胃に行かず消えていく。

 これは、術者にしかわからないだろうが…。

 

「霖之助さん、なにか思い浮かべてくれませんか?」

「え?」

「ちょっとやりたいことがあるので」

 

 また集中すると、霖之助さんが、なにか思い浮かべていることがわかるとわかった。

 

 それを出してみる。

 

 梅

 

「上達が早いね。じゃあ…生き物はできるのかい?」

「生き物?」

「猫とか…虎とか」

「動物ですか?…うーん」

 

 猫は出たことには出たのだが、なんだか動きが人形のように気持ち悪い。

 

「動物とかは動きをよく観察しないと…」

「まあ頑張って覚えなよ」

 

 西日が傾いてきていた。

 

 

 To be continued…




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