群青月歩   作:綿苗

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it's戦闘タイム


12、三毒

 

「(彼女はずるい...)」

飛び出しかけた言葉は、大人として押しとどめた自分を褒めてやりたかった。

初めまして皆様、私は八番隊で十席の位を頂いている一般の又は、一介の死神女子と称しても問題ない程度の者でございます。

 

六十年以上も前から、席を頂きその務めを果たして参りました。ずいぶん長くと、思われるでしょうが実際は長命な死神からすればそんなに長いわけでもないのです。しかし、お局の域には達したとは思われます。副隊長の七緒さんとは名前で呼び合う仲であったりよく書類の不備の相談に新任の女隊員の教育を任されたりと、信頼を得ているとは思いました。

 

 

黒崎 杏は、いい子です。いい子だからこそ私は卑屈に考えを起こしてしまうのです。最近現世で増えた街路樹に公園樹に植えられた糸杉のような清閑な芯のある立ち姿、若々しい艶が天使の輪を作る黒髪は入隊してきた頃と変わり、肩を隠すほど長い髪を首筋で簡易的なお団子をまとめていて、一見普通の黒い目は目の前にしてみて息を飲んだほどに複雑にしかし鷹のような明確な鋭さを持った瞳は美しくって、鏡で垣間見るくたびれた化粧で矯正した顔は肌が突っ張り、目は腫ぼったい、櫛を通しても毛先は()れパサついて纏まりがない、自分自身が惨めに感じました。

 

彼女はずるい、隊長の目にかかって入隊してきたことに加え彼女は個人的に指導を受け、どんどんその美しい刃を研ぎ澄ませていった。

 

誰の目から見ても彼女は特別だった。恵まれている。

 

彼女は瑞々しく香りを秘め水辺を彩る燕子花や花菖蒲、私といったら花が花のように見えないただの菖蒲なのだろう。

羨ましくって、羨ましくって、彼女をずっと見ていたかった。

 

それなのに、彼女といったら十一番隊に異動してしまった。彼女の異動に清々したと思えず寧ろ寂しいと感じてしまうぐらいに彼女に惹かれてしまっていた人間は多くいることでしょう。それくらい、彼女は黒崎杏はかわいらしい私たちの隊員(仲間)だったのです。

 

「北十席!応援に来ました!!」

 

 

斬っても斬っても、再び現れる悪夢。

眼前の虚。その歯が、鋭い爪が、私の体に差し迫っている時、最後にあの子を思い出していた。コレが走馬灯なのね、と半ば諦めた瞬間に現れた彼女は本当に美しかった。

 

【北 菖蒲】それが私の名前。

覚えていてくれて、ありがとう。

______________

 

はらりと涙が瞳から溢れた北十席の涙を拭いたくって、虚に突き刺した始解前の斬魄刀を抜き取る。ずるっと大した抵抗もなく頭蓋から抜き出された虚はぱらぱらと体を崩して還っていく。

 

綺麗か分からなかったがないよりはマシかと懐から手ぬぐいを取り出して、拭った。

そのまま手ぬぐいは渡してしまって、後方で負傷者を集めておいたので手当ての方に回って欲しいと伝えれば瞬歩でその場を離れた。

 

虚は、まだいる。

 

流魂街に現れた虚の対処に八番隊が席官二に対して平隊員を三名ずつと、近くの区間に現れた虚の対処で送られたのが十一番隊の私と八席の坂東と平隊員が二名ずつ。

この二区間の虚が同一個体だと気付いたのは、十何体目を切り伏せた時だった。

 

この虚、個体自体はひどく弱いが分裂を行い数を増やしていく。それが煩わしく体力だけを消費させられ、ついには平隊員は全員負傷。

元八番隊の私が負傷者の元に八番隊席官の二人に行って貰うように声をかけ、坂東八席には報告に戻っている。

 

ここには、私だけだった。

 

「もう、使ってもいいかな」

 

襲いかかる背骨の曲がり仮面の歯をすり合わせて興奮する虚の横腹を、避けたすれ違いざまに刃で撫で付ける。

 

ここは流魂街の外れ、石畳の羅列が並び道は整備されているが人が営みを全うする場所ではない。

 

探知を行えば、後方に置いてきた負傷者達の霊圧しか感じなかった。たとえ何か見たとしても鬼道の端くれにでも見えるだろうと思い、刃を振るい血脂を落として鞘に納めた。

 

 

瞋恚(しんい)高鳴れ 群青飛鷺(ぐんじょうとびさぎ)

 

ぼうっ、

 

空気の鳴る音。周辺の水分が飛び、杏の目も乾き二、三度瞬きをしなければならなかった。二つに増えた鞘からずるりと抜き出す、刀身の長さに形状それぞれが異なるその群青色の刃が晒された。

杏はすかさず瞬歩で移動し、近くの虚にその一つの刃を突き刺す。

 

「燃えろ」

 

瞬間、言葉に従ってたちまち虚は青白い炎に包まれた。奇怪で不愉快な断末魔を漏らすので、杏は喉元にもう一振りの両刃の脇差を突き刺した。それはどんどんと伝染していく、炎が次々と彼らを一本の線を伝って飲み込んでゆくそれはまるで首を伸ばした鷺のように優雅で美しい炎であったが、この光景はまさしく捕食に違いなかった。

 

破道の十二 伏火(ふしび)

 

炎の道筋の正体はこれだった。

この虚は、分裂前と分裂後それと直前の色味が少々変わる、それを念頭に伏火を仕掛けておけばあら不思議。

粘着性を増して繋いだ伏火は、鳥黐のように獲物に取り付き蜘蛛の巣のように張り巡らされていく、自分自身で張り巡らせた導線に私が炎を灯してあげれば、なんということでしょう。十、二十、三十と炎の塊は数を増やし京都の伝統行事 五山の送り火のように周辺を照らした。

 

本当は威力を調整した赤火砲(しゃっかほう)でも用は足りるのだが、群青飛鷺をこれ以上使わないとなると彼?いや彼女…?は不満を爆発させて四六時中隙を見れば刃禅、精神世界へと取り込まれ満足するまで喋られる。それは精神的にちょっとキツかった…今回は人目もなく丁度良かった。

 

『こんなんじゃア、足りないの分かってるんダロ。こんな薄い青じゃダメだろ、オレラハ、瞋恚のほむらジャナキャアたりないって』

 

「ここでは無理だよ…」

 

耳元で蚊の羽音のように、男と女の重なる声でわあわあと喚くが素っ気なく返してカスまでも焼失させようと燃える炎の道に、手をかざした。

 

 

「私の炎は痛かっただろうに」

 

 

 

血の一滴も、涙も、燃え残りも、細胞の一片まで燃やし尽くす。それが、彼女の斬魄刀。群青飛鷺。




戦闘タイムが何故少ないか分かったかな…作者の語彙力が足りなくて書くに書けなかったんです…原作介入篇では書きますよ…勿論。
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